・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
・ゴッドラスト…十年間、ジン・ガイア帝国の陰で憎悪と成長を続けた『元人間』。
・バドリード…マツナガの上司。ゴッドラストに肩入れし、地球上の君臨を目指す。
21-1
夕日を背に受けて、街を喰らう巨大茎。小さき人間達はただただ逃げ惑う事しか出来なかった。
「きゃああああっ!!」
「助けてくれぇっ!!」
「エーン、エーン、うぇぇぇぇ…」
阿鼻叫喚が行き交う商店街。我先にと逃げる彼らに、誰かを守る余裕はなかった。力がある者はよろめく老いた者、涙する幼い者を押しのけて先に行く。背後が崩れる中、着いた場所が安全だとは限らないにも関わらず。
「ふ~ん、ふふ~ん、ふふふんふ~ん…」
道がパニック状態でごった返す中、一人、中央で悠然と歩く者がいた。眼鏡の奥から見える、ぎらつく瞳。ニヤつく唇。甲斐田であった。彼は余裕綽綽に、無線イヤホンから聞こえる『カノン』を聴きながら鼻歌を口ずさんでいた。当然、その背後にも巨大茎は迫る。しかし、牙を向けるそれは、甲斐田の背中を目前にしてピタリと止まった。
「…」
茎はなにか考えるように首を左右に振ると引き下がり、思いついたように今、甲斐田に肩をぶつけて通った屈強な男に向かった。
「ふんふんふんふふ~ん、ふふっふ~」
甲斐田は男が伸ばした腕を見ようともせず、『カノン』を歌い続ける。
何故この小男が喰われなかったのか?どうすればこの化け物からああも逃げられるのか?周囲の人々は疑問に思う暇もなく逃げ続ける。そして、その男は誰にも知られず、知ろうともせずに行方を眩ませた。
それから二日が経過した。
ゴッドラストは世界中の地上を瞬く間に崩壊させた。彼の能力で生み出した強烈な酸性雨は文明の象徴となる建造物を溶かし、巨大茎の果実は怪人となって破壊の限りを尽くし、ばらまいた種子は育って茎となり地中から道を陥没させた。
人類にとって史上最大の危機。僅かに残った報道、ネットワークがそう伝えた。だが、それはジン・ガイア帝国にとっても同様であった。
「えっ、閣下が行方不明!?島が、人間じゃないのに占拠された!?」
「そんな馬鹿な話があるか!!島への通信を続けろっ!!」
本国とも呼べる未来島が、謎の勢力によって制圧された事に、世界中の帝国兵士は混乱を極めた。とにもかくにも、情報を集める事を優先した。その結果、自身の出自と、生み出した『神』の正体を知った。衝撃のあまり、心は、困惑へと変わる。それを見計らうように、これまで顎で使っていた役獣が襲い掛かった。その姿はまるで、飼い主の手を噛む狂犬のようであった。戦力に牙を向けられ、その上、本国にも救援要請は出せない。よって、帝国兵士の部隊は逃げるあまり散り散りとなった。
三日目。
日本時間早朝五時、世界各局のテレビ局をジャックして映ったのはゴッドラストであった。
『おはよう、世界の諸君。私はかつて室田修と呼ばれ、現在ではこの世界の作り替えようとする男、ゴッドラストだ。簡潔に述べよう。私の計画はこの地球に蔓延る権力者、軍事力を滅ぼし、人類の九割程を滅ぼそうと考えている』
『なぜ、私がこんな事をしているか?それはかつて、私自身が日本政府、大企業旋風重工によって追放された過去があるからだ…』
『…諸君、私は力ある者から優先に潰していく。その証拠をお見せしようっ!!』
ゴッドラストが右腕を上げた。その瞬間、海外のとある議会場を地盤沈下によって地中深く沈ませ、それまでの文明の歴史、政治家生命にピリオドを打たせた。この模様は瞬く間に全世界に知らしめる事となった。
四日目。
怪人の猛威は去ってはいないものの、文明崩壊と環境破壊は嘘のように収まった。各国の軍隊はこの非常事態に対し、航空部隊、艦隊を集結させ未来島にミサイル、爆撃を放った。が。
「フン、無駄な事を…」
ゴッドラストは己の肉体、島に纏わり付く茎を使って、それら全てを『喰らった』。力に変えたのだ。
「か、神だ…神がこの世に現れた…」
艦隊司令官がそう嘆いた瞬間、一瞬の閃光が船橋と共に彼を覆った。それは、ゴッドラストの放つ無数の電撃であった。
集結した軍事力は壊滅。世界の崩壊は免れない。各国のマスメディアは視聴者に無情にもそう伝えた。
『皆さん、これまでの事態を招いたのは、十年前、未来島で日本政府と旋風重工によって追い出された一人の科学者の復讐心、そして現在の防衛軍と権力者の失策が原因なのです…』
GRN長官が会見した、暴かれた真実も添えて。
そして一週間目、旋風重工本社社長室のテレビでは報道番組が流れていた。
『…現在、残された空港、港は比較的被害の少ない海外へ逃れようと大勢の人々が徹夜で並んでおります。しかし一週間経過しても、空路や海路は寸断され、受け入れる国もなく、逃げるのは絶望的かと思われます。現場からは以上です』
『荒田さん、ありがとうございました。さて、次のニュースです。各国首脳陣は未来島での敗戦は十年前の危険な隕石実験の結果が原因と考え、隠蔽に関し、日本政府、旋風重工に対して激しく非難、現在、国会ではその責任の追求を…』
キャスターを黙らせるかのように、テレビの電源がプツリと消えた。テレビのリモコンを持った涼がスイッチを押したからだ。
「…社長、そろそろ正直に話すべきです。一体十年前、室田修に対してなにをしたのかを…」
涼の冷ややかな瞳に、豪華な社長席に腰掛ける海斗は深く俯いていた。二人の様子を見つめていたのは、穂乃花、茜、飛田にディーン、そして橋爪であった。
「私達は未来島での戦い、マツナガが庇ったお陰でシータートルに乗り込み、なんとかギリギリ逃げる事が出来ました。しかし、あの戦いまでを作った元凶がここと国であるなら、なにか言う事があるでしょうっ!!そうでなければ、みんな、悔しさと不信感が募り、不毛な争いが増えるだけですっ!!」
「そうです社長、早い決断をっ!!」
言い寄る涼と橋爪。一瞬の静寂の後、海斗はやっと、重い口を開いた。
「そう言われても…僕はなにも知らない、してないんだっ!!僕はあの時はまだ社長ではない、レミーを救おうと動き回っていたのは前社長、僕の父だっ!!当時、政府高官と色々と持ちかけて、なにやら開発を進めていたのは知ってたが…まさか、こんな事をしていたなんて思ってもみなかったんだっ!!それなのに、どうやって動けばいいって言うんだっ!?」
彼は頭を抱える。沈黙が、室内を包む。と、橋爪が胸ポケットから取り出した手帳と上司の顔を見つつ、フォローに入った。
「し、しかし、社長…なにか動きませんと…とりあえず未来島に関わった省庁の方々や首相に片っ端から連絡を入れて、出来た話し合いを今日一日で終わらせるべきです。これからの救助活動や士気にも関わりますし…」
「…うん」
海斗は気持ちの沈んだ子供の様に口を開く事なく返事をした。それから、頭を抱えていた腕を離し、橋爪の方を見上げた。
「そうか…そうだな。今は直接会いにいくしかない。橋爪くん、車を出してくれ…」
「わかりました。涼、ディーン。運転と護衛を頼む」
社長室を離れ、海斗は室内にいた六人と共に、下へと降りる。エレベーターは電力不足で使用が禁止されていた。
コツ、コツ、といくつもの足音が薄暗く、長い階段に響く。それまで押し黙っていた彼らであったが、ディーンは海斗に話しかけた。
「社長さん、穂乃花達はね、あの時既に手遅れだったとはいえ、力及ばず目の前で世界を滅ぼす化け物が産み出されるのを見せられた、しかもそれが自分のいる企業や国が原因だって知って心に傷を追っている。面白くないと思っているよ。だから、早いところあのゴッドラストを倒す対策なりして欲しいものだね」
「あぁ、わかっているよ…それにしても室田という男は一つの研究でこうもなるなんて信じられないな…確かにそんな奴はなんとかしなくては」
「…俺が言いたいのはそういう事じゃあないんだけどなぁ」
ディーンが言い終えると同時に、一階のエントランスホールに到着した。社員がいまだに残ってはいるものの、受付にいる筈の受付嬢は誰もいない。あるのは『お世話になりました』という貼り紙のみ。
「ん…?」
と、コートを羽織った若い女性がこちらに近づいている。それにいち早く気付いたのは海斗であった。
「どうかされましたか、我が社になんの用でしょう?」
「旋風重工の旋風社長ですね?」
「えぇ、そうですが…なにか?」
「少しお話があるのですが、よろしいでしょうか?」
「…皆、離れてくれ」
海斗の指示で涼を除いた全員が、その場を後にする。
「三分だけなら構いませんが…なんでしょうか?」
「…では質問させて下さい。私は夫と共に商店街で店を構えておりました。けれども三年前、夫は商店街を帝国の手から守ろうと頑張り続け、最後には殺されました。私は大勢の人を守れたんだと夫の行動に誇りに思っていました。でも、今は違います。夫はずっとこの国の力に騙されて殺されたんです。こう考える者に対して、社長としてどう思われますか?」
「…申し訳ありませんが、その件に関してはまだ回答は出来ません…近い内に記者会見を開きますので、それを見て頂いてよろしいでしょうか?では、失礼致します…」
話を切り上げようとして、女性を通り過ぎる海斗。
「そう、そうですよね…所詮、庶民の事なんで、どうでもいいって事ですよね?」
が、彼女の物言いに足を止めて振り返った。弁解もしようと口を開き、腕を伸ばした。だが、眼前の物を見て、おもわず押し黙る。なぜならば、女性が前を開けたコートの下には、コードに点火したダイナマイトがあったからだ。
「な、なにを…!?やめるんだ、しまってしまって!!」
最悪の事態を止めようと慌てる海斗。女性は大粒の涙を流していた。
「アナタに、私の気持ちはわからないでしょうね!?この一週間、その店まで潰れ、ただでさえ少ない希望を失った気持ちが!!だから、だから…この星が滅ぶ前に、ここで死ねっ!!」
女性は海斗に突っ込む。
「く、くっ!!」
異変を察知した涼は飛び出し、海斗に覆い被さった。それと同時であった。ダイナマイトの雷管に火が灯るのは。
爆発は一瞬。悲鳴と非常ベルは無限に続くように感じた。
「りょ、涼さん!!社長!!」
穂乃花は立ち込める煙の中を掻き分け、二人の下へと急ぐ。
「社長、涼さっ…!!」
着くなり、穂乃花は絶句した。倒れてはいるものの海斗は軽傷。横で倒れた涼は、腹部が傍にあったであろうブロンズ像の下敷きとなって、口から血反吐を吐いていた。
「う、ぐふっ!!」
咳をする度に、鮮血が吹き出す涼。
「「涼さん、涼さん!!」」
「涼ねぇっ!!」
必死で名前を呼ぶしかない飛田と穂乃花、茜。
「も、森!!」
愕然としながら、周囲を見渡す橋爪。
「涼…」
冷静に、ポツリと呟くディーン。
穂乃花を除いたチームメンバーは、各々彼女の名を呼びながら近寄る。辺りに散らばる砕けたブロンズの破片と、辺りを紅く染める血を踏み締めながら。
「森、しっかりしろっ!!」
橋爪とディーンはブロンズ像をどかし、飛田は涼の上半身を持ち上げる。彼女の頭頂部から、どろりと血が流れる。
「せ、専務…社長は、どうなりましたか?」
「えぇ、無事よっ!!アンタのお陰でね…誰か、救急車を呼んでっ!!それから無事なのは怪我人の安否を確認してっ!!早くしなさいよっ!!」
橋爪が混乱するエントランスホールを統率しようと叫ぶ。すると、瓦礫の中から何者かが立ち上がった。
「あ、あぁ…」
茜は見た。それは、服が裂け、腕や脚、露出した腹や頭皮までもがズタズタで血がとめどなく流れる、全身が真っ黒に焼けただれた『起爆者』であった。
「う、うぅ…旋風、重工…日本の権力者」
最早性別の区別すらつかない『人』はよろめきながらも歩き出す。傷ついた喉から声を出しながら。
「力を他人に振りかざす…奴に碌な死に方はしない…覚えてろ…地獄で待っ、てる、わ」
海斗を目の前にして、女性は事切れる。煙もやっと晴れ、身動きが比較的取りやすくなった。しかし、エントランスホールにいる社員はその場から動こうとはしなかった。
「な、なにしてるの皆!?止まってる場合じゃないわよっ!!少しでも動かないと…」
ハッパをかける橋爪。
「は、ハハハハハ…ハハハハハッ!!」
それを遮るように、立ち上がった海斗は笑い始めた。指差す先にあったのは、割れた床にうつ伏せとなり、煙だけが揺らめいて動く『起爆者』であった。
「なんだよ、なんだよっ!!なんで、僕に襲い掛かる必要があるんだよっ!!悪いのは室田修だろぉっ!!それなのに、僕一人をよってたかって悪者扱いしてっ!!今更どうしろと言うんだぁっ!?勝手に妄想走らせて恥ずかしいと思わないのか、ねぇっ!?」
言うが早いか、海斗は茜によって胸ぐらを掴まれていた。
「ふざけんな!!人が死ぬのを馬鹿にしてっ!!あの人はずっと苦しんでたんだっ!!頑張ってたんだ!!でも、力が足りなくて、なにもかも失って!直接そうしたんじゃなくても!!少しでも考えてやれよ、そんな人々の想いをっ!!」
言い切った途端、茜はその手を静かに離した。そして、俯きもした。
「…私達もだ…今まで、なにも出来ていなかった。守れていなかった。十年前から、ゴッドラストが現れて、怪人が地球を覆っても…こんなにも強い、力を持っていても…」
悲痛な想い。
「…茜さん」
そんな中、飛田だけは呟く。そんな中でも海斗はにやけ顔を崩す事はなかった。
21-2
爆発が起こって十数分。瓦礫重なる重工本社前では救急車、消防車が縦列駐車をしていた。慌ただしく入り口を往復する人々。その様子をトウマは外から見つめていた。
「くそっ、なにか嫌な予感がすると来てみれば…やっぱり当たってやがったか」
「それにしてもこの一週間、この世界はまたも変わっちまった…なんとか戦い続けているが、いつまで持つか…」
トウマは思い出す。この一週間、怪人の屍を踏み渡ってきた事を。瓦礫と血で埋もれた中で、救えた命があった。誰とも連絡が繋がらず、救えない命もあった。それでも、トウマはテグサー1を手放さなかった。絶望の未来の中、僅かな光を救う為に。
「さて、そろそろ会いに行くか…このところ、ずっと戦い続けてあいつらとすれ違いで全然会えなかったからな」
トウマが駆け出そうとしたその時、彼の脳に電撃が走った。トウマは足を止めて懐のテグサロイドを取り出した。
「くそっ、こんな時に…」
テグサロイドの画面は激しく光る。黒いテグサー1の幻影も見える。実際これらが、付近で怪人が人々を襲っている事を知らせているのはこの一週間彼にとって分かり切っている事である。トウマはきびすを返す。テグサーマンが知らしめる方角へと。
「あっ、あれか!?」
深い森の中、トウマが見たのは三人家族。目の前の白い羽根の子供程の怪人を前に、幼い娘を守ろうと怯えながらも庇う夫婦であった。しかし、父親の脚は怪我で出血していて上手く動かせないようであった。
「させるかよ!!チェンジ、テグサー1!!」
ぬかるむ泥の地面を蹴ってトウマはテグサー1へと変身。すかさず、怪人の肩を掴んで食らいついた。
「早く!!早く逃げるんだっ!!」
「は、はいっ!!」
テグサー1に促され、母親と娘は父親を支えながらその場を後にする。彼らを横目に見送ったテグサー1は、力を振り絞って怪人を地面へと叩きつけた。その破壊力は周囲に、純白な羽根が舞う程であった。その中心で。続けてパンチを放とうと、曇り空へと天高く肘を掲げた。
「…あっ!!」
だが、突っ込ませようとした拳を、テグサー1は空で止めた。なぜならば、倒れたのは確かに怪人。そう見えたが、顔だけはレミーであったからだ。
「れ、レミー?レミー…なのか?」
「トウマ…」
上と下。見つめ合う二人。無意識の内に、テグサー1は彼女を手を引いて起こしていた。
「ごめん、ごめんなさい…!!」
と、レミーは立つと同時に逃げ去ろうとする。しかし、テグサー1が彼女の腕を掴んで止める方が早かった。
「待て、待てって!!レミー、お前、生きていたんだな…」
観念してか、レミーは足を止めて振り向いた。
「…うん…私、目が覚めたら霊安室にいて、気がついたらこの姿で…それから飛び続けて、色んな事を知って、私の体が、原因で、帝国が生まれたって…」
「そうか…それで、お前は一体ここでなにしてたんだ?」
「ここに潜んでいたら、街から逃げてきたあの家族とばったり出会ったの。それで、お父さんが怪我していたから、助けてあげようとしたら、怯えちゃって…」
「よかった…お前が襲った訳じゃないんだな。とにかくここを離れた方がいい。下手したら人目に…」
「トウマ…私の事、殺してよ」
「えっ?」
今度はレミーが、テグサー1の右手首を両手で握り、自分の首にあてがった。
「だって、私の身体のせいでトウマの家族が殺された…それだけじゃない、この十年、多くの人達に迷惑を…それに、この化け物の身体だってディーンみたいにもう元に戻らない…もう、そんな私はもう生きていけない!!生きたくない!!だから、せめて、ここで死んで、責任を果たしたいの!!トウマ、お願いっ!!狂った私がこの力を悪用する前にっ!!」
「レミー…」
目の前で家族、親友を失った。その元凶は目の前の『少女』だった『化け物』である。
「…わかった」
十年前の惨劇を振り返ると同時に、テグサー1はハンドシューターをホルスターから取り出した。銃口を、レミーの眉間に当てる。森がざわめく、その時であった。数人の足音が、二人の元へ近づいてきたのは。
「ここだ、ここだよ皆!!」
現場を指差し、息を切らすテグサー2。続いて、頷いて反応するテグサー4、変身態のディーン。
「これ以上は、やらせな…!!」
「よし、やる、ぞ…!!」
だが、敵対する怪人の姿を見て、彼女達は絶句する。勇ましく向かった足も、思考と共に止まる。
「「「レミー…!?」」」
「しゃ、ちょう…!?」
それは、本社のモニター越しの飛田も同様であった。
「み、皆…」
レミーはやって来た彼らを横目で見る。
「そんな、あれが生き返った社長…!?」
その瞳にハッとなったテグサー2。
「トウマ、やめてっ!!」
そして、何故テグサー1がレミーに銃口を向けるのか、理解した。一方のテグサー1は、彼女の方を向く事なく、引き金に指を乗せた。
「あ、アイツ…!!まさか!!」
テグサー4は止めようと走るが、ディーンが腕を伸ばして彼女の足を止めさせた。
「トウマ…」
レミーの、真正面へと向き直った瞳から流れる一筋の涙。テグサー1の手が震えていた。引き金は、下がる事をしなかった。
「出来る訳がない…」
彼は静かに声を発する。
刹那。
「そんな事…俺に、出来る訳ないだろぉぉっ!!」
テグサー1は拳銃を地面へと投げつけ、その場へ膝から崩れ落ちる。同時に出た叫びは、森へと響いた。
「トウマ…ごめん、ごめんなさい…」
レミーは、うなだれる鋼の身体を優しく抱きしめる。そんな二人の姿に、テグサー2と4はただただ俯くだけであった。
「厶…!?」
その傍ら、ディーンは森の奥からただならぬ気配を察知していた。
「誰かが来る…恐らく、俺達の敵だっ!!」
言うが早いか、『敵』が森林から姿を現した。蝙蝠型を始めとした十数体の怪人の中、その中心にいたのは…甲斐田であった。
「甲斐田、くん…!?」
顔見知りの存在に、驚愕するテグサー2。
「一体、どうしてそこに!?まさか、洗脳されて…!?」
「い~や、違うよ穂乃花さん。僕はいたって正常さ」
甲斐田はニヤニヤと下卑た笑顔を浮かべる。
「僕は今ね、修博士…君達の言うゴッドラストの下で、怪人達の指揮、情報収集を任せて貰ってるんだ」
「な、なんで!?皆がピンチなんだよっ!?そんな奴の言う事を聞くなんて!!」
「だからこそさっ!!僕は、僕を必要としてくれる強い者の味方になったのさ!!他の下らない連中の事など知った事か!!今まで人間連中が僕にしてきたようにねぇ!!」
「してきた事…?」
「ああそうさ、人間ってのは自分にとって都合のいい連中だけでまとまって、内輪だけで喜び、悲しみを分かち合う!!そして、一人ぼっちの役立たずは気にもかけず、それどころか、見下してくる!!クラスの馬鹿共がいい例だよ、GooGooZの時だって、勇気出して参加したのに、絆を強めたのは今までの付き合いのある仲間だけだった!!」
気が付けば、彼の拳は強く固まっていた。口角も大きく下がって歪んでいた。
「僕にはなにもない…なにもなかったんだよぉっ!!それなのに、なにがクラスの絆だ、想いだっ!!爪弾きにしやがって!!許せるか…絶対にっ!!」
甲斐田は目を袖で擦り、改めてテグサーチームへと向き直す。
「だから僕は、かつての恩師、修博士の元へ来たっ!!今まで見下してきた全ての人間をこっちから見下す為にっ!!お前達だって、例外ではないぞっ!!」
「甲斐田っ!!」
レミーを離し、テグサー1が叫ぶ。
「そんな力の使い方は、絶対間違っている!!もし、本当に滅ぼしたとしても、残るのは虚しさだけだっ!!」
「ハッ!!なにを言うっ!!君達は圧倒的な力を持って相手をぶちのめし、威張りくさっているだけだろうっ!!」
「それは違うっ!!俺達は皆を守る為に…」
「その皆を守った結果、なにが出来た!?あの重工をはびこらせ、力ある連中を余計につけあがらせただけだ!!そうだろう、旋風レミー!?一人の娘守る為に、国と企業が結託して、あんな化け物産んじまったもんなぁ!?」
名を呼ばれたレミーは視線を逸らす。テグサー1は彼女の肩を抱き寄せた。
「…コイツは、なにも知らず、その力を受けとったに過ぎない!!第一、この騒動を作ったのは、あの室田修だろう!!」
「…だからって、権力振るって弱者から希望を奪ったのは見過ごすのかい?肩を持つって事だぞ?君もまた、ソイツのせいで、両親を殺されたのにさ?…ね、僕、嘘言ってる?」
「そ、それは…」
テグサー1は徐々にレミーの肩を握る手を緩める。隠しきれない動揺を、甲斐田は見逃さなかった。
「そんな考えでは…死ぬぞ?…やれぇっ!!」
主の合図一つ、怪人は一斉にテグサーチームへと襲い掛かった。
「来るぞっ!!」
ディーンの呼びかけで、チームは武器を構える。十数対四の両者入り乱れた激闘が今、始まった。
「はぁぁぁぁっ!!」
テグサー2は風竜剣・槍モードでカモシガンに迫る。振るう。傷をつける。負傷した怪人は一歩後退り、追い討ちをかけようとテグサー2は槍を振り下ろす。だが、その斬撃は怪人の左手に柄を挟まれて防がれてしまった。
「し、しまっ…」
テグサー2が言い終えるより先に、カモシガンの右手が彼女の胸部装甲を切り裂く。
「あぁうっ!!」
衝撃でテグサー2は大きくバランスを崩した。カモシガンは再度胸部装甲を蹴り、テグサー2を倒す。そして、勝機と言わんばかりに彼女の腹部を容赦なく踏み付けた。
「ぐぅ、あぁっ、あぁっ!!」
テグサー2から飛び散る火花と悲鳴。真後ろで蝙蝠型怪人と戦うテグサー4の耳にも届いた。
「穂乃花っ!!うわっ!!」
テグサー2に気を取られたテグサー4は相対する蝙蝠型怪人に首筋を噛まれる。テグサー4は弱点による痛みで力なく膝をついた。
「く…野郎ォッ!!」
二人の危機に、テグサー1はイエティマンの首根っこを右手で絞めながら傍らのトランチックにドロップキックを放つ。
「ドラァ~!!」
蹴られた怪人が吹き飛ぶと同時に、左手でホルスターから抜いたハンドシューターを連射。蝙蝠型怪人の額は弾痕で蜂の巣となった。攻撃された二体の怪人が地に伏せ、動かなくなるのは、ほぼ同時であった。
「サンキュ、トウマ…」
「まだ来るぞ、気を抜くなっ!!」
「う、うんっ!!」
テグサー4の礼を聞き入れる事なく、テグサー1は次に敵対する怪人に向かう。右手で掴んだままのイエティマンを泥の中へと叩き付けながら。
「トウマ…穂乃花…茜…ディーン」
ディーンと共に何体もの怪人を相手するテグサー1。それに続くテグサー2、4。レミーはぽつりと、戦う『仲間達』の名を呟いた。不意に背後から、ポンポンと肩を叩かれた。振り向くと、そこにいたのは笑みを浮かべた甲斐田であった。
「おやおや~、またもお得意の内輪の絆って奴ですか~?いいですね、そうやって仲間がいるって思えば、自分が悲しみも罪悪感も人に肩代わり出来るんですからね~」
「か、甲斐田…」
「いっとくけど、悪いのは誰だと思う?き、み、のお爺様と会社、それにつるんだ国の偉~い人、そして君自身の身体だよ?君なんか産まれて来なければよかったね。僕とおんなじでさぁ」
「う、うぅ…」
「あ、違う点があったか。そんな苦しみや他人の批判や後ろ指から守ってくれる盾がいるもんなぁ。ちょうど今、戦ってる、彼らだよ」
そう言いながら、甲斐田は指を指す。激しい攻防が続く、テグサーチームと怪人達の戦いを。
「はっきり言ってやろうか?君は力に恵まれているだけなんだ。金も、立場も。なにもなく、孤独の中でなじられる僕とは違う。内心、なんで自分がこんな事を…コイツのせいでと思いながらも、トウマくん達は権力に従わざるを得ないんだよ。かわいそうに…」
「や、やめて…!!そんな事言わないで…!!」
「い~や、見るんだ現実をっ!!そして人生を諦めて、自棄起こして人でも食ってればいいやっ!!」
「甲斐田ぁっ!!」
二人の間を引き裂くように、怪人と組み合うテグサー1が叫んだ。
「それ以上、ウチのモン傷つけるんじゃねぇっ!!レミー!!少なくとも俺は…ここにいる連中はお前のせいだと思ってねぇ!!だから、ここでこうして戦ってるんだろうがっ!!」
「そうだよ、トウマの言う通りだよ…!!」
怪人を蹴りながら、続くのはテグサー2。
「私達は自分を権力の手先だなんて思ってない…自分の意思で戦ってきたんだ!!」
テグサー4も、アクセルロッドを握り締めて叫ぶ。
「レミー!!君自身はどう思う!?自分が与えられた生まれをただ黙って受け入れるたけでいいのか!?」
ディーンも友として問い掛ける。レミーは、そんな皆を見つめていた。
「みんな…わ、私…出来ることなら、みんなの元に…帰りた…」
「だ、か、ら!!そうやって支え合うとか、分け合うとか、絆で誤魔化すなっ!!罪を罪と認めなよっ!!」
「甲斐田ぁっ!!お前はそうやって、他人の傷をえぐるのが楽しいのか!?」
「そうだよ、当たり前じゃんトウマくん!!人ってのは少しでも自分より弱い立場の連中より立って、見下し、欲望のままに奪い取る者さ!!君の会社もそうして大きくなった。違うかい!?」
「それはあの会社の場合だ!!個人同士では違うだろう!!とにかくレミー!!お前は…」
「ごめんトウマ…今の私、みんなに顔合わせなんて出来ないっ!!だから…私の力だけでも、受け取って!!」
レミーはテグサーチームに向けて手を伸ばす。彼女の掌から粒子が広がり、テグサーチームを覆った。
「な、なんだ?傷が…!?」
すると、それまで傷だらけとなっていたテグサー1のボディが粒子によってみるみるうちに修復される。それは他のテグサーマンも、生物であるディーンですら同じであった。
「シャァァァ!!」
唐突に上からイエティマンに不意をつかれたテグサー1。
「くっ!!」
咄嗟に、追い払うかのようにアッパーを放つ。予想に反してその威力は凄まじく、掠めただけで下顎をへしゃげさせ、更には付近の大木に激突。余りある衝撃のエネルギーが木を根本からいとも簡単にへし折らせた。
「な、なんだこの力は…!?まさか、これが、レミーの力か!?」
「ほぉ…」
テグサー1と甲斐田が感心した直後、白い羽根が二人の頬を撫でた。それは、飛び去ろうと助走をつけたレミーが落とした羽根であった。
「ま、待てレミー!!どこへ行くんだ!!考え直し…うわっ!!」
追いかけようとするテグサー1を、いまだに残った数体の怪人がのしかかる。
「邪魔だぁっ!!」
流石にパワーアップした彼でも、振りほどき、吹っ飛ばすには数秒を経過した。
「あ、ああぁ…!!」
その間でも、レミーははるか彼方の曇り空へと飛び去った。最早、彼女の姿は豆粒ほどの大きさでしか視認が出来なかった。
「レミィィィィィィィィ!!」
テグサー1は叫ぶ。蝙蝠型怪人の首根っこを腕の中で掴みながら、去っていく友の名を。
「ハハハハハハハハ!!」
すかさず、甲斐田は手を叩いて笑う。
「いいもの見せて貰ったよ!!崩れ行く絆のサマをね!!ざまぁないねぇっ!!」
離れ離れとなった絆を。
「…どれ、時間切れだ。そろそろヤバいので撤退する」
合図一つ、最後に残ったもう一体の蝙蝠型の怪人は甲斐田を抱え、その場を去っていく。彼もまた、上空の豆粒となって消え去っていった。残ったのは、リーダー的存在を失った四人のテグサーチーム。怪人の亡骸。茶色に染まった羽根であった。
「くそ、まただ…俺はまた、大事なモンを失った…俺が、不甲斐ないばかりに…」
テグサー1は跪き、苦し紛れに絶叫。
「畜生…畜生がぁぁぁぁっ!!」
腕の中の蝙蝠型怪人を一発ぶん殴る。これで、襲撃した怪人は全て撃退した。再び静かになった森を、モニター越しに見る飛田は一人、呻くように呟く。
「もう…いやだ…」
と。
時刻は午後五時。さながら世紀末となった地上に変わらず、夕暮れは変わらず全てを紅く照らしていた。
「只今、戻りました…」
本社会議室を使った臨時のテグサーマン事務所。扉を開けてトウマ達が帰って来たのを見た橋爪は、待ってましたと言わんばかりに、迎えにきた犬の様に真っ先に駆けつけた。
「どこほっつき歩いてたの、トウマ!!研究所からいなくなったのは知ってたけど、まさか、他で戦っていたなんて…」
「すんません専務…中々戻れず…処分は受けます」
「そんな事、今はどうでもいいわっ!!それよりも皆聞いて頂戴!!ニュースが二つあるわっ!!まず一つ…涼はウチの傘下の病院で入院、一応は無事みたい…」
「そ、それはよかった…」
「ついでに海斗社長もね…涼が庇ったお陰で軽傷ですんだそうよ」
「社長か…これからって時に入院とは…」
「そうね…なんで研究を奪ったか、あの種子の危険性は企業としてしっかりと確認したのか、問われる所ね…」
「ところで専務、もう一つのニュースとは?」
「あ、そうだわ、こっちが大事…飛田くんが、急にいなくなったわ。それも、『退職致します』と書き置きを残して…」
「「「「えっ!!」」」」
ついでの様に言われたニュース。一同驚愕。真っ先に質問したのは、穂乃花であった。
「う、嘘でしょ…専務!?」
「嘘でこんなつまらない事言える訳ないでしょ。ホラ、コレ…」
橋爪はすぐ近くにいる茜に四つ折りの紙を手渡した。広げると、そこには確かにサインペンで、『退職届』と書かれていた。
「た、確かにこれはハカセの字だ…でも、なんで…!?」
誰に向ける訳ではなく、疑問を投げかける茜。すると、背後から顔を覗かせていた穂乃花が、「多分…」と呟いた。
「飛田くん、ここでの戦いが嫌になっちゃったんだ…!!だって、今までの戦いの原因がここだって知ったから…それに、自分の研究…テグサーマンもまた、利用だけされて、奪われでもしたらって考えたら…」
「と、とにかく追いかけなきゃ…!!外は今、多少落ち着いたけど、もし、襲われでもしたら…!!」
茜は外に飛び出そうと、ドアノブに手をかける。その行いに、橋爪は「待った!!」をかけた。
「今はいない人の事を考えるのは後回しよっ!!それより、これからの戦いをどうするか考えなさいっ!!」
「で、でも…!!」
「それに、あの子は今、気持ちの整理がつかないだけよ。誰の為、なんの為に戦うかをね。信じてあげなさい、きっと戻ってくる事を…」
「専務さん…」
一方で飛田。リュックを抱え、住宅街の急な階段を一歩ずつ踏みしめ、頂上までたどり着くと同時に振り返った。彼の視線の先にあったのは、旋風重工本社であった。
「皆さん…勝手な事を言ってすみません。でももう、嫌なんです…科学によってか弱い人が振り回される様を見るのは…この数ヶ月、色んな人と触れ合えて楽しかったです…さようなら」
飛田は去る。どこへと、あてもなく。一人寂しい彼を癒すのは、リュックに着けたGooGooZキーホルダーと、日光の僅かな暖かさだけであった。
どうも皆さん!!
なんと、三人が色々な形でチームを去ってしまいました!!
果たして、世界の危機を前に彼らはどう立ち向かうのでしょうか!?
どうなるのか、わかりませんねっ!!(作ってる私は知ってますけども)
それでは、今回はここら辺でハイライトと共に失礼しますっ!!
【挿絵表示】
それでは、また次回っ!!
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