テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。


第十七話『混迷』

17-1

 

テグサーマン達とラントム社の希望を賭けた戦いから一か月。群れをなして泳ぐ深海魚や沈没船が砂地に埋まる深海に、未来島はひっそりと潜んでいた。その姿はまるで、捕食者に見つからぬよう、物陰にひっそりと隠れる小動物の様であった。

 

「閣下!!なにかいい手はございますか!?」

 

未来島の中心部にある大会議室。集まった数十人の幹部級のジン・ガイア人の一人、亀型の幹部級がジン総統に向けて忠告した。

 

「量産型の装着型兵器から、例のGooGooZという偶像とやらによる士気向上。そこから最近では各企業が少数精鋭の装着型兵器に見直した事で我が帝国の軍部は敗戦続き。更にはいつあのテグサー1のような超兵器が飛び出して来るか分からず、こうしてこの本拠地は海底で怯える毎日…このままでは我が国は奴らに駆逐される可能性がありますぞ!!」

 

机にごつく、深緑色の手をついて必死に訴えかける彼の横では、自分も同意見だと言わんばかりに椅子に座る他の幹部級達が沈痛な面持ちで異形な棘のある腕を組んだり、円錐型の頭を抱えていた。すると、亀型幹部級の前に座るコブラ型の幹部級が立ち上がって、堰を切って意見を述べ始めた。

 

「閣下っ!!ここはやはりマスクや壁をも貫く毒ガスを世界中に撒いて、人類共を根絶やしにしましょうっ!!それしか他にないっ!!」

 

「馬鹿言え、そんなのどうやって製造するんだっ!!第一、製造出来ても、下手すれば我々の所に戻ってくる可能性があるじゃないか!!」

 

その意見に、亀型は反論を述べる。すると今度は、棘のある幹部級が真っ先に噛み付いた。

 

「なら、他に方法はあると言うのか!?なにも代案がないというのに、偉そうに言うなっ!!」

 

「そうだそうだっ!!」

 

反論返しを前に、他の幹部級の一部が同意する。それに触発される様に、残りの幹部級は一斉に言い争いを始めた。

 

「し、しかし、こうでもしなければ奴ら人類のヒエラルキーは…!!」

 

「黙れっ!!貴様は前線に立たないから、そんな事が言えるんだっ!!もっと現場の労力を考えて…」

 

「もう少し現実を見て…!!」

 

「役獣の開発を更に強化すれば…!!」

 

「そんな時間と技術どこにあるっ!!ただでさえ、現状が最高潮と呼ばれているのに…」

 

投げ合い、ぶつけ合う言葉は会議室の空気を荒れさせる。

 

「やはり、降参すべきではないかのう…」

 

すると、ポツリと出た弱気な言葉に、幹部級達は一斉に静まり、声の出所を見た。そこには、年長者の雰囲気を醸し出したイカ型の幹部級が俯いている姿があった。

 

「思えば、ワシらは十年前突如この星で生まれた存在…先に生きている者に合わせるのがスジではなかったかもしれんな…」

 

「馬鹿言え!!」

 

イカ型の意見をかき消すかの様に、隣のコブラ型が机を叩いて怒号を飛ばした。

 

「貴様は十年前に奴らがしてきた事を忘れたのか!?蹂躙だぞ、蹂躙!!奴らはなにも知らない我々を絶滅させようと、火炎放射器で焼き尽くそうとしたり、捕らえて実験しようとしたんだぞっ!!」

 

コブラ型は十年前にここで起きた凄惨な過去を叫ぶ。瞬間、それを思い返した他の幹部級は一斉にイカ型を責め始めた。

 

「そうだっ!!それにも関わらず我が物顔で平和だ、文明だ絆だと身勝手な人間に鉄槌を下すべきだ!!そう言ったのは十年前の貴様だぞっ!!今更変えるなんて、恥ずかしいと思わんのかっ!!」

 

「勝利こそが我が帝国のあるべき姿!!敗北は許されんっ!!我々の同士の想いを無駄にする気かっ!!」

 

「貴様、恥を知れっ!!知らぬのなら…」

 

波立つ会議。立ち上がって暴れ狂う異形生命体。

 

「…静粛にしろ」

 

そんな中、人間態で席に座ったまま呟くジン総統。声量は小さく、力の劣る弱い人間態ながらも威圧感が凄まじく、屈強な帝国人を戦慄させた後、一瞬にして黙らせた。

 

「…ゴクリ」

 

恐怖で唾を飲む帝国人。ここでようやく、ジン総統は再び重い口を開いた。

 

「…今ここで一人の意見を潰して、批難しても仕方がないだろう。それより今は慎重に事を進める必要がある…どうだ、ヅノン。これまでの戦闘データから取るべき処置はあるか?」

 

ジン総統は席の傍らにいる、大型の試験管の中で液体に浸されている脳味噌に問いかけた。すると、脳の下部から目玉がギョロリと現れ、ジン総統を見ると「ウ~ン…」と軽く唸った。

 

「そうですな…奴ら人間はほぼ同じ力にも関わらず経歴等で優劣を決め、優となる者は似たもの同士徒党を組んで力を誇示する傾向にあります。特に自らの身に危機になればなるほど…ね。覚えておりますか、閣下?三年前、ここから南の国でそれを利用して国のトップを暗殺、混乱の隙に制圧した事を…」

 

「うむ。それで?」

 

「なので、まずは力のない外堀を責め、それを知ったトップが危機を察知した時、どこかで集まる可能性があります。そこですぐさまその場を襲撃。成功した後で混乱に乗じて責めるのです」

 

「なるほど。しかし、奴らは二度も作戦に引っかかる程の馬鹿ではない。我が帝国人が侵入するのをすぐさま気づく可能性があると思うが」

 

「その点は心配ご無用。バドリードッ!!」

 

ヅノンに呼ばれ、傍観を決め込んでいた人間態のバドリードがスッと立ち上がった。

 

「閣下、その作戦の指揮は私にお任せを…必ずや指揮系統をズタズタにしてみせます」

 

「ほぉ、変身能力のあるマツナガを使うのか?」

 

「いえ、マツナガは以前ボロを出して、テグサーマンを増やしましたので、彼は私と共に裏方を…そうだな、マツナガ?」

 

バドリードに名を呼ばれ、事実を突き付けられたマツナガは、申し訳なさそうに俯くだけであった。気にせず、ジン総統は話を続けさせた。

 

「そうか、だとすれば誰に前線を任せるのだ?」

 

「はい、それは…人間を使います」

 

「人間…?」

 

予想外の返答に場内は小声でざわめいた。

 

「人間にも色々な思想を持つ者がいます。なにかに怒り、恨み、不満を持つ者…そこを利用して我々が間接的に…インターネットといった顔を合わせない通信手段を使い、そそのかして急接近させて陣形を崩し、次に我々が一網打尽で始末致します…如何でしょうか閣下?是非、承認の程を…」

 

「フム、効率的かつ興味深い作戦だ。よし、バドリードとマツナガはここに残れ。作戦の詳細を聞きたい。他の者は次に備えて作戦を熟考するように。以上、解散!!」

 

会議終了。先程から変わって空気が和らいだ会議室から幹部級が退出し、静まり返ったそこにジン総統とバドリードとマツナガ、そしてミルメだけが残った。総統に向けて立つバドリードは淡々と作戦の説明をし、周囲の者達は静かに聞くだけであった。

 

「…以上が、本作戦の詳細となります。承認の程は…?」

 

「いいだろう、貴様に一任する。下がってよいぞ」

 

「…その前に閣下、一つご質問があるのですが、よろしいでしょうか?」

 

「…?なんだ、言ってみろ」

 

「では、詳細を省いて聞かせて頂きます。閣下、この島の最深部には巨大な石塊が置いてある様ですが、何故使われないのですか?」

 

「…!?貴様、何故それを!?」

 

バドリードの質問に、ジン総統は思わず眉をひそめて睨みつける。その表情は、バドリードの傍にいたマツナガが自分に向けられた物ではないと理解しながらも、ビクリと怯える程であった。それでも臆することなく、バドリードは質問を続ける。

 

「私は軍事位の諜報部であると同時にこの島の管理を任されている者…これ位の事は存じ上げております。そして、それが莫大な質量を持っている可能性がある事も」

 

「勿論、それだけではありません。アレに関してあなたと一部の側近…ミルメ達だけで関与している事、そして開発部が造り上げた品種改良の役獣の細胞をその隕石に植えている事も全て…存じ上げております」

 

「…そうだとしたら、何が言いたい?」

 

言われた瞬間、バドリードはグッとジン総統に顔を近付ける。

 

「閣下!!アレは石ながらも煌めいた鉱石部分が成長し、新たな生命を産み出す物だと私は予想しておりますっ!!ならばいっその事、アレを一気に開放し、多大な質量を持って人類を制圧しましょうっ!!」

 

「…ならんっ!!アレは現状で年数十種類のデータを少しずつ産み出す事を上限としている!!もしそれを破れば、恐らく我々諸共この星が滅ぶっ!!研究の予想ではそう出ているのだ…!!」

 

「閣下!!今はそんな悠長な事を言っている場合ではない筈…我々はこの星のヒエラルキーに立つ為ならば不退転の覚悟を持っております!!閣下、今一度ご決断を!!」

 

「バドリード!!」

 

ジン閣下は机を叩いて立ち上がり、遠慮のない部下を怒りの形相で睨みつけた。その圧迫感に閉口するバドリード。すると、ジン閣下は高まった怒りを抑え、席に座って先程までの冷静沈着な表情へと戻った。

 

「…兎に角、アレを不必要に動かすのは危険だ。今はまず、やれる事を先に行え。いいな?」

 

「…ハッ、失礼致します」

 

バドリードは納得のいかない様子で敬礼をし、マツナガを連れて会議室を後にする。二人きりになり、静まり返る室内。少し間を置いてミルメが口を開いた。

 

「閣下、バドリードはあの石を勝手に動かす可能性があります。如何されますか?よろしければ私が…」

 

「今は奴の能力が必要だ。つまり、この作戦が終われば、奴を…」

 

「畏まりました。終わり次第、ですね…」

 

ミルメはニヤリと笑いながら右手を上げた。そこには彼女の顔が人間態にも関わらず、乳牛へと模した姿へと変貌した右腕があった。

 

17-2

 

粛々と行われた帝国人の会議から更に数日。青空の下では以前の戦いで焦土となった土地の復興作業が行われていた。次々と組み立てられる鉄骨と、その頭上でせわしなく働く大型の重機。そんな現場で一際目立つ者がいた。それは、テグサー4であった。

 

「よし、次はこれを運べばいいのか…おりゃあっ!!」

 

テグサー4は束ねた十数mの鉄骨を一気に持ち上げ、肩に担いで運ぶ。作業員は自身から見て小柄にも関わらず、その怪力ぶりに目を見張っていた。

 

「おぉ~やっぱすげぇなぁ~、あんなに小さい、しかも女の子が軽々と持ち上げるなんて…」

 

「流石はウチの上の会社が作った奴だけあって凄い性能…装着する奴も凄いんだろうな」

 

「ふっふっふ…あ、よいしょーっ!!」

 

次々と出る褒め言葉にそば耳を立てながら、得意そうに鉄骨を降ろすテグサー4。彼女が一息ついた時、視界の端、現場の外側に見慣れた人物を見つけた。それは、バイク屋の夫婦の姿であった。

 

「おっ、おばちゃーんっ!!おじさ~んっ!!」

 

久しぶりの再会に嬉しくなったテグサー4は鉄骨に足をぶつけて転びそうになりながらも、ブンブンと手を振って夫婦の元へと駆け出した。夫婦は突然やって来た鎧の戦士に戸惑ったが、声で装着者が茜だと知ると、すぐにいつもの笑顔へと戻った。

 

「あ~!!茜ちゃ~ん!!元気そうでよかった~」

 

「うん、二人共もねっ!!」

 

いつものおばちゃんの、いつもののんびりした声。変わらない様子に茜は心の底から喜びを覚えた。

 

「それにしても驚いたわ~、茜ちゃんがニュースで話題の、旋風重工のテグサーマンとして働いているなんて」

 

「えへへ~」

 

「しかも今日は私の家を直してくれるなんて、生きててよかったと思うわ~、う~んっ」

 

「そうそう、最近は戦いもめっきり減ってきたから、今日は重工の建設部の人達のお手伝いをしてるの!!そんで、特におばちゃんの地区をやるって聞いたからいの一番に飛び出して来ちゃったんだ!!」

 

「あら~、いい事だわ~、う~んっ!!茜ちゃん、立派よ~!!」

 

「へへ、ありがとっ!!それじゃあ私、残りの仕事あるから!!バイバ~イ!!」

 

「うん、頑張ってね~」

 

テグサー4は手を振ってその場を後にし、作業場へ戻った。

 

「よぉ~し、残りも頑張ろうっ!!親方、次の仕事はどこに!?」

 

張り切るテグサー4は上機嫌で現場責任者に話しかけた。しかし、責任者は彼女のやる気に反してどこか怪訝な表情を浮かべていた。

 

「いや俺親方じゃねぇんだけど…それよりも、今日来るテグサーマンは一人なんだよな?」

 

「へ?その予定だけど?」

 

「それじゃあ、こっちに来るアイツは誰だ?」

 

「どれどれ…あっ!?」

 

テグサー4は責任者が指差す方を見た。その先にはこちらに向かってズンズンと歩みを進めるテグサー3の姿があったのだ。

 

「や、やば…」

 

テグサー4はその場から逃げ出そうと回れ右をした。しかし時すでに遅し。

 

「茜…」

 

「ヒ…ヒィ…!!りょお…ねぇ」

 

テグサー3の怒りのこもった呼び止めにテグサー4はそれ以上進む事が出来ず、せいぜい素早く振り向くのがやっとであった。

 

「茜、今日は何曜日だ?」

 

「きょ、今日は水曜日…」

 

「そうだな、平日だ。それで、今日は祝日か?」

 

「い、いえ…!!」

 

「そうか、それなら再度聞くが、今日は学校は休校か?」

 

「あ、あの今日は、なんとなく学校に行かない方がいいと占いで、いや、そのぉぉぉっ!?」

 

「お、ま、え、は~っ!!」

 

テグサー3は素早くテグサー4をヘッドロック。そこから叱責の右拳でテグサー4の頭頂部を『グリグリ』で激しくお仕置き。つむじを的確に狙った必殺の拳はテグサー4を激しく悶絶させるには充分な威力であった。

 

「最低限、学校はサボるなってあれほど言っただろうが~っ!!」

 

「だ、だっておばちゃんとこをやるって聞いたら居ても立っても居られなくて…アダダダダ!!テグサーマンでも痛いモノは痛いっ!!」

 

「その気持ちは汲むっ!!だが、それで学校をサボったらご夫妻に申し訳が立たんだろ!!少しは考えろ!!」

 

「分かった、わかったから…グリグリはやめぇ、てぇぇぇぇぇっ!!」

 

許しを乞うテグサー4の阿鼻叫喚。その悲鳴は晴天の青空に深く、広くこだました。それから陽が落ちて夕方。陽観高校は下校の時刻となった。残って談笑するのと、色々な目的でさっさと帰る二年生の生徒達。そんな中で穂乃花は女子クラスメイト数人、そして桃子と一緒に下校の準備をしながら仲良くお喋りをしていた。

 

「ねぇ、昨日のニュース見た!?先月のGooGooZと私達の件が特集されていたの~!!」

 

「あっ、見た見たっ!!私達も映ってたよねぇ~!!」

 

「そうそう、超ヤバいよね~!!ウチら、全国デビューだよ、デビュー!!」

 

「きゃあぁぁぁぁぁ~っ!!ヤバいヤバいヤバ~いっ!!」

 

桃子の投げかけに同調し、大騒ぎのクラスメイトの女子達。その中心で穂乃花は嬉しそうに頷いていた。

 

「やっぱあの時、諦めなくてよかった~!!皆に勇気をあげられたし、GooGooZはこれを切っ掛けに今じゃ世界中で大活躍っ!!夢とか将来を諦めかけてた色んな人達も『皆が頑張ってるんだから自分も…』ってもう一度立ち上がったんだよね…」

 

「ね、やっぱ、皆で一致団結するのって凄いよね~、ね、穂乃花!?そのお陰で今度穂乃花も国と一緒に協力して戦うって言うし」

 

「うんうん、そうだね…って、桃子!?鼻水出てるよっ!?」

 

「へ!?あら本当…」

 

穂乃花から指摘された桃子はポケットティッシュをつまんで鼻を一拭き。用済みとなったティッシュを机にポイと投げ捨てた。

 

「…まぁさ、やっぱり皆で想いを一つにして頑張るって素敵だよね~。玲香さんもインタビューで言ってたもん、『皆で同じ方向見て、失敗しても空の夢に向かって突き進めば必ず光はある。それが頑張るって意味になる』って…いい事言うよね~」

 

気が付けば、そのグループ以外の者含めてクラスメイト達はその話に、静かに耳を傾けていた。

 

「私さ…内心今までの人生、毎日の帝国の襲撃を見て自分の将来は絶望的だと思っていたんだ。どうせなにをしても壊されるだけだって…でも、今の言葉聞いて、私達の人生は無駄じゃない。一つ一つが輝いてて、そこから今の青春を皆の絆と想いで繋がって、頑張って諦めずに取り戻そうって思ったもん!!だって私達の事守ってくれるんでしょ?GooGooZと一緒に、テグサーマンは!!皆の絆と共にっ!!夢を叶える為にさ!!それまで私達、頑張るっ!!」

 

「うん、頑張ろう桃子!!」

 

「ウチらの絆はずっとだよっ!!」

 

桃子に同調するクラスメイト達。彼女達のテンションは一気に高まった。

 

「頑張ろう、後少し、もう一歩、あ~りがとうっ…!!」

 

そんな中で突然歌い始めた桃子。その曲はGooGooZの新曲『皆で』のサビであった。歌って気持ちが高揚した中心の彼女であったが、視界に入ったある人物に気付いて突如歌をピタリと止め、視線を向けた。表情も、不敵な笑みに変わっていた。

 

「まっ、帝国が滅ぶ前に消えて欲しい奴が一人いるけどね~…ねぇっ!?」

 

その先にいたのは一人、教室の片隅からそそくさと帰ろうとする甲斐田の姿があった。気付いていないのか、その足は止まらない。すると、桃子はため息を一つついてから声を荒げた。

 

「ちょっと~、なに無視してんの!?あなたに言ってんだよ私は~!?か・い・だくんっ!?」

 

「…」

 

名指しされて、ようやく甲斐田の足は止まった。その背は彼女に向けたままだ。気が付けば、周囲のクラスメイトが笑みを浮かべて両者に注目しだした。がらりと変わったとげとげしい雰囲気に、穂乃花は不安気にその間に立ち入ろうとした。

 

「ま、待って桃子…」

 

構わず、桃子の罵詈雑言は続いた。

 

「だってそうじゃん!?こんな人の事をすぐけなして協調性もない、しかも抜きん出た能力どころか普通の事さえも出来ないんだよ!?そんなのなんてこの世界に必要ないじゃん!?っていうかさぁ、こんな価値のない人間さえ守らなくてはならない、いるからこそ怪人が襲ってきて急遽中止って感じで私達色んな物奪われて悔しさと苦しさで生きてきたんだよ!?この前の文化祭とか、せっかく色々と頑張って一生に一度やれるかやれないかのチャンスとか、ウチでやってる水族館に遊びに来てくれる世界的なアーティストとか!!全く、帝国の連中と一緒だよ、邪魔ばっかするこんな奴!!さっさと餌にでもなればいいのにっ!!」

 

「桃子ッ!!」

 

たまらず、穂乃花はそれを窘めるように名前を呼んだ。より前に、一歩出る。

 

「「「「ギャハハハ!!」」」」

 

だがそれより、周囲の友人達の嘲笑が彼女の意思に覆い被さった。得意げになった桃子もまた、手を叩いて笑う。傍から見れば和気藹々としたグループ。そんな中で真反対の表情を見せたのは穂乃花、ただ一人である。こちらも合わせれば、彼女だけ疎外されている様に見えるだろう。一方の甲斐田は、振り向いてずかずかと歩き出す。そして、穂乃花の横を通り過ぎ、机と机の間を通って桃子に向かってずかずかと歩み出した。その表情は、怒りに満ちている。

 

だが、その瞬間、彼はド派手に、腕を付く事さえ出来ずに顔面から思い切り転倒してしまった。

 

「「「「ギャハハハ!!」」」」

 

すると、目の当たりにしたクラスメイト達は一斉に笑い出した。

 

「だっせ~!!受け身も出来ねぇのかよっ!!」

 

「ザッコ!!そんなんでよく生きて来れたなぁ!?」

 

「おいおい、あんよは上手!!あんよは上手!!ってか!?」

 

中には、指を指してからかう者もいた。顔を上げて、その場に座ったままの甲斐田は笑いが絶えない中で周囲を見渡した。自分の足を引っかけた物や人の姿は見えない。では原因はなにか。不思議に考えると、突然頭に痒みが走った。条件反射の如くボリボリと掻きむしる甲斐田。すると、そこからぽろぽろと小さな粉が大振りの雪の様に落ちてきた。

 

「うわっ、コイツフケまみれだっ!!きったねーっ!!」

 

「きゃっ、不潔!!せめて人間になりたいなら風呂位入りなって!!」

 

この様相を前に、クラスメイトの男女はまたも悪態で沸き立つ。

 

「くっせ、近寄るなっ!!」

 

「帝国と同じ、バケモンかよっ!!」

 

ここまで罵られ、囲まれては、もはや甲斐田の言葉など誰も耳を貸さないだろう。引きつった笑みと共に、視線は白い床にしか向けられなかった彼に向けて、桃子はなにかを閃いた様に手を叩く。

 

「あっ、甲斐田君の唯一の使い道を思いついた!!今みたいなマヌケぶりを持ってさ、私達に笑いを提供してくれるってのはどうかな!?うん、いいよね!?だってそうすれば私達の心が晴れるんだもん!!ね、そうだよね!!」

 

この提案に、クラスメイト達は頷き、笑みを交わす。

 

「あっ、いいなぁそれ!!うんうんっ!!」

 

「おっそうだな、いいサンドバックになりそうだもんなっ!!」

 

「ワハハッ、それなそれなーっ!!」

 

一つの考えが多くの賛同を得れば、それが絶対的な正義となる。それでも穂乃花は立ち向かった。

 

「もうちょっと、なにやってんの皆して!?甲斐田くん大丈夫…」

 

彼女はクラスメイトの波を搔き分け、甲斐田に話しかけようとした。だがその時、彼は立ち上がり、きびすを返して教室を後にした。その様子は敗走とも取れる。すると桃子は勝利を確信してか、半笑いの表情で彼を再度指差した。

 

「あれ~、どうしたの甲斐田く~ん?なんかすんじゃないの~?学校嫌なら来ない方がいいよー?来ても私らのいい『相手』位しか価値がないけど、ギャハハハ!!」

 

「「「「ギャハハハ!!」」」」

 

嘲笑が再び巻き起こった。それからは、教室内には変わらず他愛もない会話を続けたり、一緒にゲームをしたりと、和気藹々とした雰囲気が戻った。しかし、穂乃花だけは廊下に立ち尽くす。既にいない甲斐田の背を見送るように。

 

時は進んだ夕刻。薄暗くなった街。遠くから石焼き芋のトラックの音が聞こえる、そんな中でトウマは自室でゴロリと寝ころび、テグサロイドをジッ、と見つめていた。

 

(あの時…バイオ・ユニットとTE粒子が俺達に力を与えてくれなかったら確実にやられていた…)

 

(今後、戦うにあたってあの力は必要かもしれない…でも、一企業、一体の装着型兵器が持っていい代物なのだろうか…)

 

(それに、帝国だってより強力な力で向かってくるかもしれない…もしそうだとしたら、一体どれだけの被害が出るのだろうか)

 

(この未知の力、鍵を握るのは島で手にしたUSBメモリ。父さん達はあのメモリになにか秘密を隠しているのかもしれないな…)

 

(教えてくれ、テグサロイド…お前は一体あの時、俺に何を教えたかったんだ?)

 

と、問うた所で物が喋る筈もない。それでもアレコレと疑問に感じていたその時、下の一階、電気屋の店舗スペースが妙に騒がしくなったのが耳に入った。

 

「ん、なんだぁ?」

 

トウマは起き上がって、階段から降りて物陰から店を覗く。

 

「あ、あい、i can not speak japanese!!」

 

店舗入口にいたのは、来店した人を前に焦る闘牙。

 

「お、お父さん!!それじゃ日本語話せない事になっちゃうよ!!え、えぇ~と、ウエイト、ウエイトプリーズ!!エイゴ分かる人、カム、ウエイト、オーケー!?」

 

その後ろでオドオドする凛奈。

 

「い、いやあの、こちらのトウマくんにお話があって…あの、聞いてます?」

 

そして二人を前に戸惑いながらも日本語を話す来店客、私服姿のジョージが視界に入ったのであった。

 

「なにやってんだアイツら…やれやれ」

 

トウマは呆れながら彼らの元に行き、ジョージに「よぅ!!」と手を挙げて挨拶。知っている顔がやって来た事にジョージはホッと胸をなでおろすのであった。

 

「ジョージ、どうしたんだ急に?俺に用があって来たのか?」

 

「あ、ああそうなんだ、トウマ。実はお前に話があって…二人で話せないか?」

 

「ああいいぜ、二階の俺の部屋に来な」

 

「ん、サンキュー」

 

ジョージはトウマに連れられてトウマの自室に案内される。

 

「と、トウマの奴、いつの間に英語を話せたんだ?」

 

「お父さん、今のにぃには思い切り日本語話してたけど…」

 

闘牙と凛奈の話を背に受けて自室に入って敷かれた座布団に腰掛ける二人。この時、ジョージは真剣な面持ちをしていた。

 

「…急に押しかけてきて悪かったなトウマ」

 

「別にいいさ。暇だったし。で、わざわざ来て話ってなに?」

 

「あぁ、実は…っと、その前にこの話、秘密にしてくれないか?特にウチの…ラントム社には」

 

「えっ、自分のトコに秘密にしろって…そこでなにかあったのか?」

 

「そうなんだ…実はウチのモーラの様子がおかしいんだ」

 

「モーラさんが?」

 

「最近アイツ、出張を理由にあちこち行ってるみたいなんだがどうも必要以上に時間を掛けている気がするんだ」

 

「そう思う根拠はあんのかよ?」

 

「コイツは軍人時代の俺の勘さ。現役時代はよく当たったモノだよ。そんで俺は彼女の後を追ってみた。そしたら、彼女は裏路地で知らない奴、それも組織的なこの国のじゃない車に乗ってどこかに去っていくのを目撃したんだ」

 

「結局それ以降は出張は止めたから審議は不明…でも、俺はある恐ろしい結論に達したんだ。それは…」

 

「それは…?」

 

「そ、それは…」

 

答えを吐き出そうとするジョージに対して、トウマはどんな言葉が出るのかグッと待ち構えていた。そして、飛び出したのは…

 

「間違いない!!モーラは俺達に黙って、隊長の婚約者を探しているんだ!!そうだ、きっとそうに違いないっ!!」

 

「な、なんだって!!婚約者をーっ!!…って、結論がそれかよ!?」

 

「ああそうだ、今ラントム社の株は急上昇中…今ノリに乗ってるこの状況で誰かいい相手を隊長に代わって探しているんだ!!畜生、こんなにいい男が目の前にいるってのに!!」

 

「自分で言うなよ…で、それに関して俺に相談ってなに?」

 

トウマがそう言った瞬間、ジョージはずいっと顔を近付けた。

 

「なぁトウマ、どうやったら隊長のハートをゲット出来る!?教えてくれっ!!頼む!!プリーズ!!」

 

「あ、アンタ、イリアの事好きだったのか…」

 

「そうだ、あの気品に満ち溢れた姿、優しさを持ったハート、惚れない筈がないっ!!で、どうなんだ、オイッ!?」

 

「い、いや知らんがな…別にモテようなんて思った事ないし…」

 

「えーっ!?嘘だろ!?あんなに可愛い子達と仲良くしてるのに!?なに、そういう事してないの?噂じゃお前、スクールカーストの上位に位置するって聞いたぞ!?」

 

「どこの情報だ、それは!?俺はアメフトもやらんし、ましてやチアリーダー囲って転校生の不良と友達になってゴツイ機械にも乗らん!!第一、いい年した大人が未成年に恋愛術を聞くなっ!!」

 

「馬鹿言え、俺はまだ25だっ!!まだまだヤングの部類だっ!!で、どうなんだよ、なんかいいアドバイスないか!?」

 

「う~ん、じゃあお近づきとして好きな物でも共有したらどうだ?なんかあんだろ、あの人の好きな物とか」

 

「そう言われてもなぁ…なにがあったかなぁ?レディーの趣味はようわからん」

 

あぐらの姿勢で左右に揺れるジョージ。彼の足はうっかりテレビのリモコンのスイッチを押してしまった。連動して、明るくなるテレビモニター。番組は夕方のニュースであった。

 

『…ここで今入った情報です。機械工学の権威、崎田教授が本日正午、殺害されていた事が判明いたしました』

 

突如耳にした物々しい情報。二人の顔は『戦士』の顔つきへと変わっていた。

 

『警察は犯行の手口から、人間のではないと断定、ジン・ガイア帝国の犯行ではないかと発表。同様の手口は今月にて十一件目であり…』

 

「くそっ、またかよ…」

 

トウマはグッと右の拳を固める。その時、彼はここ最近を振り返った。次々と殺される無力な技術者や、科学の権威がいた事を。

 

「本日未明、生物学の樽田博士が…」

 

「昨夜頃、機械の…」

 

その度に淡々と死亡ニュースを告げるテレビ。それと共に映る関係者の悲鳴、涙、阿鼻叫喚。それでも防ぐ事が出来ない殺戮。十年前のあの時と重ねるトウマは報道が出るその度に湧き出る怒りを感じ、今まさに同じ様に心の中で何かが燃えているのを感じていた。彼の拳は更に強く固まる。その時であった。

 

「…おい、トウマ?大丈夫か?」

 

突然のジョージの呼び掛け。その瞬間トウマはハッと我に返った。

 

「あ、あぁ大丈夫大丈夫…早いとこ帝国との戦い、決着つけなくちゃな…それにしても帝国の奴ら、今度はピンポイントに要人や技術者を暗殺し始めたな…クソッタレ、俺達は所詮後手後手にしか戦えない事を利用しやがるのか…」

 

守り切れない事に愚痴を溢すトウマ。その横でジョージは静かに頷いた。

 

「そうだな、俺達は全ての人々を守り切れない…それでもやらなくちゃならない。それが力を持つ者の役目だ。そして明日、それについて大事な『お話』がある。頑張らなくちゃな…」

 

「あぁ、アンタの言う通りだ…それじゃ、もういいだろ?明日は俺達大事な仕事があるんだ、早く帰って明日のその仕事の為に体を休めようぜ?」

 

「ん。あっ、そうだ。折角来たからなんかご馳走してくれないか?今度お礼するから」

 

「えぇ~…相談だけじゃなくおねだりまでするのか…なにがいいの?」

 

「イヤ本当簡単なのでいいから…すき焼きとか」

 

「…そんなん早々作れるかよ」

 

17-3

 

三日後の土曜日。都市部から離れた山中の旋風重工第二工場。広大な自然の中に囲まれた工場の前の時計塔は午前十時を指していた。

 

(うぅ~…やっぱり緊張するな…)

 

工場内にある会議室の中で飛田は席に座って俯いていた。というのも、この会議に出席した人々の大半は防衛軍の長官、日本政府の中心となる大臣クラス、更には世界的企業の重役に博士、科学者といったそうそうたる顔ぶれが揃っていたからだ。

 

(いくら海斗社長や涼さん、あとイリアさんと橋爪専務がいるとはいえ、会議で始まって、発表するのは僕一人…どうしよう。翻訳機械が上手くいかず、来てくれた外国の人達に変なニュアンスで伝わったら…もし、それで相手の本国に持ち帰って、変な物作られたら…!!その時の責任は僕にあるぞっ!!どうしよう、どうしよう…)

 

(助けて、トウマさん、涼さん…!!)

 

飛田は誰かにすがろうと周囲を見る。近くにいるのは初対面の科学者達。そして対面した先の席には鎮座する各分野の要人。その間を忙しなく動き回るその部下達。そんな彼らの間をすり抜けてようやく話し合う海斗社長と橋爪専務、イリアが見える。そしてその奥では入口付近で涼とヒロシが護衛として防衛軍と共に立っている。これでは不安を紛らわそうとして話しかけるのは無理な話である。

 

『いいこと、飛田!?今回の会議の相手はトップの人達よ!?いつも以上に気を引き締めて臨みなさいっ!!少しでもミスしたら一大事なんですからね!!』

 

飛田の脳内に、会議前に言われた橋爪の圧力ある一言が映る。その時、要人達が静まると同時に、海斗が壇上に立った。

 

「皆様、お忙しい中、本日は当社にお越し頂き、誠にありがとうございます。また、今回の会議…対ジン・ガイア帝国の決戦に関するにあたって、機密保持の為遠方である第二本社に決めた事をどうかご容赦下さいませ…」

 

機密性を持ったこの会議の議題はジン・ガイア帝国の本拠地、未来島の制圧作戦。海斗の後ろにある大掛かりなホワイトボードにも『対ジン・ガイア帝国本拠地制圧第一号作戦合同会議』と書かれていた。

 

「…ではまず、当社のテグサーチーム、技術開発担当の飛田に、テグサーマンについて説明させていただきます」

 

海斗は一言二言挨拶をした後、飛田を壇上へと呼んだ。

 

(き、来た…!!)

 

飛田は緊張の面持ちで壇へと歩む。手と足を左右同士、交互に出しながら。

 

「み、ご来場の皆様、ご紹介に預かりました飛田、喜信と申します…」

 

自分より二回りも年上の、それも各組織の重鎮の視線が一斉に集まり、飛田の緊張感はより一層高まる。しかし、涼や海斗を見て一旦心を落ち着かせた。

 

『大丈夫だよ飛田くん。いつもの様に振る舞えばいい。なぁに、相手は世界的な人物とはただの人。緊張する事はない』

 

そして、橋爪に言われた後に海斗からフォローされた一言を思い出して軽く深呼吸。これまでの戦いを思い返し、毅然とした態度で前を見た。

 

「まず始めにテグサーマンは十年前、富田博士がボディとパワーを、そして僕の父である義生がコンピューター部分であるバイオ・ユニットを作り上げました。それら二つを総合してテグサーマンと呼びます」

 

飛田はパソコンを操作して、プロジェクターからホワイトボードへと写し出されたパワーポイントを動かす。そこにはテグサーマンのデータが書かれていた。

 

「バイオ・ユニットは装着者の感情・想いに反応するTE粒子を力に変える基盤を元にしたユニットの事を言い、強い気持ち次第で無限の力を産み出す物としています」

 

「これにより、テグサーマンは十年前の技術であっても現行の技術に見劣りしない、単体で圧倒的なパワー、機動性を持ち、単体で複数の戦闘員級、更に上の怪人級や幹部級に対応しうる戦闘力を持ち合わせています…」

 

飛田は旋風重工の責任者の一人として説明を続ける。その性能は勿論、どの様に戦闘を重ねたか。その間にどんな心情があったか。特に注目される切っ掛けとなったGooGooZコンサートでの経験を踏まえて。

 

「…僕はこの技術、未来島で犠牲となった父が十年前に家に残したデータを二年前から抜けた部分を独自に埋めて開発、そして現在、この重工の力添えで完成に至りました」

 

「僕はこの力は父が誰かを守る為に残した物だと考え、今日まで発展系の三体含めて合計四体開発して参りました。そして近日の最終決戦に向けて、なにより父の意志を継ぐ為に防衛軍と共に未来島を取り戻し、平和への一歩としてお力添えさせて頂きます。どうかその際はよろしくお願いいたします…!!」

 

最後に深く頭を下げる飛田。聞き手の人々は自然と彼に拍手を送っていた。鳴り止むと、司会担当の女性がマイクを握った。

 

「それでは次の議題、作戦会議に入ります。防衛軍日本支部代表、杉元司令、よろしくお願いいたします」

 

「ハッ!!」

 

司会の案内で凛とした女性司令官、杉元は防衛軍直属の男性科学者と共に登壇する。科学者は以前、トウマとディーンに瞬間移動の腕輪を説明をしていた男性であった。

 

「ご紹介に預かりました、日本支部最高司令官、杉元です。今回の作戦に当たって、重要となるのが二点あります。まず一点が本作戦に我が軍のメニーは勿論、旋風重工製作のテグサーマンとラントム社のラントムチーム、そして他企業の皆様にも協力を要請する事です」

 

杉元は両社のトップに目を向ける。気付いた二人は了承と言わんばかりに小さく頷いた。

 

「そして、先月より開発が完了した対ジン・ガイア用変身抑制装置…通称JSA(ジャサ)を使用した作戦です。嵯峨山技術博士、説明を」

 

杉元に促された科学者、嵯峨山は彼女に代わって説明を始めた。

 

「嵯峨山です。今回開発したJSAは杉元司令の申し上げた通りジン・ガイア人の変身を一時的に抑える物です」

 

そう言いながら嵯峨山はパソコンを操作しプロジェクターで装置の説明を始めた。

 

「え~、今写っているのがJSAの装置であります」

 

ホワイトボードには円柱型の金属が写し出される。大きさは隣にツーショットで写っている嵯峨山の膝までしかなかった。

 

「ジン・ガイア人は人の形から変身する際、細胞を急激に活性化させている事が最近の研究で明らかになりました。そこで我々は彼らの細胞を調べ上げ、その細胞活動を抑制するのに合致した電磁波を完成させました」

 

「この電磁波を放出するJSAは一機で未来島へ広範囲に送る事が出来ます。これを効果的に活用するのは未来島の中心部…かつての居住区に設置する必要があります。え~、ですので設置に当たっての作戦は杉元司令より説明をさせて頂きます」

 

嵯峨山が演台から一歩下がると、今度は杉元が交代で演台に立った。

 

「ではJSAを使用した作戦を説明させていただきます。まず、海底に潜む未来島を発見、目標に向けて水上艦を向かわせます」

 

「その際、艦内には我が軍のメニーや諸兵器、そして協力して頂く装着型兵器を装備した各企業の皆様に搭乗、して頂きます」

 

「なお、この際に護衛としてアクアパーツを装着したテグサーマンに随伴して頂きます。そして未来島の港口まで辿り着いた後はJSAを持って上陸作戦を開始します」

 

「役割分担として、軍の第一大隊はJSAの設置、第二大隊はジン・バイル総統の身柄確保に向かわせます。この二点が成功した際、交渉の場を設けて帝国に無条件の降伏の勧告が可能と考えられています。そこで…」

 

杉元の淡々とした説明に、突然でっぷりと肥えた白人の老紳士が手を挙げた。机上のネームプレートには『IFインダストリーCEO:マイケル・ジョーンズ』と書かれている。

 

「…?ご質問でしょうか?」

 

「あ~、そうですが…その作戦で使うJSA、電磁波を放出すると言ってましたね?その際に熱は出さないのでしょうか?」

 

「はい、電磁波を出す際高温の熱を放出しますが、アーマーを装着している方々は勿論、そうでなくても問題はないと思われます」

 

「大丈夫なんて確証はどこにあるんです?人体への検証はしたのですか?ただでさえ電磁波は人体に悪影響だと言うのに、これじゃあ日本のことわざである前門のジン・ガイア帝国、後門のJSAとなるんじゃあないですか?」

 

「その点は只今検証中で…」

 

「それと、防衛軍以外に各企業への協力を要請しているようですが、そこまでの戦力が必要なのですか?確かに今、世界の各企業はコスト度外視の高性能装着型兵器を使用していますが。彼らとの戦力差は初期のそれとは違うんです。特に最強と謳われているテグサーマンとラントムチームだけに随伴させればいいのでは?」

 

「…おっしゃる事はごもっともです。ですが、今の防衛軍には激戦によって戦力が乏しく、立て直すのに時間が掛かります。そこで改めて皆様にご協力を…」

 

「それに未来島内部の調査が必要ではないでしょうか?いくら既知の島であってもあれから十年経過したんです。もう少し見てから大部隊を突っ込んでもいいのでは?」

 

返答に詰まる杉元。すると、マイケルの横に座る老紳士の東洋人が口を挟んだ。

 

「おやおや、これはこれは世界を股に掛ける大企業のお言葉とは思えませんなぁ?」

 

「なにぃ?どういう意味かね?」

 

マイケルはムッとした表情で睨む。対して東洋人は、飄々とした様子で口を開いた。

 

「おっと失礼。ただ、企業内に数の多い私兵を持ったインダストリーが随分と弱気な発言だなと思いましてな。思わず呟いてしまったんですよ。なに、深い意味はありませんよ?」

 

「…フン、私は以前無敵だと大口を叩いておきながら帝国人に大敗を喫した私兵をお持ちの神龍社とは違うのだよ。慎重かつ冷静だからね」

 

「なんだと!?アレはバドリードとかいう帝国の指揮官が民間人を人質にする卑劣なマネをしたからだっ!!力量の差ではないっ!!第一、そこまで冷静だと言うならなにかいい案があるんでしょうなっ!?」

 

今度は東洋人が苛立った様子で睨み、マイケルが薄ら笑いを浮かべた。

 

「…その点は、慎重かつ迅速な対応をさせて貰おうとしているのだよ。なにをそんなに焦って」

 

「ハッ、言葉に詰まればすぐそれだ!!とにかくこれで決着が着くなら、人員を使ってさっさと実行すればよろしいだろう!!それだから十年前、後手後手に回ってここまで収束が伸びたんだ!!私は当時言った筈だぞ、今こそ一致団結、素早い対策を講じよ。とな!!全く、ここの方々は反省の色がないようですな!!」

 

神龍社トップとしての売り言葉。癪に障った一部の人達は思わず声を上げた。

 

「あの時、あんな進化をするなんて誰も予想出来る訳がないでしょうっ!!だからこそ開戦当初、多くの民間企業にお願いをしたんですっ!!そして今も…」

 

「公的機関が民間に頼ってどうする!!我々の税金を喰らうだけ喰らって、最後にはそれかね!?ウチの丸川工業は参加せんぞっ!!冗談じゃない、結果を出さぬ者に協力など…」

 

「丸川さん、他の企業は率先して参加を表明しているんですよ、それはあんまりでは!?」

 

「余所は余所、ウチはウチだ!!冴木大臣、そもそもあなたが…」

 

矢継ぎ早に争い合う年長者の重鎮の方々。そんな彼らの様子に、イリアはただじっと不安げに見つめるだけであった。

 

17-4

 

上階で会議が大騒ぎの中、トウマは下階の警備室で待機。背もたれに寄りかかって座りながら監視モニターを眺めていた。

 

「さてさて…飛田は上手く行ってるかな。というか、会議自体上手くいってるといいが…」

 

その横で、穂乃花は元気に反応した。

 

「大丈夫だよ、トウマ!!飛田君結構しっかりとしてるし、今頃決戦に向けてトントン拍子で進んでると思うよ!!」

 

「ん~…」

 

「それにしても、この戦いももうすぐで終わり…いよいよだね…!!まさか最後に国や外国の偉い人達や、軍の人達に関わるなんて思わなかったよ!!」

 

「ああ…」

 

「それにしても、今日の任務は密談だから防衛軍の人達は私服で警護に当たってる…なんか、この前とは雰囲気が違って見えるね~」

 

彼女の言う通り、彼らの後ろでは防衛軍の兵士、各国の私兵数人が私服やスーツを着て待機していた。それは、モニターに映る、外の人物も同様であった。

 

「でも、本当に大丈夫かな?もし、この状況で帝国がこっそりと責めていたら…」

 

「あ~?まぁ、各国の見張りの人達が付いてるから大丈夫でしょ」

 

「…そういえば、この前桃子がね、穂乃花達のお陰で明けない夜はない、希望の光が見える。これからは諦めの時代じゃない、夢の時代だって言ってたの!!」

 

「ふ~ん…」

 

「ね、トウマ!!元気がなかった桃子や皆が言ってるって事は他の人達もこういう風に思ってるのかな?」

 

「まぁ、そうじゃねぇか?」

 

トウマの気のない返事。穂乃花は首を傾げて彼の顔を覗き込む。

 

「…って、トウマ?なんかいつも以上に素っ気なくない?体調悪い?」

 

「へ?あ、ああ…」

 

急接近してきたその不安顔に、トウマはハッと我に返った。

 

「あーいや、十年前の想いにようやく決着がつくんだなと思ったら、つい色々考えちまってな…」

 

「ふーん、そうなんだぁ…ねぇトウマ?この戦いが終わったらなにかしたい事ある?この前、学校の進路指導で『もう失う不安がなくなるこの国でどうする?』って先生に言われてなにも答えられなくって…」

 

「あぁ?そういえばそんな事してるんだったな…そうだな…俺だったら、明日を守りたいって答えるかなぁ…とりあえず、聞こえはいいし…」

 

「えぇ~、なにそれ?」

 

疑問で感想を返す穂乃花。すると、警備室のドアが勢い良く開け放たれた。

 

「トウマ、穂乃花~!!」

 

入室と共に二人を呼ぶのはレミー。屈強な兵士の間をすり抜けて彼らの元に駆け寄った。

 

「あれ、社長?なんでここに?責任者として会議に出席するんじゃなかったの?」

 

ここに来る用がない筈のレミーの登場に、穂乃花は質問を投げ掛けた。

 

「そうだったんだけど…やっぱり駄目だって、子供はまだ早いって、パパが…」

 

「えぇっ、そうなの?一応関係者なのに?」

 

「うん、そうなの…折角来たって言うのに…」

 

「ははっ、そうだろうな」

 

二人の会話にトウマの笑いが割り込む。

 

「だからやめといた方がいいって行く前に言ったんだ。なにしろ世界中のエラ~い人達が誰にも知られずにひっそりとやってるんだ、子供が出る幕なんてねーんだよ、なぁ?」

 

軽口を叩いたトウマはレミーにキレられたり、蹴られたりするのを覚悟し、身構えた。

 

「…」

 

しかし、一向に彼女の反応がない。見ると、彼女は暗い表情で俯いているだけであった。

 

「…おい、どうした?」

 

「…やっぱり、私って役に立たないのかなぁ」

 

レミーの弱気な発言に、トウマは「おいおい、そんな…」と言葉を返す。しかしそれでも、彼女は後ろ向きに自分を見つめ直し続けた。

 

「だって私、涼やトウマみたいにテグサーマンになって皆を守れないし、飛田みたいに頭も技術もない…勿論、パパみたいな経営力もない。しかも今回連れてこられた理由は世界の人達に向けての顔見せ程度。ないない尽くしの私が力と力の世界で皆の足を引っ張ってるとしか思えないもん。ねぇトウマ?私、この世界でなにか役に立つ事あるかな?ただ見てる事しか出来ないのかな?」

 

「あぁ…悪かった、社長。お前がそこまで悩んでいるとは思わなかった。すまない」

 

トウマはレミーに向けて姿勢を正して頭を軽く下げる。

 

「まぁ、そのなんだ。今は無理して背伸びする事はないんじゃないか?力がないって思ってんなら、それ認めてないなりになにかある筈なんだし」

 

「うん、そう。そうだと思うけど…」

 

「あまり深く考えるなよ、社長?無茶して怪我でもされたら、堪ったもんじゃないしな。それに…いつもの仲間がいて会話出来るってだけで元気が出るってもんだ。だから、そばにいて笑ってくれたらそれで十分。そこからやってみな?」

 

「うん、そうだね…そうしてみる!!」

 

「よっしゃ、それでこそウチのツッパリ娘。すぐに元気になるがいい所だぜ」

 

「ありがとう、トウマ…って、誰がツッパリよ!?人を励ましたらすぐそういう事言ってアンタは~!!」

 

いつものようにトウマにからかわれ反応するレミー。

 

「クスッ、アハハッ!!」

 

それを笑う穂乃花。和気あいあいとした三人であったが…

 

「貴様らぁっ!!なにをやっているかぁっ!!任務中だぞっ!!」

 

突如、しわがれた怒号が三人の耳に響く。振り向くとそこには屈強な中年男性が腰に手を当てて睨みつけている姿があった。

 

「全く貴様らどこの小隊だ?こんな不真面目な兵を見たのは訓練指導以来だぞ、ったく…」

 

「あっ、あのその…えっと…」

 

突然の威圧感を前に圧され慌てふためくレミー。穂乃花も同様だ。そんな彼女の前に、席を立ったトウマが前に出た。

 

「俺達は旋風重工所属のテグサーチームです」

 

「なに?あぁそうか我が軍の者じゃあないのか…」

 

「ええ。ですが、騒いだのは事実。俺達三人を代表して謝ります。すいませんでした」

 

誠実に頭を下げるトウマ。そんな彼を前に中年男性は表情を緩めて歩み寄った。

 

「そうか、君達がテグサーマンだったのか!!さっきはいきなり怒鳴ってすまなかったな、なにぶん皆私服やフォーマルでわかりにくかったんだ」

 

先程の怒気とはうってかわって嬉しそうに接する中年男性。

 

「俺は権藤大志。防衛軍のメニー部隊の隊長を任されている。これで君達と出会うのは三度目だな」

 

「へ?三度目?」

 

トウマは首を傾げた。どう思い出しても一度も会った事がないのは間違いないからだ。

 

「最初は帝国がホッグルと呼んでいた奴との戦闘、その次はミサイル防衛戦だな。メット越しだからな、無理もないか」

 

「あぁ、あの時にいた…」

 

トウマはすぐさま思い出した。あの時にいた防衛軍の兵士達を。

 

「…あの時、君達が来てくれなければ市民は勿論、俺達の命はなかった。だから一度、お互いメットを脱いだ状態で会いたかった。ありがとう。部隊を代表して礼を言うよ。せめて、名前を聞かせてくれないか?」

 

そう言いながら手を差し伸べる権藤。トウマはその感謝の手をすぐさま受け入れた。

 

「俺は富田トウマ。後ろのはテグサー2の穂乃花で、その横の子供が代表の社長令嬢、レミーです」

 

「そうか、それにしてもこんな若い子があれを扱うとは…君達の活躍を見てると、俺達年寄りがこんな体たらくでいいのか疑問に思うよ」

 

「いえ。今まで皆さんが頑張っていたから、未来の俺達も戦えたんです。俺達だけの力じゃあないですよ」

 

「ん、そうかい?そういえばこの前娘とその友達がGooGooZのニュース見て言ってたよ。『テグサーマンは皆の希望を守る正義のヒーローだよ』って。ふっ、ここまで言われちゃ、多少は誇ってもいいんじゃないか?」

 

「い、いやそんな…」

 

トウマが謙遜しようとしたその時、レミーがさっさと入口へと向かって行った。

 

「おい社長?どこ行くんだ?」

 

「私、皆の為にお茶淹れてくるっ!!ここまで期待されたんだもん、少しでもやれる事はやらいないとっ!!」

 

「おいおい、俺は別に給湯室どこだか知ってんのかよ?迷子になんなよ?」

 

「フンだ!!この工場は私の庭みたいな場所!!平気だもん!!」

 

言うが早いか、レミーは子供扱いするなと抗議するなと言わんばかりに、ドアを思い切りバタンと閉めるのであった。廊下から聞こえる、コツコツとした足音が自信の表れを感じさせる。

 

「…行っちゃった」

 

「はっはっは、中々優しい子じゃないか」

 

権藤がレミーを褒めると同時に、入れ違いで一人の若い兵士が慌ただしく入室した。

 

「権藤隊長、お話し中、失礼いたします!!」

 

「ん、どうした長山?あぁ、そうだ。彼らはテグサーマン達だ」

 

「ハッ!!よろしくお願いいたします!!それではご一緒にご確認下さい。先日から発生している研究員、技術者の暗殺事件に関する監視カメラの映像を入手致しましたので」

 

暗殺事件。その言葉を聞いた三人は顔をしかめて長山が持ってきたタブレットを覗いた。

 

「これは…」

 

衝撃的な映像に穂乃花は言葉を漏らす。監視カメラは雨が降る中、ライトを点けて走る乗用車を捉えていた。その車が住宅街の小さな橋の上を通りかかったその時、橋は突如崩れ落ちた。水没した車から這いずり出し、もがく男性。音声はないが水面上で苦しんでいるのは一目瞭然であった。それでもなんとか岸につこうと手を伸ばした瞬間、鱗のある腕がその手を掴んだ。

 

「バドリード…!!」

 

その腕に見覚えのあるトウマは思わずその名を呼んだ。

 

「知ってる奴か?」

 

聞き覚えのない名前に権藤はトウマに尋ねる。

 

「ちょっと前に、ディーンから教わったんです…そうか、あの暗殺は奴が自ら引き起こしていたのか」

 

「確かバドリードと言えば、数年前まで大戦が勃発していた頃に前線で戦っていたと聞く。噂じゃ味方の犠牲を問わず、その分ウチの軍を残忍な手で大勢虐殺したとか…そうか奴だったのか、しかしなにが目的なんだ?ただ技術者の暗殺が目的とは思えないが…」

 

バドリードの目的。そして会議をしている現状。トウマは二つの関連性からある予測を閃いた。

 

「も、もしかしたら、奴はこの会議をあえて開かせようとしたんじゃ…!?」

 

「え、どういう事だ!?」

 

「まず、今集まっている人達のアドバイザーでもある関係者、研究員、技術者をピンポイントに暗殺すれば次に狙われるのは自分自身かもしれないと、危機感を感じて自ずとなにかしらの会議を開いて集まると予想した。そして今、まさにその状態だ。つまり、奴は今、この状況を確実に狙うに違いないっ!!」

 

結論づけるトウマに対して権藤はその場を紛らわすかのように力のない笑顔を見せた。

 

「は、はは、まさかだろ?この会議場は厳重かつ機密性のある対策をしてるんだ。それにこの工場以外にも麓の街に密かに軍人を置いて警戒している上に、いざとなれば工場を包むバリアを設置している。問題ないだろう?」

 

「…」

 

トウマは権藤に言葉を返す事はなかった。彼の心に不安と終始安全であって欲しいという願いが入り混じっていたからだ。

 

17-5

 

迫るかも知れない危機。そうとは知らずにレミーは給湯室に向かっていった。

 

「あ、あれ~?どこだったかな~、来た時には確実にここだって分かっていた筈なのに…」

 

…最も正確に言えば探し回っている状況であるが。

 

「う~ん、どうしよう、一回戻ろうかな…いや、ダメよ!!これくらいの事自分一人でやらなければ…!!」

 

「…でも、本当にどこにあるんだろう。あ、あれは…」

 

白く、無機質で長い無人の通路。迷宮だと考えるレミーは、視線の先にある一室の喫煙室にてイリアとヒロシの姿を見つけた。

 

「どうしてあの二人が会議室から離れた所に…」

 

疑問に思いつつも、知っている顔を見て安堵の表情を浮かべる。

 

「まぁいいや、それとなく聞いてみよう。ねぇっ、二人共…」

 

しかし。

 

「一体なんなのあの老人達は!?決定もグダグダ、楽観視した挙げ句、未成年のあの子達に丸投げ、それもドタバタと争うだけなんて !!」

 

ヒロシに向かって、溜まりに溜まった愚痴を大声に出してこぼすイリアの姿を目の当たりにして再び不安の表情へと戻った。二人は喫煙などしない。しかし、楽な姿勢で誰にも聞かれず愚痴をこぼせるのはここしかない。そう考えたからこそ、イリアはここを選んだのであった。そんな彼女を前にヒロシは、対面した席に座って宥め始めた。

 

「まぁそう言うな。もしここで失敗すれば世間からのバッシングは免れない。そう考えているからこうして慎重に事を進めているんだろう」

 

「でっ、でも!!」

 

「隊長、冷静になるんだ。あの人達だってそこまで馬鹿じゃない。こちらからの良い提案があれば、それを受け入れて…ん?レミー社長、どうしてここに?喫煙をする年齢ではないでしょう?」

 

この時、ヒロシはようやくドアノブを握ったまま啞然としたレミーが入室しかけている事に気が付いた。

 

「あ、う、うん…二人の姿を見かけてね…そっちこそなにがあったの?随分と不機嫌そうだけど」

 

「聞いてくれるかしらレミィィィィッ!?実は各国のお偉いさんがかくかくしかじかでうんぬんかんぬんなのよっ!!わかるぅっ!?」

 

聞かれたイリアは再度怒りを大噴火。これまでの会議の内容を事細かに説明した。

 

「そ、そうだったの…それは大変だったわね…」

 

「そうなのよ、そうなのよっ!!全くこれだから現場で戦わない人間はダメなのよっ!!上からエラソーな事だけ言ってね!!」

 

「…」

 

戦いもサポートもしない自分もまたイリアが嫌う人物と同じではないか。そんな考えが頭をよぎるレミーの顔が更に暗くなる。その心情を察してか、ヒロシは両者の間に割って入った。

 

「隊長、子供にまで当たるんじゃない。ところでレミー社長。なにか聞きたくてここに来たんでしょう?なにがあったんです?」

 

「う、ううん!!やっぱりなんでもないっ!!それじゃあ午後の会議も頑張ってね!!」

 

「え、えぇ…」

 

そう言いながら、レミーは慌てて喫煙室を飛び出した。再びラントム社員二人きりになった喫煙室。一瞬の静寂の中、ヒロシが口を開いた。

 

「やれやれ、無関係の子にまで当たって…やっぱり、副社長に他の人の対応を任せて正解だったな…」

 

「うぅ…ごめんなさい」

 

さすがに子供相手にやりすぎた。イリアは自省して右前のロール巻きに右の人差し指をくるくると絡ませた。

 

「俺達チームのあと二人も隊長でもあり、社長でもあるアナタに期待して周辺の警備をしているんだ。なるべく冷静でいてくれ…」

 

「はぁい…」

 

その瞬間、喫煙室が僅かに揺れた。二人が窓から外を覗くと、一台の大型トラックが倉庫に入るのが見えた。

 

「あら、何かしら…後からトラックが来るなんて」

 

「さぁ、新開発の試作兵器でも持ってきたんじゃないかな?」

 

一方、帽子を深く被ったトラックの運転手は不敵にニヤリと笑い、車載オーディオで音楽を聞いていた。

 

『止まない雨はない。誰かがそう言った。諦めずに頑張ろう。友達が言った~♪』

 

『私もそれを信じて生きてきた。疲れてきちゃった。でも、生きろと皆は言ったぁ…ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

『uh…ah…!!それがなんだっての!?今の雨がやだって言ってんの!!』

 

『暴れたい!!暴れたい!!それでなにかが解決出来るって言うならこの身を…』

 

女性ボーカルによる激しいリズムの曲。スイッチを切り、エンジンを停止させた運転手は席を降りると、トラックのコンテナの方へと向かい、扉を開けた。

 

「さて、出番だ…世界の浄化の為に」

 

その先にあったのは一機の六脚型の大型ロボット。天井ギリギリでも身を屈めたこの機体の陰から、若い男女各一名が現れた。

 

「えぇ、この世界は誰かが動かなくてはならない。それを私達が実践しないと…」

 

女子が手袋をはめながら言った。

 

「メガメタルの最終チェック完了。ユラ、いつでも行けるよ。搭乗して」

 

もう一人の男子はパソコンのエンターキーを入力しながら女子に指示を出す。

 

「よし、やろうっ!!奴らに俺達の力を見せてやるっ!!これは革命だっ!!」

 

そして運転手は張り切る二人の音頭をとる。それと同じくして、メガメタルと呼ばれたロボットはカメラである冷たい瞳に生命の息吹を灯し、上半身のマニュピレーターの腕を上げてコンテナを内側から引き裂き、周囲の警備している者にその姿を露にするのであった。

 

「う~ん、やっぱりイリアに聞けば良かったかも…」

 

その頃、レミーは相変わらず給湯室を探していた。

 

「えぇい、ここだっ!!」

 

いちかばちか、レミーは近くにあったドアを開けた。そこはブラインドが下がった暗がりの倉庫であった。

 

「ありゃ~、また違っ…」

 

レミーはドアを閉めて次の部屋を探そうとした。

 

「え、誰!?」

 

…のだが、資料や棚が所狭しと置かれている倉庫の奥に人影を見つけた。

 

(ま、まさか泥棒!?ど、どうしよう…誰かを呼ばなくちゃ…で、でも呼んでる間に逃げられたら…)

 

まごまごしている間にも、泥棒はゴソゴソと物色を続けている。更にモニターを点けて、パソコンのデータの閲覧まで。

 

(よ、よしこうなったら…)

 

「こ、コラァッ!!人の家でなにやって…え!?」

 

叫ぶと同時に、レミーは泥棒の顔を見た。瞬間、彼女は動揺してその場で立ち止まった。

 

「…!?」

 

泥棒も思いがけない者の登場に一瞬驚いたが、冷静に現状を把握、すぐさまレミーの元へと駆け出し、手に持ったスプレーを彼女目掛けて吹きかけた。

 

「キャッ!!な、なん、で…」

 

避ける間もなく、吸入してしまったレミーはその場で昏睡する。

 

「モーラ…」

 

思わず、泥棒の名前を呼びながら。

 

「ふぅ…まさか、『観察対象』がこんな所に来るとは思わなかったわ。ま、日本語で言う一石二鳥にはなったけど」

 

「よし、これで証拠は揃った…島から持ち帰ったとされるこのUSBデータと証拠となる身体。これで十年越しの真実が明らかになるわ」

 

見れば、ズボンのポケットには盗ったデータ媒体が詰まっていた。

 

「…見ててね、お父さんお母さん、アベル…必ずこの国と旋風重工に勝ち逃げなんて選択肢は与えないから」

 

モーラは倒れたレミーの身体を肩に担いでその場を後にしようとした。しかしその瞬間、足を止めた。緊急警報が、工場内に響いたからだ。

 

「な、なに…!?こんな時にジン・ガイアの奴らが来たっての!?」

 

同時刻。倉庫内ではトラックから飛び出した搭乗型巨大ロボット『メガメタル』が大勢の私兵の装着型兵器、防衛軍のメニー相手に猛威を振るっていた。

 

「な、なんだコイツ!?この装甲は只者じゃねぇっ!!」

 

両肩に二門ずつキャノン砲を構えたゴダイラス社私兵の装着型兵器『ツヴァイン』の装着者はメガメタルに着弾させた跡を見てそう叫んで怯んだ。それは、各企業の多種多様な、まるで博覧会じみた装着型兵器を装備した者達も同様であった。

 

「ふっ、貴方達に用はない…お偉いさんの犬に成り下がった貴方達にはねぇっ!!」

 

複雑な計器やケーブルが張り巡らせているメガメタルの操縦席でユラはそう叫ぶと同時に操縦桿を一気に前に倒す。その動作と連動して、メガメタルは上半身の腕部で近くのメニーを乱雑に掴んで持ち上げた。

 

「う、うわぁぁぁっ!!」

 

「邪魔よっ!!」

 

メガメタルはブンッと風を切ってメニーを天井に目掛けて投げ飛ばす。あわや壁に激突しそうになったその瞬間、空中の変身態のディーンが彼の身体を両腕でキャッチ、大事に至る事なくメニーをそっと地面に降ろした。

 

「あ、ありがとう…」

 

「ちっ、邪魔が入った…」

 

ディーンに対してメニーは礼を、ユラは軽く舌打ちをした。それと同じくして、ディーンの元にテグサー1、2、3、ラントムチームのメデューザとダイ・ソードが集まった。

 

「ディーン!!来てたんだな」

 

いの一番にテグサー1が呼びかける。

 

「トウマ…あぁ、モーラ…というかGRNにアドバイザーとして呼ばれたんだ。で、茜とジョージは麓にいるから遅れているとはいえ、モーラはどこ行った?」

 

「え、そっちも会ってないのか?こっちも飛田と社長がいなくてな…」

 

「…とにかく、今は目の前の相手を優先しよう。仲間探しは後回しだ」

 

テグサー3の指示に二人は了承した。すると、倉庫の外で車のエンジン音がした。見ると、出入口付近で、工場を出ようとする何台もの高級車の姿があった。

 

「は、早く逃げなくては…!!まさか、こんな所まで来るなんて…!!」

 

「おい、早くしろっ!!逃げられなかったら減給だぞっ!!」

 

先頭の高級車に乗っているのはマイケル・ジョーンズ。老いた運転手の肩を揺らしてその場からの脱出を急かしていた。

 

「チッ、また貴方達はそうやって逃げる…もう逃がさないっ!!」

 

ユラはメガメタルのフットペダルを押して六脚を走らせる。狙いはただ一つ、逃げ惑う倉庫外の逃走車。

 

「や、やべぇぞ!!あのジン・ガイアの兵器、会議の出席者を狙っているぞっ!!撃て!!」

 

メニーを装着した権藤は部下に命令を出してマシンガンを一斉掃射。しかしメガメタルは怯まない。頑丈な装甲が、弾丸を弾いたのだ。

 

「邪魔を…するなっ!!」

 

ユラがボタンを押すと同時にメガメタルは振り向き、右マニュピレーターの掌から何十発もの光弾を連続して発射させた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

閉鎖的空間に散らばる光弾の着弾。激しい爆発、崩れる資材、阿鼻叫喚。倒れた私兵とメニーの間をすり抜け、テグサーチームとラントムチーム、そしてディーンが外に出てしまったメガメタルの後を追った。

 

「ま、待て!!これ以上は行かせないっ!!」

 

メガメタルに追いつこうとテグサー2は先陣を切って走る。それでも間に合わず、メガメタルは高級車の殿に追いついてしまった。

 

「受けてみろ、我らの民の天誅を…!!」

 

メガメタルは力をこめてマニュピレーターを振り下ろす。その腕の前に間一髪、フォーチェイサーに乗って走ってきたテグサー4が立ち塞がった。

 

「やらせないっ!!」

 

テグサー4はロッドから光線を連射してメガメタルを怯ませる。その隙を狙ってテグサー1、2は飛び上がり、六脚を足場にして各々右、左腕に喰らいついた。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー2は風竜剣を槍に変形させてマニュピレーターの関節部に突き刺す。貫通はしたものの、メガメタルの腕部駆動は止まる事はなかった。

 

「く、くぉのののの…」

 

メガメタルの抵抗を避けながら攻撃の手を緩めないテグサー2。一方でテグサー1は六脚の上で器用に踏ん張り、両手でマニュピレーターを強く握りしめていた。

 

「行くぞ、うぉぉぉぉぉっ!!」

 

テグサー1は膝蹴りでへし折ろうとした。だが折れる事はなかった。

 

「な、なんでだ…!?コイツのパワーなら折れる筈なのに…!?力が…入らない!?」

 

最も正確に言えば相手の強度が堅牢なのが原因ではなく、テグサー1のパワーダウンが原因であった。経験からそう感じられるのだ。

 

「馬鹿な…整備もバッチリだった筈…一体どうして…!?」

 

テグサー1の装着者であるトウマが悩むと同時に、彼の脳内に悲しき思い出がフラッシュバックした。

 

(な、なんだ…!?)

 

辛い想いの幕開けに映りだしたのは未来島でのジン・ガイア人の襲撃であった。次々と喰らいつくされる人々。積み重なる死屍累々の人々とおびただしい量の血液。その次は未来島脱出後の様子。周りの哀れむ視線に囲まれるだけで、誰からも守られず孤独に生きる幼少期。ここで映る涙目の『少女』に、トウマはハッと気が付いた。

 

(これは…俺じゃない!!俺の記憶じゃない!!じゃあ一体…!?)

 

(まさか、この『記憶』は…誰かの強く悲しい『想い』が…テグサー1の力を弱めているのか!?)

 

「邪魔よっ!!」

 

テグサー1の隙を狙って、メガメタルは両腕を振り回す。

 

「うわぁっ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

力負けし、吹き飛ばされるテグサー1、2。彼らに代わって態勢を立て直したメニー、私兵が一斉に立ち向かった。

 

「ちょ、ちょっとどうしたのよトウマ!!あんな細い腕なんかに負けて!!」

 

倒れたテグサー1に、橋爪が駆け寄った。

 

「わ、わからない…ただ、女の子の悲しい想いがテグサー1を弱らせて…」

 

「な、なに訳わかんない事言ってんのよ!!も~、こんな時に飛田はどこ行ったのかしら…」

 

同じ頃、メガメタルは護衛の戦士と引き続き激しい戦いを繰り広げていた。

 

「つあっ!!」

 

先陣を切るテグサー3の斬撃。メガメタルの脚に傷を負わせたが直後、反撃の蹴りで近くの壁までめり込むまでに吹き飛ばされた。

 

「くっ、ならば我が社のレーザーガンで…!!」

 

間髪入れず、A.G.Corporationのロゴが入ったメタリックかつ細身の装着型兵器『メタライザー』を装備した私兵達は銀色の大型銃を構えて一斉に連射。しかし、一直線に飛んだレーザーはメガメタルがとっさに構えた全身を覆うエネルギーバリアで全て跳ね返され、反対に大打撃を受ける事となった。

 

「ま、まずいわね…!!このままじゃあ、死人が出るわ…!!」

 

橋爪が爪を噛んで焦ったその時、二人の人間、嵯峨山と杉元が彼の元へとやって来た。

 

「橋爪専務…!!」

 

「おお、嵯峨山さん…もしかしてその手にあるのは」

 

「えぇ、今なら実戦でのデータを得る事が可能だと思いまして…」

 

嵯峨山がジュラルミンケースに入れて持ち出したのはJSAの装置であった。

 

「これならメガメタルの搭乗者の動きを止められる筈です。なにしろ計算では分厚い島の隔壁も貫通するんですから」

 

「よ、よし…それなら。あっ、でもそうなるとディーンが…」

 

橋爪はディーンを見た。彼は怪我を負った兵士を庇いつつ、メガメタルが放つ光弾を青竜刀でかろうじて受け止めている真っ最中であった。

 

「…俺の事は気にするなっ!!別に死ぬわけじゃない、これでこの戦いの決着が付くなら多少の体調不良など安い物だっ!!」

 

「わ、わかったわ!!嵯峨山さんお願いします。トウマ、穂乃花!!この装置の作動中、護衛をお願い!!」

 

橋爪の指示を受けた嵯峨山はノートパソコンで地面に設置したJSAを起動させ、テグサー1、2は防衛の姿勢に入る。

 

『ユラ!!なにか装置を動かすようだ!!破壊しろっ!!』

 

その様子を見逃さなかったユラの男子仲間は物陰からの通信で真っ先に彼女に報告。ユラもモニター越しにそれを確認した。

 

「了解。そんな装置…壊してやるっ!!」

 

メガメタルは両腕、四脚を振り回して足元の雑兵を追い払うと、JSAに狙いを定めて一気に詰め寄った。

 

六脚の激しく、忙しない足音が迫る。

 

「「ひ、ひぇぇ…!!」」

 

怯える嵯峨山と橋爪。

 

「「させるかっ!!」」

 

テグサー1、2がメガメタルの背後から脚を掴んで踏ん張った。

 

「くっ、離せっ!!」

 

メガメタルは二人を振り払おうと一瞬、真下に注意を傾けた。時間にして僅か二秒。だがそれが逆転への糸口を切り開かせた。

 

「今だっ!!JSA、起動します!!」

 

嵯峨山がエンターキーを叩き込むと同時に、非戦闘要員三人はその場から急いで引き下がった。

 

ヴヴヴヴ…バシュウゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

JSAは側面の起動ランプが点滅すると同時に本体を震わせ、内部の電磁波を一気に放出させた。青白い無数の電撃が拡散して飛ぶ。それは壁をものともせずに空間中に、広範囲に渡った。

 

「ぐっ、眩しっ!!」

 

激しい閃光がテグサー1を包んだが、それ以上の効果は人間の身体に影響がなく、彼よりJSAから離れたディーンが苦しそうに膝を地に着けた。

 

「ぐぅっ、これがJSAの威力…敵として喰らっていたら…!!」

 

そう言うと、硬質の変身体はまるで高熱を浴びたアイスのようにドロリと溶け、その中から元の人間の姿が現れた。相当な苦しさなのだろう。顔色は青ざめ、いつもの凛々しくはつらつとした瞳は虚ろにになっており、過呼吸気味で立ち膝のままでいるのがやっとの状態であった。

 

「だ、大丈夫かディーン!?」

 

仲間の異常な変わりように、不安を感じたテグサー3が声をかけた。

 

「だ、大丈夫…それより、今がチャンスだろう」

 

「はっ、そうだ…トウマ、穂乃花!!一気に攻めろっ!!」

 

「「おおっ!!」」

 

エリートのディーンがこの状態ではメガメタルの搭乗者もただでは済んでいないだろう。今までメガメタルを抑えていたテグサー1、2は一気に反撃に移る。

 

「悪く思うな…動けない今、ケリをつけるっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

二人はコクピット目掛けて一気に飛ぶ。それを皮切りに、待機していた私兵達、メニーも一気に突撃した。

 

『グゥォォォォォォォォォッ!!』

 

しかし、メガメタルは速攻で起動、飛んできたテグサーマンをマニュピレーターで払いのけ、すぐさま掌部分を迫る兵士に狙いを定めて光弾で一気に掃射するのであった。

 

「あ、あうわぁぁぁっ!!」

 

「ぎゃああっ!!」

 

再び巻き起こる阿鼻叫喚。次々と倒れる兵士達。流れ弾で一部が崩れる工場。燃える周囲の木々。この時、暴虐の限りを尽くすメガメタルを前にディーンはある事に気がつく。

 

「あの技術、性能からジン・ガイアの物かと思ったが…」

 

「間違いない…操作してるのは…人間だっ!!」

 

彼の叫びと共に降り始めた雨。メガメタル頭部を伝った雨は両目のカメラ・アイへと流れ、地面へとこぼれ落ちるのであった。

 




どうも皆さん!!

決戦を前に、どちらの勢力も大きく動き出し始めました!!

果たして、ユラ達の目的とは…!?

それはそうと今回は編集、修正にかなりの時間が掛かりました(4時間)。

見直すって大変ですね。

これからもあまり投稿の頻度を上げられないかもしれませんがよろしくお願いします!!

ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!!

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