・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
20-1
時刻は日本時間にして午後四時二十三分。シータートルが未来島へと突入する直前の時、日本のとある市内にある大学病院内の遺体安置室には日々、様々な人間の遺体が眠らされていた。今、ここに生きている人はいない。職員は全て事務所等で自身の職務を全うしているからだ。
しかし、固く閉ざされた筈である一つの冷蔵保管庫扉が突如として『ガタガタ、ガタガタ!!』と音を立てて暴れ出す。そして一瞬静まり返った次の瞬間、その扉は内部からの強烈な力によって吹き飛ばされた。内部から伸びているのは脚、それも人間ではない、純白で美しい脚であった。その身は凍る保管庫から冷たい室内へと移動。タイル張りの床に着地したのは、人ならざるその姿は例えるなら天使、こめかみに白い羽根が生えた小さく、細身の怪人であった。
「う、うぅ…」
少女の声を発した怪人は辺りを見渡す。無機質に並ぶ保管庫、白い壁。そして、先程吹き飛ばして落ちた、金属の扉に書かれた名前。
「れ、ミ、ィ…?」
『レミー・旋風』を。
「わ、たし、ここ、に…?私、は一体…?」
扉の名前を知り、困惑する彼女は腕を軽く上げる。視界に入ったのは、羽根が周りをひらりと舞い、人間とは思えない純白の自身の腕であった。
「あ、あ、あぁあ、あぁ…!!」
その瞬間、彼女は自分の姿がなんであるかを理解し、叫び、背中の羽根を広げ、飛んだ。その先にあるのは硬質な壁。しかし、彼女はそんな事を気にする事なく、その壁へと突っ込み、壁を割って外へと飛び出した。
「な、なんだ!?なんの音だ!?」
少し間を置いて、安置所の職員達が現場へとなだれ込む。この時、既に怪人の姿はなく、職員達は壁に開いた大きな穴だけに驚く他なかった。よって、誰も怪人がその場で暴れたという事は誰も知らない。そう、人間であるならば…。
宇宙。
質量を持たない巨大な『それら』はそこで地球を見下ろしていた。
『間もなく始まる…意思ある者同士の戦いが…』
『その元凶も…目覚めた…』
『やはり地球は、生命は、高度な意思を持つ者達は滅亡を選んだ…』
『人間は…強大な力を持てば…際限なく利用する…己の為に、内輪の為に…』
『この星…失敗…』
『また、もう一度造らねばならぬ…』
『新たなる星は…近く…完成される』
『始祖が…必要不可欠…』
『地球からの選出者は…もう決まった…』
『我々を知った…富田の子孫がいる…』
『それら』は手を出し、なにかをすくう。その手にあった物は白く光り輝く人間。富田トウマの姿があった。
『後は…彼の意思次第』
『恐らく彼は…真実と滅亡の未来を知れば…この星から去り…』
『そして、新たなる始祖となるだろう…』
その時、『それら』はピクリと反応し、再度地球を見た。
『戦いが…始まった』
『…この宇宙より来たるアレが目覚めれば…両種族は…滅亡する』
『だが、もう手遅れ…我々ではどうする事も出来ない…』
『そう、死したる我々では…』
『それら』が言うように、地球ではかつてその人間が造り上げた島、未来島で両種族による激闘が始まっていた。
「人間共が攻めて来たぞぉっ!!撃て、撃てっ!!」
港口では敵を入れまいと、怪人級、戦闘員級達が突入したシータートル目掛けて光線や火炎弾、機関銃を放つ。その攻撃でシータートルは爆風に包まれる。その場のジン・ガイア人が勝利を確信した。その瞬間、その煙の前の水面から四つの影が飛び出した。それはテグサー2、3、4、そして変身したディーンであった。
「とぉっ!!」
空中でアクアパーツを取り外したテグサーチームは港口に着地、周囲のジン・ガイアの兵士は狙いを彼女達に向けた。
「はぁっ!!」
彼らが攻撃行動に移るより早く、テグサー3は鞘から天下無双刀を抜いて、眼前の敵を斬る。一体、二体、三体と、目にも留まらない技前で。
「ぐあっ!!」
火花を散らして倒れる怪人級。残心するテグサー3。
「風竜剣・フルバースト!!」
「スロットル・ロッド!!」
「ディーン…ブレイカー!!」
その背後ではテグサー2、3もまた、ディーンと共に多くの敵を武器を振るって蹴散らしていた。
「…よし、各員出撃せよっ!!」
ジン・ガイア兵士の陣形が崩れた事を、ブリッジから見ていた谷田は通信機を持って指示を出す。シータートル脚部が開口する。そこからは高速のボートが数十艇出撃した。四人のラントムチーム、この日を迎える為に技術を結集させた各企業の多種多様の装着私兵と、常に前線で戦い抜いた防衛軍の装着型装備、メニーを乗せて。
「全員、出撃しましたっ!!」
谷田の傍の席で、左門が彼に報告する。
「よし、撃てっ!!少しでも上陸を手伝うんだっ!!」
シータートルは両目からレーザーを撃ち、鼻腔から伸びた機関砲を連射する。着弾により、港口は至る所が連続して爆発、コンテナやクレーンが崩れ、煙は狭い密室である港に充満した。その隙を狙って、上陸組はボートを港に乗り上げさせ、各々一斉に突入を開始した。個々の力量ではジン・ガイアに軍配が上がる。だが、テグサーチームの先陣を切った攻撃と、シータートルの砲撃が陣形を崩した事で、人間側が優勢な立場となっていた。
「テグサーチーム!!ここは私達ラントムチームや皆に任せて!!早くジン・バイルを捕らえて頂戴!!」
飛び交う銃弾、光線、溶解液。激突する鋼と獣。そんな激戦の合間を縫って、スケールヘヤーを振り回して敵をなぎ払うメデューザはテグサーチームに呼びかける。
「応ッ!!」
それにいち早く応答したのはテグサー3。背後を狙って襲い掛かる鼠型怪人を振り返って一振り斬り倒した後、チーム仲間に「行くぞっ!!」と、指示を出した。
「ん、確かにここは彼らだけで大丈夫か…二人とも、行こう?」
ディーンは四脚のガードマシンを貫いた青竜刀を、相手を蹴って抜きながら、指示があった事をテグサー2、
4に促す。
「よっしゃ、フォーチェイサー!!」
テグサー4の呼びかけに、シータートルの脚からフォーチェイサーが発進、海を越えて滑空し、所有者の元へと着陸した。
「涼ねぇ、乗って!!」
「ああ!!」
テグサー3は4と二人乗りでフォーチェイサーに座る。テグサー4がアクセルを空ぶかしする間、残りの二人が集まった。
「よし、このまま一気にジン総統の元へと行くぞ。ディーン、道案内を頼む」
「うん、任せてよ」
ディーンは案内人として先行して飛び、その後をテグサーチームが追う。彼らは速度を上げて爆走する。他部隊の激闘による硝煙と、終戦への期待を背に受けながら。
数分後。爆走するチームの目に飛び込んで来たのは鋼鉄の通用口。その前には扉を守る戦闘防具に身を包んだ戦闘員級数名が機関銃を乱射して待ち構えていた。
「邪魔だっ!!」
ディーンは出力を調整し、放射状のディーン・ブレイカーを放つ。放たれた超音波は戦闘員級の腕を直撃、痛撃によって彼らは携行した銃を次々と落とす。
「今だ、はぁっ!!」
ディーンの放った蹴りは、鋼鉄の扉を蹴破る。扉の先にあったのは、港口と比較して狭く、天井も人間向けサイズの一本道の通路。居住区を通る事なく先に進める事を、ディーンは知っていた。彼はすぐ後ろから来るテグサーチームに『来い』と合図し、狭い通用口ながらも、器用に猛スピードで前進飛行した。
「ディーン、ちょっと待って、早いよ~!!」
テグサー2は手を伸ばしてディーンを追いかけ通路へと侵入。フォーチェイサーも並走してその奥へと走り抜けた。
『…港口は制圧しました…そちらは如何ですか!?』
進み続け、通路を突き進む四人は通信機から聞こえる左門の声に、思わず顔を見合せる。
「こちらディーン。現在は未来島三階部分を走っている。後五分程で総統の執務室に到着予定だ」
『了解しました。現在、防衛軍と各企業の方々は軍事部、居住区の制圧、並びにJSAの設置準備を行っております。もう間もなくで、防衛軍側の者が何人かそちらに…』
「…」
『…あっ、ご安心下さい、ディーンさん。居住区の住民には過剰な武装制圧は行っておりません。むしろ、身の安全を条件に挙げた事で住民側は大人しく従ってくれたと、ジョージさんから報告がありました』
「…そうか、それを聞いて安心した。冷静な方がいてくれて、助かるよ」
『今回の任務は殲滅ではなく、一時的な制圧。それを念頭に置くように再三伝えていますから』
「ありがとう。ところで、他部隊の戦闘の様子はどうだった?かなり激しかったんじゃないか?」
『それが…報告では各軍事部の抵抗が予想より遥かに少ないと聞いています。まるで統率がとれていない、と…なにか、策があるのでしょうか?』
「今のところ、それはわからない。念のために警戒を怠らないように伝えてくれ。それじゃ」
『了解しました。オーバー』
通信が切れた。僅かな沈黙の後、ディーンが口を開いた。
「…やはり、妙だ。ここが最後の砦だと言うのに、相手を全く見かけない…」
「大分走ったのにな…」
テグサー4は飛び続けるディーンを見上げた後、フォーチェイサーのスピードを緩めながら辺りを見渡す。周囲にあるのは右も左も無機質な壁、真正面には薄暗くて先が見えにくい相変わらずの一本道。何者かが出現する気配は微塵も感じなかった。
「やっぱり、他の港口の陽動が上手くいったのかな?ホラ、他の艦隊が戦うフリして逃げる、的な…」
フォーチェイサーの後部に手を掛けて走るテグサー2。ディーンは一瞬、後方の彼女の顔を見たが、フッと前を向き直した。
「それもあるのかも知れないが、それでもおかしい。やはりなにか事情があるのかもしれないな…ムッ、止まれっ!!」
突然、ディーンは腕を伸ばして誘導棒代わりに後続を止める。
「わわっ!!」
慌ててテグサー4はフォーチェイサーに急ブレーキを掛ける。その反動でバイクは後輪を上げて前のめり。手を掛けたままのテグサー2はグンッ!!と前方へ飛ばされ、ドスン!!と地面に尻餅をつくのであった。
「あいてて…どしたの、ディーン?」
「これは…なぜガイアランがこんなところに!?」
ディーンが注目したのは床一面にへばりつくガイアランの茎。それも十数人もの帝国の兵士がそれらに絡み付かれて干からびていた。
「これがガイアラン…?初めて見た」
「そうだ、俺達はここから生まれた…一体なにがあったんだ…ム、そこの角に誰かいるな…出て来い!!」
生存者の気配を感じたディーン。彼が指差した先は、十字の通路右方の角。暗がりの中でバレーボール大のなにかが震えてうごめいていた。
「その声は…ディーンか…?」
聞こえたその声はかすれ、息も絶え絶えであった。それでも浮いたままのディーンはハッとなり、地面に着くと同時に声を上げた。
「その声は…ヅノン…様!?」と。
「一体なにがあったのですか!?」
ディーンは帝国時代に戻ったように真摯な態度で問いかけながら跪き、ヅノンを優しく抱き上げた。
「フ、情けない話だ…バドリードが閣下を裏切り、私は奴の攻撃でこうなったんだ…」
「え、バドリードが…?それじゃあこの島の混乱ぶりは、閣下が指揮をしていないから…!?」
「そうだ、今はマツナガが全体の指揮を取っている…恐らくそれでも、もう間もなくでここは制圧されるだろう。だが、今はそれよりもお前に頼みたい事がある。閣下を…そして、この星を守ってくれ…!!」
「この星を…!?バドリードは閣下を使ってなにをするつもりなんですか…!?」
「バドリードは…閣下の力を使って、この島に深く眠る隕石…十年前にこの星に落ちた『アレ』を甦らせるつもりだ…あれはもう破壊は出来ぬ。何人であろうとも。目覚めるは、時間の問題だ」
「『アレ』を…!?それは、一体…!?」
「アレは隕石の中でこの十年ずっと眠り続け、力を蓄え続けてもいた危険な存在だ…詳細は知らないが、奴が甦り、力を解放すれば、この地球は短い期間で大地を腐らせ、海を汚す…ドクターヒポポタマスがそう言っていた…」
「そ、そんな…」
後ろで聞いていたテグサー2は思わず言葉を漏らす。ヅノンは彼女の方を見て、話を続けた。
「人間を守った戦士か…頼む、君達もバドリードの凶行から閣下を逃がしてくれ…アレは我々に力を与えた存在、手遅れだ…しかし…閣下のご意向とは全く違った物なのだ…」
「ご意向…?」
「閣下はこの星の頂点に立つと言った…だがそれはこの星を滅ぼすのを目指した訳ではない…我ら帝国民が安心して暮らせる為に、脅威になる物は制圧する。そういう意味で言っているのだ…」
「そもそも閣下はこの星の雄大な自然を愛されていた…見て、体感をする為に、何度も地上に降り立ち、決意を改めた事も…」
「その閣下が愛されていた物が滅びるのは、し、忍びない…頼む、隕石は制御室指令室から穴を開けて降りれば近い…今から行けば間に合うかもしれん…グハァッ!!」
ヅノンの体に限界が来た。それを知らせるかのように、彼は口からどす黒い血を吐く。
「わかりました。俺としてもこんな面白い人間がいる星が滅ぼされるのは耐えられません。そしてなによりも、裏切り者のバドリードも…必ずや止めてみせます!!」
ディーンはその血で全身が汚れた事を気にもせず、力強く了承する。その固い意思に、ヅノンは小さく微笑んだ。
「そうだ…最後にディーン…聞かせてくれ…」
「な、なんですか…?」
「お前はある日突然として我が帝国を去った…なぜだ?理由を聞かせてくれ、ないか…?」
「…それは、あのバドリードに仲間殺しの罪を着せられ、出て行かざるを得なかったからです。そして、もう一つ正直に言えば、人間側に興味深いのがいたからです。自分の得にもならないか弱い誰かの命を掛けて守って戦う戦士が…だから俺は、この戦いをいち早く終わらせる為、そんな戦士のいる人間側についたんです」
「そうか、やはりそうだったのか…奴め、こんな固い意思を持つ者を潰そうとしおっ、て…」
ヅノンがそう言い終えると、彼の軟質な体は脆く崩れ去り、ディーンの腕の中をすり抜けて冷たい床へと落下。散らばる、ヅノンであった肉片。最後を見届けたディーンは、すぐさま立ち上がった。
「皆、俺はヅノンの言った隕石の所に行く。ここから先は俺達ジン・ガイア帝国の問題だ。だから別行動を…」
「なにを言ってるんだ、ディーン?」
ディーンの決意を遮るように、テグサー3の発言が覆いかぶさった。
「ジン・バイルの身を探しているのは私達も同じだ。私達も同行する」
テグサー3の意見と同時に、2、4も頷く。
「…いいのかい?もしかしたら敵の罠かもしれないのに?」
「ああ、なにしろ、今閣下はどこにいるのか不明で情報不足だったしな。とにかく急ごう」
「…ああっ!!こっちだ、案内する!!」
四人の戦士は走る。『アレ』の復活を阻止する為に。一人の帝国人の屍を越えて。
20-2
未来島作戦総合指令室。島の各箇所の状況を確認出来るモニターを前に、数人の帝国軍事部オペレーターは矢継ぎ早に報告を続けていた。
「第三居住区制圧されましたっ!!」
「ブラックジャガー隊全滅!!防衛に当たっていた第四格納庫、占拠!!」
「マッドホース隊が支援要請を求めていますっ!!要請に応じますか、マツナガ様っ!!」
「ぐ、ぐぅぅぅ…撤退させろ」
司令官専用の席に座りながら、マツナガは唸るように指示を出す。その傍らではコブンロが心配そうに寄り添っていた。
「あ、兄貴…もうこの島はダメなんじゃ…大陸に行った連中とは連絡取れないし…」
「わ、わかっとるっ!!くそ、だからこの本国から各地の逐次投入は止めた方がいいって言ったのに…!!」
「こうなったら、もう降伏しましょ?無駄に皆、命を散らすよりはマシだ」
「し、しかしだな…それには閣下の許可が必要だが…」
「指揮は任せるって言ってたんでしょう!?なら、それには降伏どうこうも入ってる筈ですぜっ!!」
「それもそうだが…クソォ~…テグサーマンさえ、アイツらさえいなければ、勝てたかもしれないというのに…」
そう言いながら、マツナガは眼前のモニターに目を配る。どれを見ても自軍の劣勢は目に見えている。中には既に人間に捕らえられて一カ所に集められている映像まで映し出されていた。
「ん…?」
激闘の画面の中で、一つだけ他と様相が異なるモニターがあった。それは、制御指令室を前にテグサーチームとディーンが今まさに扉を開けようとしている映像であった。
「ま、まさかアイツら…おいコブンロ、お前、指揮官技能検定は終わらせていたよな?」
「へ?ま、まぁ…自慢じゃないけど、こう見えても満点で合格しましたぜ。皆も将来有望なリーダーになるって褒めてくれて…」
「よし、ならちょっとの間、ここを頼めるか?指揮を任せたい」
「う、うぇ!?そんな、どっか行くんですか!?なにしに!?」
「俺か?俺は制御指令室に行く。今、そこにテグサーマンとディーンのヤローがいた。つまり…閣下がピンチなんだよっ!!」
そう言うが早いか、マツナガは総合指令室から飛び出した。
「ちょ、ちょっと兄貴!?」
コブンロはマツナガを追いかけようとしたが、背中に浴びた「マツナガ様、ジュラーフ隊が指令を求めています!!」という声が彼の足を引き止め、そこから出す事を許さなかった。
「えぇい兄貴めっ!!ジュラーフ隊は第十七軍事区画に向かわせろっ!!奴の首なら地の利があるっ!!」
その一方、早くもマツナガは『30m先:総合指令室』と壁に案内が書かれている通路まで来ていた。
「はぁ、はぁ、閣下、待ってて下さいね…今、このマツナガがお守り致します…あなたさえいれば帝国はいつでも再建出来ますから…」
マツナガは息も絶え絶えながらも足の動きを片時も緩めない。そうこうしている内に総合指令室の前、開いた穴から侵入しようとするテグサーチームとディーン、そして合流したメニー装着の防衛軍兵士達の元へとたどり着いた。
「ま、待ていっ!!」
ギリギリで引き止めるマツナガ。
「ん?」
いち早く気付いたのは殿のテグサー3であった。その僅かな反応でも、他の者達は誰かが来たのかをすぐさま理解し、一度通路へと戻った。
「テグサーマン共、それ以上の狼藉はこのマツナガ様が許さねぇっ!!」
「なんだ、マツナガか…」
ディーンの冷淡な扱いとは対照的に、マツナガの気持ちは更に高ぶる。カメレオン型の怪人態へと変身すると同時に、緑色の全身を憤怒の赤に染める程に。
「なんだとはなんだぁ!?てめぇら閣下を捕まえに来たんだろぉ!?ならば、俺が相手になってやる、かかってこいっ!!」
「その件だが、どうやら閣下は今バドリードの手に掛けられている可能性がある。それも、地下に眠る隕石を目覚めさせる為にな…ヅノンが言っていた」
戦うポーズをキメていたマツナガであったが、ディーンの話を聞いた瞬間に強張っている体の力を緩めた。
「なんだと、ヅノン様が!?それで、今はどこに?」
「残念だが死んだ…バドリードにやられてな…」
「ま、マジかよ…そういえば、制御指令室の下は例の隕石の真下だった…」
「知ってるのか?」
「あ、あぁ…以前こっそり地下のそれをバドリード様や皆で見に行った時、シープランドがちょっとだけ目覚めさせた事があったんだ。ソイツは何本も触手を伸ばしてよ…皆を飲み込みやがったんだ…やっぱりアレはそんな危険な物だったのか…」
「そうだ、あれを目覚めさせれば地球が滅ぶと言っていた…だからここは俺達を見逃してくれ。早く行かねば手遅れになる可能性がある」
「わ、わかった…ここは見逃そう…でもその前に仲間に連絡を…アレ、アレ!?」
冷静になり、緑色に戻ったマツナガは懐の通信機を起動させる。しかし、何回も再起動させ、振れども振れども通信は遮断され続けていた。
「…やはりお前もこうなっているか。俺達も外部への通信は最初からだが、島に上陸した皆への通信が出来ない。一体何の影響なのか知らないが、一応合流した何人かの兵を閣下はこの先にいるぞとメッセンジャーとして本隊へ送り込んだ。時間がない、さっさと行くぞっ!!」
ディーンは先陣を切って制御指令室の穴へと入る。テグサーチームと防衛軍も追従した。
「えぇい、ディーンの言うことを聞くのはシャクだが…行ってやらぁっ!!」
迷うマツナガであったが、決意を固め、少し遅れて後を追うのであった。
「なんだ、これは…?」
未だに冷気が残り、室内の一部が凍りついたままの制御指令室。驚くディーンにマツナガは状況を説明した。
「コイツはイエティマンがここを凍らせたんだ。扉もな。でも不思議だぜ。アイツは皆の攻撃でもびくともしない氷を張らせる程をパワーを持っていないってのに…」
「なるほど、だとすると例の隕石が力を与えたんだろうな。恐らく、バドリードに対してもな…その証拠に、ここにいる筈のバドリードや閣下がここにいない。バドリードの新しい能力で下をすり抜けたに違いない…涼!!この真下だ、頼んだよっ!!」
マツナガの話を聞き、ディーンはテグサー3の名を呼ぶ。
「…任せろ」
それだけで呼ばれた張本人はなにをしてほしいか理解し、天下無双刀を抜いた。
「ツァッ!!」
紫電一閃、テグサー3は刀で床を円状に斬る。
「フンッ!!」
間髪入れず、ディーンは斬られた床を突き刺し、上へと持ち上げる。かくして、床に地下へと通じる『抜け道』が完成した。
「よし、俺が一番に入る。皆は少ししてから来てくれ。はぁっ!!」
ディーンはまたも一番に穴へと入り込み、なんの障害もなく冷たいコンクリートの地面へと着地した。その先に待っていたのは…
「…バドリードッ!!」
「やぁ、ディーン。よく来てくれたねぇ」
怪人態のバドリード。それも余裕綽綽といった態度であった。
「お前、後ろの隕石がどういう物か分かってるのか!?それを蘇らせたら、なにが起こるかわからないんだぞ!?」
ディーンはバドリードの背後を指差す。そこにあったのは、鉱石部分がドクン、ドクンと妖しく脈打って光る隕石であった。
「わかっているさ。だから、わざわざ閣下の力を頂いたのだからな」
「なに…まさかっ!!」
隕石の陰には倒れ込んだジン・バイル、そして折り重なるようにミルメの姿が。後方でテグサーチームやマツナガが天井から降り立ち、メニーがワイヤーで吊り下がると同時にディーンはバドリードがなにをしたかを理解した。
「なぜだ…なぜ、ジン・バイルの力を奪った!?目的はなんだ!?」
「聞きたいか?私の目的はただ一つ、隕石に眠るお方の元へと跪き、共に頂点となる世界を造り直す事だ」
「せ、世界を…!?」
ディーンと同様、後方のテグサーチーム達も動揺を隠せなかった。
「馬鹿な、そんな事が出来るのか?一体どこにそんな力が…」
「あるんだな、それが。なにしろこの十年、ジン・ガイアと人間の戦いの数々は、この隕石に眠るお方に記録され続けていたんだから。まぁ、我々の産みの親なら当然の能力だが…」
「産みの親…だと!?まさか俺達はこの地球の自然環境から産まれたんじゃなく、この隕石によって産まれたというの、か…!?」
「流石ディーン、理解が早くて助かる。しかも、わかりやすく周囲にまで説明をするかのように言ってくれて…」
「いいから答えろっ!!」
ディーンはバドリードはかつての上司のように飄々と答える様に苛立ちを覚え、身を乗り出し、凄んで詰問する。青竜刀の切っ先も向けた。しかしそれでも、バドリードは態度を改める事はなかった。
「そうさ、ハッキリ言ってやろう!!ジン・ガイアは十年前、地球に落ちた隕石に付着した種子を人間が研究し開発、作り出した生命体だ!!」
「「「…!!」」」
かつて、十年前。
突如として産まれたのは。
この地が産んだ侵略者。
この星の頂点として君臨すべき生命。
などではなく、人類が作り上げた生物であった。
その衝撃の真実のあまり、人間側全員は手に構える武器を静かに下ろした。
「嘘だ、そんなの信じられるか…!!」
静まり返る室内で、テグサー4の叫びが響いた。
「嘘じゃないさ。この隕石の中から送られたメッセージが教えてくれた。そう、かつてこの隕石を研究し、今なお眠り続ける第一人者からの証言がね…おいマツナガ、お前は知ってるだろう?この隕石の中身に生命が宿っている事を」
バドリードから更に衝撃。頷くマツナガ。マスク越しでは表情はわからないものの、明らかに動揺するテグサーチーム。彼らを見て、バドリードは得意げであった。
「思えば、我々が誕生し、人間と同じ複雑な思考をして戦い始めるようになった時、そこの閣下は何故か既に頂点の座に着いていた。帝国は全て、実力によって優劣を決めていたというのに」
「その理由はただ一つ、閣下はあのお方に作られ、都合よく動いて貰う為、目覚めるまでの時間と力を稼いでくれるジン・ガイア人第一号だからだ。そこのパソコンにも証拠となる資料がある、見てみるか?」
バドリードは傍らのパソコンを指差す。しかし誰も見ようという素振りを見せなかった。
「突然の真実は見たくないか…まぁいいだろう。さて、そろそろ時間だ。閣下の成熟しきった能力も頂いた事だし、ここで目覚めて貰おうかっ!!」
「目覚める…ま、まさか!?」
マツナガは思い返す。あの時、この隕石が半覚醒し、伸びた触手が多くの仲間の命を奪った事を。
「や、やめろ、バドリードッ!!あんな事はもうするんじゃねぇっ!!」
「ハッ、もう遅いっ!!」
バドリードは掌から光状のピラニアを飛ばす。その先あったのはレバー。かつて、シープランドが操作した、あのレバーであった。ピラニアはその取っ手に噛み付き、勢いよく下げると、室内の冷房はガクン、と急停止した。するとすぐさま、その時まで鎮座し続けていた隕石は表面の岩石を割って触手を何本も伸ばした。
「な、なにこれ…」
伸び続け、目先の獲物を威嚇するかのように構える触手の数々に、テグサー2は恐怖で動けない。
「ぜ、全員散るんだっ!!」
ディーンは長年の経験から全員に指示を出す。テグサー2はその大声にハッと我に返り、その場から後ずさる。同時に、触手は今までテグサー2がいた場所に喰らいついた。床が、大きくヒビ割れる程であった。
「うぉぉぉぉぉぉっ!!」
触手の捕食行動は開戦の合図となり、テグサーチームは雄叫びと共に各々武器をがむしゃらに振り回し、乱射して触手に傷を付ける。猛攻を前に何本か倒れるのもあったが、その度隕石からは新しい触手を伸ばすだけであった。
「く、キリがないっ!!このままじゃあ、ジン・バイルを捕まえるどころじゃあないぜっ!!」
「落ち着け茜。冷静に状況を見るんだ…!!」
迫る触手を斬り払いながら、ディーンは戦況を見極め始めた。まず最初に見たのは抵抗し続ける隕石。内部からは光が漏れている事に気がついた。その次はバドリード。彼は室内の隅でニヤつくだけであった。ジン・バイルとミルメを足元に置いて。
「よし、涼、茜!!君達はあの隕石から漏れ出ている光に攻撃だ!!それから防衛軍の兵士!!君達はあの出口から脱出し、この事を伝えろ!!」
「「了解っ!!」」
「それからマツナガ!!」
「あ、ああん?」
「バドリードは俺と涼…テグサー3が倒す。その間にお前は閣下を確保しろ」
「お前、なにを勝手に仕切って…」
「早くしろっ!!今閣下が倒れれば、今までの戦いを終結させる手段がなくなるだろうがっ!!」
「…ちっ、今俺もそう考えていた頃だよ。わかった。お前に従うぜ!!」
「よし、散れっ!!」
ディーンの指示通り、各員は向かうべき場所へと駆けていった。
「…!!」
数本の触手は一番脆い相手を狙ってか、それともこの場からの脱走者を認めずか、口を開いて一斉に防衛軍兵士へと向かった。
「う、うわぁっ!!」
兵士達は硬質な鎧であるメニーに身を固めながらも怯え、その場にうずくまる。と、彼らの前に二人の変身者が触手への斬撃と同時に立ち塞がった。テグサー2とテグサー4であった。
「皆さん、早く行ってくださいっ!!」
「おい化け物、アンタの相手は私達だよ!!」
テグサー2は兵士達の退避を促し、テグサー4は触手を見上げて挑発する。対する触手は全て彼女達二人に狙いを定めていた。
「よし、こっちだっ!!」
二人は並走して駆ける。その後を触手が追う。相手は気付いていない。テグサーマンの二人がジグザグに走り、攻撃をかわしつつ、主となる隕石に接近しつつある事を。
「よし、頼んだぞ穂乃花、茜。さて…その手を離して貰うぞバドリードッ!!」
その一方でディーン。テグサー3、マツナガと同行してバドリードに一直線に向かっていった。
「フン、こんな抜け殻ならいくらでもくれてやろうっ!!」
バドリードは倒れたままのジン・バイルとミルメをひょいと摘んで持ち上げ、人間態ながらも重量はある筈の二人をいとも簡単に放物線を描いて投げ飛ばした。
「うおっっとととと!!」
宙から降りて来る二人を、マツナガは打ち上がった野球ボールを捕るかのようにしっかりとキャッチ。「閣下、ミルメ!!」と、二人の名を呼んだ。
「う、うぅん…マツナガ、か?」
マツナガの腕の中で、ミルメと共にジン・バイルは意識を取り戻す。
「か、閣下!!ご無事でしたか!!」
「あれはディーンとテグサーマン…?お前と共に来たのか…」
ジン・バイルは首を少しだけ動かし、バドリードと戦うディーン、そしてテグサー3を見つめていた。
「は、はい…!!どうやらアイツら、ヅノン様から事情を聞いたようで、それで一緒に共に行動を…そうだ、バドリードが我々を裏切って世界を滅ぼすっては本当なのでしょうか?」
「本当だ…そして、それを止めるには遅すぎた…」
「え…?」
「奴に…知らず知らずに力を与えすぎたんだよ、我々は…」
「で、でも…?」
マツナガもテグサーチームの方を見る。なんとか慎重に、触手を避けつつ隕石をよじ登るテグサー2、4。バドリードの放つ一撃、光状の魚群、腕の鋭利なヒレに斬られつつも隙を見計らって反撃を与えるテグサー3とディーンの姿があった。
「だ、大丈夫ですよ閣下!!悔しいですがテグサーマンとディーンの野郎の方が優勢ですよっ!!きっと、なんとかなりますっ」
「…もう、遅い。遅すぎた。奴は私の力を最後に目覚めた。この十年、積もりに積もった怒りと、共に…」
「そ、そんな…」
二人が会話する中。
「ぐぅおっ!!」
激闘を続けているバドリードであったが、テグサー3の蹴りが腹部に当たり、よろめくと地面に尻餅をついた。起き上がろうとした彼の頬に青竜刀の切っ先が当たる。
「さぁ、貴様の野望もこれまでだ。大人しくするんだな」
「ディ~ン…貴様さえでしゃばらなければ、私はここまで落ちぶれなかったものを…つぁぁぁぁっ!!」
「ディーン・ブレイカー!!」
バドリードの不意打ちに超反応で対応したディーンは青竜刀から超音波を放つ。直撃を受けたバドリードは火花を散らしながら吹き飛んで転がり、壁へと激突した。
「…倒したか」
「あぁ…この威力ならもうバドリードは…」
一段落ついたと考える二人。
「…クックックッ、ハッハッハッハ…」
瞬間、焦げ付いた体から漏れ出る笑い声。ディーンとテグサー3は驚愕した。
「…!?な、なんだ!?」
「フッ、甘いぞディーン。君達がこの島に入り込んだ時点で負けは確定しているのだからな」
「ま、負け惜しみを…!!」
「違うな。もうあのお方は手足となる帝国人はもう必要としていない。なぜなら、この島での決戦直前に、あのお方は目覚めの為に島中に撒いたガイアランから大勢の帝国人の養分を吸い取った。帝国のトップ官僚、エースクラスもね。なぜこのタイミングだと思う?君達が来てくれたお陰で何人死のうが人間、帝国人どちらも誰も深く考えないからさっ!!」
「なんだと、どういう意味だ…!?」
「…もう、あのお方はどうあっても復活するって事さ…」
座り込むバドリードの意味深な発言。その時、テグサー3に通信が入る。左門からであった。
『あっ、テグサーチーム、やっと聞こえた!!こちらシータートル。制圧が完了し、JSAの設置が完了、発動後に安全確認、それから帝国人の迎えの船を呼びます。ところで、深層部分に隕石があると報告を受けましたが、そちらの様子は…』
「あ、あぁ…今そこでジン・バイルとその秘書を確保した。後は…」
応対するテグサー3。
「谷田さん、すぐに船を寄越すんだっ!!全員撤退させるんだっ!!」
それを尻目にディーンは直感で危機を感じ取って叫んだ。
『えっ!?』
「このままでは…全員死ぬぞっ!!」
『えっ、しかし、到着には十分を要すると…』
「な、なんて事だ…」
ディーンはもはや手遅れだとも聞こえる報告に手から、青竜刀を落とす。切っ先が床に突き刺さる。
「風竜剣・フルバースト!!」
「アクセル・ロッド!!」
同時にテグサー2、4は隕石の穴に必殺技を流し込む。文字通り隕石はガラガラと音を立てて崩壊した。
「な、なにコレ…!?」
残された隕石のコアとなる鉱石部分の中心にあったのは灰色の蛹であった。疑問に感じるテグサー2を押しのけ、ディーンが蛹へと走る。
「くそっ!!ディーン・ブレイカー!!」
超音波が蛹を襲う。しかし、蛹はびくともしなかった。
ピシ、ピシ…
尖った音と共に蛹がヒビ割れる。触手は、今までのうねりが嘘のように静止していた。
そして、次の瞬間。
バキン!!
と、表面の上部分が吹き飛んだ。中からは、光が漏れ出していた。
「な、なに、なにが起こったの…?」
突然、まばゆい光が出た事に驚くテグサー2。
そんな彼女を前に、蛹からはい上がって。
長き戦乱の中。
十年という長い年月によって蓄積した力を込めて。
『人』を捨てた『あのお方』が、今、蘇る。
霞の中で佇む白く、無機質。
人の姿はとうに忘れた『最後の神』が。
「遂に来ましたか…室田、修様…!!」
バドリードは感無量で彼のかつての名を呼ぶ。修、と呼ばれた生命体は胸の透明な鉱石部分を光らせ、頭部の触角を揺らし、赤い眼を光らせると、呼びかけた彼の方を見た。
「…バドリード、私はその名前を捨てた…これからはゴッドラストと呼ぶがいい」
「ハッ、ゴッドラスト様っ!!」
ゴッドラストは低い声で話す。
「あ、あれが、ジン・ガイアを産み出した…この世界に新たな争いを造り出した人間の、姿なのか…」
辺りを見渡すだけの彼を前に、ただ呟くだけのテグサー3。周りの仲間も動けない。身体も震えている。それは、突然の登場で驚いてか、それとも種としての本能か。そんな彼らを見やり、ゴッドラストはフッと、全てを察した。
「そうか、あのアーマー…あれが富田の作ったテグサーマン、そして今では私を陥れ、復讐を思わせた旋風重工の操り人形の…か」
「…旋風重工を!?どういう事だっ!?」
張り付いたかのように動かない唇を、やっとの思いで開いたテグサー3変身者は刀を構え直して問い詰めた。
「…いいだろう教えてやる。あれは十年前…」
ゴッドラストが語り始めたその瞬間、背後からマツナガとディーンが飛び上がって襲い掛かった。
「そ、その前に、今ここでてめぇを倒すっ!!」
「本能だけでもわかる、貴様はここでやらなければ…!!」
「…落ち着いて貰おうか」
二人が接触する直前でも、ゴッドラストはゆっくりと、静かに首だけ振り返る。
「「…!!」」
ゴッドラストと視線が合う。ただそれだけで二人は本能で全身を強張らせた。地面へと無様に落ちる程に。『神』は、話を続けた。
「…十年前、私はこの隕石の研究を旋風重工の協力の元で進めた。というのも、同じ年にこの地に落ちたこれにはある秘密が隠されていたからだ」
「秘密…?」
「そうだ、マツナガ。この隕石に付いた鉱石の中には、種子が入っていた。それも、大気圏を突破しても生きている強靭な種子が、な」
「まさか、それがガイアランの…」
「その通り。ガイアランの種子だ。だがこの時点ではお前達が誕生するとは知らなかった。知っていたのは、この種子を加工、体内に注入すれば、どんな病でも、たとえ死にかけていてもすぐに治るという事だ」
ゴッドラストは、懐かしそうに砕け散った隕石を見つめる。
「それまでうだつが上がらない研究員であった私は、この島で日本政府と旋風重工は私に注目するようになった。全ては、日本が新たな薬品を生み出したという見栄と、たった一人の孫娘を救おうとした親心によってな…」
「孫娘…って、まさか社長…レミーの事!?」
「そうだ、テグサー2。私の研究によるある程度の予想を聞いた先代の社長は、私に頼み込んできた。金はいくらでも出す。研究途中で認可が下りない事があっても、私が直接上と掛け合って、捩曲てでも下ろす、だからレミーを救ってくれとな…」
「そうして私の研究は自分でも驚く程の速さで完成した。その時だ、その研究の過程で新たな生命体を生み出せる事が判明したのは」
「それを知ったのを同時に、どう知ったか知らないが『この研究を進めるべきでない』と、この島に同じく住んでいた富田が私に何度も警告をしてきた」
「まさか、トウマのお父さん…?」
テグサー2がつけ足した言葉に、ゴッドラストは静かに頷く。
「私は彼にそんな物は産み出さない。これを平和の為、そして、自分の栄光を勝ち取る為に使うと返した。そう、栄光さえくれれば…ね。クックックック…クックックック」
ゴッドラストは思い出し笑いを始める。それを終えると、漆黒の中に潜む瞳が、一際輝いた。
「実験が成功して重工の孫娘を救い、隕石の研究を更に進めようとした頃、いよいよ私は世界への発表論文を纏めようとした。だが、それまでのデータが私の部屋から消えていた。何故だと思うかね?」
「答えは簡単、政府と旋風重工が私の様な部外者を追い出し、自分達だけで儲けようと考えたからだ」
「なんだと…!?まさか貴様、追い出された事を復讐する為だけに、十年も掛けてこんな真似を…!?」
思わず立ち上がるディーン。だが、そんな感情の高ぶりもゴッドラストの一睨で一瞬にして静まり返った。
「その程度の事?そうだな、第三者からそう見えるかも知れんな。だが私にとって…凡才で蔑まれ続けた一人の人間にとってはな、千載一遇のチャンスだったのだよっ!!それを奴らは、ただ己の利益を追求する為に、力を誇示する為だけに、私から全てを奪い取り、自分達にとって都合のいい連中だけを集めて研究を続けさせようとしたのだっ!!許せる訳がなかろうっ!!」
怒りのあまり、彼を中心に周囲に衝撃波が走る。たったそれだけで、テグサーチーム達を大きく後ずさりさせた。
「…私は必死で抗議した。しかし、契約の関係だという言い訳、口先八丁な者を揃えて次々と私を言い負かせた。決まりや法律は通る。それはわかる。だが、認める訳にはいかんっ!!だから私はこの隕石に眠って力を蓄えた。全ては…地球に蔓延る醜い力を全て滅ぼし、全生命体の中で私自身が頂点に立つ為にっ!!」
「見るがいいこの力っ!!この十年、待ち続けた私の怒りのパワーをっ!!」
ゴッドラストは誇らしげに腕を上げる。同時に、島が大きく揺れた。
「きゃあっ!!」
「う、うわぁっ!!」
「ぐぅ…!?」
その揺れは、足腰が人間より遥かに丈夫なテグサーマン、ジン・ガイア怪人態が立っていられない程の激しい揺れであった。それでもなんとか立ち上がろうと踏ん張る彼らの中、テグサーチームに通信が入った。
『こ、こちらシータートル谷田!!各員に緊急報告です!!突然未来島を中心に、台風が四つも出現、現在島が暴風に晒されていますっ!!それで、迎え入れの船が…!!こんなの、ありえない…!?なにがあったのですか、涼さん…!!』
「…報告していた隕石から、敵が、目覚めた…!!名前はゴッドラストッ!!未来島の元研究員の姿だっ!!この戦いを待っていた…!!十年前から力を蓄え、集結した戦力を一気に殲滅させる為に…!!」
「…なんですって!?それじゃあ、私達がした事は…」
「そ、そうだ…この戦いは始めから、来た時から負けていた…!!」
よろめきながらも、テグサー3が答える。すると、ゴッドラストがその場でシータートルの通信に割って入った。
「その通りだよ、防衛軍の諸君!!ジン・ガイアの種子は、人間の細胞と組み合わせれば病気を克服、それどころか成長、覚醒する事が判っていた!!だからこうして眠って隠れていたのだよっ!!まぁ、今のように完全でなくても、いつでも目覚める事は出来たと思うがね…さて!!それよりも!!今この時より私の時代が始まる。後悔するがいい。自らの手で首を絞めた事と、権力を蔓延らせ、惰眠を貪っていた事をっ!!」
「そんな事、させる物かぁっ!!」
テグサー3は両脚に力を込め、一気にゴッドラストとの距離を詰めると、天下無双刀を全力で振り下ろした。だが、突然の攻撃にも関わらず、ゴッドラストは左手の二本指、人差し指と中指だけでその一撃を受け止めた。
「な!?ぐ、ぐぅぅぅぅ…」
「フン、怪人級を一刀両断する刀もこの程度か…ならばっ!!」
テグサー3が刀を押す間、ゴッドラストは右の拳に力を込めて光り輝かせる。この光を目の当たりにしたテグサー2。思わずその技の名を、呟く。
「あれは…撃竜拳っ…!?」
「フンハァッ!!」
ゴッドラストは雄叫びと共に、テグサー3の隙だらけの腹部にその拳を容赦なく叩き付ける。
「ぐわぁぁぁっ!!」
瞬間、テグサー3の身体は一直線に後方へと吹き飛び、壁へとめり込んだ。その衝撃度は、彼女が持ち続けていた刀が折れて真っ二つになっている所から物語っている。
「ふむ、今の攻撃は撃竜拳に似せたがそこまでとは…よし、この技は『神終拳(しんしゅうけん)』と名付けるか…」
技がキマッたと自負するゴッドラストは光と熱が消えて煙を出す掌をまじまじと見つめる。既に、技を当てたテグサー3の事は眼中になかった。
「りょ、涼さぁぁぁぁん!!」
揺れが収まり、ようやく立ち上がったテグサー2はテグサー3の元へと駆け寄る。それと同じくして、テグサー4は二人を守ろうとゴッドラストへと立ちはだかった。
「よくも…よくも涼ねぇをぉぉぉぉっ!!」
テグサー4の真正面からの攻撃に合わせて、
「今だ、はぁっ!!」
「でやぁぁぁぁっ!!」
ディーンとマツナガもゴッドラストの背面、三方向から攻撃を試みる。迫る三人に彼は身構える事なく、静かに掌を地面へとかざした。とたんに、地面が黒くなり、波打った。
「な、なんだ…!?」
その波に、マツナガを始め三人の足取りが重くなる。もう少しの距離でゴッドラストに手が届く。しかし、だんだんと重圧を加えられ、動けなくなった三人は遂に地に伏せる事となった。この攻撃もまた、テグサー4には見覚えがあった。
「こ、コイツは…グラビトリーの…重力攻撃!?まさかゴッドラストは今までの戦闘能力を…!!」
思い出すテグサー4に、ゴッドラストは正解と言わんばかりに頷く。
「私は言った筈だぞ。開戦より十年、世界中で起こった13057戦は私の中に記録している、とな。その戦いの中にあった多くの能力、技を我が物にするのが私の究極の能力の一つ。そして、もう一つは…ぬぅんっ!!」
ゴッドラストは重力を止めると、再度掌より、ずるりとぬめりけのある人間サイズの生命体を産み出した。それも、一体、二体…最終的には十体も。静かに眠る多種多様のいくつもの生命体を前に、救出し、テグサー3の肩を支えるテグサー2は悲鳴を上げながら、それらの名を呼んだ。
「あぁっ!!そんな、あれは…ヤドカリヤンッ!!カモシガンに、トランチックまで!!」
マツナガも続いた。
「それだけじゃねぇ、俺がこの十年、戦場に送り出した役獣までいやがる…コイツは生命も作り出せる…いや、自然をもコントロール出来るってのか!?」
「そうだよマツナガ!!君が色々な場所、時に送ってくれたのが、今こうして我が力、生命を作り、自然現象までも動かせる能力の手助けとなった!!その礼として…今ここで戦わせてやろうっ!!」
ゴッドラストはパチン、と指を鳴らす。その音を目覚まし代わりにして、怪人級は一斉に目覚めた。同時に、それまで静観していた触手までもが活発にうねり始めた。
「「グゥァァァァッ!!」」
四方へと散った怪人級はテグサーマン、マツナガ達に襲いかかる。迫る牙に立ち向かう刃。瞬く間に室内は大乱戦となった。その時、各員に谷田から通信が入った。
『こちらシータートル!!そ、そちらの戦況を報告願いますっ!!』
必死の叫びにテグサー3が取った。
「こちらテグサー3!!ゴッドラストが産んだ怪人級と交戦中!!援護を!!」
『こ、こちらも現在、ガイアランの茎と触手によって交戦、帝国もこれと戦闘中ですっ!!現在、止めるためにJSAの起動を…』
「いや、ダメだっ!!」
JSAの起動に待ったをかけたのはディーンであった。その腕には怪人級を抱えて取り押さえている。
「今、帝国人も触手と戦ってくれるなら弱体化させるのは得策ではない!!もし、純粋なジン・ガイア人でないゴッドラストに効かなかったら…圧倒的に不利になるっ!!」
『りょ、了解、起動の中止を…えっ!?』
「どうしたっ!?」
『じゃ、JSAが勝手に起動し、しました…』
「な!?なんで、なんでだっ!?」
『そんなのわかんないですよっ!!ただ、外部の、大陸の政府側が起動したとしか…』
「そ、そんな…」
ディーンの嘆きと共に、JSAは起動。島全体に電磁波が吹き荒れる。
「ぐ、ぐぅわぁぁぁ…」
苦悶と共にディーンの変身した姿がドロドロと溶けていく。腕の中の怪人級は倒れ、苦しみもがいていた。
「ど、どうだ…?」
そんな彼を横に、テグサー4は足元で倒れる怪人級に警戒しつつ祈っていた。目の前に仁王立ちする、最大の敵が倒れてくれる事を。
「あ、あぁ…」
時間にして数秒。テグサー4、その場にいる人類、ジン・ガイア人は絶望した。切り札と考えていた電磁波を前に、ゴッドラストは退屈そうに体を伸ばしていたからだ。無効なのは、見るからに明らかであった。
「…さて、ここはこの子達に任せて、私は島の居住区にいる者達…ジン・ガイア人と、国や企業の犬達に挨拶に行くとするか…バドリード、ついて来い」
「ハッ!!」
バドリードは、煤けた身体をはらって飛び去るゴッドラストの後をついていく。退出する二人に気がついたのは、腕の中でヤドカリヤンを絞めるディーンであった。
「ま、待てっ!!逃がすか…うわっ!!」
ディーンはヤドカリヤンを放して蹴飛ばし、二人を追おうとした。だが、背後に来たトランチックのハンマーパンチが彼の地に伏せさせた。
「ギェェェッ!!」
その隙を見計らってか、いくつものヤドカリヤンは彼の身体に一気にのしかかる。流石のディーンも、この物量攻撃には身動きが取れなかった。
「ま、まさかコイツら、電磁波障害からの治りが早いのか…!?ま、待てぇ…待て!!ゴッドラストォォォ!!バドリードォォォ!!」
ディーンは去っていく者の名を呼んだ。だが、振り向く事すらせず、彼らは行く。
「く、くそまたもバドリードが…クソォォォォッ!!」
悔しがり、叫ぶディーン。彼の声は、戦いの中で虚しく掻き消されるだけであった。
20-3
『トウマ…目覚めよ、トウマ…』
宇宙。そこに漂うトウマはゆっくりと目を覚ました。
「う、うぅん…誰だ、俺を起こすのわぁ…って、なんだこれ!?」
トウマは視界の先にある宇宙空間、その次に自身の手が、そして全身までもが白くなっている事に驚愕した。が、とたんに冷静さを取り戻した。
「もしかしてこれは、GooGooZの時の同じ奴か…なら、夢って事か…」
『これは夢ではない…現実の世界だ…』
「え…うわぁっ!!」
トウマは再度驚愕。振り向いた先にいたのは、自分より何十倍も大きく、黒く、後方の宇宙が透けて見えるテグサー1の姿があったからだ。宇宙のテグサー1は唯一半透明でない黄色い瞳でトウマを見下ろしていた。その姿は、トウマにとっては見覚えがあった。
「お前、もしかして…レミーが死んだ時に出て来た奴か…!?」
『そうだ…』
「一体お前は何者で、目的はなんだ!?俺がテグサー1になる前から出て来やがって、いい加減教えてくれてもいいだろう!?」
『…その前に、君にはこれまでに起きた事を知る必要がある』
「なんだ、う、うわっ!?」
黒いテグサー1の声と同時に、トウマの脳内にこれまでの事が駆け巡る。十年前の隕石を室田修が解明し、彼がジン・ガイアを作った存在である事を。そして、その原因の一端が旋風重工にもある事を。
「そう、そうだったのか…十年前にそんな事が…それじゃあ、レミーを救う為に作ったモンで、俺の家族は、友人はそんな野郎の為に…!!」
『…私は君達が言う所の、TE粒子…この戦いのみならず、この宇宙で死んだ者達の意思が集束した存在だ』
「なに…!?確かにあの粒子は人の想いや強い感情に力を与えるが、まさか、死んだ人の意思が粒子に乗っかって、お前みたいなのを作ったって訳か…だとしたら、やっぱり俺になんの用だ!?」
『目的は一つ。君には君の父、藤次が死んで成し遂げられなかった事…新たなる星の生命の主となり、これ以上の他の惑星の滅亡を隕石から止めて貰う事だ』
「新しい星の!?隕石を!?それじゃあ…あの隕石の発生源があるって事か!?話しぶりじゃあ地球に似た星がいくつもあるように聞こえるが…」
『あの隕石は、地球から太陽までの距離より三十倍ある、君達から言えば、遥か遠くの惑星から飛来した自然物…あれによって多くの星、文明、自然が滅亡した…地球の人間と同じ様な者が意思が溢れる星が…』
「う、うぅっ!?」
またもトウマの脳内には、新しい映像が映し出される。地球と同じく、自然溢れる大地、空まで届きそうな高層の建造物。それらが一瞬にして、触手や植物の茎の様な物に燃え盛る炎の中で蹂躙される様子を。
「そうか、わかって来たぞ…お前のその体はあの隕石によって死んだ人達が集まって出来た存在だって奴だって事か」
『そうだ…そして、我々は十年前、藤次にTE粒子の実験…テグサーマンを装備実験をした際に、彼に警告をした。この島で行っている隕石研究は今まで他の惑星を滅ぼして来た、と…』
「そうか、あの日記はそういう意味が…父さんは止めようとしていたのか…」
『しかし、その警告の結果は全て力によって抑えられ…最終的には暴走した力によってジン・ガイアが産まれた…嘆かわしいことだ…他の惑星がした同じ過ちが、ここでも起こるとは…』
「…」
『だからトウマよ、肉体がある内に、テグサー1と共にこの星を脱出し、次に産まれる惑星、生命体と共に戦うのだ。この宇宙からあの隕石の脅威を滅ぼすには、それしかない』
「ちょ、ちょっと待てよ!!いきなりデカい話すぎて訳わかんねーよっ!!まず、なんで俺なんかを選ぶんだ!?他に候補はいなかったのか!?」
『…我々の存在に初めて気がついたのは研究していた藤次だ。だから私は子孫である君がテグサー1の力を手にした時、それに眠る力を託し、見守っていたのだ。将来、この宇宙を救う鍵となるかどうか、見定める為に』
「俺はそんな立派な奴じゃ…オイ、待てよ。それじゃあ俺がその星に行かなきゃならないって事は地球がもうすぐでやばいって事だよな!?一体なにがあったんだ、教えてくれ!!」
『…君はもう選ばれた。過去は振り返る必要はないだろう』
「いいから見せやがれっ!!そっから判断してやるっ!!」
『…わかった。今、未来島の様子を見せよう』
黒いテグサー1はその手をゆっくりと動かし、トウマの目を覆う。トウマの視界に、未来島、以前ディーンや穂乃花と訪れた居住区が映った。たった一体の、白い触覚の怪人によって防衛軍やジン・ガイア人が蹂躙されている居住区が。
「な、なんだよコレ…!!アイツはなんだ!?一体の怪人によってああなったのか!?」
『…奴はゴッドラスト。室田修という男の成れの果てだ』
「アイツがこの戦いの…!!やめろ、やめろぉ!!」
トウマは映像に飛びつきそうな程に前のめりになる。ゴッドラストは防衛軍の兵士を、触手を使役させて喰らわせる。人間の姿にしかなれず、逃げるジン・ガイア人を前に自身の胸を四方に開いて捕食する。その養分からエネルギーを放ち、島に今まで築いていた建物をも破壊する。その間、メデューザ率いるラントムチーム、テグサーチームが止めようとしたが、壁や地面から突き抜けて飛び出した大型のガイアランの茎が彼らの行く手を阻んだ。もはや戦力を消耗した彼らに、抵抗する余力は残されていなかったのだ。
「あの茎は、資料で見たガイアランの茎か…!!」
トウマは思い出した。以前、ニュースサイトや旋風重工の資料で見たガイアランの茎の事を。
「でも、あれは動くなんて書いてなかった…ゴッドラストが動かしてやがんのかっ!!逃げろ…みんな、逃げてくれっ!!」
孤島である為、逃げ場のない人々は右往左往と逃げ惑う。まるで、水槽の中でうごめく大蛇から少しでも離れようと、必死で走ってもがく生き餌の鼠のように。
「た、助けてくれぇっ!!」
「は、早く出せよぉっ!!」
「あ、わ、うわぁぁぁぁっ!!もうダメだっ!!」
シータートルが停泊している港。藁をもつかむ思いで逃げる者に人間もジン・ガイアもなかった。各々、パニック状態で入り乱れ、シータートルや帝国側の脱出艇に必死の形相で乗り込んでいた。そこに、高速艇がシータートルがこじ開けた穴から入り、岸につくと、数人が降りてきた。トウマは彼らに見覚えがあった。
「と、飛田…モーラ!!」
トウマが彼らの名前を呼ぶと同時に、
「お、遅かったか…!!」
飛田が後悔の念を含めた声で呟いた。すると、彼らの眼前、壁を破壊して後光と共に、一つの影が登場した。ゴッドラストであった。
「さて、フィナーレだ…!!」
喰いあさって満腹となったか、胸を閉じて全身を鮮血に染める彼は両腕を上げた。地面からガイアランの茎が飛び出て伸びる。茎は停泊する船を容赦なく叩き付ける。一撃で沈没するいくつもの船。そこからなんとかはいずり出る者達。そんな彼らを、茎は海中から巻き付き、海へと引きずり込んだ。
「「や、やめろぉっ!!」」
飛田とトウマ、地上と宇宙から同時に叫ぶ。
「自分の復讐の為だけに、未来島の皆や防衛軍の人々だけを巻き込むなんてっ!!彼らは関係ない、こんなの虚しいだけだっ!!」
恐れず、ごった返す人々の波を掻き分けて立ちはだかう飛田。彼の登場に気づいたゴッドラストはフッと嘲笑した。
「お前は…飛田の息子か…案ずるな、この惨状とやらはここだけじゃない。今、世界中でこのガイアランの茎は動いている。この地球に掬う醜い人類と不必要な文明を掃除する為にね…」
「「な…!?」」
飛田とトウマはまたも同時に驚愕した。すると、トウマの目には上空からの映像へと変わった。
「あ、あ、ああ…」
トウマは言葉にならない声を上げた。今までより十倍以上もある、恐らく直径十mもある太さのガイアランの茎が次々と日本列島の各地、地表や道路を割って出現した。
「そういえばディーンが言っていた…帝国は世界各地の海中にガイアランを育て、国民を増やしたと…まさかそいつが成長して…!?」
ガイアランの巨大茎は高層ビルを薙ぎ倒し、車を横転させ突き刺し、鉄道にまで巻き付いた。今まで平和に暮らしていたであろう人々は悲鳴を上げ、絶望に顔を歪ませ逃げ惑う他なかった。それを知ってか、ゴッドラストは狂喜乱舞に体を震わせていた。
「まもなくだ…少しの間でこの地上はこの茎によって養分を吸い取り、腐らせるであろう…そうすれば人類、いやこの地上の生命体の九割は絶滅、そこに私は君臨する。自分が生み出した、新たなる尊い命によってなぁ!!ハハハ…アーハッハッハッハ!!滅びる中で後悔せよ人類よ!!私を蔑ろにした事を後悔してなぁっ!!」
「う、うわぁぁぁぁっ!!」
隙だらけのゴッドラストの背中にテグサー2が飛び乗って、槍モードの風竜剣をその顔面に突き刺す。力いっぱい、捩込みもした。だが、切っ先より後に入る事はなかった。
「無駄な事を…」
ゴッドラストは風竜剣を抜き、取り上げ、持ち主もろとも地面へと投げ捨てる。軽く振ったつもりであろうが、テグサー2にとっては強烈に叩き付けられたのと同義であった。
「う、あぅぅ…」
痛みを堪え、なんとか立ち上がろうとするテグサー2。ゴッドラストはゆっくりと、そんな彼女に向かって歩みを進めた。
「あ、あ…」
瞬く間に傷が治る『神』を前に、テグサー2はへなへなとその場に座り込んだ。
もう誰も敵わない。
戦闘力に差がありすぎる。
経験上、今の一瞬で察したからだ。
「富田の模造品め…今ここで潰しておくか…」
ゴッドラストは手をテグサー2に向けて光らせた。彼女のゴーグル奥の瞳が潤んでいる。その時であった。マツナガがゴッドラストの腰に食らいつき、足止めをしたのは。
「テグサーマン!!逃げろっ!!今のコイツにはお前ら…いや、誰でも勝てない!!生きて…生き延びて、コイツに勝つ方法を作るんだっ!!お前らが、俺に勝ち続けたようにっ!!」
「…マツナガ!!」
呟くテグサー2にチームが揃う。彼らに気付いた、飛田とモーラまでも。
「と、飛田くんっ!?どうしてここに!?それにモーラさんまでも…」
「説明は後ですっ!!とにかく今は逃げましょうっ!!またあんな台風を起こすとも限りませんっ!!さぁ、僕達が乗って来た、高速艇に…」
「…逃げるか、ならばそんな想いも無にしてやろうっ!!」
ゴッドラストはマツナガを蹴り飛ばすと同時に、ガイアランの茎、触手は人々を襲う事を止めて、天井に体当たりを始めた。脆くもそれは、いとも簡単に崩れ去った。
「き、キャァァァァァッ!!」
テグサー2の悲鳴と同時に、天井だった金属が一気に人々を襲った。
プツン…
トウマの視界が、テレビの電源を消されたかのように突如として暗くなった。
「な、お、おい!?どうなってんだよ!!どうなったか、教えてくれよ!!」
黒いテグサー1にトウマは詰め寄る。
『…トウマ、もう全ては手遅れなのだ…これで守りたい仲間もいなくなった。母星ももう…今、大事なのは未来、この宇宙のこれからの種を守る事だ。さぁ時間がない、肉体ある君を失いたくない。早く私と共に…』
「ふざけんじゃねぇっ!!今を守れない奴に、明日なんか守れるモノか!!俺は地球に帰る!!例えどんな未来が待ってでも、俺は…最後まで地球で戦う!!守りたいモノが、まだまだあるんだぁっ!!」
『…わかった。トウマ、君の意思を地球に返す。だが忘れないでほしい。惑星はもう間もなくで滅ぶ…もし、君の肉体が失われそうな時には君の意思と関係なく連れていく。全ては未来の為…新たなる命の為に』
「な!?お、お前、なにを勝手に…!!」
トウマがそこまで言いかけた瞬間、彼の魂は重力に引かれた。視界が、真っ白になる。気がついた時には、大型の機械や計測機器が壁一面に張り巡らされた室内にいた。
「ここは…そうか、旋風重工の研究施設内…俺の体はここに運ばれたのか」
石化したテグサー1の状態で、全身を何本ものチューブに繋がれていたトウマ。テグサー1は全身を覆う石を腕力で破壊、チューブに触れる事なく、引っ張り上げて抜いた。
「行かなくては…」
室内にテグサー1ただ一人。彼は跳んだ。天井を突き破り、走った。目指すは、未来島。
(まだだ、まだ間に合う。今から行けば、あのゴッドラストって奴の侵攻は止められる筈だ…!!そうすりゃ、島は勿論人々を助けられる筈だ…!!)
森の中を、テグサー1は駆ける。
(待っててくれ、皆…穂乃花、茜、涼、飛田、ディーン!!必ず助けに行くからな…!!)
彼の脳内に、これまでの思い出が蘇る。いがみ合った事に笑いあった事、何気ない日常会話までも。
(俺は諦めねぇっ!!最後の最後まで諦めるモノ、か…!!)
強い意志は足を前へと進め続けていた。
しかし。
森を突き抜けた時、彼の足は、かけがえのない思い出と共に止まった。森の先は崖、それも地平線の海まで景色を一望できる場所であった。
「は、は、は、は、ははははは…俺の、街が…」
テグサー1は力なく笑う。開かれた視界の先、そこにあったのはトウマがこの十年暮らした市内。昨日まであった家は軒並み潰され、焼け野原、煙と共に火の手までも上がっていた。それらぞんざいに扱うように、ガイアランの巨大な茎はうねる。そして、果実を実らせ、次々と怪人を産み出していた。未来島は、この惨状を前に海岸に浮かんでいた。遠景でもわかる程に巨大茎を、金属の大陸に巻きながら。高笑いでもするかの様に。
「畜生…畜生畜生…畜生ォォォォォッ!!」
テグサー1は膝をついて叫ぶ。その声に、市内の怪人達はピクリと反応した。それが宿敵と知ってか知らずか、徘徊を止めると、一斉にテグサー1に掛かった。
「負けるかよ…この程度、負けてたまるかよぉっ!!」
テグサー1は立ち上がり、走った。空から地上から一斉に迫る敵に向かって。滅び行く『今』を守る為に。
どうも皆さん!!
いよいよ現れました真実と、強敵!!崩壊する街!!
一体どうなるのでありましょうか!?
勿論、まだまだ続きますのでお楽しみに!!
前回、そして今回のハイライトも、お送りします!!
【挿絵表示】
さて、UAを詳しく見ると、本作を一日に連続して読まれている方が多くいらっしゃるようです!!とても嬉しいです!!ありがとうございます!!更新の励みにもなりますので今後もよろしくお願いします!!
それでは、また次回!!お楽しみに~っ!!
4/5投稿