テグサーマン   作:クロッカーズ

23 / 24
《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
・ゴッドラスト…十年間、ジン・ガイア帝国の陰で憎悪と成長を続けた『元人間』。
・バドリード…マツナガの上司。ゴッドラストに肩入れし、地球上の君臨を目指す。
※今回は動物が酷い目に遭います。閲覧はご注意を!!


第二十三話『愛憎』

23-1

 

「ねぇ穂乃花、ニュースで言ってたけど、一ヶ月位でで帝国との戦いが終わるって本当?」

 

ゴッドラストが誕生する一ヶ月前。騒がしい昼休みの教室で、穂乃花は女友達を連れた桃子にそう問い掛けられた。正直、彼女は政治的、軍事的な詳細には明るくない。こういった方面は涼やトウマ、飛田に任せっきりだからだ。だがそれでも『関係者』として笑顔で返す。

 

 

「あ~、うん、確かに言ってたね。私達にはよくわからないけど、多分そうなんじゃないかな?」

 

「あ、やっぱりそうなんだ~よかった~っ!!」

 

すると。桃子の安堵の声を皮切りに。

 

「え、やっぱマジなの!!」

 

「ホントにホント、穂乃花~!?」

 

「きゃあああああっ、嬉しい~っ!!」

 

飛んで跳ねて沸き立つ女友達。その様子に穂乃花は一緒に嬉しく感じると同時に、なぜそんな事を聞いたのか疑問に感じていた。

 

「いや~実を言うとさ、二ヶ月後に私、ドルフィントレーナーになる一歩の、最後の試験が控えているんだ~っ!!」

 

そんな彼女の様子を見てか、桃子は得意げに答えた。

 

「え、そうなの?それはおめでたいね~っ」

 

「うんうん。上手くいけばおじいちゃんが館長やってる水族館のイルカの子…名前はジェラって言うんだけど、近い内にショーに出れるの!!ホラ見てっ!!」

 

穂乃花は桃子が強く見せ付けるスマホの画面を見る。そこに写っているのは、背ビレがかぎ爪状になっているのが特徴のバンドウイルカであった。

 

「へ~この子がいつも言ってた…」

 

「そ、私の夢はね、私が小さい頃から仲良かったこの子と一緒に、大勢の人の前でショーに出て、テレビに引っ張りだこになる事なんだ!!」

 

「あ、そうなんだ?ふえ~…頑張ってね」

 

「うん!!…あぁ、思えば長く苦しい年月だった…帝国の襲撃もあってくじける事もあった。でも、そんな私がここまで来れたのは、ひとえにこの子との絆、それと、皆の励ましがあったからだよっ!!」

 

桃子が振り向くと同時に、女友達は次々とねぎらいの言葉を掛ける。

 

「うんうん、桃子、アンタはよく頑張った」

 

「そうだよ、色々大変だったもんね~」

 

言われた張本人は嬉しげであった。

 

「さぁ、いよいよあと少しでその努力が報われる。その頃にはもう、あの化け物もいなくなって、十年前に見た平和な時がやって来るのね…ね、穂乃花!!」

 

「へ、なに!?」

 

改まって呼ばれた穂乃花はビクリと体を上げた。

 

「詳しい事よくわかんないけど、今、世界の偉い人達と一緒に頑張ってるんだよねっ!!それならそっちは任せて、それから先は私は大勢の人の希望となるわっ!!だから、必ず勝ってよねっ!!」

 

「へ、あ、う、うん!!任せてよっ!!い、イェーイ!!」

 

穂乃花の指をくねらせたピースサイン。その様子を微笑ましく感じた友人達は小さく笑いあうのであった。

 

それから現在。飛田が帰ってから三日後も、ゴッドラストの破壊活動は続いていた。寸断される道路。沈む文明施設。迫り来る怪人と巨大植物。そして、崩壊していく日常。それまで侵略というより制圧活動を繰り返していたジン・ガイア帝国と違い、『奴ら』は自然、文明に対して容赦なく破壊の限りを尽くしていた。しかし、人々は諦めなかった。誰かに励まされ、支えられ、きっといつか、誰かがこの世界を救うと信じて…

 

暗雲立ち込める正午。トウマ達が在校している陽観高校は本来であれば休校にも関わらず、数十人の学生が制服姿で体育館に集っていた。その中に、テグサーチーム高校生組の姿はない。

 

「よし、これで…」

 

一人の男子学生がノートパソコンとウェブカメラのセッティングを終える。パソコンのモニターに映っているのは生配信のウェブサイトであった。

 

「皆、視聴者が集まってきたよ。今、数百人は来ている。これで皆の想いを、思いの丈を伝えてくれっ!!」

 

配信のタイトルは『陽観高校より希望を寄せて』。セッティングをした学生は配信スタートの3カウントを始める。その三秒間で壇上に十数人がカメラの枠内に収まった。その中心には穂乃花のクラスメイト、桃子の姿があった。

 

「…皆さん、こんにちは。私達は陽観高校の二年三組です。今、私達は本校より配信を発しています」

 

代表である桃子が沈痛な面持ちで語り始めた。

 

「皆さんはご存知だと思いますが、現在、私達の周囲には新しい脅威による魔の手が迫っています。それによって多くの物が破壊されてしまいました…」

 

「しかも、それだけじゃありません。漁夫の利で人の財産を奪おうとする人も大勢おり、それも合わせて被害の報告が友人から多数上がっています。どうして、どうしてこんな、他人が悲惨な目にあっているにも関わらず、こんな時にも自分の利益を優先するのでしょうか!?今は警察も碌に動けないからですか!?こんなの、こんなの…間違っていますっ!!」

 

「でも、私達は諦めません!!どんな目にあっても!!なぜなら私達には、この困難を乗り越えて夢を叶えたいという想いがあるからっ!!」

 

「…僭越ながら、私の夢はドルフィントレーナーで、将来共に泳ぎたいと願うイルカの子がいます。今、海が危険なので会いに行けませんし、連絡も取れませんが、その子への想いが私に諦めるなと強くしてくれます。だから、皆さんも想い人を考え、悪事を止めて、自分一人よければよいと考えず、皆で頑張り…ましょうっ!!だから、だから…私達、歌いますっ!!曲、は、私達の合唱コンクールで使った『空』ですっ!!」

 

セットしたラジカセから静かなピアノの伴奏が流れる。

 

「「「今、大空のな~か~に、人の想い流れて~…」」」

 

男女混合、パートごとに別れた合唱。壇に上がっていない学生もまた歌っている。今まさに想いは一つとなっている。

 

「「「…想いの先、み~ら~い~…!!それが力ぁ~っ!!」」」

 

大盛り上がりとなるサビ。二番、三番。そして、歌い終わる桃子の瞳に、大粒の涙が光る。彼女は両手で何度も拭おうにも、滝の様に流れて留まる所を知らなかった。

 

「うぇぇ…やっぱり辛いよぉ…こんなのいつ終わるのぉ…ジェラ、ギガロ、シュバルツゥ…会いたいよぉ…どうして、私ばかりぃ…グスッ」

 

いよいよ嗚咽も漏れ出している。見かねて傍にいた女友達が数人、次々と桃子にそっと寄り添った。

 

「桃子…大丈夫だよ」

 

「きっと、ジェラ達も桃子の事そう思ってるって!!泣くなよ、なっ!!」

 

続けて、配信を見ていたユーザーもまた彼女に激励の言葉を投げかける。

 

『桃子さん、負けないでっ!!』

 

『祈りは明日への活力となります。決してあきらめないで』

 

彼女の悲痛な叫び一つが、校内外問わず一つとなった。体育館にいた、配信に映らない彼らもまた、共に悲しげであった。もはや自分ではどうにも出来ない。力が足りない。でも、誰もが救いたい、救われたいという悲痛な願いの下だった。体育館はすすり泣きの声だけが響く。が、その時であった。

 

「よっ、元気でやってるかいっ!?」

 

観音開きの分厚い扉を勢いよく開け、陽気な声と共に甲斐田が現れたのは。

 

「いやいや、皆さんお揃いで…それにしてもどうしたんです、そんな暗い顔して?こんな時こそ、スマイルスマイル!!ね、オーディエンスの皆さんっ?」

 

そう言いながら、甲斐田は手持ちの自撮り棒に取り付けたスマホに向かってピースサインをする。画面には生配信中を示す映像が映っていた。

 

「イェーイ、皆さん見ってる~?ここが僕…いやもとい、俺が通っていた最低のガッコ、陽観高校で~っす!!」

 

配信は大入りらしく、コメント欄は忙しなく迫り上がっていく。甲斐田はその様子に満足げであった。

 

「かつて俺はね、ここで下らない連中にひどい目にあっていたんですよ。ねぇ?それなのに、まるで自分が聖人君子、被害者ヅラしていまして…そう考えるとねぇ、今この現状、ざまぁないですよねっ?ね、オーディエンスの皆様っ?」

 

「オイ、てめぇ!!いい加減にしろっ!!ふざけやがって!!」

 

怒声と共に、甲斐田の胸倉に掴みかかったのはトウマの友人である樋田。その後をかつて甲斐田に校舎裏で金銭要求した学生達三人、それも、髪色を黒に戻した姿で詰め寄っている。

 

「樋田の言う通りだっ!!大事な相棒に会えなくて女の子が泣いてんだぞっ!!なんとも思わねぇのかっ!?」

 

「そうだ、お前みたいなクズは出て行けっ!!」

 

甲斐田はやれやれと言わんばかりに溜息をつく。

 

「うるさいなぁ…」

 

と、人差し指で連続して四人を指差した。

 

「…あ?」

 

その行動に樋田は眉をひそめる。

 

「…ぼんっ」

 

対して、一息吐き出すように甲斐田は呟く。その瞬間、彼に刃向かう四人の右肩の肉は破裂音と共に、一斉に吹き飛んだ。

 

「あ、あ…?」

 

「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

「い、いてぇぇぇぇよぉぉぉっ!!」

 

「助けてぇぇぇっ!!」

 

フローリングに流れる鮮血。屈強な男達の悶絶の叫び。

 

「「「キャアアアアアアッ!!」」」

 

一体なぜそうなったかわからないまま、高校生、教員は一気にパニック状態となった。その場から逃げ出そうともした。が。

 

「あっと、逃げないで欲しいなぁ」

 

阿鼻叫喚の中で甲斐田は右腕を上げる。同時に、幾多もの蝙蝠型、鉄砲魚型、岩石型などの怪人が体で『通せんぼ』して出入口を塞いだ。逃げ惑う人間達は足を止めて引き返し、体育館中央に集まった。

 

「う、うぅ…」

 

ある男子学生は泣きじゃくるのを押し殺し、またある者は恐怖で気を失って抱き抱えられる女子学生もいた。そんな様子を首を回して見つつ、甲斐田は得意げな笑みを浮かべた。

 

「まぁまぁ、そう怯えずに。俺はこの学校を事例に、ちょっとした事を配信でお伝えしたいと思ってるだけですよ…そう、絆だの繋がるだの、皆で頑張るなんて無駄な事は、力の前ではショボくて小さくって事をね!!さて、どこから話そうか…」

 

彼はこめかみを掻きながら考え出す。と、背後から女子の声が掛かった。

 

「なんで、なんでそんな事言うの…?皆、これから頑張ろうって言ってんのに、そんなのってないじゃん!!」

 

「ん~?」

 

甲斐田が振り向くと、そこにいたのは桃子。女友達と共に一丸となって立ち向かっていた。

 

「おやおや、これはこれは桃子さん。クラス代表として頑張ってますね~皆で構ってもらえて、いいですね~」

 

甲斐田は多数を前に臆する事なく、ヘラヘラといった具合で返す。そんな表情を目の当たりにして、桃子の感情は一気に爆発した。

 

「ふざけないでっ!!あなた、この感じからしてあの化け物のゴッドラストの仲間になったんでしょ!?世界を滅ぼすような悪魔に肩入れしてるなんて、あなたに愛や思いやりはないの!?ねぇ!?」

 

「愛、思いやり?ハッ、そんな物、僕やこの国の上の者からしたら茶番劇にしか見えないけどな…」

 

「そ、そんな事は!!」

 

「ないというのかねっ!?じゃあ、ちょっと見てもらおうかな、オイ!!モニタリング!!」

 

甲斐田に呼ばれた怪人はトランチックの顔面をテレビのモニターに改造した物であった。モニタリングはモニターに電源を入れると、なにもない空間に映像を映し出した。

 

「これは、昨日のニュースだ…って言っても十数秒しかないが…」

 

甲斐田の解説した映像ではスタジオで、女性ニュースキャスターが淡々と原稿を読み上げていた。

 

『…大臣は『十年前の未来島の危険生物の研究と結果に関して責任は負えない』と釈明を致しました』

 

キャスターの次に映ったVTRは記者会見中の老いた政治家であった。桃子達はその人が誰なのかは詳しくしらない。ただ、この国の中心を担う人物である事は今まで見ていたテレビやニュースサイトでぼんやりと知っていた。

 

『…以上の様に、十年前、未来島で起こった危険生物が産まれた経緯と、研究は違法であったか、またはそれに関する資金提供、旋風重工への忖度問題は現在、当時の資料が不足しており、一切が不明となっています。また、当時の責任者は所在が不明となり、調査は不明瞭かと考えられます。ですが、今は諦めないで下さい。皆で手を繋ぎ、乗り越えて参りましょう。かつて学生達が起こしたGooGooZとの奇跡を信じて。また、現在、ゴッドラストと名乗る元研究員への対処は尽力の限りを…』

 

更に次に映り出すのは崩壊した日本の街中でデモを起こす人々であった。

 

『国と重工は研究の真実を明らかにしろ~っ!!』

 

『俺達の失った十年、返せ~っ!!』

 

『私達の生活これからどうすればいいの~っ!?』

 

『残ったジン・ガイア帝国はどうするんだ~っ!!』

 

『アンタら、なんもしてねぇ癖に偉そうなコト言うな~っ!!』

 

『確保っ!!』

 

デモ隊を蹴散らし、次々と捕らえる警官隊。旗は折れ、土足で踏みにじられる。更に次に映るのは政治家達による『話し合い』で、『責任』『責任』と怒号が続いていた。が、その映像に変わった直後、甲斐田が前に出てそれを遮った。

 

「…如何かな?あの人らはお前らの存在なんてどうでもいい。どっかで朽ち果ててろってさ。で、君達が団結した所で所詮、意見言っただけでああやって綺麗事言ってるデカい力の集まりによって飲み込まれるのさ。恐らく今頃、君達の配信を利用して、皆が注目してる間に、真実を揉み消す方に尽力してるんじゃないかな?とりあえず自分の地位は確保したいからね。やめたら、馴れ合いごっこ?無駄じゃない?」

 

「お前、ふざけんっ…!!」

 

甲斐田のクラスメイトの一人が怒りのあまりに拳を振り上げて立ち上がった。しかし、甲斐田は彼を素早く指差し、鉄砲魚型怪人はそのクラスメイトに狙いを定めた。

 

「う、うぅ…!!」

 

次になにが来るかそれだけで理解したクラスメイトは悔しがりながらも拳を静かに下ろし、その場に座り込んだ。

 

「…次は、本気で撃つ。さて、この配信をご覧の皆さん、こういった強い力だけが一つとなってはびこり、俺達の様なか弱く純真な者が虐げられ、無視される世界なんて、許せないですよね~?」

 

『マジ許せねー』

 

『それな』

 

『ぶっ壊せー、ぶっ壊せっ!!』

 

『キャハハハ、俺より偉い奴、不幸にな~っれ』

 

甲斐田のオーディエンスは彼が放った意見に同意する。問い掛けた側もその反応に実に満足げであった。

 

「うんうん、その通り。だからゴッドラスト様はあの者を滅ぼし、新たなる世界を築こうとしているのです。で、俺もまたそんな力を潰そうと、罰を与えようと思う訳です。そう、時の権力者同様、全ての人に頑張ろうだなんて呼びかけて、裏で人の事見下してる、ムカつく連中をねっ!!」

 

そう言い放つと、甲斐田は指差す。クラスメイトの一部である、かつて、自分を陥れた桃子と、その取り巻きの女子、男子グループを。

 

「…は?なにを言ってるの!?私が、力を振り回しているっての!?これから皆で頑張ろうって時に!?」

 

「ふん、しらを切るか…おい、モニタリング!!」

 

桃子の態度に、甲斐田は嘲笑しつつも、モニタリングに別の映像を映すよう指示した。

 

「え…なにこれ…」

 

その映像に桃子は唖然となり、

 

「こ、これって桃子さん…?」

 

「壇のクラスの人じゃん…」

 

その場の学生はざわついた。なぜなら、今まで甲斐田にしてきた仕打ちが鮮明かつ克明に記録されていたからだ。

 

『甲斐田く~ん?ちょっと金貸してくんない?』

 

校舎裏で金を無心する、現在流血の中で倒れている三人。

 

『ねぇ、さっきそこ甲斐田が触った所じゃない?』

 

『あ、ホントだ。あーやだ、このままじゃ菌が移ってジン・ガイアみたいな化け物になっちゃうんじゃない?キャハハハ!!』

 

聞こえよがしに甲斐田を指差しする女子。

 

『だってそうじゃん!?こんな人の事をすぐけなして協調性もない、しかも抜きん出た能力どころか普通の事さえも出来ないんだよ!?そんなのなんてこの世界に必要ないじゃん!?…さっさと餌にでもなればいいのにっ!!』

 

そして最後に、悪態をつく桃子の姿が映し出された。映像が終わり、ひそひそと陰口を叩く他クラスの学生達。

 

「あの人達、裏でこんなんしてたんだ…」

 

「酷い…なにが絆だよ…」

 

「これの企画した人達って、もしかして、自己満足の為に…」

 

それを受け、青ざめる桃子と取り巻きに、甲斐田はやはり満足げであった。

 

「…これは俺がゴッドラスト様から頂いたモニタリングの一部、眼カメラで記録した物です。さて、皆さん。これでわかったでしょう。全ての人が同じ立場で繋がり合うなんて事は出来ない。どうあってもどうせどこかで誰かを見下し、仲間外れにして、ぞんざいにする。とね」

 

「だから俺はこう思います。この世界に純粋な想いなんてない。あるのは力、弱者への軽蔑だと、ね。なので、この星でイキがっている連中は全て滅ぼします。今のうちに懺悔でもしておくんだなっ、ハハッ!!ハハハハ!!」

 

一人、大笑いする甲斐田。彼の配信には続々と『報いを受けるがいい!!』『皆滅べ、滅びてしまえっ!!』『俺の糞みたいな人生、最後に彩ってくれ』と、称賛の声が上がるのであった。

 

「そんな事ないっ!!」

 

だが、甲斐田が笑う中、桃子が前へと出た。

 

「アンタが私に…こうされたのは、アンタが空気読めない事を言ったからでしょう!?一年の時からそうやって!!それに、アンタとそれ見てる引きこもりの口先だけのオタクと違って、私達は夢の為に努力してるの!!ただただ、誰かを馬鹿にしてるだけじゃない!!アンタが憎む、イキがっている奴も想う人がいる!!そして、夢があるの!!それなのに。それを邪魔するなんてどうかしてるわっ!!ハッキリ言って、滅ぶべき悪はアンタ達よ!!わかった!?」

 

「ふ~ん、想い人、ね…それって…」

 

と、甲斐田は大型サイズのゴミ袋を取り出す。

 

「これの事かぁ~っ?」

 

その中にあったのは、誰からも愛されるバンドウイルカ、ジェラの頭部と、特徴的な背ビレであった。

 

「え、え…キャアアアアアア!!」

 

瞬間、中身を理解し絶叫する桃子。

 

「ホレ、渡しとくわっ」

 

甲斐田は無造作にゴミ袋を投げつける。床に落ちた『肉塊』は袋の入り口から血とウジ虫を床に巻き散らかした。続けてずるりと流れるジェラ。それでも桃子は壇を降り、四つ足で這って必死で部位を抱き抱えた。

 

「あ、あぁ…」

 

頭部と背ビレは傷だらけで肉がはみだし、ツヤのあった皮膚は完全に乾ききっていた。家族同然の者がどうなったか、意味を理解した桃子は、叫ぶ。

 

「ああああああああああああああっ!!」

 

そんな彼女の真上で、甲斐田は笑った。

 

「ハハハハ…ヒャハハハハハ!!いいねぇ!!そんな顔…今までクラスのトップにいた奴が堕ちていく顔が見たかったっ!!ね、これ見てる皆っ!!如何ですか!?」

 

『ざまぁないぜっ!!』

 

『スカッとしますねぇっ!!』

 

『なにが夢だ、ば~かっ!!』

 

『ウチの学校でも頼むっ!!』

 

「…ふ、それにしても申し訳ない。水族館中探してもこれしか見つからなかったんだよ。ホラ、見て桃子さん?皆喜んでるよ、笑ってるよ?笑顔で返さなきゃ?」

 

甲斐田はどや顔で配信に届くコメントを見せ付ける。血でスカートが汚れても構わず、しゃがんだままの桃子は俯いて見てはいなかった。

 

「いやぁ、それにしても悪いのはこうした権力者が悪いんですよ~、ねぇ!?これでわかったでしょ、強者は綺麗事言ってこんな事態にしても責任逃れて弱者ほっぽるって事が?」

 

甲斐田がどれだけ話しかけても反応しない。

 

「…ちょっと、見てくれないと困るな~」

 

「…してやる」

 

「え?」

 

「殺じてやるぅっ!!」

 

桃子が飛びかかる。

 

「ボンッ!!」

 

直前、甲斐田は彼女の脚を指差す。鉄砲魚型怪人は口から水を撃ち、彼女の脚を貫いた。

 

「が、ぐはっ…!!」

 

その場にバタリと倒れる桃子。そこは丁度甲斐田の足元であった。

 

「けっ、なにが『殺してやる』だぁっ!?」

 

甲斐田は容赦なく彼女の頭、顔面、腕と連続して踏みつけた。ダン!!ダン!!と乾いた音が館内に響く。

 

「俺がどれだけそう思っていたと思うんだ!?花を踏みにじられ、金を取られる度、暴力を受ける度、悪口を言われる度にな!!」

 

一発。

「でもそんな考えに徒党を組んで抵抗出来ないようにしてっ!!ムカつくんだよ、ちょっと顔がいいとかさ、人より優れているとかで馴れ合って優位に立ってさっ!!羨ましいね、ちょっと泣いただけで皆寄ってくれるなんてさっ!!俺なんか…俺なんかずっと一人で泣いてたんだぞ!?」

 

もう一発。

 

「そ、れ、に、さぁ!!イルカなんてケダモノには愛情注いでさ、人である俺には冷たくするのおかしくない!?なんでそれが出来ないのかなぁ!?俺だって生きてんだよねぇっ!?」

 

更にもう一発。

 

「た、助けて…」

 

踏まれ続け、顔が痣で赤黒くなる桃子。悲惨な姿にクラスメイトは一歩ずつ近づいた。そんな彼らに対し、甲斐田は足を止めてニコリと笑顔を向けた。

 

「助けたのかい?なら、お好きに…」

 

その表情の真意に気づいたクラスメイトはピタリと足を止めた。甲斐田はその様子にフッと、嘲笑した。

 

「見たか、桃子さんよ?お前の事なんか命懸けて守りたくないってよっ!!所詮、絆なんてそんな物だ、自分に降りかかるってわかったら止めるんだもんなぁっ!!ハハハハ!!」

 

再開して、甲斐田は桃子を何度も何度も踏み付ける。折角のメイクも靴で側面へとズレる。と、その時であった。

 

「そこまでよ、甲斐田くんっ!!」

 

「やめろ、甲斐田ぁっ!!」

 

怪人を押し倒し、登場したのはテグサー1、2。続けて4、変身態のディーンであった。

 

「む、来たか…」

 

睨み合う両者。テグサー1が先陣を切って駆け出した。狙いは、暴虐を続ける甲斐田を止める事であった。

 

「ふん、やれっ!!」

 

足を止めた甲斐田をバッ、と広がって護衛するのは十数体の怪人達。テグサー1は撃竜波を撃たんと胸部装甲に手を掛けた。

 

「…っく」

 

が、怪人の奥にいる学生達が視界に入るとそれを止め、目の前の二体の怪人の首目掛けダブルラリアットを放った。

 

「「ギャワン!!」」

 

剛腕の激突により同時に倒れ、白目を向く岩石型怪人。その背後では鉄砲魚型怪人がテグサー1の背中を目掛けて口を開いていた。発射寸前だ。すると、超高速で接近したテグサー2が槍となった風竜剣で怪人の脇腹を縦一閃に切り裂く。突然の一撃に大口を開けてよろめく鉄砲魚型怪人。彼の眼前にはディーンが待ち構えていた。

 

「ディーン…ブレイカー!!」

 

角から放った超音波は怪人の口内へと一直線に入り、音波は体内の水分へと流れ込んでいく。

 

「ギョワワワワ…!!」

 

全身が揺れ、鉄砲魚型怪人は瞬く間に黒焦げとなった。バタリと崩れる。それをゴング代わりにしてか、両陣営の激しい殴り合いが始まった。体育館の片隅で、テグサー1の強力なストレートパンチ。蝙蝠型怪人の爪攻撃。壇上付近でのテグサー2のハイキック。岩石型怪人のハンマーパンチ。入り口辺りでテグサー4のアクセル・ロッド振り下ろし…次々と倒れる怪人を前に、学生達は恐怖で抱き合って戦慄。その様子に甲斐田はふぅ、と尻を浮かせた座り方で一息ついていた。

 

「ねぇ、トウマくん?どうしてそんなに命懸けて人を守るの?お金の為?それとも、強者に気に入られているから、その立場を失いたくないからやってんの?」

 

「あぁっ!?何いってやが…」

 

「ハッキリ言ってね、こんな弱者を守る価値もないよ。まぁ、君達の上の国の偉い人に言われただけかも知れないけど」

 

「違うっ!!俺達はこれ以上命を失わせまいと、頑張っている皆を少しでも助けようとしているだけだっ!!」

 

「ふ~ん…でもさ、そいつら、今まで幸せな面してか弱き人…俺だけど、を虐め続けて、報いを受けているだけだよ?」

 

「だからって、関係のない人間まで見過ごせるかよっ!!」

 

「あ~あ、良くないね、そういう人それぞれって考え。そんなんだから、君ん所の企業とか偉い人達はつけあがるんだよ。あんな事やらかしたってのに自分達も皆と同じ人なんだとか開き直ってねぇ…」

 

「な!?お前、それとこれは…」

 

「関係ないって言うか!?まぁいいや、滅び行く世界の中でじっくりと考えて下さい。この世界は守る価値があるのか。この力は誰の為にあるかってね…よし、帰るか!!」

 

そう言うと、甲斐田は口笛を一吹き、正確には出来ずに息を吹くと傍で守る蝙蝠型怪人に抱えられた。

 

「あ、あ、あ、ああ、ちょっと待って!!」

 

その時、二人の学生、かつて、文化祭の時の太っちょとたらこ唇が甲斐田を呼び止めた。

 

「ん、あぁ、君達はクラスの…」

 

「そ、そうだよ、あの俺達さ、君と仲良くしようと思ってるんだよね!!だって、危害加えてないもん!!」

 

「え?あぁ…確かに君達は特になにもしていなかった」

 

「そう、それだよ!!実は君があんなのに絡まれた時、今度こそ助けようとしてたんだ!!だからさ、僕達と、家族だけは助けてくれないかな!?今まで出来なかったのは君と同じか弱い存在だった訳だし…」

 

「そうだな…でも君達は見て見ぬ振りしてただけだよね?」

 

「そ、それは…」

 

「それはすなわち同罪って事だ。だから君達も同じ目に合わせてあげるよ。そうすればあの強い連中と同じ扱いになるからね」

 

「「…!!」」

 

「…最後に一つ言っておくよ、君達が今までやって来た事は全て無駄だった、全ては力ある者の掌で踊ってただけ…夢を見る時も、ましてや絆を繋ぐなんて時も…ね!!それじゃあ、バイバイ!!」

 

怪人を蹴散らし、甲斐田へと突っ込むテグサー1。

 

「ま、待て甲斐田ぁっ!!」

 

しかし、すんでの所で逃げられ、彼の姿は体育館の窓から、空の彼方へと消え去っていった。

 

「く、くそっ!!ウイングパーツさえ修理が終わっていれば…!!」

 

怪人は撃滅。安全を確認し、変身を解除するトウマ達。

 

「そ、そうだ皆…!!」

 

と同時に、穂乃花はクラスメイトの下へと急いだ。

 

「皆、大丈夫!?怪我は…」

 

しかし、そんな心配を余所に、クラスメイトはその場に座り続けて反応がない。見向きさえしなかった。

 

「ね、ねぇ…!?」

 

見かねて、近くにいた穂乃花の担任が彼女に答えた。

 

「穂乃花…最初に襲われた樋田と三人は今来た救急車に運ばれた…命に別状はないそうだ…皆も無事だ」

 

「よ、よかった…そうだ、桃子、桃子は…!!」

 

そこで、穂乃花が駆け寄ったのは桃子。彼女は変わらずイルカの頭部を抱え続けていた。

 

「桃子…大丈夫?ね、ねぇ?」

 

「…いいな、アンタは…」

 

「へ?な、なにが…」

 

「とぼけんなっ!!知ってんだよ、アンタが権力者の犬だって事は!!」

 

桃子はバッと顔を上げ、ヒレを投げ捨てると同時に穂乃花の胸倉を掴んでいた。

 

「いいっ!?アンタんとこの会社と、その仲良しグループのせいで私の夢は目茶苦茶だ!!それだけじゃない、皆もだよっ!!でも、アンタはすっとぼけ続けてる!!それは選ばれたヒーローだから、そんなの他人事だと思ってんでしょ!?いいわよねぇっ!!飼い犬は、私達みたいな野良犬なんて誰も守ってくれないからねぇ、アハハハハ…アハハハッハ!!キャハハハ!!」

 

桃子を止めようと女友達は彼女を羽交い締めにする。

 

「ちょっと桃子、やめなって!!」

 

それでも桃子は口を閉じる事はなかった。

 

「出ていけ…ジェラやギガロ、シュバルツを直せないんなら、とっとと、出ていけぇぇぇぇっ!!もうお前の顔なんか見たくもない、守られたくもないわぁっ!!」

 

「桃子!!いい加減にしなって!!…でも、正直、私達も今、穂乃花達の顔は見たくない」

 

桃子に一部同調する友人達。

 

「えっ、えっ…!?」

 

穂乃花は動揺を隠せなかった。

 

「…だって、穂乃花達はこんな事になった原因の関係者でしょ?そう考えると、穂乃花の顔を見る度にその…ネットで見る重工や国の偉い人がちらつくの。だからお願い…しばらくは顔を見せないで」

 

「え、え…でも…」

 

穂乃花の拳に力が入る。しかし、その表情は口角を上げ、微笑みの形へと変わっていた。

 

「…うん、わかった。それじゃあいつか、この事態が解決したらまた会おう?トウマ、皆!!行こうっ!!」

 

穂乃花はトウマの腕を掴み、その場を後にする。

 

「あ、穂乃花…」

 

その後を茜、ディーンが追う。

 

その背に、当たり散らす桃子の叫びを受けながら。

 

「だ、大丈夫?桃子さ…」

 

「うっさい、根暗ども!!くっさい臭いが移るんだよぉぉぉぉぉっ!!」

 

その後、トウマ達は荒れ果てた街を歩いていた。かつてここでは人で行き交っていた筈だが、今あるのは割れたガラスと折れた電柱、大破した車が交わるだけであった。

 

「…穂乃花、大丈夫か?」

 

と、突然話しかけてきた茜。

 

「え、なにが?」

 

穂乃花はきょとんとした表情で振り返る。

 

「いや、その…友達にあんな事言われて、大丈夫かなって…」

 

「あ、その事?大丈夫、大丈夫~!!それより、お腹空いちゃった!!どっかで食べに行こっ!!」

 

「で、でも穂乃花、手が震えて…」

 

「いいからいいからっ!!あそこのコンビニに行こうっ!!」

 

茜の手を引っ張り、穂乃花が皆を連れて寄ったのは無人のコンビニ。当然ながらここは元からそうではなかった。恐らくゴッドラスト登場後に一旦全員逃げ出し、その後、崩れた店内に悲観しながらもたまに帰ってくるのだろう。そこには『お金を置いて持っていって下さい』と貼り紙があった。トウマ達はガラスをじゃりじゃりと踏みながらも、そこから食べられそうな食料を探していた。

 

「トウマ、この缶詰はこれだけで食べられるのか?」

 

「トウマ、これって期限大丈夫かな?」

 

「あぁ、こいつらは、まだ食えそうだな…買っておくか」

 

茜、トウマ、ディーンの三人はカゴいっぱいに食料、生活必需品を詰めると、無人のレジにそれを置いた。

 

「えぇっと、全部で税込み3789円か…」

 

代表で金を払おうと、財布を開けるトウマ。しかし、開いた彼の財布には小銭がなかった。

 

「げ、全然ないな…おい、誰か小銭持ってないか?」

 

問い掛けられた茜、ディーンは首を横に振る。残るは、横に立つ穂乃花。しかし彼女は、トウマ達に背を向けて立つばかりで頷きすらしなかった。

 

「穂乃花、お前はどうだ…おい、聞いてるか…?」

 

少し苛立ちながらもトウマは彼女に近寄った。が、そんな気持ちは足と共にピタリと止まる。穂乃花の肩が、少し震えていたからだ。

 

「…ねぇトウマ、私は、さ、この力でトウマだけじゃなく、大勢の人を守れる、喜んで貰えると思ってたんだ」

 

「…」

 

三人は黙って聞く。

 

「でも、まさか、そんな人達から、悪口言われたり、追い出されるなんて思ってもみなかったよ。もしかしたら、自分のいる所は誰からも憧れる正義のスーパーヒーローの集まりだなんて思ってたからかな?」

 

「ねぇトウマ?私達の戦いってさ、無駄だったのかな?ウチの企業の尻拭いでしかなかったのかな?絆なんて、想いなんて、いつでも壊れる、現実逃避でしかない物だったのかな?」

 

「穂乃花…」

 

「ハハ…ごめん、ごめんねぇ、みんなぁ。これから頑張り時だってのに、こんな事言ってさ…ごめん…」

 

「…大丈夫だ」

 

そう言いながらトウマは穂乃花の両肩にそっと手を乗せる。彼女が『こうなった』時、こうすれば彼女が落ち着く事を知っていたからだ。

 

23-2

 

「はははははっ!!いやぁ、こんなに気持ちいい気分は何年ぶりだろうっ!!祖母が足の骨折った時かなっ!!」

 

未来島に帰った甲斐田は高級感溢れるキャスター付きの椅子に座って意気揚々、くるくると回っていた。

 

「まぁ、イルカは俺が水族館を訪れた時、偶然役獣が喰ってたのを取り上げて、使えないかと思っていたが、まさか効果てきめんとはなっ!!お陰でネットの反応は上々だっ!!」

 

甲斐田が見るスマホは、先程の配信に関するダイレクトメッセージを次々と受信していた。

 

『威張ってた奴が落ち込むの、気持ちいいっ!!暗黒の時代の思い出が晴れていきます』

 

『配信楽しかったですっ!!僕の小学校にも来て下さい。名前は…』

 

『幼いときから他人とウマが合わず、どうせ碌な将来にならない、死のうと感じていた私に光が差し込んだ。次回も期待する』と。

 

「…ふっ、やはり俺と同じように、イキがっている奴らにどこからも仲間外れにされている人はいるものだ。こういうのがいるから、絆なんて物が胡散臭いんだ。ね、修博士?」

 

「ん?ああ、そうだね」

 

多くの役獣、自身が新たに産み出した怪人達を撫でるゴッドラストは甲斐田に目をやる。その一方で怪人態のままのバドリードはフン、と鼻を鳴らした。

 

「ウチの兵隊をわざわざ使うからなにかと思えば、自分のストレス発散の為、自己顕示欲の為か…どうせ殆ど滅ぼすつもりなんだから、そんな下らん理由で使うな」

 

「…はぁ?」

 

怒る甲斐田は床を蹴ってキャスターを転がし、座ったままの姿勢でバドリードの元へ向かった。

 

「あのね、これは俺の単なる復讐じゃないの。世の中、社会からあぶれた、つまはじきの存在がいるって事をあのテグサーマン達に認識させ、見せかけの絆で作る想竜弾を放てさせない為にやったの。それに、こうやって配信を通して破壊活動をすれば、必然的に皆、自分もやっていいんだと同じような事をする。これで足の引っ張り合いが出来るって訳。で、その隙に世界を滅ぼすって訳。大体、この作戦は君の前回の失敗の尻拭いをしてあげたんだよ。感謝して欲しいものだね、お魚さん?」

 

「なんだと…!?誰がそんな事を言った!?」

 

「帰って来たとき、そう見えたけど?」

 

「勝手な事を…!!」

 

その時、ゴッドラストはパン、パンと手を叩く。

 

「…二人ともその辺りにしてほしいな」

 

睨み合う二人は双方そっぽを向き、ゴッドラストの話に耳を傾けた。

 

「今、私は地上の栄養を吸い取り、まさに最強の力を手にしたと言ってもいい。さて、この力を活かすに当たって、どこで発揮するかだが、なにか提案はあるか?」

 

そう言いながらゴッドラストは掌に力を溜める。その輝きにバドリードはゴクリ、と喉を鳴らす。対して甲斐田は冷静であった。

 

「…特にないか。では、人間達の報道でも見るとしよう。モニタリング!!」

 

主に呼ばれたモニタリングはヒョコヒョコと近づき、空間に映像を流す。番組は連日流れ続ける生放送中の報道特番であった。

 

『…只今入ったニュースです。現在、連合組織GRNは十年前の未来島での研究に関して事情を聴く為、旋風社長を本部へと同行すると発表致しました。現在、旋風重工本社前に現地リポーターがおります。現場の堤さん…?』

 

厚化粧の女性ニュースキャスターが淡々と読み上げる中、視聴者の三人は顔を見合わせた。

 

「…決まりだな」

 

『え~、こちら現場の堤です。え、現在ですね。旋風社長のいる本社の前には、政府とその関係者の建物同様、大勢の人でごった返しております。最近では僅かに怪人、植物類が沈静化しているとはいえ、政府が『外に出るのは危険』だと言っている中でもこれだけの人数ですから、国民の怒りは相当な物かと…』

 

『重工は説明をしろぉぉぉぉぉっ!!』

 

『国と繋がって、よくも騙したなぁぁぁっ!!』

 

『出てこい、引きこもりっ!!』

 

『逃げるなぁっ、卑怯者っ!!』

 

『重工は解体しろぉっ!!関わった政府はクビにしろぉっ!!』

 

『『『そうだそうだ!!』』』

 

現場リポーターの熱意ある報告の後ろで、重工本社前の広場ではデモ隊が押し寄せていた。怒りに満ちた彼らからビルを守るのは厳重なバリケードと警備員。そして、彼らが責め続ける当事者、旋風海斗はといえば、休憩室でその生中継を、ポテトチップスを頬張りながらソファーに寝転んで見ていた。

 

「あぁ~、全く、外に怪人がいるかもしれないってのに、なんでうろつくのかね?第一さ、上ばっか批判しないで。これからも皆で頑張ればいいじゃんか、手を繋ぎ合えばいいじゃないか、なぁ?大体さ、こことか政府を潰したら君達の生活、より悪くなるよ?雇用とかライフラインとかさ。もう諦めなよ。我々そこまで支配しちゃってんだから。つーわけで、君達弱者は、大人しく僕達に従ってればいーの、わかった?」

 

「…チッ」

 

海斗の様子を後ろで見ていたトウマは聞こえよがしに舌打ちをし、部屋を去る。

 

「トウマ…」

 

その場にいた橋爪は、彼を黙って見送るしかなかった。

 

「…おい、どうだ?GRNの人はまだ来ないのか?」

 

トウマが向かった先は隣の部屋である臨時の飛田含むテグサーチーム待機室。彼の質問に答えようと立ち上がったのは涼であった。

 

「あぁ、もう少しで来るそうだ。といっても、道は寸断、車や人で渋滞しているからな。そんなに予定通りには来ないだろう」

 

「そうか…」

 

「それにしても、すごい人だねぇ…」

 

ディーンが眺める外の景色は遥か下のデモ隊。彼らの形相と、あまりの人数の多さへの驚きか、それとも不安からか、彼は小さく笑みをこぼしている。その一方。彼の傍らでパイプ椅子に座る茜は、隣で座る、表情を強張らせる穂乃花の背中をさすっていた。

 

「で、大丈夫か…穂乃花?」

 

「う、うん…大丈夫だよ…」

 

穂乃花は小さく震えていた。と、見かねた涼が彼女を見上げるようにしゃがんだ。

 

「…このプレッシャーの中だ。無理はするな。ダメそうなら家に帰ってもいいんだぞ?家だって今、大変だろう?」

 

その真っすぐな瞳に、穂乃花は少し間を置いて少し頬を緩ませた。

 

「ううん、大丈夫。お父さんお母さんにもウチは気にするなって言われるもん。ありがと、涼さん」

 

「ん…」

 

二人はしばし見つめ合う。お互いの間にあった緊張感がほぐれていく。と、扉が勢いよく開かれた。

 

「おぉい皆、GRNの人が来たわっ!!一緒に来て頂戴!!」

 

現れたのは橋爪であった。上司の指示を受け、トウマはいち早く立ち上がった。

 

「よし、行くか…」

 

仲間達もその後に続く。前回と違い、今回の海斗の護送は本社の関係者専用通路を通る事となった。

 

「…」

 

全員テグサーマンに変身しているとはいえ、チームが不安と沈んだ面持ちをしているのは、彼らの後ろをついている橋爪でもわかった。すると、非常階段の扉を開ける直前に、海斗は足を止め、外を一望出来る窓の方を見た。その先にあったのは、変わらず騒ぐ群集の姿があった。

 

「…ったくよぉ。アイツら、俺を誰だと思ってやがる?世界を股にかける旋風重工のトップで、色々助けて、特にこの国に目をかけてもらってるんだぞ?下界のお前らとは違うんだ」

 

この発言を前に、テグサーチームもまた、足を止めて彼を見る。特に、前を行く1、2はわざわざ振り向いてでもだ。

 

「それにさ、この情報知ってからここぞってだけ騒ぎやがって。そんなに俺が気に入らないんだったら、普段から情報サイトとかに気にかけて、動いてたらどう?ま、どうせ普段はゲームだの漫画だの。アイドルだの、こっちが提供して、ばらまいたモンに夢中でそれどころではなかったんだろうけどな、ハハハハ!!」

 

「…社長、行きますよ」

 

テグサー3は海斗の背中を軽く押して、階段の方へと押し込んだ。それでも『持論』は止まらない。

 

「それにしても、国の奴ら、俺をスケープゴートに使いやがって。お前らだって共犯者じゃないかくっそ~。先代と誰かが協力してやったのかがわかれば、そいつらになすりつけられるのになぁ…」

 

「…その前に、自分がしたこと、帝国やゴッドラストにやった事を認めたらいいんじゃないかい?」

 

階段を降りる道中、海斗の横で変身済みのディーンがポツリと呟く。その瞬間、海斗はカッと目を見開き、彼に詰め寄った。

 

「は?は?は?君何いってんの?帝国やアイツは、世界を崩壊に導いた張本人なんだよ?そんなのになにを謝れと?だってあれはさもう化け物なんだよ?あっ、君も同じだもんね。アハハ~ッと…」

 

「そう…」

 

ディーンは海斗の先を進み、金属製の扉を勢いよく開く。その先は地下駐車場であった。そして、全員で入るとそこではGRNの隊員が待ち構えていた。

 

「ハイ、久しぶりね?」

 

彼らの中心にいたのはモーラ。

 

「モーラさん…!!やはり来ていたんですね…!!」

 

手を振る彼女に、飛田が一番初めに驚いた。

 

「えぇ、いざって時に戦える人がいなくちゃ始まらないからね…それじゃあ、約束通り、そちらの社長さんの身柄を…」

 

「ふん、ウチの事を意地汚く嗅ぎ付けた女狐め…戦うって事はロックオン・スナイプを持ち出したってコト?職場の物を勝手に持ち帰るなんて恥ずかしくないの?」

 

突然、憎き相手をを見つけたかの様に強く指差す海斗。彼を見るモーラは微笑んではいたが、黄色い瞳はこれまでになくまぶたが沈み、冷ややかに感じられた。

 

「…ロックオン・スナイプに関してはウチの社長の許可が下りているわ。それに、裏で法律破って、金にしがみついたあなたの企業と、お仲間の方々よりはよっぽどマシだと思うけど?」

 

「なにを言うか…この世界は上がいいって言ったら、なんでもアリなんだ。あれだって経済を守る為にやった…!!ゴッドラストとか名乗ってる奴に、優位性を持たせてたまるか…!!まぁ、まさか、あんなヤバい物だって知らなかったし、それを教えてくれなかった皆が悪いんじゃ…」

 

「はいはい、その話は私の本部で、ね?さ、トウマ、涼?社長をウチの車に詰めて下さる?」

 

「あ、あぁ…」

 

「了解した。さ、社長…」

 

テグサー1、3に連れられ、海斗は前に進む。隊員によって開かれた装甲車のスライド式のドアに足を掛ける海斗であったが、突如、バッと振り返る。まさか逃げるのか…?構えるモーラ達であったが、それ以降の動きはなく、真上の地上ばかり見ていたのであった。

 

「いいか、地上の民衆よっ!!いくらお前達が騒ごうと、この世界のヒエラルキーは変わる事はないっ!!お前達は地上を這い、俺はトップクラスの繋がりによってその地位は保たれるっ!!それには法律が味方だっ!!法律が、私を守り、いずれは私をシャバヘと返すだろうっ!!その時まで、アイルビー、バック!!」

 

「…さっさと入れやっ!!」

 

堪忍袋の緒が切れたテグサー1は力づくで海斗を押し込み、壊しそうな勢いでドアを乱暴に閉める。それから、背後にいるモーラに、静かに話しかけた。

 

「…モーラ。俺達も一緒についていく。その予定だよな?」

 

「…え、えぇ!!そうね、そうよ…」

 

モーラは強く頷く。その姿は、テグサー1の怒りのオーラに少々尻込みしている様子であった。その時、エンジンの爆音と共に、一台のトラックが入口から入り、彼らの前で急停止した。駐車場の地面に、黒いブレーキ跡が付く程であった。

 

「なによ、あの車…あんなの来るなんて予定、入れてないわ」

 

橋爪は疑問に思う。

 

「ま、まさかアイツら…か!?」

 

と同時に、ディーンはトラックから次々と降りる十数人の乗組員の顔を見て、いち早く察知。

 

「おい皆!!戦闘態勢をとれっ!!コイツら、ジン・ガイア帝国の残党軍だ!!」

 

「…その通りですよ、ディーン様。そして我々の目的は…」

 

瞬間、人間が驚愕するより早く、リーダー格と思わしき黒いアーマー着用の男性は呟き、姿を変える。アリ型の戦闘員級へと。

 

「我々を身勝手に産み出した旋風重工と日本への制裁だ…!!」

 

リーダー格に倣うように、同じ恰好をした他の帝国軍人の三人は次々とバッタ型、てんとう虫型、カゲロウ型と姿を変え、他の仲間も戦闘員級用メットを身に纏った。わざわざ戦闘力を補わなくてはならない。その強さを見て、ディーンは警告する。

 

「や、やめろっ!!お前達の戦力では勝ち目はないっ!!無駄死にするだけだぞっ!!」

 

「ディーン様!!我々は本来、将来的に人間を無力化させ、この世界の頂点に立つべき種族の筈だった…しかし、この意思でさえ、その人間やあの室田修に作られたとするならば…ここで作りし者を倒し、その事実から独り立ちしなければならないっ!!帝国の未来の為に…かかれっ!!」

 

リーダー格の号令と共に、一斉に襲いかかる帝国人。

 

「くっ…馬鹿野郎がっ!!」

 

彼らに対し、ディーンは青竜刀を抜き、風を纏うように一気に駆け出した。続けて、テグサー1もまた援護に向かう。

 

「ディーン…!!今、俺達も…!!」

 

「来るなっ!!」

 

しかしアリ型戦闘員級が持つマチェットと斬り結ぶディーンはその行く手を止めた。

 

「これは、帝国の問題だ…俺が自分で解決するっ!!それより、トウマは皆を…社長さんを頼むよ!!」

 

「あ、あぁ、わかった…!!」

 

「させるかっ!!」

 

戦闘員級の一人が携行装備のマシンガンを連射、周囲の地面に装甲車、テグサーマン達の足元に火花が散った。

 

「くっ…!!」

 

思わず身を構えるモーラ。変身をしようとラントム・ウォッチを左腕の袖を捲る。が、隊員の『ここを脱出しよう』というハンドサインを見かけ、きびすを返して装甲車へと乗り込む事となった。

 

「出してっ!!」

 

「了解!!」

 

運転担当の隊員がアクセルを目一杯踏み、車体がガクンと大きく揺れる程に急発進。帝国のトラックを体当たりで突破すると、地上へと上がる坂道を一気に駆け上がった。

 

「逃げるか、責任も取れぬ男がぁっ!!」

 

戦闘員級の一人が装甲車を追おうと駆け出す。

 

「させるかっ!!」

 

しかしその行く手を、テグサー1が巴投げで止めた。

 

「ギャウンッ!!」

 

投げられ、めり込む程に壁へと激突する戦闘員級。その隙を狙って、装甲車に追随する為に疾走するテグロード。運転するのはテグサー3であった。その次にフォーチェイサーに跨がるテグサー4と、走るテグサー1が続く。かくして、駐車場にはジン・ガイア帝国人だけが残る事となった。

 

「ふんっ!!」

 

それまで斬り結んでいたディーンとアリ型戦闘員級はディーンの不意打ちの蹴りで軍配が上がった。彼の体が宙を舞う。と同時に、ディーンに次に襲い来るのはマチェット、コンバットナイフに日本刀。

 

「つぅあぁぁっ!!」

 

「これだけの数で一斉なら…!!」

 

「邪魔を…するなっ!!」

 

「えぇいっ!!」

 

戦闘員級が各々持ち寄った十数もの刃は、相手を狙って一斉に振り下ろされた。しかし、日本刀はディーンが真剣白刃取りで掴み、背後から迫るいくつもの刃は腰を捻った回し蹴りによって、持ち主ごと吹き飛ぶ事となった。

 

「もうやめろ、こんな事はっ!!」

 

最後に日本刀を腕力でへし折り、持ち主に強力なストレートパンチを見舞う。ここでも力量に差があり、喰らった戦闘員級は数m吹っ飛ばされてコンクリートの地面に頭部を擦られるハメとなった。

 

「…頼む、これ以上無駄な血は流させないでくれ。今は奴をゴッドラストを倒す時だ。そうじゃないのか?」

 

戦いを止めさせようとディーンは熱い拳を緩めて見渡す。しかし、周囲には武器を失い、倒れつつも戦意を失わずにかつての上司を睨む彼らの姿があった。

 

「…ディーン様…いや、ディーン。あなたはなんとも思わないのですか?」

 

そんな彼らを守るかのように、アリ型戦闘員級はディーンの前に立つ。

 

「我々は無理矢理作られた存在。その原因を生み出し、駆除しようとしたのは今あなたが逃がした存在の一派だ。あなたは悔しくないのですか!?言い逃ればかりしている奴らの存在を、許していいのですかっ!?」

 

言っている間に彼はドンドンと詰め寄る。と、その前にディーンの青竜刀が突きつけられた。

 

「…!!」

 

「…だからといって、あれを殺してなんになる?人である奴を殺せば、お前達は防衛軍や俺達に追われる事となる。そうなれば、お前達の命の保証はないんだぞ?…だから頼む、これ以上、無駄な同族殺しは流させないでくれ…」

 

「う、うぅ…」

 

その言葉に納得してか、アリ型戦闘員級は膝をついた。

 

「それじゃあディーン、我々は、どうすれば…ゴッドラストも倒せない、復讐もままならないままでは…それに、あの権力者とかいう人間だって、ただただのさばるだけではないですか!?」

 

「…戦いは我々に任せ、今は羽を休んで逃げるんだ。逃げて、逃げて、最後までの人生を全うするんだ。閣下も『時を待て』とおっしゃっていた」

 

「今の我々は逃げるのは恥ではない。争う以外の方法は、いくらでもある筈だ」

 

「…わ、わかりました。おい」

 

アリ型戦闘員級が合図すると、周囲の仲間達はよろよろと立ち上がった。もと来た道から帰ろうとする彼らに、ディーンはあさっての方向を指差す。その先は『非常口』の扉であった。

 

「…今、下手に大通りに出れば捕まるかもしれん。そこからなら地下通路で人気のない所に出られるぞ」

 

「あ、あぁ…」

 

戦闘員級達は人間態に戻り、引き返してぞろぞろと非常口へと向かう。しんがりを務めるアリ型戦闘員級はそこに入る直前。ディーンの方へと振り向いた。

 

「…ディーン、結局我々はなにも出来なかったかもしれないが、最後にあなたに会えてよかったかもしれない」

 

「…」

 

「最後に言わせて欲しい。俺の名前はアット。もしこの世界に平和が来たら、また会いましょう…その時を、祈っている」

 

「あぁ…わかった」

 

アットは非常口ドアを閉め、駐車場に静寂が戻る。見送ったディーンは宙に浮き、出口に向かって一直線に飛んだ。

 

「そうだ…人間だってそんなに愚かな奴らだけじゃない。生きる為、遊び半分で上から誰かを陥れたり、蔑ろにするだけで生きてるわけじゃないよ…」

 

射出された様に、ディーンは駐車場を後にし、空高く舞い上がった。

 

「確保っ!!」

 

「卑怯者…!!」

 

「そんなに立場が惜しいのかぁぁぁぁ!!」

 

真下の地上では旋風重工と政府関係者の建物に群集がデモをし、それを力で押さえ付ける警官隊の姿があった。

 

23-3

 

「なんとか逃げ切れたわね…」

 

ガイアランでひび割れ、堤防や道路が崩壊した海岸線道路。ガタガタと揺れる装甲車後部で後方を見張るモーラは、随伴するテグサーチームを見ながらそう呟いた。

 

「海斗社長。ちょっと道が揺れますけど、これくらいは我慢して下さる?あなたは要人であると同時にこの十年、世界的な騒動のきっかけを作った企業のトップなんですからね?」

 

「…んあぁ~、そうねぇ…申し訳ないです。送って貰って」

 

海斗は座席にどっかりと座って天井ばかり見上げていた。立ち続けるモーラが、冷ややかな目で見下ろしているのに対しても。

 

「そうねって…わかってるのアナタ!?まず、アナタの父親はコネで法律をねじ曲げ、世界で禁じられた未知への研究開発を進め、その次にアナタはそれを利益を独占するが為に、研究が暴走した時のデメリットや相手の気持ちを考えずに奪い取ろうとした。そしてこの結果よ!?わかってるの!?」

 

「いやぁ…そうは言っても、勝手に暴走してんのはあのゴッドラストでしょう?もしかして、アレに勝てないから俺に当たってんの?」

 

「な!?な…!?」

 

「言っとくけど俺はこの国の経済の頂点に立つ存在。国に選ばれてんだ。だから俺は十年前、経済を効率よく潤す為にやったんだよ。国のトップと話し合ってね」

 

「それで、研究は別に奪ったんじゃない。ちょっと、アイツの研究室を買収して、我が社と国の名前だけで世界に発表しようとしていただけさ。あ、でも、多少強引気味で、まさかあんなヤバい代物だったのは知らなかったね。その点は反省すべきだ。これに問題があるってんなら、弁護士を呼べ、弁護士を、な!?きっと、裁判長は正しい判決を下してくれる筈さ~っ、と」

 

「こ、コイツ…!!」

 

モーラが海斗に詰め寄ったその時、突如として装甲車が急停止した。

 

「ど、どうしたの!?」

 

大きくよろけた彼女であったが、急いで運転席に向かう。

 

「…あ、あれが…目の前に…」

 

運転手は震える手で前方を指差す。

 

「え?あ、あぁ…!!」

 

見るなり、その先にいた者に、モーラは絶句した。何故なら、視線の先にいたのは自撮り棒とその先のスマホを手にした甲斐田。そして、その手前に仁王立ちするゴッドラストがいたからだ。

 

「て、敵襲!!ゴッドラストが…!!」

 

モーラが報告するが早いか。

 

「ふんっ!!」

 

ゴッドラストは腕をひと振り。発生させた衝撃波で装甲車をいとも簡単にひっくり返した。

 

「く…!!」

 

席、内部装備も逆さまになり、それらが刺さって怪我をした隊員がいる中、装甲車の後方からモーラは匍匐で外に出る。その次に海斗がひぃひぃ言いながらはいずり出た。

 

「もぉなんなんだ…!!俺がなにしたってんだ!!」

 

その一方、モーラは立ち上がる。

 

「ゴッド…ラスト…!!チェンジ、マイヒーロー!!」

 

『ボイス・ログ、コンプリート!!チェンジ、ヘア、ユー、ゴーッ!!』

 

そして、振り向きつつロックオン・スナイプへと変身。狙撃銃の狙いをゴッドラストに定めた。

 

「やらせはしないっ!!」

 

ロックオン・スナイプは引き金を三回弾いた。放たれた弾丸達は持ち手のコントロールによって各々軌道を曲げ、ほぼ同時のタイミングでゴッドラストの頭上、脚、胸へと向かった。

 

「無駄だ」

 

が、ゴッドラストは指一本動かす事もなく、放出した高熱の蒸気が弾丸を一瞬にして溶かした。落ちる小粒の鉛を前に、ロックオン・スナイプは立ち尽くすばかり。

 

「…今のお前に用はない、用があるのは…久しぶりに会う海斗社長。お前だ」

 

ゴッドラストに指差された海斗は蛇に睨まれた蛙のごとくしゃくりあげ、脚を震えさせた。

 

「ヒッ!!う、うぅっ!!な、なにやってんだよ皆っ!!助けろよっ!!困ってる人がここにいるんだぞっ!!」

 

そこで彼は助けを求めて傲慢に泣き叫ぶ。それでも救助する装甲車の隊員は横転した車両から出るのがやっとの状態であった。そんな惨状を前に、甲斐田はニヤニヤとしつつ、ゴッドラストに助言を与えた。

 

「修博士、あいつムカつきません?自分が原因だというのに、それの尻拭いを他人にさせるなんて」

 

「ふん、そうだな…」

 

頷いたたゴッドラストはズン、ズンと前に出た。

 

「ひぃぃぃぃ、来るなっ!!」

 

ロックオン・スナイプのはるか後方にも関わらず、海斗は尻をコンクリートの地面にこすりつけながら後ずさる。もはや表情は恐怖一色。そうなった彼を見て、ゴッドラストは小さくため息をつきつつ『会話』を持ちかけた。

 

「まぁ待て。私は少し、アナタと話をしたいだけだ。そう、なぜあの時、私の研究を奪うマネをした事を…」

 

「うわぁぁぁぁっ!!知らない知らない!!君がこんなんなるなんて知らなかったんだよぉっ!!知ってたらこんな事はしなかったよ、多分…!!だから許して、ねぇっ!!」

 

もはや海斗の姿は理路整然で教師に詰められ、泣き叫んで誤魔化そうとする生徒の様であった。悪あがきとも取れる。ゴッドラストは右腕をゆっくりと上げ、指先を彼に向ける。

 

「そうか、我々はやはり…」

 

だが、その時。

 

「待てぇっ!!」

 

海斗の身体を飛び越えて、テグサー1が前に出る。その後を、2、3、4も続いた。

 

「あの時は会えなかったが、今やっと会えたぜ…ゴッドラスト、いや、室田修!!」

 

「その声は富田トウマか…三度のみすれ違ったが、随分と大きくなったものだな…顔つきも父親ににそっくりだ」

 

「…うるせぇ!!殺した奴が言う言葉かよ!!」

 

今にも降り出しそうな暗雲の下、テグサー1を中心とした戦士とゴッドラストは睨み合う。戦いの火蓋はすぐにでも切って落とされるだろう。その直前、テグサーチームの間を割って、飛田が飛び出した。

 

「修博士!!あなたは科学を、こんな、自分の復讐、満足を果たす為に使っていいと思うんですか!?科学者としての誇りはないんですか!?」

 

「…それは、そこで座る社長に言うべきではないかね?今君達が守ろうとしているそいつは、全ての利益を奪い身内に献上するような男だぞ?」

 

「…確かに、この人は悪い人かもしれません。でもっ!!あなたのように無関係の人に危害を加えるようなマネはしていないっ!!」

 

「ならどうする?ここで私を倒し、ただただはぐらかすだけ、時間と共にその内忘れられるこの世界で、その男をのうのうと生かしておくのか?ならいっそのこと、我が力によって変えていこうと思わないかね?」

 

「…そ、それは」

 

「最も、今や世界を変えられる私を倒せるとは思えんがね」

 

「くっ…」

 

瞬間、テグサー1が飛田の前に出た。

 

「ふざけんじゃねぇっ!!さっきからガタガタとっ!!大勢の人の命を奪った変動なんてあっていいわけがないだろうっ!!いいか、まずは十年前、俺や飛田の家族、そしてあの島に生きた人が志半ばにしててめぇに殺されたっ!!この星の環境を自らの手で変えるって想いを抱えてっ!!」

 

「俺は見た…もうあんなのは沢山だ…目の前で皆がいなくなるなんて、絶対にあってはならないんだっ!!だから今、ここで倒すっ!!」

 

テグサー1は右拳を固めて突っ込む。

 

「と、トウマさんっ!!待って、相手の分析を…」

 

飛田の制止を振り切る、その拳には青白い炎が宿っていた。

 

「ふん、来る」

 

ゴッドラストはすかさず左腕でガードを構える。しかし、テグサー1の一撃はガードを弾き、頬が反対側にまでめり込みそうな程に拳をめり込ませた。

 

「…かっ!?」

 

その衝撃は凄まじく、ゴッドラストは尻餅をつき、地面に十数mもこすりつけられる。

 

「や…」

 

「やった…!!」

 

未来島での戦闘を思い出しつつ、テグサー2と4は思わず感嘆の声を上げた。同時にゴッドラストが起き上がる。割れた顔面を左手でさすり、修復しながら。

 

「…やるな。それが想いの力か…おかげで吸収した一部を浪費してしまった」

 

「も、もう止めて下さい修博士。あなたの気持ちは同じ科学者として少しだけわかります。だから、その力をもっと別の方に…」

 

すかさず出た飛田の説得。

 

「断る。私こそがこの星の真の頂点に立つからだ」

 

それをゴッドラストは無下にして。

 

「まだ言うなら、俺が止めるっ!!」

 

テグサー1は追撃する。痛撃を与えた相手を前にし、流石のゴッドラストも腕に力が入る。

 

「うおりゃぁぁぁぁっ!!」

 

「つぁぁぁっ!!」

 

テグサー1は構え続けるゴッドラストの腕目掛けて、連続した左右のジャブを放つ。そのパワーを、胸の前でガードする両腕で連続して受け流しつつあるゴッドラストであったが、拳を一瞬止めた不意打ちの膝蹴りには対処仕切れず、みぞおちへの衝撃でおもわずガードを解く事となった。

 

「ぐっ!!」

 

「貰ったぁっ!!」

 

僅かな隙をテグサー1は見逃さない。渾身の右ストレートパンチを僅か上で待つ顔面目掛けて突っ込ませた。しかし、ゴッドラストの『ぐぱっ』と粘膜と共に開いた胸にその拳は捕らえられてしまった。

 

「気をつけろトウマ!!そいつは力を吸収するぞっ!!」

 

「なに…!?く、くそっ!!」

 

テグサー3に言われ、慌ててテグサー1は左手でハンドシューターをホルスターから抜き、銃口を吸収口に向けると同時に連射する。が、弾丸は口に刺さるだけで痛手とはならなかった。

 

「くくく…はははっ!!このまま、吸収して、TE粒子も頂いておこうっ!!」

 

「ま、まずいっ!!」

 

ロックオン・スナイプは援護しようとライフルを構える。その時、飛田が「待った!!」を掛けた。

 

「飛田…!?トウマを見殺しにするつもり…!?」

 

「いや違います、あれを見て!!」

 

「え!?」

 

「ぐ、うぉぉぉっ!?」

 

突如として苦しみだすゴッドラスト。吸い込みは続けるものの、深く膝を曲げていた。その様子に解説を求めるよう、モーラは飛田をチラリと見た。

 

「あれは恐らく、十年の間で学習出来なかった粒子を飲み込んでしまい、体に適合出来ずに悶えているんです」

 

「そ、そういうこと…」

 

「それにしてもテグサー1、すごいパワーだっ…!!今までに計測した以上の力が入っているんだけど、これも、粒子と対話したからだろうか…?」

 

飛田が解説する頃、ゴッドラストは引き続き苦悶の声を上げていた。

 

「ぬううあぁぁぁっ!!」

 

すると、「ふんっ!!」と、雄叫びと共にテグサー1が吸収口ごとゴッドラストの右の腕力だけで体を持ち上げ…

 

「うりゃあああっ!!」

 

地面めがけて一本背負いの要領で投げ、隙だらけの背中を全力で叩きつけた。

 

「ぐぅあっ!!」

 

コンクリートの地面が砕け散る程の威力ではあるが、ゴッドラストの胸である吸収口は変わらず右腕を喰らいついている。そこでテグサー1はもう一度別の地面に叩きつけた。容赦なく、二度、三度。

 

そして、ぬめりけのある飛沫を吐きながら。

すぽんっ!!

 

吸収口は情けない音を出しながらテグサー1の右手を離す。その反動でゴッドラストは地面に転がり、最後には手で地面を叩いてブレーキをかけながら立ち上がる破目となった。

 

「…ふん、なかなかやる。流石は私の研究を止めようとした男が開発しただけはある」

 

「そうだ、俺は父さんが作ってくれたこの力で、十年前に止められなかった悔いを、今ここで果たすっ!!そして俺はTE粒子に…」

 

「警告された隕石の力による惑星の滅亡を防ぐ。とでも言うのかね?私が蘇る間、黒いテグサーマンにでも警告されたのか?」

 

「…!?なぜお前がそれをっ!?」

 

これを知るのはここにいる仲間達と、自身の父親と飛田の父。そう考えていたテグサー1と他の者達はピタリと動きを止めた。驚愕したからだ。そこで、ゴッドラストは嘲笑うように彼を睨んだ。

 

「まさか、知っているのは自分達だけだと思っていたのか?その黒いのは十年前、私にも警告をしたからだ」

 

「な、なんだって!?TE粒子が!?」

 

動揺を隠せない、テグサー1とチームメイト。そしてロックオン・スナイプ。まさか、ゴッドラストの下に自分達の味方が来ていたとは想像だにしていなかったからだ。

 

「十年前、私が隕石を解明し、富田がテグサーマンを開発した頃、暗がりの私の研究室に奴は現れた。『その研究を進めてはいけない。突き進めれば、この地球に滅亡をもたらす』と」

 

「そう告げると、次に私に見せたのは隕石がもたらした種の力による、惑星の滅亡であった…強力無比の力を取り合い、滅亡した異形の者達。力の使い方を誤ったばかりに、惑星環境を変えてしまった極めて人間に近かった者達…様々であった」

 

「私が幻を見終えた後、奴は消えていなくなった。その時の私は震えていた。自分の手に、世界の運命が握られていると知ったからね」

 

「私はその時、この力は正しい事にさえ使えばいい、あの島を管理するトップと共に協力すればよりよい未来が創られる。そう考えていた。しかし、そこの男がその力に手をかけようとした!!自らの欲望の為にっ!!利益と名誉を奪ってでも献上するが為になぁっ!!」

 

ゴッドラストは海斗を指差す。彼がこの話をする際は声を荒げる。それ程までの怒りが詰まっているのだと飛田はこの時考えていた。

 

「私は必死で説得をした、こんな幻を見た、警告もされた…と。しかしだっ!!それをこの男の取り巻きは私を勝手に危険分子だと判断し、追い出したっ!!そして私は考えた…奴らが力を手にし、滅亡を産み出すその前に、あの隕石を我が物にして、いつか、この世界を変えてやる、とな…」

 

「嘘だっ!!アンタは自分の力を認められなくなって、それで多くの人を苦しめた…悪だよアンタはっ!!」

 

話を聞き終え、言葉を返したのはテグサー4であった。

 

「…なに?」

 

ジロリと睨むゴッドラスト。だが、傍にいた海斗の「ひぃぃっ!!」と怯えきった声を耳にしつつ、テグサー4は意思を伝え続けた。

 

「私の父親は子供の才能しか見ず、そのせいで殆ど見放されていた。でもっ!!自分より弱い誰かを苦しめてやろうなんて思わなかった!!そんな事するのは最低だって思ったからっ!!」

 

「…ふん、そう考えるのは個人の判断だ」

 

「勝手な事を…!!大体、あの未来島ってのはこの世界にいずれ来る環境汚染、大災害、病気に宇宙開発まで共に頑張って進めよう、地球の命運を変えようとしていたんでしょう!?アンタだってその一人として…」

 

「ぷっ、くすくす…ははははっ!!ひーっひっひっひ!!」

 

突如、大笑いする甲斐田。テグサー4はこの態度に不快感を覚えた。

 

「甲斐田…!!なにが可笑しいのさっ!!」

 

「大城さん、アンタは本当に馬鹿だねぇっ!!へいへいこの配信の皆さん、ここに真実を知らない、知ろうとしないお馬鹿さんがいま~すっ!!」

 

そう言いながら甲斐田はスマホをテグサーチームに向ける。その次の瞬間、彼はこう告げた。

 

「そして、あのテグサー1の装着者は、自分の利益の為に、あの島が問題をでっちあげて造り上げた利権によるものであるという真実を黙っていた、憎き富田博士のご子息となりま~っす!!」

 

「え…!?トウマのお父さんが…!!いや、この世界の問題が最初からでっちあげって…!?」

 

マスクの中で、穂乃花は驚きの表情を隠せず、思わず叫んだ。

 

「その通りだよ、穂乃花さん。えぇ~、どこからどう話しましょうか…」

 

それから甲斐田は見下すように、もったいぶって口を動かした。

 

「この配信を見ている聡明な方ならご存知かもしれませんが、そもそもあの島は技術開発の発展だけでなく、この星に近々迫るであろう環境悪化から異常気象から人々を守り、集める為に、日本を主導に国境を越えて出来た代物でした」

 

「で、あんなデカいモノを作るにあたって、研究棟を作るのにそこまでしなくていいのでは?と、考えている人はいなかったのか?ってなるじゃないですか。勿論、いましたとも。でもね、それよりも当時は政府と、仲良しの重工とかが金をかけ、報道、専門家や芸能人が声を大きくして世界の崩壊を呼びかけ、島造りを推し進めていたんです…そう、実際はそこまで環境が崩壊していなかったのにねっ!!」

 

「だってそうでしょう?あれから十年、あれ程帝国が暴れていても世界の崩壊は来ていないんだから。つまりあの島が出来たのは人々の未来の為じゃないっ!!単なる名誉の為!!世界の注目と、金を得たいという権力者の薄汚い欲望の為にだけ造られたモノって訳だぁっ!!」

 

「そ、し、て!!その事をテグサー1!!当時研究に関して世界的トップであった君の父親は知っていた。偉い人にだって意見を言えた存在だ。にも関わらず、反対や問題提起はしなかった。それはなぜか!?そう、君の父親はプロジェクトから外され、財と地位と名誉を失いたくないからだ!!つまりテグサーマンは、欲と金にまみれた、醜い欲望の一味と同じなんだよっ!!」

 

「あ~あ、なんて事だ!!あの人が正義の心を持っていれば、奴らがつけ上がって、研究を奪う事はなかった!!それに、もし我々が万に一つ、負けたとしたら、こんな権力者がまた蔓延り、弱者が泣き寝入りする、わる~い世界へと逆戻りしますっ!!ね、オーディエンスの皆さんっ!!ゴッドラスト様…室田修博士が、世界を変えようとする姿勢は、正しいですよねぇっ!?」

 

テグサーマン達が唖然とする中。甲斐田の呼びかけと共に。

 

『全くだ、許せねぇっ!!』

 

『世界は金と力のある者が全てか?ゴッドラストよ、そんな世の中を変えてやれっ!!』

 

『修博士、頑張れ~っ!!』

 

「いやぁ、世界を知っている博識の人達のいいコメントだ、キャハハハハ!!」

 

視聴者はコメントを残す。その内容は、配信者を実に愉悦に浸らせていた。そして、テグサー1のすぐそばにいたテグサー2、は不安そうに彼を見つめていた。

 

「と、トウマ…」

 

そこに、割って入る甲斐田。

 

「おっと、穂乃花さん、そいつに近づかないほうがいいですよ。そいつの父親がなにもしなかった、欲張ったから、こんな世界を産み出した。わかりますか?それより、あなたは以前、俺を庇ってくれた。優しいお人だ。好きになれそうだよ。よければ僕と…一緒になりませんか?」

 

「だ、誰がそんな事…!!甲斐田くん、いい加減に…!!」

 

「あぁ、よくわかったよ…」

 

テグサー2の返答に割り込んだのはテグサー1。

 

「え?」

 

彼は続けた。

 

「お前が…お前達が自分達の破壊衝動に、推測だけで正論づけている存在でしかないって事をな!!」と。

 

「なっ!?」

 

返された甲斐田はテグサー1の威圧感に負け、

 

「…」

 

ゴッドラストはジッと、テグサー1を睨んでいた。そんな彼らに、『トウマ』は続ける。

 

「俺の父親もまた、欲の為、名誉の為にあの島で開発を進めていたのかも知れない。実際、ユラって奴にも似た事を言われた。だが!!俺は見た。父さんの最後の背中を。あれは誰かを守りたいと戦う背中であった事を」

 

「そこに欲や名声はない。我先に逃げ出す事だって出来たかもしれない。しかしそれでも走った。命をかけて仲間を助け、室田修を止めたい、そんな単純な願いだけを持って、な」

 

「だから俺はこれが、テグサーマンが欲望によって完成された物であっても!!相手にどんな事情があっても!!周りにどう言われても構わないっ!!」

 

「俺はあの時直接見た父親の想いを信じて、涙を流す仲間を助ける!!失われる命を守ってみせる!!そして、事実を盾にして破壊を正義だと思い込んでいる、てめぇらの野望を打ち砕くっ!!受け継がれた、この力でなぁ!!」

 

「な、なに、綺麗事を…!!」

 

「そうだトウマ、よく言ったっ!!」

 

甲斐田の返しに割り込む声。テグサー1が振り向くと、地上へと降り立つディーンがいた。

 

「甲斐田と言ったな。君は誰かを、自分を想ってくれる人に会った事はあるか?勿論、目の前の破壊者は論外だ。今、ないと思っているなら、なんだっていい、もっと世界を広く見るんだ。君を想う人は必ずいるはずだ。そして、それを見て君がもう少し優しく出来るのなら、お返しに守ってくれる人は、きっといる筈だぞ。俺が、そうであったように」

 

指摘され、顔を赤くする甲斐田は、邪念を振り払うように首を振った。

 

「う、うるさいうるさいっ!!そんな勝手な考えで正義を語って!!さぁ、やっちゃって下さい博士!!あのムカつく特権階級の犬共を…」

 

「光雄よ、静かにしてくれないか?」

 

視線を向ける事なく、ゴッドラストは腕を組んで、騒ぎ立てる甲斐田を注意した。

 

「え?」

 

甲斐田は、小言を言われ、口を半開きにして固まる。

 

「君が少しでしゃばったお陰で、奴らのやる気を無駄に上げてしまった。これでは面倒事が一つ増えるだろう?見ろ、テグサーマンとロックオン・スナイプは士気が向上している」

 

「え…で、でも、博士ならあんな奴らをあっという間に倒せますよっ!!大丈夫です!!」

 

「ふ、まぁな…」

 

「なにを喋ってやがるっ!!俺達は一気に行くぞっ!!」

 

二人の会話を遮るように、テグサー1は叫んだ。彼は怒りに燃えている。そんな背から、ディーンの右手は彼の肩に触れた。

 

「トウマ、ここが正念場って奴だ、俺達が援護するから、アイツの顔面に拳を何度もぶつけてやりなっ!!」

 

「あぁ…ゴッドラスト!!お前にどんな事情があろうとも、俺は、てめぇを許さねぇっ!!」

 

「ふん、来るか…」

 

テグサーチーム、五人の戦士が迫る。同時に、ゴッドラストは腕組みを解除した。

 

「行くぞ、ファイブスラッシュ!!」

 

テグサー3の必殺技呼称と共に、五人はゴッドラストを囲って駆け、ナイフ、槍、刀、ロッド、青竜刀を同時に振り下ろす。

 

「むぅっ!?攻撃が、見切れん…!!こう同時に来ては…!!」

 

ゴッドラストは迫る斬撃を対処しきれず、青竜刀は右腕で払いのけたものの、機動性のある槍で肩を、足の甲をロッドで刺され、連続して背中は刀で斬られ、最後には隙のある腹にナイフを突き刺された。

 

「今だっ!!」

 

四本の刃はテグサー1の合図と共に青白く光る。それは、TE粒子の輝きであった。

 

「ぐぅぅぅっ!?」

 

突き刺されたゴッドラストの表皮は熱を帯びたかのようにただれて火花が散り、煙が立ち込める。これを見た飛田は、やはりゴッドラストの弱点はTE粒子だと確信した。

 

「…舐めるんじゃないっ!!」

 

だが力に差がありすぎる。足を踏ん張り、ゴッドラストはその場に広範囲に渡る衝撃波を放った。

 

「うわぁっ!!」

 

凄まじい破壊力に、チーム全員が後方へ、武器と共に大きく吹き飛んだ。受け身を取る事なく、道路と強烈な激突をしてしまう程だ。いや、正確には、一人残っている者がいた。

 

「と、トウマ…!!」

 

起き上がるテグサー2のゴーグルに、爪先でゴッドラストの顎を蹴り上げたテグサー1の姿があったのだ。

 

「そ、そうかトウマの奴、衝撃波の勢いを利用して、自分の脚を上昇させたのか。やるな…」

 

テグサー4を抱き上げつつ、テグサー3は仲間の判断力に感心。

 

「ぐぅぅぅ…テグサー1、貴様、出来るな…」

 

それは、ゴッドラストも同様であった。

 

「今のこの一撃は、皆の肩を借りて手を置き、足場ならぬ手場にして蹴り上げたモノだ。てめぇは強い。そして、そんなてめぇは俺の事だけを厄介な奴だと思ってるようだが、俺は、皆がいるからここまで戦えたんだっ!!この絆でてめぇを、倒すっ!!」

 

「ふん、歯の浮く台詞をっ!!」

 

ゴッドラストは言葉を返すと同時に、突き出した掌から数百本もの針を飛ばした。

 

「あ、あれは、ホッグルの…!!」

 

飛田は叫ぶ。と同時に、テグサー1は拳に力を、青白い炎と共に入れ…

 

「おらぁっ!!」

 

腕を何度も高速で振り上げ、その針を全て弾き返す。

 

「やるな…ならこれはどうだっ!!」

 

ゴッドラストは次に胸を再度開き、そこから十体もの怪人級、イエティマン、ヤドカリヤン、ドクターヒポポタマスにグラビトリーなどを産み出した。

 

「グォォォォォ!!」

 

ぬめりけ乾かぬ内に、怪人級達はテグサー1目掛けて一斉に走り出す。

 

「トウマを援護しろっ!!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

テグサー3を中心に、戦士もまた怪人目掛けて走り出した。次の瞬間、戦士と怪人、両陣営入り乱れた戦いが始まった。

 

「やぁぁぁっ!!」

 

「キェアアアアア!!」

 

怪力を振り回すイエティマンの猛攻を避け、テグサー2は水平チョップ、ローキックで反撃。テグサー3は取り囲む三体ものヤドカリヤンを居合い斬りで紫電一閃。その周囲でヤドカリヤンによる爆発が起こった。

 

「ディーン・ブレイカー!!」

 

「もう一度狙い、撃つ!!」

 

「アクセル・ロッド!!」

 

ディーンの攻撃と同時に発射される、ロックオン・スナイプの狙撃弾による合体攻撃。続けて、テグサー4のロッドの回転斬りは次々とグラビトリーやドクターヒポポタマスを撃破する。

 

「でやぁっ!!」

 

そんな彼らを背に、テグサー1はゴッドラストと、拳と拳をぶつけ合う原始的な戦いを続けていた。経験の差か、殴り合いではテグサー1の方が優勢であった。ダッキングでパンチを避けられ、苛立つゴッドラストのこめかみに、テグサー1の右ストレートが掠る。

 

「ぐっ!!」

 

硬質の接触に、ゴッドラストは地面を蹴って十数m大きく引き下がる。逃がさんと言わんばかりにテグサー1は飛び上がり、拳の届く距離まで一気に急接近した。

 

「うりゃあっ!!」

 

「ふんはっ!!」

 

左右のジャブによるテグサー1の連続攻撃に、またも防戦一方のゴッドラスト。しかし彼はただやられるだけではなかった。攻撃をしている間も博識者らしく、冷静にテグサー1の事を分析していた。

 

(それにしても何故だ…何故、テグサー1は取り分けて強い?そういえば、私に警告をしていたあの黒いテグサー1は今どこに…ん?)

 

自身の瞳を粒子探知モードにした際、彼は見た。拳を振るうテグサー1の背後に、黒い『なにか』が守護霊の様相で立っていた事を。

 

(今、私は特殊なモードで奴を見ている…どうやら、人間には見えないそれがテグサー1に力を与えている訳か…それならばっ!!)

 

「つぁぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー1のワンツーフィニッシュのストレートパンチが迫る。ゴッドラストはそれを両腕で受け止める事なく胸を『ぐぱぁっ』と、大きく開き、あえて喰らいつかせた。

 

「な!?なにしやがるっ!!今腕から粒子を流し込んだり、吸収すれば、てめぇはただじゃあ…」

 

「そんな事はわかっている。私は引きずり込むだけだ…君に力を与えている、黒いテグサーマンだけをねっ!!」

 

「な、なにっ!!よくわからないが、させるかよっ!!」

 

テグサー1は再度ゴッドラストを持ち上げようとする。しかしゴッドラストの行動が一足早かった。ズルズル、ズルズル、と、後退する度、テグサー1の腕が引き抜かれる代わりに、もう一本の黒い腕が姿を現した。

 

「こ、コイツは…!?」

 

その姿にテグサー1は驚愕。

 

「な、なにあれ…!?」

 

同時に怪人級を倒し続けるテグサー2含めた全員も目視していた。

 

「フフフ、こいつはトランチックの能力、相手の意識内にあるトラウマを引き抜くのを応用した技だ。TE粒子内に、死者の意識の集合体があるのならば、我が胸を使って分離させる事が出来る。こうして、なっ!!」

 

ゴッドラストが最後に力を込め、大きく下がると、その後を追う様に、腕は、それより先の全身の姿を現した。

 

「あ、アレは…!!」

 

「ふん、遂に現れたか…」

 

「「黒いテグサーマン!!」」

 

そして、テグサー1とゴッドラストは現れたその名を呼んだ。

 

「あ、アレが、私達に力を貸していた粒子の中の…!!」

 

「に、似ている…テグサー1に…!!」

 

突然出現したテグサー1に似た、黒いテグサーマンを目視した事にテグサー3、飛田もまた驚愕した。

 

「ふん、ようやく現れたな、黒いテグサーマンよ…貴様が、テグサー1に特に力を貸していたようだな」

 

「ぐ、ぐぅぉぉぉぉぉ…」

 

黒いテグサーマンは、ゴッドラストに呼びかけられる事も構わず、呻き声を上げていた。

 

「どうした?寄生先を追い出されて苦しんでいるのか?だが、これでもうあのテグサーマン最強の技、想竜弾は使えない。以前のようにトウマはもう蘇らないし、最も、なによりもう人間共は信頼しあう事もないから使えないがね?」

 

「うぅぅぅ…私は、私は彼を守る。この銀河の秩序を正すため。新たなる生命を守る為にっ!!」

 

黒いテグサーマンは両腕の中に球体のエネルギー弾を作る。それはさながら想竜弾のようであった。

 

「…散れっ!!」

 

黒いテグサーマンは想竜弾を放つ。

 

「ふん、変わらず偉そうに達観した姿勢で説教をして…神のつもりかっ!!」

 

ゴッドラストはそのエネルギー弾をハイキックで蹴り上げる。上空へと舞い上がった想竜弾は雲に触れると同時に超広範囲に爆発。爆風で雲が消えて円状に青空が広がった。

 

「あ、あぁ…」

 

膝をつく黒いテグサーマンを前に。

 

「終わりだっ!!」

 

ゴッドラストは手刀を向ける。

 

「ま、待てっ!!」

 

止めようとテグサー1が走る。しかし間に合わず、黒いテグサーマンは手刀によって首元を切り裂かれてしまった。

 

「すまない、トウマ…もう、君に惑星を行かせる事は…でき、ない…地球も、もう…」

 

彼はその場にうつ伏せで倒れ、首からおびただしく流れる黒い液体は地面を汚す。テグサー1は抱き抱えようとしたが、彼の身体は粒子となり、テグサー1の手からすり抜けて消えていった。そんな姿に、ゴッドラストの嘲笑が始まった。

 

「ふふふ、残念だったな。もう貴様にあの超パワーは使えない。いざとなったらTE粒子における想竜弾を期待していたんだろう?それなら私を倒せるかもしれない、とな」

 

「く、くそぉっ!!」

 

テグサー1の不意打ちの一撃。が、戦法を『学習』したゴッドラストにとって彼の拳を掴むのは容易であった。

 

「感情が揺らいでいるな…それでは、パワーのコントロールも出来まい。終わりだっ!!」

 

ゴッドラストの衝撃波がテグサー1の顔面に直撃。彼の身体は大きく吹き飛んだ。

 

「と、トウマっ!!」

 

怪人級を全て倒し、見かねたテグサー2がゴッドラストに突っ込む。仲間もその後に続いた。

 

「貴様達に用はないっ!!」

 

「きゃぁっ!!」

 

ゴッドラストの胸から放つ散弾式の火球はテグサーチームに直撃。彼らの胸部装甲は大きく爛れた。

 

「まだだ、まだ終われないっ!!」

 

そんな中で比較的軽傷であったディーンは折れた青竜刀を投げ捨て、一人ゴッドラストに立ち向かう。

 

「でやっ!!」

 

拳を振るった連続攻撃。しかしゴッドラストにはびくともせず、反撃のチョップ一発で激しく回転しながら吹き飛び、近くにあった小屋の壁をその身体を持って破壊した。ゴッドラストは『結果』に見向きもせず、高笑いをしだした。

 

「ふははは…最早、私の事はもう止められない。貴様達を倒し、この星を我が手にしてくれるっ!!」

 

「く、これまでか…!?」

 

飛田はノートパソコンを操作して解決策を考え出す。その時、テグサー1から通信が入った。

 

「飛田…今は俺のテグサー1にリミッターがかけられてるよな?確か、想竜弾が撃てない程の…」

 

「え、えぇそうですが…ま、まさか、工場の時のアレを撃つつもりですか!?止めて下さい。あの時は黒いテグサーマンが支えてくれたから死なずに済んだ…でも、今、あの人がいないとなると…!!それに、撃てたとしても、倒せる程の質量は、ないっ!!さっきのように…」

 

「俺の命で地球が救えるなら、それでいい…頼む飛田、リミッターの解除をっ!!」

 

「う、で、でも…ダメだそんな事は…!!」

 

押し問答を続ける二人。その一方で、ディーンは小屋の中で粉まみれになって倒れたままで呟く。

 

「そうだ、ダメだトウマ。お前一人に負担をかけさせられない。この俺も、一緒に死んでやる…!?」

 

と、自身の枕元に誰かの足があるのを見た。そして、その足下にはいくつもの羽が落ちている事も。

 

「ま、まさかお前は…!?」

 

「トウマ、今行くわ…!!」

 

羽のある異形の少女は羽ばたいた。その一方でゴッドラストはテグサー1に迫っていた。

 

「さぁ、終わらせてやろう。この戦いで色々と学ぶ事があった。一撃で楽にしてやる」

 

「や、野郎…!!」

 

両者の距離が縮まる。その間にも高みの見物といった具合で遠くでにやつく甲斐田。

 

「よし、いいぞ修博士、そのままアイツらを…!!」

 

その横をいくつもの羽と共に羽の少女が通り過ぎた。

 

「あ、アイツは!?」

 

少女は、超高速で飛び、テグサー1の下へと寄り添った。この場にいる者ならば、その少女を知っている。だからこそ、テグサー1はおもわず彼女の名を呼んだ。

 

「れ、レミー!!」と。

 

23-4

 

「ようやく出てきたか、レミー」

 

テグサー1に寄り添う天使型怪人を見て、呟くゴッドラスト。

 

「「「レ、レミーッ!!」」」

 

続けて、テグサーチームは彼女の名を呼んだ。

 

「トウマ…私…私」

 

その頃にレミーは不安げに見上げる。対すテグサー1は、そっと彼女の肩に触れた。

 

「レミー、お前無事だったのか。でも、ここは危険だ。早く離れるんだ」

 

「ううん、私、トウマに力を与える為に来たの。見てて」

 

そう言うと、レミーはテグサー1の手を取り、掌から光をかざす。見る見るうちに、傷だらけのテグサー1の身体が修復されていくのを、トウマは肌で感じる生傷と体力の回復と共に実感していた。

 

「治っていく…力も漲っている。そうか、やはりお前が与えられている能力は、誰かを回復させ、力を与える能力か」

 

「そうなの。それで私、少しでも怪我した人や壊れた物を直しに色々行ってて…遅くなっちゃった」

 

「そうか。よく頑張ったな、レミー」

 

「うん、えへへへ…」

 

「ふっ…」

 

笑い合う二人。間を裂くように、甲斐田は聞こえよがしに大声で視聴者に訴えかける。

 

「オーディエンスの皆さん、ご覧下さい!!アレが、これまでの化け物を産んだ原因となった少女ですっ!!いやぁ、あんな姿になってでも生きていたいんですかね!?これだけの事になったのに、ねぇ!?」

 

その発言に返す言葉もなく、笑みを失ったレミーは俯くだけであったが、そんな彼女をテグサー1がそっと抱き寄せた。

 

「気にするな、この事態はお前のせいじゃない、全ては宇宙から来た変なモンのせいだと思いな」

 

「う、うん。そうする…」

 

「そうだよ、レミィィィ!!気にする事はないんだよぉぉぉっ!!」

 

次に引き裂いたのはそれまで怯えて引っ込んでいた海斗。これまでの気が動転してグルグルと回っていた瞳が嘘のように晴れて止まっていた。

 

「パパ…」

 

「レミー、愛する我が愛娘よ!!あんな分からず屋の研究員はこのテグサーマンが頑張って、命懸けてなんとかしてくれる。だから今から、二人で逃げて、別荘のハワイに行こうっ!!もう悩む必要なんかない、あとは下々の者に任せておけばいいんだからっ!!」

 

「社長、なにを…!!」

 

「待ってトウマ」

 

意を決したレミーがテグサー1から離れる。そして、海斗に詰め寄ると、こう言った。

 

「パパ、おじいちゃんと一緒に私を助けてくれた事に感謝します。でも、人の利益を奪い、幸せを奪ってでも生きたいとは思いませんっ!!それに、私はこれまで逃げ続け、自分の運命に立ち向かおうとはしなかった…でも!!トウマや皆の戦う姿を見て、私は思ったの!!逃げた所でなにもないしいつか追いつかれる。それならば、運命に対し、振り向いて刃向かって抗ってやるって!!」

 

「れ、レミー?なにを…」

 

「さようならパパ、この命、戦う事で、誰かを守る為に使わせてもらいますっ!!」

 

「レミー…レミー…あぁぁぁ、あぁぁぁぁぁっ!!」

 

娘が去る。決意の背中を見たショックで、海斗はその場にバタンと倒れた。更に、手足を駄々っ子の様にバタつかせた。

 

「うわ~ん、もうやだよー、やだよぉーっ!!もう俺には生き甲斐がないじゃんかよぉぉぉぉぉっ!!」

 

「社長、下がって下さい」

 

テグサー3がばたつく海斗を両脇から抱き抱え、その場を後にする。その間、テグサー1とレミーはゴッドラストを睨んでいた。

 

「レミー、一つ言っておく。俺が皆を守る、だから、命をかけるのはもし俺になにかあった時にしてくれ」

 

「トウマ…うん、わかった!!」

 

「よし、行くかっ!!飛田、想竜弾のチャージが想いを…命ごと吸い取る技だってんなら、レミーが俺に力を与えてくれる間はその心配なくチャージ出来るよなっ!!それも、以前と同じパワーでっ!!」

 

「え?えぇ、理論的にはそうですけど、実際に出来るかどうか…社長はどうです?イケますか?」

 

飛田はノートパソコンで操作しながら、迷い気味にそう返した。だが反対に、レミーは力強く自信たっぷりに頷いた。

 

「オーケー!!それなら問題ないわ、行くわよ、トウマっ!!」

 

「おうっ!!」

 

「ほう、来るか。だが…そうはさせんっ!!」

 

会話を聞き、最後まで待っていたゴッドラストは地面を蹴って飛びかかる。その時、突然の弾幕が彼の身体を襲った。振り向くとそこにいたのは、ラントムチーム、メデューザ、キャノン・ダイザー、ダイ・ソードの三人が各々の武器を構えて睨んでいた。

 

「あいつら…来てくれたのかっ!!」

 

「トウマ、ゴッドラストは私達に任せて!!さっさと完成させなさいっ!!」

 

メデューザの指示に、テグサー1は手を前に振って了解をする。

 

「わかったぜ!!飛田、リミッター解除を頼むっ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

飛田は素早くキーボードを叩き、パスワードを入力させてリミッターを解除させる。その間にも、ゴッドラストは自身を押さえ付ける四人のラントムチームを容赦なく腕を振り回して追い払おうとしていた。

 

「ふん、邪魔な連中よ、テグサー1より先に止めを刺してくれるっ!!」

 

「くっ!!」

 

ゴッドラストの左パンチが右腰にしがみつくメデューザに迫る。しかし、この一撃から拳への頭突きで庇ったのは、右腕を掴んでいたキャノン・ダイザーであった。

 

「ちっ、余計な邪魔を…」

 

「ジョ、ジョージ!!」

 

「ふっ、愛する隊長には指一本触れさせないぜっ!!…いてて」

 

「ジョージ…」

 

彼の強がりに、メデューザは安心するように呟く。

 

「ふん、うっとうしい!!」

 

次の瞬間、ゴッドラストの攻撃が再度繰り返される。その間にも、横に並ぶテグサー1は右手を、レミーは左手を繋ぎ、想竜弾の発射準備を進めていた。

 

「よし、レミー!!もう少しだ、もう少しで完成する!!頑張ってくれっ!!」

 

「う、うんっ!!」

 

二人の間をプラチナのエネルギーが流れる。テグサー1が想竜弾を作り、レミーが命を懸ける彼を信じて力を与える。まさに二人の想いを込めた『合体技』である。

 

「…はっ!!」

 

十秒経過して、テグサー1は感じた。直径30cm程、想いのエネルギーを凝縮させた一発の光の球、想竜弾の完成を。

 

「よし出来たっ!!撃つぞっ!!イリア達離れろっ!!」

 

「わかったわっ!!」

 

ラントムチームは素早くゴッドラストから離れる。

 

「ちぃっ!!」

 

ターゲットロック。狙われる張本人は飛び上がろうとした。しかし、彼の右脚に三つの刃が突き刺さった。

 

「ぐっ!!な、なに…!!」

 

痛みは少ないが、動くには不便。そう考えるゴッドラストは脚部を見た。刺さったのは槍の風竜剣、天下無双刀に、アクセル・ロッド。投げたのは、テグサー1とレミーにとって、かけがえのない三人の仲間であった。

 

「今です、トウマさん!!」

 

「よし、想、竜、だぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

 

テグサー1は解き放つ。最後の一撃、想竜弾を。雄叫び一閃と共に、一直線、超高速で飛ぶ想竜弾は、刃に注意を向けているゴッドラストに命中するのは、容易い事であった。

 

カッ!!

 

辺り一面が、着弾したゴッドラストを中心にまばゆい光で包まれる。その衝撃で波も沖へと押し返された。

 

「う、うわぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー2、3がやっとの思いで近くにいる飛田と海斗を庇う事が精一杯になる位の衝撃。爆心地のゴッドラストもまた呻く事しか出来なかった。

 

「ぐ、う、ぐぉぉぉぉっ!!」

 

両腕で防御するも、波動で皮膚が爛れて溶けていく。ゴッドラストは消え行く身体をただただ眺める事しか出来なかった。

 

「ふ、ふふふふ…」

 

しかし、彼の口から零れるのは笑みであった。

 

「まさかここまで追い詰められるとは…富田の遺産は凄まじい。ならば、『第二手』に移るしかあるまいっ!!」

 

そう言うと、ゴッドラストは溶ける両腕と両脚を自らの手で『もぎ取った』。

 

「ふんっ!!」

 

その反動、軽くなった身で彼の身体は爆心地から遠ざかる。その瞬間、想竜弾は残った部位を溶かしつくし、残ったエネルギーは天高く舞い上がった。

 

「や、やったのか…?」

 

爆風が消え、爆心地を覗くディーン。あのゴッドラストがいない。その結果に安堵からか身を震わした。が、その考えは一瞬にして覆るのであった。

 

「あ、あぁ…」          

                                 

何故なら、四肢を失ったゴッドラストはその胸部に、頭から喰らいついたレミーを取り込む最中であったからだ。

 

「トウマ!!レミーが、レミーがゴッドラストに…!!」

 

ディーンに言われて。

 

「な、なにっ!!くそっ!!」

 

ようやく気付いたテグサー1。ゴッドラストがなにをしているか、考えるより先に手を伸ばす。

 

「ふん!!」

 

だが、ゴッドラストの目から放つ怪光線。エネルギーの殆どを失ったテグサー1に避ける余裕はなかった。大きくのけぞってしまう。視界から、二人が遠ざかってしまう。

 

「レミーを…離せぇぇ!!」

 

瞬間、遠くから事情を飲み込んだテグサー3が駆け出す。その時のゴッドラストは、既にレミーの上半身を飲み込んでいた。

 

「遅いわっ!!」

 

最後の一口と言わんばかりに、ゴッドラストは一気にレミーを吸い込むかの様に飲む。支えを失い、彼の身体は地面にボトッと落ちる。すると、全身がぐにゃぐにゃとうねってうごめくと同時に手足が蘇り、更には背中に羽が生える事となった。

 

「ふはははは…!!これでいいっ!!これこそが、我がゴッドラストの完全体、遂に永遠の力を手にする事が出来たぞっ!!」

 

「なんだと…!?永遠の!?」

 

「そうよトウマ。人間のジン・ガイアのハーフ同士が組み合わさる事で更にパワーアップする事となる。私はあの隕石でそう結論を出した。だから私はレミーが来るのを待っていた。恐らく、絆だかなんだかで堪らずに飛び出して来ると思ってなぁ!!」

 

「そ、そんな…なんて事だ、くそぉっ!!」

 

テグサー1は最後の力を振り絞り、胸部装甲を開いてエネルギーをチャージする。装着者に映るエネルギー残量は残り、僅かであった。

 

「喰らえ、撃、竜、波!!」                                                 

必殺の光線が発射される。ゴッドラストは最早、防ぐ素振りすら見せない。光線を全て、胸で受け止めた。

 

「な、な…!?」

 

「効かんわっ!!」                                          

 

ゴッドラストは反撃となる胸から数発の火球を放つ。動揺するテグサー1に全て命中した。

 

「ぐわぁぁぁっ!!」

 

焼け爛れるテグサー1の胸部装甲。衝撃で彼の身体は更に大きく吹き飛ばされた。             

 

「トウマ!!」

 

テグサー2は必死で倒れたままの彼の名を呼ぶ。

 

「う、うぅ…」

 

しかし応答は呻き声だけであった。そんな彼に、ゴッドラストは近付く。一歩、一歩。ゆっくりと、確実に。

 

「さて、そろそろ本当に止めを、むぅ!?」

 

しかし、突然としてゴッドラストは歩みを止めて膝をつく。それと同時であった。彼の身体からレミーの声が聞こえたのは。

 

「トウ…マ、今は休ん、で…私が…抑えている間に…少し、で、も」 

 

「れ、レミー…!!」

 

「さよう、な…」

 

彼女の声がぷつりと途切れる。ゴッドラストは、これがなんであったのか熟知していた。

 

「ぐ、コイツ!!体内に微量のTE粒子を忍ばせていたのか!!だからこれで私の身体も…!!だが、まぁいい、今は浄化の為、ここで退いてやろう。最後の仕上げ…そう、これから人類を全て滅ぼす前に、な…」

 

「な、なにっ!?レミィィィィィ!!」

 

テグサー1は起き上がるのに必死であった。しかし身体が思うように動かない。それは、仲間達も同様であった。その間に、羽を使って飛び去ろうとするゴッドラスト。と、甲斐田が両腕を上げて呼びかける。

 

「あ、待って下さいよ!!僕も連れてって!!」

 

二人の様相はまるで、抱っこを要求する子供と、それを見つめる親の様であった。

 

「ん~?あぁ、そうだった、君も共に来い。まだやって貰う事があるからな」

 

「わぁ~いやった!!」

 

ゴッドラストは甲斐田を抱き抱え、海の向こう、地平線へと飛び去った。

 

「ま、待て…!!」

 

テグサー4は豆粒のように小さくなる二人に向かって叫ぶ事しか出来なかった。もう彼らに、追う余力は残っていなかったからだ。

 

「畜生…畜生っ!!」

 

その場で座り込み、テグサー4は悔し紛れにコンクリートを叩く。彼女の横には、テグサー1が倒れ込んだままであった。              

 

「うぅ…れ、レミー…」

 

またも仲間をその手から失ったテグサー1は混濁した意識の中で呼んだ。この時、彼らは知らない。ゴッドラストが進化した時、地上でうねりを上げていたガイアランが徐々に引き下がっていた事を。

 




どうも皆さん!!大変お待たせしました!!
今回はかなりの長い話となってしまい、編集も相当かかってしまいました!!
実際、初めて執筆した際も「この話長くない!?」と考えたのを記憶しております!!

さて、そんな話ですが(※ここは作者の考えが書かれています。読みたくなかったら飛ばして次の段落へお願いします)、イルカの末路の下りにおいて本当は甲斐田の嫌われっぷりを表現したく「大体イルカなんてなぁ!!芸が出来なきゃ良くてスーパーで売られてる位しか価値がないんだよっ!!お前のは閉店間際で三割引きにでもなってろ!!」と言わせる予定でしたが、実際に和歌山県で食べられているそうなのでカット致しました。ここまで言う奴なんて誰が愛するのだろうか…でも、事情も分からなくもないと思います。

さて、今回も、第二十三話のハイライト、


【挿絵表示】


それから、怪人のご紹介で失礼致しますっ!!


【挿絵表示】


※第二十三話の登場怪人。
・(右上段)鉄砲魚型怪人:身長2m、体重80㎏
ゴッドラストが生み出した怪人(後述の蝙蝠型、岩石型も同様)。口から水鉄砲を放つ。
・(右下段)蝙蝠型怪人:身長1.8m、体重100kg
主に甲斐田を運ぶのが仕事。
・(中上段)岩石型怪人:身長2.3m、体重300㎏
固い体が特長だ。
・(中下段)モニタリング:身長1.9m、体重235㎏
トランチックを改造した役獣。録画した映像を、広範囲に映し出す。
・(左上段)昆虫軍団:身長1.6~1.8m、体重80~120kg
左上からアリ、バッタ。左下からテントウムシ、カゲロウの軍団。一斉にディーンを襲ったが敵わなかった。
・(左下段)戦闘員級:身長、体重成人男性とほぼ同じ。
全身にアーマーを装着しているのを、人類側がそう呼んでいる。

それでは、次回をお楽しみに~っ!!

6/1投稿
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。