・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
18-1
「なんだと…!?ディーン、それは本当か!?」
降りしきる雨の中で、テグサー1はディーンにそう尋ねる。
「そうだ…使われている材質の一部はジン・ガイア帝国の物を使っているが、パイロットは人間だ…!!」
ディーンは、よろめきながらもそう答える。
「ふっふっふ、その通りよ、ジン・ガイア帝国の化け物!!私は正真正銘の人間よっ!!」
そして、二人の会話を耳にしたユラはスピーカーから、どこか得意げに答えた。背後の山に、雷が落ちるのと同時であった。
「な、何故だ…?君は人間だろう。同じ人を襲ってなんになるって言うんだ…」
疑問を感じたディーンは、近寄ったテグサー2の肩を借りて聞き始める。対して、ユラは操縦桿を強めに倒してメガメタルを操作。
「なんになる…?決まってるじゃない、天誅を下すためよっ!!」
停車したままの高級車達を指差すようにした。
「私は東田高等専門学校の生徒の一人、堀田ユラ!!機械科の仲間と共にここに来た…!!そう、未来島の生き残りとしてね…!!」
「未来島だと…!?お前もまた俺と同じ…!?」
スピーカーから流れるユラの犯行声明に、テグサー1は驚きを隠せなかった。
「そうよ、私はあの島で生き延びた…父の犠牲によってね!!」
「島での襲撃から解放された私は故郷の母と二人で暮らす事となった…それからは母は身一つで身を粉にして働き、私は母の願い、父の果たせなかった夢である機械工学で世界を救おうと通学し頑張った…でも、それでも現実は!!」
「…元々病弱ながらも懸命に働く母は一昨年、病魔に倒れた。そんな私達に貧しさは容赦なく突き刺さった。帝国との戦いと金銭面が原因で満足に入院する事も、薬も大して与えられず…そんな時、苦しむ母は死の直前まで私に謝っていた…『なにもしてあげられずごめんなさい…お父さんが生きていればこうはならなかったのに』…と」
「それなら尚更、何故だっ!?命の重さを、襲われる恐怖をお前は知っている筈だ」
「何故かって…?あなた、現実を見て、そんな事言えるの!?十年経っても解決の糸口を見出だせないこの判断の遅さに!?」
テグサー1の問い掛けに、ユラはメガメタルのマニュピレーターで指差す。
「母が死んだ時、私は感じた!!もし十年前、私達人間側で君臨する、ここで群がる各界のトップが救助に手をこまねいていなければ、父が死なず…誰からの助けもなく母が苦しんで無念の中で死ぬ事はなかったんじゃなかった、と!!」
「十年前から相変わらず人々は私達家族と同じく蹂躙され、政府、各企業のトップはそれを傍観している日々…挙げ句の果てには、最近じゃ批判の目を反らそうとアイドルを顎で使って偶像崇拝!!大衆への一致団結の強制!!権力の誇示!!ふざけるな!!」
「私は色々な媒体で苦しむ人々を知っている。皆口を揃えて言うよ。所詮、力ある権力者グループは私達みたいな個人の悲鳴は蔑ろにして同調圧力で潰し、見て見ぬ振りをして行くんだ…と。私はそれを、絶対に許さない!!そして!!この意思は絶対に負けないっ!!必ずこの天誅を果たしてみせるっ!!」
気がつけば、周囲の私兵、メニーは構えていた銃を下ろしていた。彼らにメガメタルが迫る。その前に、ディーンがよろめきながら割って入った。
「ま、待て!!そのロボットの材料はジン・ガイア帝国の技術によって作られた物…!!君は、忌み嫌う相手の技術を使ってでもその想いを遂行する気か!?」
「ふん、このメガメタル自体は私達…機械科の有志によって設計した物。それに、資材は学校の近くに落ちてあったのよ。使わない手は、ないでしょう?」
「君は目的の為なら、手段はなにをしてもいいと言うのか!?憎むべき相手の物を使ってでも、か!?」
「うるさいわっ!!私は、私の想いを、世界の平和と復讐心を見てくれるのならどんな相手でも構わないっ!!それであぐらをかいた連中に活を入れられるならばっ!!」
「や、やめろっ!!君は帝国に利用されているっ!!こんな事をしても、奴らのいいようにしか動かされていないんだぞ!!」
ユラはそれ以上耳を傾ける事はなかった。四脚を交互に操作し前進させる。狙うのは未だに工場の近くで足止めを食らう権力者グループの車であった。
「な、なんだ、コレは!?」
車から顔を出す大企業の会長である白人の中年男性は目の前に立ち塞がる半透明のバリアーを見てそう叫んだ。工場から街まで抜ける道は二つある。しかし、それらは全て草原に設置した小さな機械から発生した電磁バリアーによって阻まれていたのであった。
「なんとかしたまえっ!!」
「誰か、解除方法を知る物はいないのか!?」
各界のトップ、国内外問わず政治家は一斉に叫ぶ。運転席に乗り込んでクラクションを鳴らす者までいた。しかし、どれだけ怒鳴り、文句を垂れ流しても現状は一切変わる事はなかった。
「ふっふっふ…今見せてあげるわ…ただただ声がデカいだけの肥えた連中に、私達民衆がどれだけ苦しめられているのかを、ねぇっ!!」
ユラは操縦桿を前に倒して走らせる。その突進は体勢が崩れたテグサー3以下、兵士達に止める術はなかった。だがその時、一人の戦士がメガメタルの脚にしがみつき足を踏ん張って止めようとしていた。思っている速度が出ず、異変を感じたユラがモニターを確認すると、原因はテグサー1の踏ん張りによる物であった。
「邪魔よっ!!」
メガメタルを操作して、帰宅後にへばりつく子犬を払うように脚を振るわせる。しかしテグサー1は両手で掴んで離さない。苛立ちを覚えたユラは工場の社屋部分上階に向けて光弾を放った。
「な、なにっ!!」
着弾し爆発、一部が崩れた社屋にテグサー1は一瞬そちらに注意を向けた。その隙を狙って、メガメタルはもう一本の脚でテグサー1を蹴り、邪魔者を排除した。
「くっ…!!」
倒れたテグサー1はすぐさま起き上がろうとした。それより早く、メガメタルの足が彼の胸部を容赦なく踏み潰した。
「ぐはぁぁぁっ!!」
胸部装甲は脆いプラスチックのようにひび割れ、衝撃は真下の人体にまで達した。
「ぐぅぅぅぅっ!!」
呻き声をあげながら、テグサー1はその足をどかそうと必死にフックで殴りつける。しかし、巨体の足はそうそう動く事はなかった。パワーと重量に、差がありすぎたのだ。
ミシ…ミシ…
軋む音が周囲に響く。それはテグサー1の装甲が砕ける音か、それともトウマの骨の音か。どちらともわからずとも彼の命が危ういのは誰の耳からでも明らかであった。
「や、やめてーっ!!」
テグサー2の悲鳴、突撃と共に仲間達が一斉に突っ込む。だが、急遽メガメタルが張ったバリアーが彼らを弾いて、吹き飛ばした。
「くっ、こんなバリアが…!!」
テグサー3が刀を構えてバリアーに斬りかかる。一撃に何度も力と魂を込めた。それでもバリアーは無駄な努力と嘲笑うかのように波紋のように僅かに揺れるだけであった。
「あーっはっはっは!!いいねぇ、保身しか考えない権力者の番犬を駆除するのはっ!!」
バリアと併せて高笑いするユラ。
「ぐぇぇぇ…がっ…がっ!!」
その足元で息を詰まらせるテグサー1。降りしきる雨は彼らに平等に降りかかるのであった。
18-2
テグサー1がメガメタルを止める直前、その一方で飛田は社屋の廊下を全力疾走していた。
「はぁ…はぁ…まさかこんな所までジン・ガイア帝国が…い、急がな、きゃ…」
息を切らして走る彼であったが、その足は突如として止まった。体力が尽きた訳ではない。目の前にいた二人…モーラと彼女が抱えるレミーの姿が信じられずに立ちすくんだからであった。
「も、モーラ、さん…!?社長を抱えてなにしてるんです…!?」
モーラはばつが悪そうに顔を背けたが、すぐさま表情と顔色を制御していつもの笑顔へと戻った。
「わ、私はそこで倒れていた社長さんを助けて避難させようとしていただけよ…」
「嘘だ…ここは三階で避難経路ではないし、緊急時用の救護班もいない…あるのは裏の、僕達が使っている第二駐車場だけです、そんな所に社長を連れてどうするつもりですっ!?」
「わ、私の事よりも飛田くん?アナタ、現場に行かなくていいの?下の駐車場で激しい戦闘が行われているみたいだけど…」
「誤魔化さないで下さいっ!!なにか、なにか事情があるんでしょう!?こんな時に連れていくなんて…まさか、社長の身に秘密が、あるんですか…!?」
問い詰められるモーラ。ここまで言われればもはや誤魔化しは効かない。それを察した彼女はふぅ、と一息。レミーを床に置いて飛田の元へと近寄った。
「わかったわ飛田くん、正直に言うわ。私が求めたのはコレの為よ…」
「そ、それは…!?」
モーラが懐から取り出したのはUSB。トウマ達が未来島で持ち帰った、あのUSBであった。
「どうして…モーラさんがそれを持って行くんですっ!?それに、名前はあるけど社長となんの関係が!?」
「やっぱり、この子の名前があるのね…簡単に言うわ。このUSBには十年前に誕生したジン・ガイア人の発生原因の記録、そして、この社長令嬢の体にその証拠があるのよ…」
「な、なんですって…!?それじゃあ僕とトウマさんのお父さんはそれを暴こうと…!?」
「そうよ、私はGRNの一員としてまだ在籍を残している…あの時、GooGooZのコンサートに協力する形でアナタ達に近付いたのは、表向きでは親交を深めて旋風重工に潜入して秘密を探る為だったの…ごめんなさいね、こんな形でアナタ達を利用して」
「そ、その事情はわかりました。でも、どうしてここにその証拠があるって思ったんですか?」
「私の組織はジン・ガイアの発生源、始祖となる物を調べてきた…その結果は…一切不明だった。不自然だと思わない?ルーツが自然にないのに生命体が急に生まれるなんて?」
モーラの話に、飛田は黙って頷いた。
「そこで私はつてを頼ってラントム社のチームの一員となって潜入、GooGooZの一件で信頼を得て、晴れてここ…旋風重工と日本政府が主体となって隠した真実であろう島の貴重な記録を記載したであろうUSBを取りに来た…そして、偶然にもこの子と鉢合わせして捕獲したって訳…」
「…それにしても、予めこの会社にスパイを潜り込ませて正解だったかも…もしかしたらこの機器、処分されていた可能性は十分にあるしね?」
「…そんな真実、そのUSBにあるかわからないじゃないですか?社長の名前だけじゃなんとも…」
「結論から言えば、この子は…いえ、この子の体は正確には純粋な人間じゃない、ジン・ガイアの細胞が混じった生物の可能性があるからよ」
「…ッ!?」
飛田はなにも言えなかった。というよりも、モーラの突拍子もない話に納得するのが容易ではなかったからだ。
「そ、そんなのどうしたらわかるんですか…!?」
「彼女、病気だった母親から産まれて危険な状態だったんでしょう?でも、どうやってそこから回復したのか詳細は不明。当時、最新の医療なんかも使える大企業でも生命を生きながらえさせるのは不可能な状態だったのにおかしいと思わない?」
「た、確かに…」
「そこで私の組織は考えた。もしかしたあの島に資金提供していた旋風重工と、日本政府はなにかを計画していたんじゃないかと、そして出た結論は…!!」
モーラがそこまで言いかけたその時、彼女の背後で爆発が起こった。廊下を包む程だ。
「あ、危ないっ!!」
飛田は爆風からモーラを守ろうと身を呈して庇った。爆風と共に迫るガラス、コンクリート破片。それらが彼の頭を直撃。飛田はその場ですぐに倒れてしまった。
「と、飛田くん!!大丈夫!?」
モーラは飛田の口元に耳を近付け胸を見て、正常に呼吸をしているのを確認して一安心した。
「よ、よかった…この子は無事みたいね…でも」
煙が充満する中、モーラの視線の先。思わず離してしまったレミーがいる場所の間の廊下は爆発によって完全に寸断されていた。モーラは視線を外へ向ける。そこではテグサーチームとラントムチーム、そして私兵とメニーが巨大兵器を相手に戦闘を繰り広げていた。
「しょうがないわね…っと」
モーラは意を決して気絶した飛田を肩に抱えてその場から去ろうと歩みを進めた。
「とりあえず、飛田くんは連れていくか…」
「…まぁ、あのレミーって子は大丈夫でしょう。恐らく、私の予想が正しければ、あの子は、もう…」
そう言いながらモーラは後にする。その後ろで倒れ、置き去りとなったレミー。彼女の周りでは破片が散乱、天井からもパラパラと崩れていた。しかし、それらは全て彼女の身体に落ちそうになる瞬間、避けるように散らばり、一つでも降りかかり、身体を汚すことはなかった。
18-3
気がつけばJSAが機能を停止し、嵯峨山が機器を持ち去った頃、踏まれ続けていたテグサー1はメガメタルの右手によって掴まれ、まるで使い古した人形の様にぐったりとしていた。
「あぁー、はっはっはっは!!所詮、集団の輪、それも権力者の操り人形なんてこんなものかねぇっ!?」
「う、うぅ…」
今日まで自身を守ってくれた頑強な装甲を潰され、テグサー1は力なく呻くだけであった。
「ぐ、うぅ…」
バリアーに阻まれ、更には死者は出ていないものの、怪我人続出で残り戦力が十数人の僅かな中で、防衛軍メニー部隊隊長の権藤が、救えない状況に歯痒い思いをしていた。そんな彼らを前に、ユラは静かにほくそ笑む。
「さて、私はこんな奴に用はない。そうだ、そこのメニーの人っ!!このテグサー1を助けたければ、ここに来ている日本政府の防衛軍を管理する大臣やその他諸々が来ているでしょう?ちょっと聞きたい事があるから、呼んで貰えるかしら?そうすればコイツを離してもあげるけど?」
「…今、ここには来ていない。先程いた杉元司令しか…」
咄嗟に出た、権藤の回答。
「嘘をつけぇっ!!」
ユラは怒りと共に、メガメタルのマニュピレーターを狭める。
「ぐぅあああっ!!」
強まる締め付けに、テグサー1は背筋をピンと伸ばして絶望の悲鳴をあげた。その悲惨な姿にテグサー2はおもわずその場に俯き、膝から崩れ落ちた。テグサー3は彼女を窘める事はせず、その場に立ち尽くすばかりであった。
「ここに来てんのは調べてわかってんのよっ!!高専生を舐めんじゃあないわよっ!!いいか、権力に巣くい、私達弱者を蔑ろにする奴らに復讐するまで、私達の悲願は達成されないんだからねっ!!」
怒りが収まらないユラはテグサー1を乱暴に振る。だだをこねる幼子の如くだ。
「…私が来たのは、ジン・ガイア人と違ってただ蹂躙に来た訳じゃない。ただ、直接この国のトップに聞きたい事があるだけなの。早くしてくれる?じゃないと、こいつを握り潰すかも…」
「待て、待ってくれっ!!」
その時、一人の中年紳士がメガメタルの前に飛び出した。
「「しゃ、社長っ!?」」
テグサー3と橋爪が同時に叫んだ通り、紳士は海斗であった。突然の権力者の登場にユラは少しだけ戸惑ったがすぐさま気を取り直した。
「フン、まさかの世界的な大物の登場とは。まぁいいわ、あなたにも用はあったし」
「…私は、今君が握っている者の上司だ。駆けつけるのは当然だよ。私は大臣の器ではないが、彼らとの付き合いはある。だからせめて、私が代わって聞こうと来たんだ」
「そう、なら言わせて貰うわ。十年前のあなたは随分と政府と結託して頑張っていたみたいだしね。まず一つ、どうして十年前、島の救助にすぐに来てくれなかったの?来たのは三日後でしょう?」
「…あれは、相手が未知の生命体故にどう対処していいか不明だった。だから、事細かに話し合ってから出動する必要があった。私はそう聞いている」
「嘘、ね。島で非常事態が発生したマニュアルが十年前既にあった筈。本当は大事じゃないとたかをくくっていたんじゃないの?」
「…」
海斗はメガメタルを見上げつつ閉口する。そんなしかめっ面を前に、ユラは物申し続ける。
「それともう一つ言いたい事が。未来島は国内外政府、企業の中であなたの会社…旋風重工も大いに関わっていた。私の父はそんなあなたの会社の傘下で身を粉にしてしていたわ」
「そ、そうだったのか。その頃の私は父から仕事を受け継いだばかりだった…勿論プロジェクトは知っていたが、君のお父さんと関わっていたとはいやはやありがたい話で…」
「話を逸らすなっ!!お父さんはねぇ、アンタらの元で働いて不幸だった!!知ってる!?旋風重工はねぇ、優秀な研究者には高待遇だったみたいだけど、そうでない人には随分とぞんざいな扱いだったそうじゃない!?私知ってんだからね、生き残った人達で構成されたネット掲示板にはそうかかれていたんだから!!」
「事実、私のお父さんは研究だけじゃなく、本来の業務じゃない運営管理まで押し付けられ、労働時間は圧倒的に嵩み、毎日疲弊しきった顔で帰ってきたのよ!?しかも平日休日問わず見下す様な目で私達家族を見やがって!!これが証拠と呼ばずしてなんとするっての!?許せる筈がないでしょう!?」
「そ、そんな…そんなきっかけだけでこんな事を…」
「こ、ん、な事ォッ!?」
ユラは力いっぱい操縦桿を動かし、空いたマニュピレーターを工場に向けると、光弾を何発もお見舞いした。爆発し、窓ガラスや壁が崩壊する工場内。立ち込める煙を背に、メガメタルの熱量で冷めやらぬマニュピレーターを海斗に向けた。
「そうね、あなた方みたいな大企業からしたら大した事じゃないかもねっ!!でもねぇ、私達微々たる家族からしたら重大だったの!!父も母も精神的に弱まり、その上会社側からはいつか切られてポイ捨てされるんじゃないかと怯える毎日…それでもなんとか家族一丸で頑張ろうとした!!でも、努力の結果が私以外皆殺しよっ!!」
「あなたにねぇ、そんな私の、お母さんの気持ちがわかるっ!?島から帰ってきて、続く苛烈な戦いを理由に誰からも守られず、女二人だけで自身を助けなければならないで、しかもまたもや生き地獄の日々…わかるってぇの!?お母さんがどんな思いで十年間精神面でも、生活面でも苦しんで死んだかをっ!!」
「や、やめろ…だからって、お前はこんな事しても気持ちは晴れないぞ…」
話に割り込むテグサー1。
「アンタは黙ってろっ!!」
怒り心頭のユラはメガメタルを操縦し、マニュピレーターの力を強める。
「ぐぅぅぅ…あぁぁぁっ!!」
テグサー1は再度苦悶の声を出す。
「や、やめろ!!いや、やめてくれっ!!」
目の前の暴挙に、海斗は『待った』をかけた。
「…確かに、戦いは中々終わらず、苦しい毎日が続いていたかもしれない。でも、君を想っている人は必ずいる。助けたいって想っている人はいるんだ。先日、見ただろう?GooGooZのコンサートを。アレは正に君達のような人を救う為に開かれた物だ。そこに嘘偽りはない。信じてほしい、歌で繋がる絆があるって…」
「うっさいっ!!なにが絆よっ!!想いよっ!!そんな不確かな物で、言霊で騙して、私の、いや、私達の心が、苦しみが満たされると思っているの!?むしろ傷つくわっ!!アンタら権力者のどや顔が、してやったぞって顔が浮かんでなぁっ!!」
海斗の言葉を妨げ、頭のなにかが弾けた様に叫ぶユラ。その表情は殺戮、破壊欲に塗れ、狂気に歪んだ物、口角の上げ過ぎで笑顔にも見えた。
「…さっきも言ったけど、私はまだ学生。当然社会なんか知らない。でもわかるぅっ!!私達を指導する教師はいつも言っていた。絆を尊重して、皆と手を繋いで歩もうって!!特にGooGooZの一件からよく言ってたわ!!つまりこういう事でしょっ!!」
「『どれだけ苦しくても、ぶっ倒れても、頑張って、無理して立ち上がって、空だけ見て、文句言わずにお行儀よくしてろ』って言いたいんでしょう!!そういえばお父さんも随分と言われてたっけ!?時間も体力もなくても頑張ろう、それが君の仕事だって、ねぇ!?そんなねぇ、机上の希望論がねぇ、まかり通るなんて大企業として恥ずかしくないの!?こっちは限界まで頑張ってんだって!!これ以上、どうしろと!?」
「それは君の思い違いだっ!!先生方は今、こんな状況だから、力を合わせて頑張ろうと言いたいんだと思う。しかし、それだけではどうにもならない事は確かに受け止めた。よし、私が掛け合ってなんとかしてあげよう…例えば、資金提供等による援助なんてどうだ?」
「なにぃ?」
「決して悪い話ではないだろう?君達の想いを知れば、協力してくれる人は必ずいると思うんだ!!」
「…」
前向きな持ち掛けを前に、ユラは操縦桿を握る力を弱めた。口角も、僅かに下がりつつあった。すると、海斗は両腕をメガメタルの胴体に向けて上げ、微笑みを見せて一歩、また一歩と近付いた。
「さ、そんな所から下りて来るんだ。女の子がそんな物振り回すんじゃ…」
だが、その時。
「ユラッ!!そいつの話を聞くんじゃないっ!!そいつは嘘を言っているっ!!」
ユラと海斗の間に割り込む男の声。見ると、ユラと共に来ていた仲間二人が物陰で、スーツに身を包んだ老人達を縛り上げて一箇所にまとめていた。
「ミヤ、その年寄りは?まさかそいつら…」
ユラに問われた仲間の一人、ミヤと呼ばれた男は声を張り上げた。
「あぁ、コイツらは日本を動かしている政府の役人、大臣共だ。防衛軍のもいる。その旋風重工の社長は囮になって時間稼ぎ、逃げ遅れた奴を助けようとしていたんだ。全くきたねぇ連中だよなぁっ!?おいっ!?」
「ま、待ってくれ…私達は、旋風君と共に君達若者の話を聞こうとしていただけで…」
老人達は思わず反論する。
「黙ってろ!!」
瞬間、ミヤは拳銃を持って、空に向かって引き金を引いた。山中に響く銃声。傍で聞かされた老人達は閉口せざるを得なかった。
「なら、なんでユラの話を聞いて逃げ出そうとした!?随分と多くのガードマンをスケープゴートにしてなっ!!ホントは面倒事から避けたかったんだろ!?」
「ご、誤解だ…」
「もういいっ!!ユラッ!!やれっ!!」
ミヤの合図を見たユラは操縦桿を強く握り締める。
「ふっふっふ…そうか、やっぱりそうか~…」
俯く瞳に涙、唇に笑みを浮かべながら。
「一瞬でも期待した私が馬鹿だった…逃げるなよ」
そして、ユラは、バッと顔を上げた。もはやその顔は、頬や目尻にシワがつく程に大きく歪んでいた。
「絶対に、逃げるなぁっ!!今ここで、のうのうと生きる特権階級に、トドメを刺すっ!!必殺、バリアーパンチィィィィッ!!」
メガメタルの目が光ると、全身を包む半球体のバリアーが右腕に集中。その腕は激しい熱量と共に、海斗の目前まで迫った。その時であった。メガメタルの足元のコンクリートが、ボコッと隆起したのは。
「ドリル・アッパー!!」
雄叫びと共に飛び出したのはテグサー2。その右腕にはドリルハンドを装備していた。
「な!?じ、地面からっ!?」
「うりゃあっ!!」
テグサー2は飛び出た勢いのまま、ドリルハンドをメガメタル右腕の肘部分に食らわせる。超回転するドリルは隙だらけの間接を速攻で貫き、前腕部分を切断した。
ドスン!!
外れた腕は掴んでいたテグサー1を宙で離し、無造作に地面に転がる。
「ぐっ!!…うぅ」
その横に落下するテグサー1。意識がないのか起き上がる気配を見せる事はなかった。
「き、貴様ーっ!!」
ユラはメガメタルの左腕を操作して光弾の発射口をテグサー2に向ける。しかし、瞬発力ではテグサー2の方に軍配が上がる。
「風竜剣・フルバースト!!」
風竜剣から放たれた一撃の光線はメガメタルの顎部分にクリーンヒット。バリアー発生装置である顔面をひび割らせた。同時に、フッと消えるバリアー。衝撃でか、前脚の膝関節部分を地面に着けて前傾姿勢で身動き一つしないメガメタル。権藤はこの機会を見逃さなかった。
「よしっ!!まだ戦闘出来る者は俺に続けっ!!取り押さえるんだっ!!」
「「ハッ!!」」
権藤隊長のメニーに続く部下達。テグサー3、4、ラントムチームもその後に続く。
「まだよ…まだ私の最後の青春は終わってないぃぃぃぃぃっ!!意地汚い大人になるまではぁぁぁっ!!」
だが、メガメタルはユラの叫びと共に再度その目に光を灯す。それと同時に、間接部分をギリギリと言わせて立ち上がらせる。このタフさに最も面食らったのは足元でテグサー1を抱えるテグサー2であった。
「そ、そんなまだ動くなんて!?お願い、もう止めてっ!!これ以上戦っても、ご両親は返っては…」
「うるっさい!!」
テグサー2の説得を無下にし、メガメタルは真ん中の右足で彼女の腹部を蹴り飛ばす。
「ぐふぅっ!!」
テグサー1を庇うように前に出た彼女は激しく吹き飛び、二人揃って工場の壁に激突した。
「ここで私は倒れないっ!!私を包むこのメガメタルは、私と同じ志を持った高専生の想いが詰まった装甲なんだからぁっ!!うぉぉぉぉぉっ!!」
狂った様に暴れ出すメガメタル。そのコクピットではユラは必死の形相、瞳の瞳孔を開かせて操縦桿を振り回す。
「く、追い込まれた奴はなにするかわかったものじゃない、か…」
先陣を切ってメガメタルを牽制するテグサー3。その一方で、気を取り直した人間態のディーンがユラの仲間二人を前に立ち塞がっていた。
「く、来るな、撃つぞっ!!お前がまだあの化け物の姿になれないのは知ってるんだ!!」
「どうぞ撃ってみな。その勇気が君にあるのなら」
「うぅ…くそぉっ!!」
ミヤは引き金を引いて発砲。自棄気味に撃ったからか射線が目標からズレ、ディーンは銃弾が通り過ぎると同時に二人の首に腕を回した。
「つぁっ!!」
気合いと共に二人の頭頂部を『ごっつんこ』。たった一撃で、それも同時に気絶させた。
「さて…大丈夫、ですか?皆さん?」
二人を片付けたディーンは捕まっていた政府の要人達の縄を解く。
「は、早く行かないと…!!」
「あ、あわわわわ…」
要人達の殆どはディーンに礼を言う事なく足をバタつかせてその場を去る。そんな中、残った要人の一人はディーンに向けて苦笑気味に笑顔を見せた。
「あ、ありがとう。君はジン・ガイア人でもとりわけ素晴らしい心の持ち主のようだ…その気持ち、大事にしてくれたまえよ、ハッハッハ…!!」
「…」
ディーンの後方から護衛の防衛軍兵士達が駆けつけた。
「大臣、こちらですっ!!」
大臣と呼ばれた要人は「遅いぞっ!!」と悪態をつきながら彼らに守られてその場を後にする。その様子に、ディーンは呟く。
「面白くない…」と。
それと同じくして、テグサー4とキャノン・ダイザーがメガメタルの攻撃によって吹き飛ばされた。
「まだだぁ…まだよぉ…」
メガメタルの全身は斬撃、弾痕だらけでオイルも漏れ出ていたが、それでもユラの意地が機体を動かしていた。
「なんというしぶとさだ…奴の気迫が、機体に力となって憑依したかのようだ…」
テグサー3がそう呟くと同時にメガメタルの光弾が彼女に迫り来る。テグサー3はそれを刀で斬り払った。その視線の先、メガメタルの全身は負の感情の放出によってか陽炎のようにゆらめき、歪んで見えた。
「私は…いや、私達はこの十年耐え続けた…失った物も、人もいる…それなのに、与えられたのは偶像の励ましなんてふわふわした形のないもの…だから私は立った!!逃げるだけしか能のない連中に天誅を下すためっ!!それを推してくれた同級生もいるっ!!だから…」
「私は負ける訳にはっ!!いかないんだぁぁぁぁぁぁ!!」
お互い疲弊した中でも、ユラの士気だけは下がっていなかった。それに威圧されてか、メデューザは一瞬気を取られてメガメタルの右前足の蹴りが彼女の体にクリーンヒットした。
「ぐぅっ!!…うぅ」
低いうめき声をあげ、そのまま気を失うメデューザ。これで両チームで残ったのはテグサー3だけとなってしまった。
「くぉぉぉぉぉっ!!」
テグサー3は自分が最後の砦だと自覚し、刀を握り直してメガメタルに挑む。光弾で破損するテグサー3のショルダーアーマー。斬撃で割れるメガメタルのパーツ。その割れ目から漏れ出たオイルは大粒の雨と共に地面へと流れ、テグサー2と共に折り重なったテグサー1の足元に流れ着いた。
「う、うぅ…」
テグサー1は上半身を起こして仲間の奮闘を目の当たりにする。
(りょ、涼…!!やばいぞ、助けなければ…!!)
テグサー1は両足、両腕に力を込める。しかし、変身者の意思とは裏腹にテグサー1自体の力が弱く、全身を上手く起き上がらせる事が困難であった。
(な、なんでだ…!?まだ、補助システムが作動している筈…まだ、戦える筈なのに…まるで、テグサー1自体に意思があって、邪魔しているみたいだぜ…)
突然の事態に、テグサー1、トウマは疑問を抱く。すると。
(…そうだ、君の力をこんな時に使うべきではない)
一人の『声』が割り込んできた。
(ッ!?誰だっ!?)
テグサー1は後ろを振り向くが、いるとすれば傍らの倒れたままであるテグサー2。男性の声らしい者の姿はどこにもなかった。
(この声は、いつか宇宙を知っているとか言ってた声…テメェか!!さっきから俺の動きを止めてるのはっ!!)
(私はテグサロイドの中にいる。目的は君自身を救う為に…)
(救いたいって思うんなら、邪魔すんじゃあ、ねぇっ!!余計なお世話だっ!!どけっ!!)
足を引っ張る第三者に苛立つ変身者、トウマ。その第三者は、彼の怒りにも関わらず疑問を投げかけた。
(…君はなにも感じないのか。機械に乗る女に乗る悲しみを、十年の怒りを)
(なんだと!?)
(君の使うテグサーマン…TE粒子は人々の意思、想いを吸収して、それを力にしている。だが反対に、悲しみといった負の感情まで吸い取ればそれに反応して力が弱まる。それだけ彼女と、彼女を取り巻く者達の悲しみや絶望は深い、暗い物だ。改めて聞こう。君は…君と同じ境遇の者の意思を知ってなんと思う?)
(ユラと同じ!?確かに、未来島での体験は同じだ…だが…)
そこから先は押し黙ったトウマ。第三者は話を続けた。
(彼女の言う通り、君は今、大衆の『正義』に踊らされ弱者の『正義』を見ず、上に立つだけの存在にいいように扱われている。それでいいのか?空虚だと思わないか?君の力は今、自分の為に解放すべきだ)
(そう、自分の本心と向き合い、行動するんだ。君の力は誰の為にある?まずは自身の為ではないか?)
「だ、だからって…俺になんて答えろって言うんだ!?いいから力を貸せって言っても納得しないんだろお前は!?」
第三者の声による問い掛けにトウマはおもわず声に出して叫び、震える手を必死に動かして腰部のホルスターからハンドシューターを抜いた。
(…君は選ばれた。我々の、この宇宙に広がる無限の意思に。君の父が粒子の中の我々を見つけて、こちらの『世界』に来て一つになってから、な)
「父さんが!?お前の、TE粒子の中にいるのか!?まさか、お前の正体は亡くなった人の想いが集った者の集合体だというのか!?」
(そうだ。さぁトウマ、子孫である君が、強い意思と肉体がある者がここで潰える訳にはいかない。戦いを止めてその意思と共に無限の宇宙へ来てくれ…そうすれば、君は新たなる力、ステージへと…)
「そうか、父がお前の元にいるのか…だが、断るっ!!」
頭を振り、テグサー1は拳銃を構える。メガメタルの、露出した動力部分に狙いをつけて。
「俺は、自分の意思で皆を守りたいって思っている…!!そこに嘘や偽りはねぇっ!!突然出てきて訳のわからない奴の仲間になるより、今いる人の助けになりたいっ!!争いを止めたいっ!!」
「少なくとも、お前の元にいる父さんなら、それを願う筈だぁッ!!」
テグサー1は引き金を引いて発砲した。飛び出した弾丸は暴れるメガメタルの左前の脚部関節を貫通、そして、脚の中を貫き、通って、下半身の中心にある動力部に着弾した。
「あ、あぁっ!?」
心臓とも言える場所を撃ち抜かれ、ガクンと膝を着いたメガメタル。大きく揺れたコクピット内で、ユラは頭を激しくぶつけた。
「くそっ!!動け、動けよぉっ!!今ここで動かなかったら私、私は…!!」
怒りの形相で激しく操縦桿を動かすユラ。だが、電源自体がお釈迦になった今、コックピットは計器の一つさえ動かなかった。
「はぁっ、はぁっ…」
荒い呼吸と共に操縦桿、壁のスイッチを懸命に押すユラ。するとその時、目の前から自然の光が差し込んできた。コクピットハッチが鈍い音を立てて力任せに開かれたからだ。
「う、うぅ…!?」
逆光に目を凝らすユラ。そこに立っていたのは、テグサー3であった。
「もう終わりだ。こんな戦い…」
テグサー3は終わりを告げる。絶望に涙を流すユラ。いつの間にか、雨は止んでいた。
18-4
戦いが終わり、硝煙が立ち込める中、ユラとその仲間達は権藤率いる防衛軍兵士達の手によって連行される事となった。
「…」
俯きつつ、物憂いしそうに歩くユラ。
「ホラ、さっさと歩け!!」
まるでふてくされてロクに進まない、幼子の様な姿に、権藤はおもわず怒鳴り付ける。その近くで、変身を解除した穂乃花は、ユラの顔を見てショックを受けていた。
「あんな子があのロボットに乗って皆を…私達と同じ位の子があんな事を…」
その横で涼に包帯を巻かれているトウマが呟く。
「俺は最後のあの時、声が聞こえた…」
穂乃花は呟きを耳にして振り向いた。
「声って、この前から言ってた、アレ?」
「ああ、あの声だ。テグサーマンの力はもっと他の事、弱い者の為に、自分の本心に向き合った使い方をしろ、と言っていた…そして、その声の中には俺の父さんがいるらしい…」
「えぇっ、本当!?一体、TE粒子にはどんな秘密があるんだろう…」
「恐らくだが、人、いや、生き物が死んだ後、その想いはどこかに集結するんじゃないかと思う。父さんもその中にいる。それが、TE粒子の、テグサー1の力の秘密なのかもしれないな…」
「死んだ人の想いも背負うって…信じられない。それでトウマは大丈夫なの?」
「あぁ、今の所問題はない。この前の健康診断だって大丈夫だったんだし…早いとこ、飛田にこの現象を解明して欲しいもんだ」
「そうだね。それにしても飛田くんと社長どこ行ったんだろう…今兵士さん達が建物の安全確認で入れないし…」
話し合う二人。その横をユラが通りかかる。すると、突如兵士を押し退けて、トウマの方へと顔を向けた。
「フン!!アンタがトウマかっ!!やっぱりアンタの父親同様、腹立つツラァしてるよなっ!!」
「おい貴様っ!!動くなっ!!」
防衛軍兵士がユラの肩を掴んで連れ戻そうとしたが、それをトウマが制した。
「ま、待ってくれ!!お前、俺の父親の事を知っているのか?」
「知ってるもなにも、忘れる訳ないでしょう!!アンタの父親はよくウチに遊びに来ていたんだからっ!!それも、励ましに来たなんて言ってね!!」
「それがどうしてムカつくと…?」
「まだわかんないの!?アンタの父親は確かに優秀だった。テグサーマンを見ればそれは明らか。だからこそ、旋風重工と政府から随分とちやほやされていたわ。それはいいっ!!でも、そんな彼は更に優越感に浸るが為に落ちこぼれの私達の家に来たって訳よっ!!」
「彼はいつも言っていた…『今は大変かもしれないけど、お互い頑張ろうな』ってね…はぁ~っ!?」
ユラの拳は悔しさで固まる。それと同時に口角も大きく歪んで開いた。
「アンタ、どの立場で物を言ってるの!?どいつもこいつも安定した所から見下して!!アンタに必死でもがく無能の人間の気持ちがわかってたまるかよっ!!偉そうにっ!!」
「う、うぅ…?」
瞬間、トウマの脳内に粒子の力か幼き頃であるユラの過去が映し出される。うだつが上がらない立場故、買い物や公園での散歩の度家族共々周囲の者から嘲笑われる姿。
『おっ、貧乏人が歩いてるぞ』
『いやぁねぇ。ここは私達こそが集まる場所。無能人は来ないで欲しいわ』
その度に、ユラの両親はなにも言えず肩身が狭く苦笑いで歩くだけであった。そんな二人の姿を目の当たりにして、ユラは、常に歯痒い思いをしていた。
「だから私はねぇ、絆だの希望だのなんて言葉が大嫌いっ!!だから私は求めたの、なんにでも征するし使える力をっ!!アンタの父親と同じでねぇっ!!」
気が付けば、現実のユラはトウマの肩を掴んで揺らしていた。
「おい、もう離れろっ!!」
これ以上は危険だと感じた防衛軍兵士はユラをトウマから引き離す。それでもユラは口を閉ざす事はなかった。
「アンタも同じだっ!!力がある、能力があるってだけで偉そうに正義を振りかざして!!でもいずれわかる事を願うわ!!自分の力の力の使い所を間違えていた事を!!私の正しさを!!」
「どいつもこいつも逃げるなよ、自分の正義の行いに、逃げるなよぉぉぉぉぉぉっ!!あーはっはっはっはっは…」
無理矢理引きずられたユラは護送車に力ずくで押し込まれ、扉が閉まると同時に外界から隔たるように笑い声が掻き消された。車が発進し、逃げ出していた高級車とすれ違う頃、茜がポツリと呟いた。
「…要するに、アイツが言いたいのは私達の馴れ合いや祈り、威張って大声で主張する奴だって事か?なんか、そんな風に言われるなんて嫌だな…しかも、それだけの理由で人を襲うなんて、最低だぜ!!」
「いや、アイツの言う事もわかるかもしれない…」
「え、トウマ…?」
横から呟くトウマに、茜は彼を見た。
「…俺はあの島では仲良しの友人との楽しい思い出でいっぱいだった。だからあの島は和気あいあい、幸せに包まれていると思っていた。でも現実は違った。人によっては同じ場所、時代でも不幸せだって思う人もいるんだ…」
「そして、GooGooZコンサート…俺はアレは皆を励ませると誰もが思っていた、でも人によってはただの歌だなんて目に見えない、ただの当事者の自己満足でしかないと感じる人もいるんだな…」
「俺がもし、アイツと同じで不幸な生まれで、テグサーマンを手に入れていたら、俺は解決のめどを立てない連中とあの歌に苛立ち、ユラと同じ事をしていたかもしれない。そうしない確証はない。もしかしたら俺のこの力、正義とやらは大人数が言ってるだけの独りよがりの物なのかもしれないな…」
「トウマ…」
トウマが女子三人にそう話したその時、彼は胸中にドクン、と違和感を感じた。それもただの疲労による動悸ではない。どす黒い、言い知れないなにかが胸の奥でざわついていた。
「な、なんだ…?」
トウマはどす黒いそれがどこからか来ているのを感じ、感じる方向を振り向いた。そこにあったのは廊下が寸断し、半壊したままの工場であった。
「まさか、あそこに…!?」
トウマが何かを察し、工場へと向かって走り出した。
「お、おい君!?まだこの中は危ないんだ。入っては…」
だが、工場手前で防衛軍男性兵士にトウマは止められた。
「頼む、どいてくれっ!!何故だかは言えない。でも、危険が、迫っているんだっ!!」
「そ、そう言われても…うわっ!!」
急を要するトウマは「ごめんっ!!」と一言謝罪しつつ兵士を押し退けて走り抜けた。
「ちょ、ちょっと待って…うわっ!!」
後を追おうとした兵士であったが足がもつれて激しく転倒した。背後でそうなっているとは知らずにトウマは走り去る。迫り来る危機に向かって。
「い、一体なにがあったの…?」
その頃、とっくに目を覚ましたレミーは周囲の惨状を見て怯え、非常階段にてゆっくりと階下へと降りていた。コツ、コツと、床と足が接触する音だけが響く。
「よし、着いた…って、あぁっ!?」
レミーは一階に着くと倒れている海外企業の私兵、それも多くの人々が廊下で溢れかえっているのが目に入った。
「だ、大丈夫!?」
その中で倒れている一人の男性私兵の腹部からはおびただしい量の血液が流れている。レミーは慌てて駆け寄った。
「君は…確か旋風重工の…ここはまだ危ない、早く避難しなさい…」
息も絶え絶えに私兵は非常口が灯る出入り口を指差す。しかし、レミーは逃げようとはしなかった。
「で、でも!!取り合えず手当をしなくちゃ!!どこかに治してくれる人が…」
「いいんだ…俺の事は構わなくて。早く逃げるんだ。まだ危険かもしれない…」
「ま、待って!!今私が助けるから!!」
レミーは思わず患部に手をかざした。すると、私兵の傷が手から降り注ぐ光によって止血、なんと傷までもが完全に塞がれた。
「な、なんだコレは…!?君は一体!?」
私兵は驚きのあまり、勢いよく立ち上がった。
「な!?か、体の調子までも…!?馬鹿な、そんな馬鹿な!?」
私兵は自分自身の体が怪我どころか体力までも完治している事に気がつき、戦慄した表情でレミーを見た。その時の彼女もまた、突然の事で戦慄した表情で自身の手を見つめていた。
「な、なにコレ…!?私の手からなにが出たの…?」
「社長ーっ!!」
レミーが疑問を抱くと同時に、こちらに近付くトウマの呼び声が彼女の耳に届いた。
「と、トウマ!!」
「社長!!よかった…うっ、皆が…」
トウマは倒れている人々を見て呻き声を上げた。レミーは、事情を説明した。
「ここにいる人達、私が来る前から怪我してたの。でも…」
「あ、あぁそうか、お前はなにも知らないのか…実は今、人が」
「ち、違うの!!そこの人見て!!さっきまで血が凄い出てたのに私が手で触ったらすぐに止まったの!!」
「なんだって!?」
トウマは後ろに立っている私兵を見る。そして、健康な彼の姿を見るなり、どうやら事実のようだと理解した。
「そんな馬鹿な…もし本当なら信じられない話だ…」
「ねぇ、トウマ…私って誰なの?」
「え?」
レミーの疑問に、トウマは彼女を見た。
「この前から思ってた…この前のUSBの名前といい、グラビトリーの時のバリアといい、もしかしたら私、ううん、私の体になにか知らない秘密があるんじゃないかって…だっておかしくない!?工場がこんなに壊れてるのに、眠ってた私は傷一つないんだよっ!!」
「しゃ、社長?」
「もしかしたら私、私…!!私が知らない所で皆にこれのせいで迷惑かけてるんじゃないかな!?だとしたら、私…!!」
レミーは怯えた表情で頭を抱える。
「社長っ!!」
だが、すぐさまトウマはその腕を握ってしゃがみ、同じ目線で彼女を見つめた。
「今はそんな事言ってる場合じゃねぇっ!!とにかく目の前の人達を助けるぞ!!社長はこの事を外の人に伝えてくれっ!!」
「う、うん…」
レミーはぱたぱた走ってその場を後にする。見届けたトウマは、私兵の方へと振り向いた。
「よし、とにかく皆を外へ連れ出さなくては…アンタ、皆を運べる体力はあるか!?」
「も、勿論だ、一緒に助けよう!!」
指示を受け、頷く私兵。彼は早速近くにいた者の意識を調べようと顔を近付けた。
「くっ、息がない…!!待ってろ今助ける!!」
私兵が見た者の息は小さく、必死で心臓マッサージを始める。トウマもそれに倣ってもう一人の私兵、メットを被った仰向けに倒れた男の意識を調べた。
「大丈夫ですか!?意識、ありますか!?」
男は声に気がつき、小さく頷いた。
「よし、今から救助隊が来るっ!!それまで耐えて…」
トウマが元気づけようと言葉を掛け続ける。と同時に、メットの私兵はトウマのジャケットの裾を掴んだ。その手は僅かに震えていた。
「…大丈夫だ、誰か来るまでここにいる。安心してくれ」
「う、うぅ…」
「どうした!?なにか言いたい事があるのか!?」
メットの男の呻きに、トウマは彼の口に顔を近付ける。
「気をつけてくれ…グシャンモスが来ているんだ。我々はそれに、やられて…」
「なんだって!?」
グシャンモスといえば、以前戦った強敵だ。もし今や戦力がボロボロとなった人々に牙を向けたら…ゾッとするトウマはすぐさま立ち上がった。
「ま、まずいぞ…このままじゃ皆がヤバいっ!!アンタ、すまねぇ、この場を頼むっ!!」
「えっ、わ、わかった!!」
その時、衛生兵が到着した。トウマは彼らにこの場を任せて工場の外へと急ぐのであった。
18-5
「ねぇ誰か来て!!倒れてる人が工場の廊下に…」
一方、外に出たレミーが、集う仲間に呼びかけると同時に、離れた場所の窓ガラスが割れた。見ると、涼達の前に怪人が揉み合って飛び出して来たのが目に入った。
「ぐ、グシャンモス…!!」
いの一番に怪人の名を口にしたレミー。そんな彼女に兵士が近寄る。一方でグシャンモスは、頭部にメカを取り付けた巨体で、涼達の前に突如として立ち塞がっていたのだ。
「くっ、なんだ貴様は!?私達の邪魔をするなっ!!」
「グォォォォ!!…クゥアアアア!!」
迫るグシャンモスの、鋭利な牙は涼のYシャツを切り裂く。
「涼さんっ!!」
心配した穂乃花と茜が駆け寄る。幸い、出血はしていないようだ。
「こいつ…この前とは違う。怪我してるってのに、力が増している上に凶暴になって冷静さを失っているみたいだ…」
「ならばやるしかないっ!!チェンジ、テグサーマン!!」
涼の掛け声と共に、変身する三人。そのアーマーは見るも無残な損傷具合であった。
「グォォォォッ!!」
かつて自分を負かした者が登場してか、猛り狂うグシャンモスは両腕を上げて襲いかかる。激突する両者。それを見たラントムチームは後方で担架で運ばれながら、動けない事に悔しさを噛み締めるのであった。
「こ、のやろぉっ!!」
その一方、テグサー4は力量では圧倒的に上回っているグシャンモスを相手に右ストレートを放っていた。
「ぐぅぉぉぉぉぉぉっ!!」
だが、グシャンモスの腕力は想像以上にパワーアップしており、彼女の力を無視して吹き飛ばし、壁に叩き付けるのは容易な事であった。
「ぐぅあっ!!」
その壁へ、蜘蛛の巣状にひび割れる程の衝撃を与えた。ずり落ちて倒れるテグサー4に、駆け寄るテグサーチーム。とどめを刺さんとグシャンモスは長い鼻を突きつけた。
「グググ…そろそろお前達には死んで貰うぞ。なにしろこっちはお前達より、そこの奴に用があるんでなぁ?」
「なに!?そこの、だと…まさか!!」
テグサー3はグシャンモスの視線の先を向く。そこにいたのは兵士の報告を終えて物陰で怯えるレミーの姿があった。
「貴様、社長を狙っていたのか!?もしかしてなにか知ってるのか!?」
「ん?なんだお前、彼女の秘密を知らずに戦っていたのか…?だが、そこから先はこれから死ぬお前達にには関係ない…ぐぅぉぉぉぉぉぉっ!!」
グシャンモスは言い終えると同時に、瞳から一直線の光線を放った。
だが、その時。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
トウマによって後ろから鉄パイプで殴られた為、光線の方向は誰もいる筈のない真下へと出る羽目となった。
「くっ!!き、貴様っ!!」
悔し気に振り向くグシャンモスは、再度光線を放つ。
「うぉっ!!あぶねっ!!」
だが、トウマは間一髪光線を半身になって避けた。それでも伸び続ける光線は遥か先の倉庫に着弾し爆発、木っ端微塵に破壊した。
「ちっ、避けたか…だが、次はどうだ?」
「う、うぐ!?テグサロイドが…」
トウマはその場から下がろうと一歩踏み出そうとした。しかし、光線は掠った左膝がおびただしい量で出血、更にはテグサロイドが衝撃でヒビ割れて機能を完全に停止していた。
「チェンジ、テグサーマン!!…どうした、テグサーマンになるんだっ!!」
それでも構わずトウマは変身の構えを取る。しかし、テグサロイドはそんな持ち主の願いに応える事は不可能だと言わんばかりに沈黙を貫いていた。
「と、トウマ…!!」
「来るなっ!!」
思わず駆け寄ろうとしたレミーに、トウマは叫んで制した。
「俺の事はいい、下がって皆の助けを待っていろっ!!」
「で、でも…!!」
「コイツの狙いはお前でもある…!!いいから絶対に来るなよっ!!」
「トウマ…」
不安を紛らわそうと自身の服の袖をギュッと握りしめるレミー。すると、グシャンモスは彼らを軽く拍手で讃えた。嘲笑をした表情と共に。
「フッ、こんな時にでもヒーロー気取りか。お前はさっき、彼女の力を見てなんとも思わないのか?もしかしたら彼女はなにか重大な秘密を抱えているかもしれないってな」
「お前、一体なにを…」
「フッ、一つ教えてやろう。そいつが何故人間の身で能力が使えるのか…」
「何故この大騒ぎの中、無事でいられたのか…」
「それは、我々ジン・ガイア人と人間の細胞が合わさった生命体だからだ!!」
「なんだと…!!社長の体が…!?」
「わ、私の体が人間じゃ、ない…!?」
トウマとレミーは驚きを隠せなかった。仲間が、自身がただの人間ではないことに。
嘘よ。
嘘だ。
「嘘をつきやがれっ!!コイツの母親は人間だっ!!写真だって見たんだぞっ!!」
「ほぉ、ならばさっきの能力はどう説明する?そういえば以前、マツナガが繰り出した役獣の電撃を浴びて平気だったそうじゃないか。あれもだな。それと、彼女の生い立ちを聞いてるなら心当たりがあるのではないか?…バドリードはそう言っていた」
「…」
トウマは返す言葉がなかった。アリーナでの戦闘、母子共々病身であったにも関わらずすぐに回復した事。どれもが当てはまるからだ。
「だから俺は彼女の体に用がある。二つの細胞を併せ持った彼女がどう成長するか、な。さ、大人しくどいたら命だけは…」
「…お前がなにを知っていて、生まれがどうだろうと、俺は今を生きる社長を守るっ!!それが、力を持つ物の使命、俺はもう、なにも失いたくないっ!!」
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
トウマは鉄パイプを強く握ると、猪突猛進で突っ込んだ。テグサーチームも同様だ。
「フン、もう遅い!!」
だが、一対複数にも物怖じせずグシャンモスは確実に決着をつけようと最初の時より瞳に力を込める。瞬間、彼が放つ光線は四方八方、ありとあらゆる方向へと拡散するように発射された。
「う、うわぁぁぁぁっ!!」
「きゃあああっ!!」
どんな物でも切り裂く光線はテグサーチームの装甲や手足、木々、倉庫を容赦なく傷つける。無論、最も近くにいたトウマの太ももも切り裂いた。
「ぐ、ぐ…畜生!!」
最早彼は動けない。両手を使ってその身を引きずるだけでも精一杯だ。テグサーチームも同様のようだ。そんな彼に、グシャンモスは容赦なく迫る。
「グッグッグ、人間如きが俺達に逆らうからだ…」
見れば、その瞳は光線発射の準備が整っている。もし、あれが間近で発射されればもう逃げ場はない。それでも、トウマは必死でその場から去ろうともがき続けていた。そんな中、レミーはその様子を固唾を飲んでただ見守る事しか出来なかった。
(私、やっぱりただ見ているだけの存在なんだ…力がないばかりに、トウマは必死で頑張ってるのに…それだけじゃない、きっと、ううん、絶対私の体のせいで迷惑をかけている…)
(それなら…それならっ!!)
「チャージ完了、死ねぇっ!!」
ズバォッ!!
グシャンモスの瞳から轟音と共に光線が発射された。運命の狙いはただ一つ、トウマの心臓目掛けてだ。
(ち、畜生、これまでか…!!)
迫る光線に、避けようにも身動きが取れないトウマは死を覚悟した。しかし、その時であった。
「トウマーッ!!」
レミーがトウマの前に飛び出し、その身に光線を受けて彼を救ったのは。
「しゃ、社長…!?」
レミーの胸を光線が突き刺した。その一瞬の出来事。着弾の後の一瞬の静寂と共にテグサーチームは一同に目の当たりにした。そしてトウマは眼前で倒れる彼女を、その両腕で抱き抱える事しか出来なかった。
「う、ぐっ、がはぁっ!!」
トウマが抱くと同時にレミーの口と深く開いた胸の傷からは血が止めどなく溢れ出た。
「しゃ、社長!!」
叫ぶトウマに、息も絶え絶えのレミーは力なく微笑んだ。
「よかった…私の体一つでトウマが守れて…」
「社長、喋るな!!それ以上は…」
「私、さっき言ってた誰かに役立ちたいと想い、トウマの命を守る事で果たそうと思った…こ、これで、役に立った…かな?」
「社長…!!そうだ、お前のお陰で俺は生き延びた!!だから、だから…!!」
「トウマ…生きて…生きて、皆を守っ、て…」
「しゃ、しゃちょ…!!」
トウマは励ます為にレミーの手を握ろう、繋がろうと手を伸ばした。しかし、それは叶わない。彼女もまた伸ばそうとした手が地に降り、真下の水たまりに濡れようとも、もう再び上がる事はなかったからだ。
「しゃ、社長…?おい、嘘だろ、目を開けてくれよ…」
「社長…レミー…」
「レミィィィィィィィィッ!!」
トウマは腕の中で目をつぶり、冷たくなる彼女を前に叫ばずにはいられなかった。
「そ、そんな、社長が、…うそよ、嘘だよねっ!?」
テグサー2もまた、トウマの叫びを察し、彼らに目を向けずにはいられなかった。
「う、嘘だろ…!!なぁ、トウマ、嘘と言ってくれ!!ただ気を失ってると、そう言ってくれよ…」
「なぁっ!!」
テグサー4も、トウマに必死で呼びかけるも返事はない。
「…嘘だ、私は信じない…信じないぞぉぉぉぉぉっ!!」
レミーはもう目を覚まさない。無言の真実を突きつけられたテグサー4はグシャンモスに突撃を仕掛ける。しかし、グシャンモスのパワーは乱れた彼女の力をいとも簡単に払いのけるだけであった。
「…トウマ」
そんな中、テグサー3は刀を手にしながらトウマを見つめる。二人はまだ身動き一つしていなかった。
「俺は…また生き延びた…誰かが犠牲になって…」
トウマの脳裏にレミーとの思い出が蘇る。口喧嘩から始まった出会い。お互いの事をよく知るきっかけとなったお泊り会。大いに騒いだカラオケ親睦会。遥か地平線の先にいる人々を勇気づける為、共に頑張ったGooGooZコンサートの会場設営。彼女はもう記憶の中でしか会う事が出来ない。腕の中で冷たくなったレミーは再び起き上がる事はないのだから。
「俺のこの力は…なんだ!?大事な時に救えなくて、なにが…なにがテグサーマンだ!?」
トウマは怒りに任せてテグサロイドを地面に叩きつけた。一方で、チャージが完了したグシャンモスは再度光輝く瞳をトウマに向ける。
「チッ、捕獲対象を死なせてしまったか…まぁいい、このまま続けてトウマ、お前を始末してやろうっ!!」
トウマもそれに気がついた。
「その憎しみを…俺に向けたまま死ぬがいいっ!!」
絶叫と悲鳴。声は聞こえつつも頭に入らない中、トウマは思った。結局自分はなにも守れず、力に頼った独りよがりの正義でしかないのか…と。
(そうだ、今の君はただの一人の人間でしかない…)
その時。身動きが出来ないトウマの脳内に、またもあの声が響く。しかし、声だけではなかった。グシャンモスの前に、全身を黒く染めたテグサー1が地面から這いずり出ていたのであった。
「テグサー1…!?」
トウマは冷静に、それが全身が出るまで見つめていた。そして見渡すと、周囲はモノクロに見えて時が止まり、誰一人動く事はなかった。グシャンモスから飛び散る火花さえもその場で静止していたのだ。
(一体、お前はなんなんだっ!?こんな力があるなら社長を守ってくれても…!!)
(それは出来ない。我々が出来るのはTE粒子に乗っ取った、選ばれた者に力を与えるだけ…そう君にだけ…)
黒いテグサーマンは冷静に、止まってもなお喧騒さが溢れ出る世界を背にして語る。
(君は悲しくはないのか、人々の苦しむ声を聞いて。大事な人々を二度も失って。そして、その原因が陰なる力による物だという事…なぜ今まで自分は苦しまなくてはならなかったのか、と)
(トウマよ…今こそ、悲しみを捨て、憎しみと怒りを通り越して戦うのだ…想いの向こう、無となった感情こそが、純粋な力を、肉体に宿すのだ)
「力があれば、全てを…悲しみが、俺を苦しめる…?」
(そうだ。ならば、今こそ力を貸そう。宇宙にある怒り、悲しみ、憎しみを超えた力を…!!)
「な、なにをする!?やめろ、やめろっ!!」
トウマが叫ぶと同時に、時は再び動き出す。気がつけば禍々しきテグサー1は消え、トウマはテグサー1へと変身していた。
「なっ!?いつの間に!?だが、もう手遅れだっ!!」
グシャンモスはいつの間にか変わったテグサー1に対して光線を放つ。しかし、伸びた光線はテグサー1の右手によって払われ、掻き消された。
「グゥゥゥゥォォォォッ!!」
強者の臭いを嗅ぎ付けたグシャンモスは、最後の力を振り絞って迫ったテグサー2を押しのけ、テグサー1へと飛び掛かった。その瞬間、立ち上がったテグサー1の、赤黒く燃える手にその顔面を掴まれ、一瞬の内に溶かされる事になってしまった。
「グゥゥゥゥッ!!」
頭部の皮膚の殆どを溶かされ、その場から下がるグシャンモス。テグサー1は足元に付着する怪人の体液、ゴボゴボと淀んだ音を気にする素振りも見せずに燃え続ける両手を前に出した。
「あ、あの構えは…!!」
テグサー3はテグサー1のポーズに見覚えがあった。想竜弾のポーズだ、と。その瞬間、赤黒い渦巻くエネルギーが球体となってテグサー1の胸部の前に現れた。
「あ、あれって、想竜弾…?でも、なにか違う…よく言えないけど、なんか、悪そうにしか…なんか、嫌だ…!!」
球体に怯えるテグサー2。
「そうだ、あれは聞いた事がある…」
すかさず、テグサー3が話し始める。
「飛田が言うには、想竜弾は多くの人々の想いが集束して出来る物…しかし、理論上ではたった一人の強い怒り、悲しみのマイナスエネルギーでも放てると…!!その威力は前回の想竜弾以上となる。しかし、我を忘れている為に周りに仲間がいても、構わず巻き込んで撃つと…!!」
「そ、そんな…!!」
「この技はTE粒子が最大限に活性化されない限り発動しないと言っていた…!!今までこんな兆候はなかったというのに…!!まずいぞ、あれが爆発すれば、ここ一帯は…!!」
テグサー3が危惧すると同時に悪しき想竜弾はエネルギーの余波で暴風を巻き起こした。木々は折れる寸前まで激しく揺れ、人々は足を取られて転倒。その傍では駐車したフォーチェイサーまでもが倒れて引きずられる有様であった。
「だ、ダメだトウマ…!!このままでは私達は全員…穂乃花!?」
足を踏ん張るテグサー3の横を、テグサー2は走り出す。向かうのは爆心地となるテグサー1の元であった。
「トウマ、ダメーッ!!」
テグサー2は、今まさに発射せんとするテグサー1の腰に抱き着いた。
「ほ、のか…」
爆風の中、テグサー1はそう一言告げると、腰を反らした。想竜弾の発射角度が上へと変わったのだ。
ドウッ!!
テグサー1は溜めに溜めた想竜弾を一気に放出。地面を溶かしながら上空へと飛ばした。
「きゃあっ!!」
その反動でテグサー2は吹き飛ぶ。
「グゥッ!!」
グシャンモスは発射と同時に更に後方へ飛んだ。それでも、想竜弾の膨大な熱量はかすっただけで彼の胸、それから全身をボコボコと溶かすには十分であった。そのまま打ち上がった想竜弾はグングンと天高く飛び、空一面を覆う灰色の雲をも裂き、ようやく、成層圏で爆発した。爆炎は下界の工場よりも遥かに、広範囲に広がる。その余波は山頂にそびえる鉄塔をぐにゃりと高熱で、溶けた飴のように折れ曲げる程であった。
「お、終わったのか…?」
轟音が止んだ。僅かな時が経ち、地に伏せたテグサー3は顔を上げた。周囲は煙で充満している。
「恐ろしい威力だった…まさか、マイナスエネルギーだけでここまで…いや、他にも要因があるのか…?こんな時、飛田がいれば…」
「そ、それより涼ねぇ、二人を…!!ハカセも大事だけど!!」
「あ、あぁ…」
テグサー4に促されたテグサー3は、瓦礫を跨ぎ、テグサー2の元へと急ぐ。
「穂乃花、無事か!?」
「涼さん…私は無事だけど…トウマが、トウマがぁ…」
テグサー2は震える手で向こうを指差す。そこにいたのは、跪き、足から徐々に石化するテグサー1の姿があった。
「と、トウマ!?変身を解除しろ、今すぐだっ!!」
一体なにが起こっているのか。どうなったらこうなるのか。考えるより先に駆け寄るテグサー3。その間にもテグサー1の石化は膝から腹まで侵食している。
「ダメだ…テグサー1は力を使い果たして…俺ごと…涼、皆を…頼む…」
「トウマ、諦めるなっ!!お前までいなくなったら、私達は…」
「すま、ねぇ…」
遂に石化は顔まで上り詰め、テグサー1は仲間に手を伸ばすだけの一つの石となった。
「トウマ…トウマァァァァッ!!」
テグサー3は男の名を叫んだ。返事など、ある筈がない。
「そんな…トウマ…そんなの嫌だよぉっ!!」
「畜生…!!トウマ!!」
テグサー2、4も悲しみに暮れる。空は再び雲が集まり、彼らを涙の雨で覆い尽くすばかり。
その一方、バドリードは一人、未来島で笑っていた。
「これで全ては揃った…ふふふ、はーっはっはっはっは!!」
『なにか』を得、勝利を確信したかのように。
どうも皆さん!!
果たしてこれから先は、どうなってしまうのでしょうか!?
帝国との決着は!?戦士達のこれからどう動く!?
今回は十七、十八話のハイライトと共にお送り致します!!
【挿絵表示】
さて、ここから先は私事ですが、UAが200を超えました。
二週間位更新してなくても、いつの間に増えていたりと驚くばかりです。
探している内に見つけて読んだり、または、何度も読み返している方、誠にありがとうございます!!
因みにですが、恐らくキリ番(?)となる200は私が踏んだ可能性があります…
投稿者の端末もカウントされているのかわかりませんが、もしそうだとしたら
『申し訳ございません、このような結果で』といった具合でございます。
…踏みたかった方、本当にスミマセン…
また、今回の『メガメタル回』のED曲は、
ウルトラマンネクサスより『いつも心に太陽を』が合うと思います。
様々な事情で世界から離ればなれになってしまったトウマとレミー。二人と、苦楽を共にした仲間はこれからどうなるか。そういった点が悲しみの内に会えなくなった彼らの未来にピッタリだと思います。(「勝手に使うな」と思われた方には、不快にさせてしまい申し訳ございません)
では、またいつかお会いしましょう!!さようなら!!
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