・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
19-1
「甲斐田く~ん?今俺達さ、夢に向かって頑張る為に金が欲しいんだよね。だからさ、金貸してくんね?収益入ったらさ、何倍にもなって返すからさ」
夕暮れの放課後、人気のない陽観高校校舎裏。校則違反となる染めた明るい茶髪をいじりながら、萩野は仲間二人を連れてクラスメイトである甲斐田を壁際へと追いやっていた。
「こ、この前だって返してないじゃないか…もう、貸すお金ないよ…」
「だ、か、ら!!それ含めて返すって言ってんじゃん!!知ってんだよ俺、甲斐田くんが食堂で結構高いの食ってんの、な!?ハッキリ言いなよ、金貸すの、貸さないの!?」
「…」
甲斐田は萩野の取り巻き二人を見た。一人はガムをクチャクチャ噛みながらニヤつき、もう一人はゴホッ、ゴホッと咳こみながら口に当てる腕で筋力を見せびらかしていた。
「…貸す前に一つ聞かせてくれない?」
「あ、なにを?」
萩野は首を回しつつ、視線下の甲斐田に目を向ける。
「どうしてそんなに夢に熱意を向けているの?そのきっかけは?」
「ん、あ~、それはな、この前GooGooZの手伝いしたじゃん?あの時の生歌を聞いて俺の中の情熱がもっと燃えてな、あの人達みたいに皆を助けるのを実行する為に必要って訳!!さ、わかったら、さっさとお金を…」
「…なら、GooGooZを見たんなら自分で稼がなくちゃいけないんじゃない?少なくともあの子達は誰かからこうやって金借りなくても夢を手にしたと思うよ」
「は!?GooGooZだって事務所とかスポンサーから色々借りてんじゃん。そんな事知らないとか君、馬鹿?」
「ギャハハハハ!!それなっ!!」
萩野の反論に、ガムを噛む男は手を叩いて同調した。それをかき消す様に、甲斐田は喉を上げ、懸命に口を開く。
「…そういう人達は彼女達に期待しているから出資してると思う。でも、君達はどれだけ頑張っていてもお金を渡す程の実力には見合っていない。それに、僕は裏の顔を知っている以上、ハッキリ言えば嫌いだ。全く、表だけで、いい顔をして!!だから、貸す義理は、ない…!!だから、憶えておくといい!!いつか僕の敵となる君達に罰が下る事を!!」
「あぁもう、うっせぇなぁっ!!」
瞬間、怒りを込めた萩野の拳は甲斐田のみぞおちを強打した。
「う、うぐっ!!」
痛みでその場でうずくまる甲斐田。彼の胸ポケットから財布がポロリと落ちた。
「お、来た来た」
萩野は財布を拾って開き、中の紙幣を数枚、自身のズボンポケットにしまい込んだ。
「全く、メンドーかけさせやがって…!!こっちはな、あの帝国のせいでせっかくの努力がパァなってんのが続いてイライラしてんだ。これ以上ボルテージを上げるんじゃねぇっ!!ただでさえイラつくツラしてんだからよ!!いいか、お前みたいな、能力もダチもな~んもない奴はな、俺らみたいな上の立場に黙って馬鹿にされて、従えばいいんだよっ!!おい、行こうぜ、二人ともっ!!」
萩野は軽くなった財布を甲斐田に放り投げ、二人を連れて後にする。
「あー、余計な時間かかったわ…なんでトウマとか穂乃花が教室からいなくなって、ああいう邪魔なのがいんだろーな、いるだけで鬱陶しいわ…まぁいいや、腹減ったわ…」
「あ、じゃあメシド行かね?金入ったし」
「お、いいね~!!」
日常会話を交わしつつ、校舎へと消える三人。この時になってようやく甲斐田は腹の痛みが治まった。
「やはり…だ、人は絆だの思いやりだの言ってるけど、所詮僕みたいな、なにもない、人望も協調性も能ない人間はその『輪』に入る事は許されず、淘汰されるだけなんだ…」
甲斐田は砂にまみれた財布を拾う。と、苦しんでいた表情は、突然にニヤリとした物へと変貌していた。
「いいさ、わかったよ、君達みたいな仲間いなけりゃなにも出来ない下らない連中と、僕は違うって事、教えてやるよ…!!」
そう叫びながら、財布をしまった甲斐田は突然、スマホを操作した。一心不乱にタップし、入力される文字。それを全て書き終えた彼はふぅ、と一息ついた。
「もうすぐだ…もう間もなくで強大な『力』が手に入る。そう、あんな雑魚共なんかじゃ目じゃない、僕の十年分の怒りを世界中の幸せ面した奴らに復讐する力が!!」
「ハハハハ…!!待っててください修博士、そこからじゃあ分からない事、復活する前に、ぜ~んぶ教えてあげますからねっ!!」
両腕を広げ、甲斐田は天に向かって高笑いをする。その声は、静かなる学舎の陰にだけ響くのであった。
19-2
「ん…あ…?」
飛田は暗がりの一室で目を覚ます。どうやら気絶していた自分の身体を、誰かがベッドに寝かせていたようだ。と、彼は背中にある感触で気づきだした。
「今、何時だ…?」
飛田は腕時計を見る。
「げ、早朝の七時…あれから半日以上経ってるのか…!!」
ぼぉっと光るデジタルの文字は日を跨ぎ、AMを表示していた。一瞬で意識がはっきりとした飛田はガバッと起き上がる。すると、目の前の扉が開かれた。
「やっぱり、目が覚めていたのね…」
扉の開閉、差し込んだ光と共に聞こえてきた声は、モーラであった。
「…!!」
入室したその姿を見た飛田はベットから降り、彼女を横切ってその場から去ろうとした。
「待って、飛田くんっ!!」
ラントムチームと違う、黒いフォーマルスーツを着たモーラは立ち塞がり、慌てて止めに入る。その胸には、GRNのバッジが燦然と輝いていた。
「なんですか、勝手に人の会社に探りをいれて、僕や社長をさらおうとする人の話なんて聞きたくありませんよ」
飛田は少々語気を強めて静かに答える。対して、モーラはばつが悪そうに僅かにうなだれていた。
「…確かに、勝手に誘拐なんて真似したのは謝るわ。でもね、これはこの国…日本の真実を表沙汰するには仕方がない事だったのよ。わかってくれるわね?」
「…」
飛田は沈黙しながらも、納得いかない様子を醸し出していた。両者に沈黙が流れる。と、この空気をぶった切るかの様に、モーラは両手を合わせて叩きながら一つの提案を言い出した。
「そうだわっ!!ここGRNの日本支部を案内するわっ!!そうすれば、あなたの気も変わるかもしれない、ついてきてくれるかしら?」
「えぇ…」
昨日今日の出来事もあって飛田は困惑していた。だが、相手が相手故帰るのも難しそうだと考えれば、ここは大人しく従った方が賢明だと結論付けた。
「…わかりました、行きますよ。ちょうど僕をさらったのを企てた人の顔を見たかったですし」
「そう?よかったわ。それじゃ行きましょっ!!」
モーラの案内の元、飛田は部屋から出る。そことは違い、歩み始めたのは、冷たく、静かなオフィス風の廊下であった。
「そういえば言っておくわ。昨日の戦い、私達人間側が勝ったわ」
暫く歩いて、モーラはポツリと呟いた。
「そ、そうでしたか、よかった…」
ここで初めて、飛田は安堵の表情を見せる。
「でも、手放しで喜んではいられない事があるわ。あの時の巨大メカに乗ってたのは人間…つまり、ジン・ガイア帝国じゃない、人間同士の争いが起こってしまった。ついに国や機関への不満が一般市民による実力行使にまで発展してしまった…」
「そ、そんな…ジン・ガイアとの戦いはまだ終わってないのに…これじゃ、戦いが終結しても今度は人間同士が争うんじゃ…」
「かもね…それに、もしかしたら人間同士不満持ったり、怪しんだりした隙に帝国が攻め込んでくる恐れもある…もしかしたらその前触れが、テグサー1の装着者を巻き込んでの石化、そしてレミーの死へと繋がったのかもね…」
「えぇ…え?」
トウマさんが石化した。
社長が死んだ。
信じがたい二つの事実が飛田の歩みを止めた。
「それ、本当ですか!?そのメカがやったんですか!?嘘って言ってくださいよっ!!」
「残念だけど事実よ。安全圏から隠れていた伏兵が漁夫の利をかっさらっていったわ。で、レミーの死から想竜弾を放って力使い果たして生死不明の石化、レミーの遺体は安置所にあるそうよ」
「な、なんて事だ…たった一日で二人も…いなくなるなんて…」
飛田はショックで膝から崩れ落ち、頭を抱える。その手を、モーラは彼と同じ視線で優しく握りしめた。
「大丈夫よ飛田、まだ救いはある。解析によると、USBにはこの争いの真実だけでなく、テグサー1の石化を解く鍵があるらしいわ。まだ暫定的だけど」
「…しかし、本当にあるって確証は…」
「でも、他に解決するアテはある?とにかく今は設計者が残したあれを開くわよ、さ、ここが司令室。入るわよ」
モーラは近くの金属製ドア脇にあるカードリーダーに、胸ポケットから取り出したカードを差し込んだ。
『ピーッ』
カードを認証するとドアは空気の抜ける音を立ててゆっくりと開く。その先にはいくつもの大型モニター、パソコン。その前で十数人もの人々が忙しなく働いていた。まさに、軍の『司令室』の様相を呈していた。
「ここが私達、GRN日本支部の司令室。ここでありとあらゆる組織や地域の諜報活動をしているの…さて」
「マイク、長官に繋いでくれるかしら?」
モーラの指示を受けた男はキーボードを素早く叩き、一番奥、巨大スクリーンの電源を点ける。映し出されたのは、威厳のある白人の中年男性であった。
「長官、お待たせしました。飛田博士のご子息が先程目覚め、司令室にお連れしました」
「うむ、ご苦労だったモーラ…」
モーラに長官と呼ばれた男は、労いの言葉を彼女に掛けると、にこりと笑い直して画面越しに飛田の方を向いた。
「君が飛田博士の息子だね?私はこのGRNの長官、ハワードだ。今、アメリカの本部より連絡している」
「あ、初めまして…」
飛田は軽く会釈する。
「さて、君を突然重工から連れ出したのは申し訳なかった…しかし、こうでもしなければ、ある『真実』への確固たる証拠を手にする事は出来ないし、なにより隠蔽される恐れがあった故に強行手段をとったのだ。許してくれ」
「…長官さん、その真実とはなんですか?今、僕の心境としては、それよりも、仲間を助けたい気持ちでいっぱいなんです。早くしないと…」
「うむ、わかった…我々が出した推測を言おう…」
ハワードは咳払いをする。と、笑顔を止めて真剣な顔つきとなった。
「結論から言おう。我々の敵、ジン・ガイア帝国はこの星の自然から産み出された生命体ではない。アレは宇宙から落ちた隕石に採取された種子から産み出されたモノ…」
「そして、それを産み出し、加工したのは、日本政府と旋風重工の傘下にある研究チーム…室田修の手によるものだ」
「え…!?」
飛田はまたも、突きつけられた真実に耳を疑った。
島で未知の生命体に殺された父。
誰かを守る為、命を懸けて戦い続け、死んだ親友。
それらは全て今まで自分の研究を拾い上げ、支えてくれた企業、自分達を認めてくれた国の責任者がからの始まりである。
過去を巡る脳内に、衝撃の稲妻が走る。そんな感覚さえ感じた。
「驚いたかね…?無理もないが…?」
周りが黒く感じる飛田に、ハワードは話しかける。
「我々の組織はこれまで対ジン・ガイア帝国に関し、国家の垣根を越えて諜報活動を行ってきた…そしてある時、気が付いたのだ。かつて人間が動物より自然的に進化したのと同じではなく、そこに人間の高度な手が加えられたのではないか、とね…」
ハワードは画面外で操作をし、自身が映るモニターにいくつかの情報、データ、画像を表示させた。そこには未来島、以前茜やトウマ、ディーンが戦った隕石落下地点の写真も載っていた。
「それからというもの、我々は発生源となった島の数少ない情報を徹底的に調べた…そしてわかったのだよ、あの忌まわしい事件…ジン・ガイアの生命体の発生の三ヶ月前、日本政府を中心に隕石に関してなにやら不穏な動きをしていた、しかも、旋風重工から十億円の動きがあった、という事を…」
「…」
飛田は続けて明かされる真実の経緯に、黙って聞く他なかった。すると、モーラは机上で開けたジュラルミンケースからある物を取り出した。
「…あっ」
声を漏らした飛田が見たある物は、かつて父が残したUSBであった。
「それで、私の同僚は旋風重工にスパイとして潜り込み、島の真実、テグサーマンの秘密がこの重工にある事を知った…そこで、私は幼なじみのイリアが設立したラントムチームとして参加して、GooGooZのコンサートを利用して接触を計った…全ては、何故私の家族が殺されなくてはならないか。その真実を知る為に」
「え?」
飛田は、モーラの身の上話に疑問を持った。
「十年前、私の故郷は小さくて平和な町…その時の私はまだ学生で、両親、弟、友人達に囲まれ、幸せな日々を送っていた。その日が来るまでは…」
モーラは近くのパソコンを操作して一枚の画像を表示する。写っていたのは、空を舞う数匹の鳥形怪人の攻撃によって業火で焼かれる西洋の町を遠くから撮影した物であった。
「この攻撃で、私の大切な人は皆、炎の渦の中…その日から平和を祈る日々が続いた…そして、この組織に入った時にこの騒動が元々人為的であるという真実を知ったの」
「それまで、皆を殺したのは、突然やって来た悪の生命体。必ず奴らをやっつけてこの星に平和を取り戻す。それだけだと思っていた。でも、本当の真実があるなら、私は…」
気が付けば、机に置かれた彼女の右拳はぎゅっと、強く握られていた。
「お願いよ飛田くん。友人と別れて寂しいかもしれないけど、今は我慢して。彼らをこれ以上真の悪に加担させたくなければ…!!解析を!!」
上手く口に出せない様子で、顔を上げたモーラはじっと飛田を見つめる。いつの間にか、周囲の人々も手を止めて、彼らを見つめていた。GRNの想い。希望。託し。受け取って意を決した飛田は、モーラの手からUSBを受け取った。
「わかりましたよ…その想い、内部の解析という形で協力します」
「ありがとう、飛田くん…あの子達も必ず助ける。安心して。今のところ、まだ一部しか解析してないけど、どうやら動画があるみたいなのよ。恐らくそれが島とテグサーマンの真実が…」
それからというもの、飛田は案内された研究室でGRNの諜報員と共に解析を進めた。幸いこの施設には解析を進めるには機材が十分に取り揃えていた。
「よし、パスワードは判明した、これで…!!」
ある程度解析の知識がある者に見られるようにと、制作時に考えたのだろう。特殊な機器に差し込んだUSBのパスワードの解析はとんとん拍子で進んだ。時間にして、陽が頂点にまで昇った時であった。しかし、それが降り始めた頃、解析の進捗度はピタリと止まった。モーラが話していた肝心の動画が見られないのだ。パスワードの解析か、それともなにか特別なヒントがあるのか?十年という歳月は大きな壁を産み出していた。
「どう、進んでる?」
進まぬまま時間が経過した頃。見かねたモーラが飛田達の様子を見に来た。
「モーラさん…それが、わかったのは重工の十億の動きだけなんです。それだけはパスワード解析で判明したんですが…」
長時間のパソコン操作で疲れた目頭を押さえながら飛田は答える。
「なんの機材を買った、コレコレの薬品を買った、人員を使いました。そんな統計だけしか書かれてなくて…どうやらこの動画見た形で、全てが明らかになるみたいなんです」
「…そう」
「今皆さんと話し合ったんですが、最悪これだけを世間に広めるしか…ないのではないかと」
「ダメよッ!!いいわけないでしょうっ!!」
突然のモーラの怒鳴り声。その場にいた者の注目を一気に集めた。
「…ゴメンなさい、急に怒鳴って。でも、これだけじゃ世界中の人は満足しないと思うわ。とにかくゆっくりでもいいから進めてみて。必要な物はいくらでも取り寄せるから」
「…はい」
飛田は気を取り直して一旦席から立ち上がる。すると、彼のポケットからなにかがずり落ち、『カシャン!!』という硬質な音と共に地面にぶつかった。
「ん?」
二人が見ると、それは小さな機械であった。
「飛田くん、それは?」
「これは、テグサーマンの力の源、TE粒子を集める集束機ですよ。昨日の会議の後、他国の技術者に見せる予定だったんですが、あんな騒動あって見せられなかったんです」
飛田は集束機を拾う。その時、一人の男性諜報員が研究室に飛び込んで来た。
「大変です、モーラさん!!」
「どうしたの、スレン?そんなに慌てて?」
「そ、それが…たった今、防衛軍と各国、各企業の私兵、テグサーチームが日本政府を主導に、未来島に向けて出撃したと報告がありました…!!」
「な、なんですって!?どうして皆気付かなかったの!?前もって戦闘の準備はしてたと聞くけど…!?」
「申し訳ありません。まさかこうも短時間で、しかも我々に知られずに準備していたとは…恐らく、先日の襲撃でトップ連中が慌てたのが原因かと…」
「くぅぅぅっ!!いざ自分の身に災いが降りかかるとこれだ!!いつもは他人事だと思って悠長に構えているくせに…!!飛田くんっ!!」
「は、はいっ!!」
突然呼ばれた飛田は驚いて背筋を伸ばした。
「喉元で熱さ忘れるって日本語があるように、この戦いに決着が付けば人々は平和にのみ目を向け、この騒動から興味をなくすわ。早く、なんとしてでも見つけるのよ、この機器に眠る秘密を…!!」
「そ、そんな事急に言われても、解決の糸口すら…」
「あなた、本当に知らないの!?これの持ち主の知り合いなら、なんかあんでしょ!?秘密の暗号とか!!ないのっ!?ねぇ、ないのっ!?」
「も、モーラさん…」
迫るモーラにたじたじの飛田。後ろ手に持った集束機を机にあるUSBの真横に置いた。
ピーッ…
その時、USB端子の反対側のセンサー部分から一筋の繊細な光が集束機へと伸びた。
「な、なんだ?」
音に気が付いた飛田は振り向く。この時既に二つの機器は光で繋がり、近くの壁に映像を映し出していた。ぶれる映像には室内で席に座ってうなだれる男がいた。
「あっ…!!」
彼を見た瞬間、飛田は叫ばずにはいられなかった。
「お、お父さん…!!」
と。
「え、この人が飛田義明(よしあき)博士…?」
モーラが知る義明博士。周囲の諜報員も映像を見んと一斉に駆け寄った。それを見計らったかどうかはわからないが、集まったと同時に、映像内の義明は口を開いた。
『…今、この映像を見ている人は恐らくTE粒子の集束機からこの映像を見つけた正義の心の持ち主である。そう仮定して話を進める』
『まず、私が置かれている状況を話さねばならないな。今、時刻は正午…だと思う。二時間前、この未来島に突然発生した化け物に襲われ、私はここ地下室に避難している…』
「…あの日の映像だ」
「でもなんで動画撮ってんだ?」
諜報員は各々小声で疑問を投げかけあう。
『…私はなんとか最大限皆の避難に努めた。でも、ダメだった…十人いた私の部下は一瞬で食い殺され、世話になった近所の方も頭を潰されて…』
『それでもなんとか私は富田博士に出会い、一つの使命を受けた。全ての真実を記録した、このUSBに直接録画、条件付きで再生出来る形で録画してこい、と…』
『まず一つ言おう。これを持っている者は決してテグサーマンを旋風重工や政府に接触させてはダメだ。なぜなら、奴らは降ってきた隕石から、目先の利益だけを見て世界を滅ぼす悪魔を産み出すよう動いたからだ…!!そんな者は信用出来ない!!』
『…先々月、海沿いの街に落ちた隕石…未来島へと回収したアレには宇宙から来た種子…いや、細胞と呼ぶべきか?それが大気圏で燃える事なく鉱石内に内包している事が研究をしていた修の手によって判明した。そこで政府や重工は、彼に開発機材と資金を惜しみなく援助した。かつて彼はうだつが上がらない研究員としてのけ者にされていた。なら、なぜそこまで助けたか?それは、あの種子が開発次第でどんな生物をも強化、つまり、どんな難病でも克服が出来ると判明したからだ…!!』
『最近、旋風重工の社長に初孫が出来たと聞く。恐らく、その子をなんとかしたい一心と、世界初の特効薬を日本で作りたいという国の見栄張りで意見を合致させたのだろう…それから彼は一心不乱で開発に勤しんでいたよ…』
「社長…レミーの事ね…やはり」
モーラは義明の話から確信していた。
『それからして…今から言う事を信じられないだろうが、私と富田博士はテグサーマンの開発中、TE粒子の力によって意思の集合体に出会った。意識だけが宇宙に飛んで実体のない体が見えたのだ…』
宇宙。
意識だけが見た。
飛田は以前聞いたトウマの話から父の話を信じて頷いた。
『そして集合体は教えてくれた。先刻この地に落ちた隕石は外宇宙の生命体そのもの。使い方次第でその地の者に力を与えるか、恐るべき生命体を産み出す。事実、他の惑星は欲望に溺れて滅亡したと…』
『そのビジョンを見た私と富田博士はもっと研究の危険性を見極めろとなんとか修を説得した。しかし彼は聞く耳を持たない…遂に自分にチャンスが舞い込んできた。今まで私を蔑ろにした奴を見返す時が来た、の一点張りで…』
『そこで私達は例の隕石に関しての資料を徹底的に洗い、この種子を使う相手のリストや資金の動きや修の研究データを手に入れた。そして結論は…奴は伝えるつもりはないだろうが、集合体の言う通り、滅亡をもたらす危険な物だと判明した』
『私達はもう間もなくでこれを公表しようとした…しかし!!なにがあったのか、修はあの隕石の中に入り込んだ!!そして!!今日!!自らを母体として化け物達を生み出したのだ!!』
見ている者は、誰もが絶句。そんな中、義明は瞳に涙を浮かべながら話を続けた。
『それから僅か一日で私達は全てを失った…頼む!!このUSBには確固たる証拠と完全なテグサーマンが記録されているっ!!私や富田博士、皆の無念を晴らしてくれっ!!そして倒してくれっ!!隕石の中で力を溜める修をっ!!』
「えっ!?隕石の中で!?どういう事ですか、お父さんっ!?」
画面の向こうで必死で訴える父に対し、息子もまた必死で問いかけた。
『…この研究でわかった事があるんだ。あの隕石は生きている。あの中に人間が入って融合する事でその中には一つの繭が産まれる。そして、あの化け物共から養分や力を供給される事で無限にパワーアップする事が可能となる。その力は、恐らく最低でもこの星を死の星へ変える程に…』
「なんだって…!?」
「嘘でしょ…!?これ以上に強いのが…!!」
ざわめく諜報員。飛田は彼らの声を背に受けながら映像に釘付けになっていた。
『奴は…一定の温度と高エネルギーの生命体の養分で目覚めるだろう。いいか、絶対だ!!絶対に目覚めさせるな!!奴は…いつか、修は言っていた。この星の最後の神となる、と。恐らく今の奴にはもう人々に情けなどかけない。少なくとも、滅亡させるまでは…』
義明の話を遮る様に。
『ガン!!ガン!!』
『グギャアアアア!!』
『ズギャアアア!!』
鋼鉄を激しく叩く音と壁越しの獣の咆哮が聞こえてきた。義明の表情はより一層険しくなる。涙を拭き、その手に鉄パイプを携えて。
「お、お父さん!!」
映っているのは十年前の記録。そう理解していても、飛田は叫ばずにはいられなかった。
『くっ、遂にここまで来たか…最後に、そうだ最後に言わねばならない…!!ごめんよ慶喜!!なんとかお前を巻き込まないようにお父さんは頑張ったんだが、ダメだった!!だから、お母さんやお友達はお前が守るんだ!!頼んだぞ!!以上!!』
義明は慌てて画面の見切れた所、スイッチであろう場所を押した。画面が暗くなると同時に力づくでこじ開けられた音と、獣の雄叫びが鮮明に聞こえた。
『『グゥアアアアアッ!!』』
そこで、映像は止まった。
「お父さん…僕の知らない所で、戦っていたんですね…」
飛田の胸には父への想いだけが集中していた。しかし、それを切り裂くように、室内には冷たいざわめきと青ざめた緊張感が走っていた。
「え、な、なんですか…?どうしたんです?」
飛田はその雰囲気を察し、その場にいる者全員、特にモーラに向けて質問した。
「飛田くん、お父さんはあの隕石は少しの熱や衝撃で目覚めると言っていたわよね…?」
「え?え、えぇ…」
飛田は自信なく答える。
「今、防衛軍達が持ってったJSAは電磁波…そして熱や高エネルギーを発する物。もしかしたら、隕石を目覚めさせるにはもってこいの条件が揃った機械なんじゃ…」
「…あっ!!そう、そうだよ、そうだ!!で、でも、アレはジン・ガイア人の変身を溶かす力があったんです。その隕石にも有効なんじゃ…」
「でも、アレは人間には効果が出ない様に調整されている。もし、修博士が人としての耐性があったとしたら、発動後に電磁波で弱った帝国人を狙うと思うわ。それ以前に、養分を喰らうとも言っていた。もし数百人もの国民がどこかで喰われて死んだら、帝国人はその隕石が怪しいと感じるだろうけど、いざ戦いが始まったらそんな事…誰も気にしないのでは…」
「…そうだ、隕石の生命体はこのタイミングでエネルギーを安全に喰らいたい放題。パワーアップして邪魔な防衛軍達も始末出来る…!!た、大変だっ!!」
飛田は青ざめる。これから起こりうる事の重大さに。そして感じとる、この星に迫る危機に。
「とにかく、防衛軍達を止める必要があるわ。スレン、高速艇を用意して。なにがなんでも止めるわよっ!!皆も、この危機を少しでも多くの人に広めて頂戴。急いで!!」
「「「「ハッ!!」」」」
諜報員達は一斉に散らばる。今は一分一秒を争う状況だと。ここで止めなければ最悪の事態になると必死になりながら。
「さて飛田くん、あなたには一緒に来て貰うわ。今から急げば、JSAが発動する前に止められる筈…いえ、必ず止めるから!!」
「…はい」
モーラの指示に飛田は大きく頷く。これ以上の戦火を止めるため、そしてなにより父の意思を継ぐために。
19-3
その一方、テグサーチーム、ラントムチームは防衛軍、各企業の私兵と共に海中戦艦『シータートル』に乗り込んでいた。
「ひゃ~、それにしても驚いたぜ、まさかアメリカでと日本の共同開発でこんなデカい戦艦を造っていたなんて…」
茜の関心に、涼は彼女に向けて解説する。
「こいつは対未来島への上陸向けに造った戦艦だからな。まずは頭部部分で体当たり、島に風穴を開けた後に中の兵士を突っ込ませる為には全長970m程の巨体にする必要があったんだ。開発には随分と時間を使ったらしいが…」
「ふ~ん、そうなんだ…」
茜は出撃待機中の艦内甲板に目を向けた。そこには先日の様に各国の多種多様な装着型兵器が、まるで展覧会の如く胸を張って並んでいた。
「そういえばさ涼ねぇ、穂乃花は大丈夫なの?その、トウマが死んで、随分と悲しんでいたみたいだけど…」
「そうだな…しかし、私は穂乃花に日本で留守番を提案したんだが、『大丈夫、いまここで行かなかったら、トウマに怒られるよ』『それに、トウマはいつか帰ってくる。そんな気がするんだ』と言って拒否したんだ。メンタルケアの医師にも相談したんだが、大丈夫と太鼓判を押されてな、連れて来たんだ」
「そうだったんだ。で、穂乃花はどこ行ったの?」
「ん、アイツは…」
二人の話題の中心となった張本人は、茜が見た別の甲板の隅。外が見える丸窓の前のフチにて小さくうずくまっていた。
「トウマ…社長…飛田くん」
穂乃花は徐々に見えなくなる日本列島を眺めながら小さく呟いた。その表情はどこか寂しげであった。
『皆…明日はいよいよ最終決戦だ…』
彼女の中で、昨日の海斗の言葉が思い返される。
『この十年で人類は多くの物を失った…財産、家、そして大事な仲間や家族を…』
『私もだ…大事な部下を二人も失ってしまい、最後には妻の忘れ形見までも…』
『頼む皆!!こんな空しい戦いに決着をつけてくれっ!!後のサポートは私達にいくらでも任せてくれて構わないっ!!この地球を、明後日から平和な世界にしようっ!!』
「海斗社長さん…」
思い出す中で涙ながらに話す海斗に穂乃花は思わず彼の名を呼ぶ。
「よっ、そこでポツンとなにしてるの?大丈夫?」
そんな彼女に、ディーンは横から顔を覗かせた。
「ディーン…ううん、ちょっと緊張しちゃって。大丈夫だよ。私よりもディーンの方こそ大丈夫なの?」
「んん、なにが?」
「だって、元の故郷を制圧しに行くんだよ。嫌な気持ちにならないの?」
「べ~つに。もうあそこに未練はないし、そもそもあの島には一年に三日位しか帰らなかったもん。思い出なんかないよ」
「そ、そうなんだ…ディーンはすごいね、そんなすぐに気持ちを切り替えられて…私なんか、昨日のトウマや社長、飛田くんの事、まだ引きずってるもん…」
「それが普通の人間なんじゃない?俺は今まで自らの為に戦ってきた。だから他人の生死になんとも思わなくなった化け物になったけど、それに比べて他人を思いやって、色々と想いを張り巡らせるなんて、本当に強くて優しい人間にしか出来ないよ。穂乃花、その気持ちを大事にしなよ。そうすればそこからなにか生み出されるかもしれないし、彼らの為にもなるって思うよ」
「ディーン…」
「さ、リラックス、リラックス。ホラ、あの人達みたいに、さ」
「え?」
穂乃花はディーンの指差した方を見た。そこでは、照れ臭そうなジョージがイリアに向けて指輪ケースを差し出す真っ最中であった。
「あ、あのさ隊長、この戦いが終わったら世界は平和への一歩に近づくじゃん?そしたら俺さ、平和になった時、その、ラントムチームとして、そしてプライベートでも君のサポートをしたいんだ。だから、この指輪…受け取ってくれないか?」
腕をピンと張ったジョージはケース内の指輪を見せる。周囲の人々がわっと湧き上がる中、その頬は赤く染まっていた。対して、意中の相手の表情は冷ややかであった。
「…今、トウマ達も死んで、モーラもいないってのに、よくそんな事言えたわね。こっちはいよいよ決着だなんだと忙しい中だってのに言うことが自分のプライベートなの!?もっとよく状況を考えて物申しなさいっ!!」
「え、あ、あの隊長!!いやだからこそ、最後だからこのタイミングしかないと思って…」
「ふんっ!!知らない!!」
イリアはジョージに背を向けてツカツカとその場を後にする。
「あ、あ、待って~」
ジョージは指輪をしまって彼女を追いかけようとする。その未練がましい姿に、近くで壁に背中を寄りかからせて立つヒロシは「…とーぜんだな」と呟く。その言葉に、ジョージはピタリと足を止めるのであった。
「う、うるせぇな!!人のラブロマンスにケチつけるんじゃねぇっ!!」
「どうせなら、戦いが終わったその時に言えばよかったんじゃないか?事前に言うと死ぬって言い伝えが日本にあるぞ。隊長はそれも知ってるから、怒ったんだろう」
「え!?そうなのか!?や、ヤベェ、俺とんでもないない事言っちまった。な、なぁ、どうやったらそれ回避出来る?」
「…全力で彼女をお守りすればいいんじゃないか?勿論、任務を遂行してな…」
「あ、そっかぁ…そうすればいいんだなっ!!よーし見てて下さい隊長!!必ずこのジョージが貴方をお守りします
っ!!」
再び、想いを燃えがらせ叫ぶジョージと、
「…ふっ」
苦笑するヒロシ。そんな二人を目の当たりにしたディーンは純粋な笑顔を穂乃花に見せた。
「な、リラックスしてるだろ?」
「アレ、リラックスって言えるの…?」
彼女が疑問を持つのは当然である。今の一連の騒ぎは、正直に言えば当事者にしかわからないからだ。すると、艦内放送が流れ始めた。
『当艦は四十分後に未来島へと上陸する。戦闘要員は直ちに第一甲板に集合せよ。繰り返す、当艦は…』
指示通り、第一甲板に集まった戦闘要員。十数列に並んだ屈強な彼らの中に、穂乃花やイリア、ディーンも混じっていた。
「オッホン!!」
緊張感漂う雰囲気の中、戦闘要員を前にして貫禄溢れる白ヒゲを蓄えた老兵の艦長が口を開いた。
「改めて自己紹介をしよう。ワシは当艦艦長の谷田康成(たにだやすなり)だ。諸君らはもう聞いたと思うが、作戦を簡単に説明する。左門くん、説明を」
「ハッ」
ショートヘアーを七三分けにし、眼鏡を掛けた若い女性軍人が呼ばれて前に出た。
「まず、先日より島の出入りを繰り返すバドリードを宇宙衛星で追跡したところ、未来島は海底130mの太平洋に潜伏している事が判明しました。そこで、アクアパーツ装備のテグサーチームに島へ牽制して頂き、その後、当戦艦のシータートルは後続として海底に潜り、機首で島の脆い箇所、港口の壁に向けて『体当たり』をし、壁を破壊して侵入します」
「次にその機首口と、現在後方にて追尾する潜水艦から各員は出撃。分担として防衛軍を中心に、各企業の私兵とラントムチームは居住区の制圧後、JSAを設置し、これを発動。テグサーチームは総統閣下の確保をして頂きます」
「そして、島を完全制圧した際、オンラインを通じてジン・バイル総統と人類側の代表、世界連盟と会談の場を設けて停戦協定を結ばせます。以上です」
「うむ、ご苦労」
谷田は髭に触れながら、左門に礼を述べる。それからは、『決着』を共にする戦友に向けて、静かな視線を送った。
「諸君、十年だ…人類は十年間、この時を待っていた。両陣営の戦いを終わらせる、最後の戦いを…恐らく、ジン・ガイア側は最後故に必死の抵抗をし、激戦は免れないだろう。しかし、我々は必ず勝ち取るのだ!!人類の自由と平和を求めるためにっ!!諸君の勇気ある健闘を祈るっ!!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
谷田の敬礼に防衛軍と私兵達は一斉に敬礼を返す。
「は…ハッ!!」
その中で、穂乃花と茜は周りの大人達に一歩遅れて敬礼をするのであった。すると、一人の防衛軍軍人が息を切らして谷田の元へとやって来た。
「か、艦長…!!」
「どうしたのかね?」
「それが、島が…未来島が浮上、現在海上にて無防備に浮かんでいますっ!!」
「なんだと…!?」
今まで見つかるまいと息を潜めていた未来島が浮上する。予想外の行動に防衛軍兵士は静かにお互いの顔を見合わせ、私兵達は小声でざわつき始めていた。
「その浮上後の動きは?」
左門の問い掛けに来た軍人は答える。
「ハッ、それ以降の動きはありません。攻撃を仕掛ける訳でも、逃走する訳でもなく静止しています。艦長、どうしますか?」
「ウウム、浮上したという事は、島への侵入は容易になる。そんな事は相手もわかっている筈だが…よし、引き続き予定通り進軍する。但し、警戒をより一層強化せよ。後続艦にもそう伝えてくれ」
「ハッ!!」
軍人は元来た道を駆けて戻る。去る彼を見届けた谷田は一つ咳払いをして列の方へと向き直した。
「…諸君、今聞いた通り、島は浮上したが艦が潜る点を除いて変更はない。相手はジン・ガイア人だ。正直、色々予測してもどんな作戦を使うかわからない。最後まで慢心する事なく任務を完遂してくれ。以上、解散!!」
谷田の号令と共に各員一斉に散り散りになった。
これでいよいよ戦いは終わる。
この十年の決着をつける時が来た。
でも、なんで島が浮上した…?
それにしても、この決戦が終わったら、それで全て終わるのか?もしかしたら、この先も戦い続けるのでは…?
とにかく、ここで頑張らなきゃ!!今ここにいないトウマ達のぶんまで!!
散る人々の波の中、各々はそれぞれ思いを巡らせる。迷いもあった。しかしそれでも艦は前進する。十年の争いを終わらせる為に。
19-4
何故突如として島が浮上したのか?
その疑問は、ジン・ガイア人側も持っていた。
「えっ、島の制御指令室の扉が凍って占拠されている?二代目イエティマンの吹雪光線で?そんな物、さっさとバーナーで焼き切って…それでも十分かかる?三分でどうにかなさいっ!!」
ジン・バイル総統閣下専用執務室。そこでミルメは電話相手に急かしていた。
「…どうだ?」
彼女が通話を終えたと同時に、ジン・バイルは彼女に様子を聞いた。
「はい。島の浮上の原因はやはり制御指令室に閉じこもったバドリードが操作したのが原因だと整備担当が申しております」
「そうか…」
「閣下、このままでは防衛軍がもう間もなくでこの島にたどり着きますっ!!そうすれば形勢の点で相手が有利です!!お早く、決断をっ!!」
「うむ…まずはあそこが機能しなくてはなにも出来ん。各部署や外に指示やコントロールも出来んしな…よし、私が行こう」
「は?なにも閣下が行かれなくても…」
「構わん、そろそろ奴と話もつけねばならん時が来たと思っていた時だ。ヅノン、ミルメ、ついて来い」
「ハッ!!お供致しますっ!!」
ヅノンは液体に満たされた水槽の中、脳味噌のみの体を揺らして了解し、水槽外に取り付けられた機械の体を操作してジン・バイルの後に続いた。
「くそっ、ダメだ全然開かないっ!!」
「もう約束の時間を優に超えているぞ!!中の皆も心配だ…」
その頃、完全に凍りついた制御指令室の扉の前でジン・ガイアの兵士達は必死で融解を行っていた。ある者は戦闘用バーナーで焼き、またある者は怪人態となって光線や溶解液を代わる代わる吐いて。しかし、依然として扉を包む氷は溶ける素振りを一切見せなかった。
「おいどうしたんだよ皆!!このままじゃいつまでたっても溶けないぜ!!」
そんな彼らの背後で、マツナガはコブンロを連れて怒鳴り散らしていた。
「くそっ、イエティマンの力程度なら簡単に溶かせる筈なんだが…一体この力をどこで手にしたんだ?いやそれよりも、早くしないとミルメは勿論、閣下にまでどやされるぜっ!!特に閣下は、一度怒ると色々と取り繕う必要があるし…な」
いきり立つ彼は背後に気配を感じて背後を振り向いた。そこにいたのは、物々しい雰囲気のミルメとヅノン、そして我等がジン・バイル総統閣下の姿であった。
「い、いやでも、勿論普段は素晴らしい方ですよ!!いつも俺に気をかけてくれるし、我が帝国の軍服もピッタリ素敵ですし、え、えぇと、あとそれから…」
一気に血の気が引いたマツナガは死ぬ気で取り繕う。そんな彼に、ジン・バイルは軽く手を触れて脇へとどかすだけであった。
「…全員、下がっていろ」
「「「「「ハッ!!」」」」」
ジン・バイルの命令に、マツナガを筆頭に氷を溶かしていた者達は全員横一列、乱れることなく廊下の端へと下がった。
「こんな氷など…」
ジン・バイルは凍る扉に手をかざす。その手は黄金色に輝いていた。
ジュゥゥゥゥゥゥ…
扉に触れられることなく、輝く手によって瞬く間に融解。流れ落ちて、通路一面が水浸しとなった。
「す、すごい、変身することもしないで…」
「流石は閣下だ…」
周囲の声に構わず。
「…マツナガ」
ジン・バイルはやっとかと言わんばかりに自動的に開いた金属の扉から一歩、指令室へと進む。
「…マツナガ」
返事のないマツナガにジン・バイルは足を止めて再度彼の名を呼ぶ。それにハッとしたマツナガは「あ、は、はいっ!!」と背筋をピンと張って返すのであった。
「この島全域に第一級防衛態勢を出せ。それからの指揮は貴様に任せる。貴様はこの島のやりくりに長けているからな」
「りょ、了解!!しかし、閣下はどうされるんですか?第一級ならば閣下の避難を優先すべきでは…」
「…私の事は構うな。話はすぐに済ませる…頼んだぞ」
ジン・バイルはミルメとヅノンを連れて扉を閉める。それと同時にコブンロ含め、その場に残された者達全員はマツナガの下に集合した。
「兄貴~、どうしましょうか…たぶん、島が潜る前に、人間どもが攻めて来ますぜ…」
「えぇい、わかっとるっ!!ウサラビ、お前は全力疾走で人類が攻めて来るのと第一級防衛態勢を取る事を島全域に伝えろっ!!行けっ!!」
「は、はいっ!!」
ウサラビと呼ばれた赤目の兎型怪人はピョンピョンと飛び跳ね一瞬で長い通路を後にした。
「コブンロ、砲撃手に連絡して、少しでも時間を稼ぐよう連絡しろっ!!それと観測員に、レーダーは人型サイズを優先的にサーチするようにも言うんだっ!!恐らく、テグサーマン達が先行して攻めるに違いないからなっ!!」
「合点でいっ!!…う、うわっ!!」
コブンロが了解したと同時に島が大きく揺れた。床が水浸しという事もあって、転倒する怪人もいる程の揺れであった。刹那、彼らは一斉に騒ぎ出す。
「い、い、今の砲撃じゃないかっ!?畜生、外の連中と連絡が取れないってのに…」
「も、もうダメだ、俺達はおしまいだぁ~!!」
「このまま皆やられて、捕まえられて、サーカスとかオークションで売買されて、特に俺達みたいなのは値下げ交渉とかまとめ売りの対象にされるんだぁぁぁぁっ!!」
それでも、マツナガは檄を飛ばしながら、部下達に指示を出す。
「落ち着けお前らっ!!こんなのは単なる牽制だっ!!売られたくなかったら、さっさと行動しろ、急げっ!!」
「あ、待て、キノーゴン!!お前は第三倉庫に行け、そこでジュイに会って…」
「おい!!強化装甲をありったけ装備させろっ!!体力の低いのから優先だぞっ!!」
言われた者から順に、行き交う足と足。跳ねる水。それらを見て耳にしつつ、マツナガは一人考えた。
(一体何故だ…!?どうしてバドリード様は制御指令室を占拠、島を浮上させたんだ…!?そして閣下のあのご様子…なにか重要な秘密を話し合う感じだった…まさか、この前の隕石が関係してんのか!?だとしたら…いや、今は閣下やミルメに任せよう。俺は、俺の仕事をするだけだ!!)
そう言い終える前に、彼は駆け出して自身の持ち場へと向かった。最後の一人が去って静まり返る通路。その一室、制御指令室でも、静かなる対峙が行われていた。
「バドリードよ…これはどういう事だ?」
ジン・バイルの足下には何人ものジン・ガイアの兵士が倒れている。それも、体の至るところを喰われ、見るも無惨な姿で。
「どういう事、とは?私はこの帝国のルール、強い者が勝つ、に従ったまでですよ…ぺぇっ!!」
バドリードは怪人態の姿で、口内の血を吐き出す。野生動物とも見えるこの姿を前に、ジン・バイルより前に出たヅノンは怒鳴る。
「貴様!!人間どもに後をつけられ、島の所在を知られた挙げ句、島を浮上させるとは何事か!!今まで目をかけてやった恩義も忘れたのか!?」
しかしそれでもバドリードは飄々としていた。
「あぁ、そうでしたね、そんな事もあった…ですが、もうそんなのは昔の話。今さら改めるコトはないでしょう?なぜなら、私はもう、この帝国に従う事はありませんから…そう、これからの私は地下に眠る隕石の下へ従い、新たな世界の頂点へと返り咲くから!!」
「な、貴様…!!」
いきり立つヅノンに、ジン・バイルが更に前に出た。
「バドリード…我が帝国は国民の多少の失敗や敗北は許すようにしていた…例え負けて怪我で戦力として使えなくなっても、今後の同胞を思えば…だが、帝国への裏切りと勝手な真似は許さん!!」
ジン・バイルはその身体を怪人態へと姿を変える。
「はぁっ!!」
その姿はまさしく全身マグマと岩石。その中で鋭く白い目が威厳を放っていた。
「…」
その横で、ミルメもまた変身する。白く、強靭な牛型の怪人へと。
「遂に来ましたか、その姿…八年前の北東アジアでの戦いを思い出しますねぇ…」
「覚悟するがいい、バドリード…!!」
ジン・バイルは掌からマグマの渦を放つ。同時に、ミルメも頭部の角から電撃光線を放った。
「ふん、その程度…」
同時に迫る攻撃を前にしても、バドリードは臆する事なく腕を横に振る。その腕からは小魚を模した魚群の光が放たれた。迫るマグマと電撃はそれらと激突。その瞬間、室内がまばゆい光に包まれた。そして次に、魚群は二人の攻撃を喰い尽くし、その勢いが落ちる事なく二人へと向かった。
「くっ!!」
「わっ!!」
ジン・バイルは魚群の一部を体外へと放出する熱で溶かし、ミルメは飛び跳ねて避ける。残りの魚群は僅かな差で二人の傍を通過、奥にいたヅノンが入る水槽へと直撃した。
「ぐ、ぐわぁぁぁっ!!」
水槽のガラスは魚群によって粉々に砕け、液体と共に本体が漏れ出す。ヅノンは粘着力のある音と共に、床へとこぼれ落ちた。
「く、くわぁぁ…」
彼は這ってその場から遠ざかろうとした。しかし、極小の手は地を這う事に向いていなかった。
「ヅノン!!」
部下の痛手にジン・バイルは思わず振り返る。
「か、閣下…奴にこんな能力とパワーはありません…恐らく、ドクターヒポポタマスが言っていた隕石から力を得たのかと…き、気をつけて…」
言い終えると、ヅノンはぐったりと身を伏せた。露出している角膜が、静かに閉じる。
「く、バドリード、貴様ァァァ!!」
ジン・バイルは怒りに身を任せてバドリードに突っ込む。それは横のミルメも同じであった。
「来るか…!!」
「はぁっ!!」
ジン・バイルは燃え盛る岩石の拳を振り下ろす。バドリードはその拳を左腕で受け止めた。
「ぐ、つぅっ!!」
バドリードの腕に煙が立つ。マグマの熱で焼けているのだ。
「だが、今だっ!!」
火傷で顔を歪ませるものの、バドリードは合図する。それと共に、隠れていたイエティマンがジン・バイルに襲い掛かる。口から吹雪を吹くと、ジン・バイルの背中はたちまち凍りついた。その隙を狙ってバドリードは再度、魚群光弾を放とうと右腕を構える。
「舐めるなっ!!」
ジン・バイルは全身の火力を上げ、氷を溶かし、背中から噴火の炎を放った。
「グゥォォッ!!」
イエティマンの全身は炎に包まれ、徐々に徐々に焦がれていく。
「ふんっ!!」
トドメと言わんばかりにミルメは角からの電撃光線でイエティマンを撃つ。獣の身体は炎で脆くなったのもあり、雄叫びを上げる事なく即効で消し炭となってその場に転がった。
「これで貴様の狼藉も終わりだ…!!隕石に勝手に触れた事、帝国を乗っとろうとした罪を償え…!!」
ジン・バイルは拳に全体重をかけて押し潰そうと前のめりになる。これに対し、バドリードはニヤリと笑うだけ。
「この時を待っていた…あなたが私に接触する事を…!!」
「さぁ、来て貰おう。隕石のある地下室…そう、あのお方の下へ!!」
彼は、ジン・バイルの腕を両腕で掴むと、地面へと潜り込んだ。まるで、水中へと沈むかのように。
「な、なに、この力は…!?」
ジン・バイルは驚愕した。自身も同じくして、地面に沈んでいたからだ。
「か、閣下っ!!」
地面に消え行くジン・バイルを助けようとミルメは腕を伸ばす。しかし、彼女もまた同じく地面へと沈み行くだけであった。そして三人が潜航した先、そこは未来島最下層であった。
「ぐ、ぐぉっ!?」
天井から出たジン・バイルは身体が徐々にそこから離れ、最後にはミルメと共に宙に放り出されて地面にぶつかった。その傍ら、バドリードは慣れた様子で着地する。
「き、貴様…!!」
「おっと、総統閣下!!ここではマグマは使わない方がいい。あのお方が目覚めてしまう」
「なに…!?」
ジン・バイルはバドリードが指差す背後を見る。そこにあったのは、静かに眠る隕石の姿があった。
「閣下、賢明なあなたならご存知の筈だ、この隕石のコアは高温で目覚め、最終的には島の崩壊に繋がる事を…」
「ぐ、ぐぅぅ…」
バドリードの指摘でジン・バイルは手中のマグマを抑える。彼の表情は怒りと悔しさを理性で無理矢理押さえつけた、激しく歪んだ物であった。
「閣下、ならば私が!!」
この時、やっと起き上がったミルメがバドリードに向けて駆け出す。そして、相手を目掛けて拳で何度も殴りつける。バドリードはこの連続攻撃をガード。柔軟な鱗の腕に拳がめり込む。その刹那、苦しみながらもバドリードはミルメの腰に膝蹴りをお見舞いした。だが、相手の強靭な皮膚を前にしては、この一撃をものともしなかった。
「むっ!!」
バドリードは攻撃が効いていない事に一瞬驚く。間髪入れず、ミルメは角でバドリードを天高く突き上げた。超高速で天井へと飛ばされるバドリード。しかし、彼はその天井を蹴り、その勢いでミルメの元へと戻ると、彼女の角を両手ずつ、倒立の状態で掴んだ。
「ふぉぉぉっ!!」
雄叫びと共に、バドリードは力をこめて地面に向けて倒れ込む。ミルメは彼を軸に体を一回転させられ、地面に容赦なく叩きつけられた。遠心力を利用したその破壊力は凄まじく、硬質の床が割れて破片となって、周囲に飛び散る程であった。
「あ、あぁ…う、うぐぅ…!!」
ミルメは衝撃で悶絶。俯せに倒れたまま人間態に戻る程であった。バドリードはそんな彼女を嘲笑い、背中を踏み付ける。
「さぁ、閣下?次はあなたの番です。あなたを倒し、力を頂く事で、私の目的、真の支配者への目覚めが完遂されるのですから」
「なぜだ…なぜそうまで貴様は新たなる世界にこだわる!!今の地位では不満だというのか!!」
「その通り!!閣下、あなたは私が戦場で重傷を負った時、その場に捨て置こうとした!!八年前のあの時だ!!そんな閣下の支配下など、とっくに愛想が尽きていたのですよ!!」
「あれは違う!!あの時捨てようとしたのは部下が言った事、私は貴様の頭脳はまだ使えると返したのは私だっ!!」
「ふん!!今なら口でなんとでも言える。所詮あなたも私と同じ、支配された存在だというのに!!」
「なに!?どういう意味だ!?」
「ふん…」
バドリードはジン・バイルに背を向け、パソコンを起動する。前回彼が閲覧していた物と同じパソコンである。
「閣下、我々軍事部の階級は一等士、二等士…と続き、それは各々戦場での強弱で定めていた。しかし閣下、我々がそう定める前に、あなたは頂点として君臨していた…それも、戦場なんて碌に出ていないにも関わらず…何故でしょうか?」
「答えは簡単…あなたがあのお方に造られた第一号だからです!!」
「…!!こ、これは…!!」
ジン・バイルは驚愕する。古ぼけたそのパソコンに映し出されていたのは、事細かに書かれた怪人態の自分のデータであったからだ。
「ば、馬鹿な…!!私自身のデータは、機密保持の為にどこにも書かれていない筈…いや、それだけじゃない!!私しか知らない、胸のコアがマグマの噴出源になっている事まで…こ、これは一体!?」
「まだお分かりになりませんか?あなたはこのデータを元に造られたのですよ。十年前、一人の人間によって、製作第一号としてね…」
「う、嘘をつけ…!!私が…いや、我々が人類によって人工的に産み出されたというのか!?宇宙から来た隕石、そこから自然に産み出されたのではないのか!?それがドクターヒポポタマスが出した真相ではないのか!?」
「相変わらず単純な考えだな、あなたは。もう一度言いますが、あなた、いや、我々は造られた。その目的は我々を駒として人類と戦って、戦い抜いて、戦闘データを元に進化をする為に…」
「なんだと…!?そんな事が…一体、なんの為に…!?」
「そんなの、決まっている!!全ては、この世界の真の頂点に立つ為に!!だからあのお方はこの十年待ち続けたのですよ、この隕石の中でねぇ!!…言っておきますが、この星の頂点として君臨するのはジン・ガイアの民ではない。最後に立つのは超進化したあのお方とパソコンを通じて連絡し、その究極の力を頂戴した…この私だっ!!」
「…バドリードォ!!貴様は…!!」
「やがてこの星は帝国の理念、単なる人類に取って代わって一つの種族がヒエラルキーの頂点なるのとは真逆、私が望む変わった地球で完全なる選ばれた少数の者だけが完全な頂点として君臨する世界となるだろう。だがそれがいい。それこそが、意思ある者のあるべき真の姿なのだからなぁ?」
「そんな事はさせん…この地球は、あるがままの姿であるべきだ。そしてなおかつ、その世界の頂点となり、管理するのが、我らがジン・ガイア帝国、その国民を守るのは…私だぁっ!!」
ジン・バイルはマグマを吐き出す事なく右ストレートパンチを繰り出す。迫力ある彼を前に、バドリードはただ、フッと笑みをこぼすだけであった。
「甘い!!あのお方…ゴッドラスト様から究極の力を得た私と、余計な者を抱えたあなたでは、雌雄は決したような物だっ!!」
バドリードの右足はミルメを足蹴にし、室内の端へと吹き飛ばす。その瞬間、ジン・バイルの拳が彼の顔面に迫る。バドリードは拳を手首同士を合わせた両手で受け止めると、彼の鮫の頭部が伸び、ジン・バイルの顔面に喰らいついた。
「ぐぅあああっ!!こ、この力は…」
ジン・バイルの頬から大量のマグマがドロリと流れ出す。それが地面に着き、熱で床を溶かすと、バドリードは「今だっ!!」と叫んだ。隕石はその声に呼応するように石肌を割って触手を伸ばす。
「こ、これは…!!まさか、これが、これこそが、この隕石の正体…!!」
ジン・バイルが驚愕したのも束の間、触手は彼の上半身、腕を縛り上げ、宙へと浮かせた。
「う、うぉぉぉぉッ!?」
見上げたバドリードがニヤリと笑う。
「くっくっくっ、さぁいよいよだ…」
その表情を見つつジン・バイルはもがく。だがその瞬間、触手は容赦なく、彼の背中を貫いた。
「な、なんだ!?ぐぅぅぅぅ、力が抜け…」
触手は、ゴクゴクと彼の力を吸い込む。管が黄金色に透き通る程に。ジン・バイルは逃げようと更に必死でもがく。しかし、力が弱まったのもあって、バドリードと触手の拘束を逃れる事は不可能であった。
「う、う、うぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ…!!」
ジン・バイルはどうにもならない状態に力なく叫ぶ。それらが終わると同時に、彼の体は人間態の姿となってその場に落ちて、倒れ込むだけであった。
「ふん、終わったか…どうやら、本体はいらない程に満腹になったようだな…」
バドリードは腕を組みながら、倒れ込んだ上司の様子を見下して笑う。そして次に見たのは隕石。今か今かと待ち構えるかの様に鉱石部分が激しく点滅し、光り輝いていた。
「これで植物で言う肥料や水は十分に揃った…残りは邪魔な害虫を駆除するだけか」
バドリードがここまで言った瞬間、くぐもった激しい音と共に、室内が大きく揺れた。
「この音は砲撃と…そうか、ようやく来たか、このタイミングこそゴッドラスト様の誕生、そして私の新たなる人生が訪れる…」
「ふふふ…はははは…ひゃははははははっ!!人類共よ、早く来いっ!!己の首を絞めになぁっ!!あーはっはっはっは…!!」
冷気がいまだに漂う室内でバドリードは一人、激しく高笑いする。
その一方。
「来やがったか…各員、白兵戦用意!!」
島と種族を守ろうと躍起になるマツナガと帝国民。
「これで…これで全てを終わらせるっ!!出撃っ!!」
最後の戦いだと願って出撃する、谷田率いる人類。
「ダメですっ!!戦艦に、通信届きません!!」
「通信妨害だっての!?とにかく急ぐわよっ!!」
高速艇内でかつての部下に指示を出すモーラと、その傍らでノートパソコンを抱きしめる飛田。
「…」
そして、彼らを待ち構えるかのように目覚めの時を待ち構える隕石と、『ゴッドラスト』。
この地球の運命を大きく変える四大勢力の戦いが、今、始まる。
だが、そんな彼らはまだ知らない。『レミー・旋風』と記された遺体と、旋風重工内で保管されているテグサー1が誰にも知らされず僅かに動きつつある事を。そして、これが意味する事も。
どうも皆さん!!
いよいよ決戦が近付いて参りました!!
一体、どのような決着が付くのでしょうか!?
そして、裏で動き出すゴッドラストとは…!?
今回は防衛軍の兵器一覧と、
【挿絵表示】
ここまでの怪人のご紹介で失礼致します!!
【挿絵表示】
※第十六話~第十九話までの登場怪人。
・(右上段)グラビトリー:身長2.3m、体重450㎏
ドクターピポポタマスが作った役獣。地中から奇襲して、重力を操るといった戦闘力を持つ。
・(右下段)ブリレト:身長1.5m、体重50㎏
ドクターピポポタマスが作ったメカ。自爆機能がある。
・(中上段)シープランド:身長2m、体重90㎏
羊型の怪人級でマツナガの部下だが、帝国に眠る隕石に吸収された。
・(中下段)ヅノン:身長50cm、体重25㎏(水槽除く)
脳型の幹部級。IQ1000の高知能で戦術に長け、帝国十年間の戦いを支えた。
・(左上段)メガメタル:身長:10m、体重750t
怠惰な権力者に不満を持つ高専生の人間、ユラ達が開発した搭乗型マシン。
・(左下段)ウサラビ:身長1.5m、体重55㎏
ウサギ型の怪人級。マツナガの部下で抜群の脚力を持ち、連絡係を務める。
それでは、また次回!!
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