テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
・イリア・ラントム…高飛車な若き女性社長。メデューザに変身する。
・モーラ・フォーゲル…ラントムチームの姉的存在。ロックオン・スナイプに変身する。
・ジョージ・スミス…陽気でチームのメーカー的存在。キャノン・ダイザーに変身する。
・浦島ヒロシ…物静かな男。ダイ・ソードに変身する。
・甲斐田光雄…トウマ達のクラスメイト。
・ゴッドラスト…十年間、ジン・ガイア帝国の陰で憎悪と成長を続けた『元人間』。
・バドリード…マツナガの上司。ゴッドラストに肩入れし、地球上の君臨を目指す。


第二十四話『作興』

24-1

 

レミーとトウマ。二人が三度袂を分かって一晩明けた。変わらず地球を照らす太陽が人々に見せたのは、巨大ガイアラン、役獣が消えた後の地表であった。

 

「もしかして、戦いが終わったのか?」

 

この二週間、避難し続けていた人々の誰かが外に出てそう呟いた。その言葉に誰もが復興を目指そうと期待した。しかし、海沿いに住む人々は、上げようとしたその手を下げざるを得なかった。

 

「あ、あれは…!?」

 

彼らの視線の先、海上にあったのは未来島。それも視認出来る程に迫っていた。だがそんな事よりも、更に驚愕した点がある。それは、島全体がガイアランの巨大茎で覆われ、役獣が周りを取り囲み、島の中心から煌々たる一本の太陽柱が空に向かって伸びている事であった。

 

敵でありながら、神の一手だと感じるその姿に、人々はこれまでの恐怖感を再発させた。

 

あの未来島の様子はなんなのか?

 

ゴッドラストはどうなったのか?

 

復興は出来るのか?

 

ジン・ガイア帝国はこの隙にまた襲って来るのではないか?

 

私達に、未来はあるのか?

 

ラジオ、テレビ、ネットの生配信から聞こえる国は、はぐらかすばかりでなにも答えない。あるのは、『帝国残党の脅威と海外の支援頓挫と資源不足の観点から、日本は陸の孤島となっており復興は絶望的。いたちごっこのように復興しても破壊されるだけ』『今もなお、虎視眈々と狙っている可能性がある』と、生放送で声高に不安を煽る専門家の意見だけであった。

 

希望の見えないまま、またも日本は夜の闇に包まれる。

 

「もうダメだ、私達はおしまいだ」

 

誰かがネットでそう書き込んだ。

 

「頑張った結果がこれなのかよぉっ!!」

 

避難先の集会所の中、周囲の目も憚らずに叫ぶ中年男性。続けて、一人の主婦が、近隣の人々に向けてこう言った。

 

「そうよっ!!もうこれからはパァーッと好き勝手生きましょっ!!どうせもうダメなんだからっ!!」

 

シワの中の瞳に、涙を溜めながら。

 

市街地は絶望の闇夜を跳ね返そうと街灯で微量の明るさを保っている。

                    

「うぅ…腹へったぁぁぁ~…最後に食ったの、いつの、なんだっけ?」

 

「三日前の、二人で分け合ったイチゴジャムパンが最後ですよ、兄貴~…」            

 

そんな人気のない、寒風吹きすさぶ中を、マツナガとコブンロがフラフラと彷徨っていた。島から命からがらで脱出してから約二週間、二人は着の身着のままの軍服汚れとほつれでボロボロとなっていた。

 

「そうか~…どうりで減る訳だあ~…あんなちびっとじゃあなぁ~…お陰で変身すら出来ねぇもんなぁ…」

 

「やっぱり、どっかで盗みましょうよ~…俺達なら上手く隠れてやれますって」

 

「ば、バカヤロウ!!そんな事したら捕まるだろうがっ!!第一、誰もいないからってそんなコソコソした真似は出来るかよっ!!俺達の誇りを忘れるなっ!!」

 

「ひぃえっ!!す、すんませんした~!!」     

 

マツナガに怒鳴られ、しゅんとするコブンロ。時計台が午後七時を指す中、商店街の店舗は皆、シャッターを閉じている。それでも二人は引き続き、コブンロがマツナガの後を追う形で街を黙って歩き続けた。

 

「…」

 

何km歩いただろうか。コブンロは周囲を見渡す。映るのは、崩壊した遠くのビル群に、住宅街に散乱したままの数々の瓦礫であった。

 

「なんつ~か、他人がやったのを見ると、俺達がやってた事はヒドいもんだったって思えるねぇ…ねぇ兄貴、これから俺達、どうすればいいんだろう?」                    

 

「あぁ~?そんなの…そんなの、俺が聞きてぇよ…いきなりよそモンが出て来て俺達の仲間を喰って、そんでもってお前達は私と国が造ったって真実を突きつけられて…帝国が、俺達の故郷が奪われて…もうどうすりゃいいんだよ…」

 

「兄貴…」

 

「畜生、俺達の十年はなんだったんだ!?あの島で、閣下や皆と離れ離れで、これからどうすりゃいいってんだよ!?…なんだ!?」

 

マツナガは思わず振り向く。耳にはやかましいまでのはしゃぎ声が飛び込んで来たからだ。

 

「ハッハー!!」

 

「ヒャッハーイ!!」

 

「俺達はもう自由だっ!!誰にも縛られねぇ!!」

 

「もう、どうにもこうにもならねぇぜ!!」

 

見ると、数人の若者が暗い街中を歩いている真っ最中であった。屈強な身体をした彼らの話の内容、ギラついたファッション。それだけで、人間でありながら尋常ならざる輩である事は、異種族の二人の目でも明らかであった。

 

「ん!?おい、全員止まれっ!!」

 

集団が二人の横を通り過ぎようとした瞬間、ドクロのスカジャンを着た先頭の一人が手を上げて仲間を止める。そして、固まるマツナガとコブンロをジロリと睨みつけて、仲間にこう言い放った。

 

「やはりそうだ、コイツら、ジン・ガイア帝国の化け物だっ!!」

 

「え、なんでわかるんだミッチャン?」

 

「だって、こいつらの服に帝国の制服とバッジを着けてるんだ、確実だもんな!!」

 

「「…!!」」

 

指差し指摘され、慌てて隠す二人。しかし、時既に遅かった。若者達は次々と二人に詰め寄った。

 

「うわ、マジか、あの化けモンか…」

 

「え~ヤバい…キモ」

 

「んじゃ~、退治しねぇとなっ!!」

 

「あぁ…!!」

 

仲間に提案され、ミッチャンと呼ばれた男は脅すかのように手に持った金属バットで地面をコン、コン、と叩いた。

 

「覚悟しろよ?こうなったのは俺達の夢を潰した、お前達のせいだからな?今から正義の執行をしてやるぜ」

 

「こ、こうなったら変身を…」

 

危害を加えられる。雰囲気から感じ取ったコブンロは思わず構える。

 

「ま、待てっ!!待ってくれ!!」

 

しかしその間を、マツナガは割って入った。

 

「…俺達は確かにジン・ガイア帝国の中で指揮官の位にいたモンだ。それで、俺達がお前達にしてきた事、怒り、淋しさはこの数日でよ~っく、わかっているつもりだ…だ、だから、怒りをぶつけるのなら、俺だけにしてくれ…!!コイツだけは、コブンロだけは見逃してくれぇ!!」

 

「あ、兄貴ぃ!?」

 

マツナガは地面に手を付け懇願する。だが、若者グループの怒りはその程度では収まらなかった。

 

「あぁっ!?今さら命ごいか!?ならよ、この程度の痛み耐えられるよなぁ!?」

 

言うが早いか眼前にしゃがんだミッチャンはタバコに火をつけ、マツナガの手の甲に押し付けた。

 

「ぐぅっ!?う、うぅ…」

 

小さな灯は容赦なく焼く。マツナガはそれでも耐え、頭を下げたまま動こうとはしなかった。

 

「あ、兄貴!!て、てめぇら…!!」

 

大事な人を傷つけられ、怒り心頭のコブンロは怪人態へと変わろうとする。だがまたしても、マツナガが彼の服を掴んで止めた。

 

「なにやってんだよコブンロ…そんな事してねぇで、さっさと逃げろっ!!防衛軍とかが来んだろうが!!」

 

「兄貴ぃ…」

 

二人はじっと見つめ合う。その姿を前に、ミッチャンのこめかみはぴくりと波打った。

 

「なぁ~に、人間みたいな茶番してんだよ…俺達はなぁ、てめぇらとか、ゴッドラストのせいで国からぞんざいに扱われてる存在なんだ、そんなあぶれ者に、もう人間らしい情とか、あると、思うなよぉぉぉぉぉっ!!」

 

彼が左手に持つバットは天高く掲げられた。マツナガはぐっと頭に力を込めた。その時であった。

 

「お巡りさん、あの若者だっ!!アイツらがここら辺の金品を奪ってるんだ!!」

 

市街地の奥から聞こえるしわがれた男性の叫び声がした。ミッチャンは思わずバットをピタリと止めた。マツナガの頭部との距離、約3㎝である。

 

「や、やべぇ警察だ…逃げるぞお前らっ!!」

 

ミッチャンは我先にと走りだし、その場を後にした。

 

「や、やべぇ捕まる訳にはいかねぇっ!!」

 

「畜生、今日はまだなにも取ってねぇよっ!!」

 

仲間もまたその後に続く。とりあえず危機は去った。コブンロは膝を付いて、不安気な表情でマツナガの顔を覗き込んだ。

 

「だい、大丈夫かい、兄貴!?」

 

「あ、あぁ…」

 

だが姿はぼんやりながらも、さっきの声の主が近づいてくるのがわかる。コブンロはマツナガの腕を肩に回して逃げようとした。とその時、しわがれた声に呼びかけられる。

 

「はははは、大丈夫だよ君達、警察は来やしないさ」

 

「…えっ?」

 

二人はおもわず足を止める。振り向くと、そこにいたのは作業服を着た初老の男性…以前茜のバイクを整備していた彼の姿があった。

 

「あれは嘘。あの若造を追い払う為の方便だ。さて、君達見たところ相当ボロボロだが、大丈夫かい?お腹すいてるんじゃないかな?」

 

「い、いや大丈夫ッス、失礼しま…」

 

グゥゥゥゥゥ~…

 

マツナガは強がりを言いかけたものの、腹の虫は馬鹿正直に答えた。初老の男はフッと微笑んだ。

 

「無理はしなくていい。近くに避難所の公園がある。よかったら、そこに来ないか?今丁度皆で豚汁を作っている」

 

「え!?いやでも、俺達は…」

 

躊躇するマツナガ。

 

「うわ~いっ!!是非とも、是非とも!!」

 

対して、コブンロはピョンと両手を振って飛び跳ねて喜んだ。その為、肩を離されたマツナガはドテッと地面に投げ落とされる事となった。

 

「どえっ!!コブンロ、てめぇなぁ~…」

 

「あっ、すいません兄貴…」

 

初老の男はそんな二人のやりとりに笑うばかり。

 

「はははは…まぁついてきなさい。怪我の手当てもしてあげよう」

 

男は背を向けると闇夜の奥へと歩き出す。二人は顔を合わせると、その後を追うのであった。

 

「着いた。ここだよ」

 

「おぉ、こんなにも人が…」

 

二人が案内された先、公民館に連なる避難所の公園には数十人の人間が集まっていた。時刻は夕食時、故に僅かな明かりの下で初老の男の言う通り、皆で豚汁を作っている最中であった。

 

「よっ…こらしょ」

 

初老の男は中心にあったたき火の前にあるキャンプ用の椅子へと座る。帝国人二人もたき火を間に挟んで椅子に座った。

 

「「「…」」」

 

パチパチと鳴る火に手を突き出し、かじかんだ手を暖める。なにを話そうかとそわそわするマツナガであったが、ふと、横にあったタブレットから歌声が聞こえた。

 

「この歌は…GooGooZの…」

 

流れる曲は以前歌っていたキャピキャピとしたアイドルソング(二人はそう感じている)と違い、荘厳で美しいバラードであった。だがその特徴的な歌声で彼女達である事を把握したマツナガ。すると、初老の男性は彼の反応に気がついた。

 

「あぁ、この歌かい?GooGooZって娘さんが作った新曲なんだと。随分と曲調が変わったけど、この前のよりも元気づけられるなぁ」

 

「えぇ、そうですね…なんというか、元気も貰えますが、安らぎも貰えるようで…」

 

「それにしても大した娘さん達だよ、事務所を理不尽に追い出されてからも、皆を励まそうとネットの配信って奴で頑張ろうとしてるんだから」

 

「え!?事務所を…!?」

 

「うん、なんでも悪評に対する、とかげのしっぽ切りみたいにね…まったく酷いもんだよ。使うだけ使って、ポイと捨てるなんて」

 

「…」

 

俯くマツナガとコブンロ。ここで初老の男はハッとある事に気がついた。

 

「あっ、そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は田上裕司(たがみゆうじ)。ここらへんでバイクの整備とかやっていた。君達は?」

 

「えと、俺はマツナガです。こっちはコブンロ。あの、聞きたい事があるんですけど」

 

「ん?」

 

「俺達、ここに来てよかったんでしょうか?俺達はジン・ガイアの…」

 

「あぁ、その点なら問題ない。皆、君達二人がそうだって事は知ってるし、なんだったら、避難所には何人か君の仲間がいるよ」

 

「え、えぇっ!?」

 

マツナガは振り返る。視線の先には、未来島で見た人間態の顔が数人、奥で人間と一緒に料理したり、手当を受けている最中であった。

 

「た、確かに島にいた軍事部じゃない一般人だ…なら、どうして、俺達の事を守ってくれたんですか?だって、俺達はかつて敵だったんですよ?」

 

「そんな事は皆わかっているよ。それに、俺の家ぶっ壊した事だって、未だに許しちゃいない。最も、俺の知り合いに直して貰ったがね」

 

「それなら尚更、なんで…」

 

「う~ん、そうだな…君達もまた、人だと分かったから、かな」

 

「ひ、人だから?」

 

裕司の答えにマツナガは首をすくめた。

 

「…思えば、君達帝国人は人間の欲望で産み出された物だ。なにも知らず、教えられる事もなく、理不尽に駆除されそうになって人に進化した存在としてな」

 

「でもそんな真実を知らず、君達はこの世界の頂点を目指して世界制服を狙った。でも、奴が…ゴッドラストが現れてから、君達は奴の前座として捨てられ、養分として喰われ、命からがら逃げ出したと聞く」             

「一方で俺達がこうなったのは国のせいだ、いや、ゴッドラストのせいだ。それとも帝国人か。モヤモヤした気持ちを抱えてここで暮らしていた。でもある時にあの子達、つまり行き倒れになった帝国人を見て、俺達は思った。『憎み合っている場合じゃない。同じ意思の疎通が出来る『人』であるのならば、共に助け合い、解決への想いを貫くべきだ』とね」

 

「最初はお互い牽制しあっていたよ。でも、だんだんと打ち解けて、今じゃこうして一緒に肩を並べて料理まで作っている。自分で言うのもなんだが、これは小さな一歩に過ぎないが、やがては一つの力になるんじゃないかと思っているよ」

 

それまで黙って聞いていたマツナガ。不意に口を開いた。

 

「…しかし、もしその気持ちが誰かに裏切られたり、散々利用された挙げ句ポイと捨てられたら、どうします?その時はもう、信じたくないですか?」

 

横にいたコブンロもまた不安げに裕司を見るが、当の本人は深く腰掛け続けたまま微笑むだけであった。

 

「そうだね、少々強引かもしれないが、その時は自分達の絆や想いを見せつけてやればいいのさ。そんな事をするのが馬鹿らしくなるくらいにね」

 

「「…」」

 

見つめ合う帝国人二人。すると、温かな湯気が、塩気のある匂いと共に二人の視覚と嗅覚を反応させた。振り向くと、穏やかな笑顔の中年女性、かつて茜にバイクのパーツを渡した彼女が、お盆に豚汁四杯を持ってきたのであった。

 

「はいは~い、帝国のお二人さんとお父さん、お待たせ~、豚汁よぉ~っ♪」

 

「おう、来たか。二人とも、コイツはウチの家内の洋子だ。ホレ」

 

そう言いながら立ち上がった裕司はお盆から豚汁と割りばしを取り、二人に手渡した。

 

「あ、あったけぇ…」

 

お椀を手にしたマツナガはそう呟く。その間に、洋子を連れた裕司は席に戻った。

 

「さ、難しい話は後にして、冷めない内に食べよう。いただきます」

 

「いただきます♪」

 

「「い、いただきます…」」

 

人間と同じ礼儀を通し、帝国人二人は豚汁を啜り、慣れない手つきで箸を使う。温かい汁が冷えきった喉を通り、柔らかい豚肉や野菜が腹を満たす。これまでの日常と変わらない食事であったが、ただそれだけの事が、マツナガの瞳から涙を流すのに十分な理由であった。

 

「うっ、うっ、うぅ…」

 

啜り泣きながらガツガツと食べ続けるマツナガに、裕司はニコリと微笑みながら問い掛けた。

 

「…大丈夫かい?」

 

「…いやぁ、こんなにも美味い物を食ったのは初めてですよ。うめぇ…うめぇよぉ…」

 

「兄貴ぃ…」

 

コブンロもまたうるうると涙を流す。たき火はそんな二人を包み込むように燃え続けるのであった。

 

「ごちそうさまでした…」

 

ものの数分で食い尽くしたマツナガ。彼は立ち上がり、身支度を整えて、今まさに出発せんとしていた。

 

「…もう行くのか?」

 

裕司は名残惜しそうに聞く。マツナガは微笑む彼に対し、爽やかな笑顔で答えた。

 

「えぇ。裕司さん、あなたのお陰でやるべき事が決まりました。俺はそれを実行しようと思います。それが、この豚汁への、せめてものお返しです」

 

「ふっ、そんなに堅く考えんでも大丈夫だよ。あっ、そうだ。出かけるついでに年寄りの頼み事を聞いてくれんか?」

 

「ん?なんです?」

 

「うん、テグサーマンやっているポニーテールの女の子…茜ちゃんに会ったら伝えてくれ。『君が手伝って作ってくれた家は家族共々無事だ』とね」

 

「…わかりました。会えたら伝えておきます。それじゃ」

 

そう言いながら、マツナガはコブンロを連れて公園を後にする。そして、二人は裕司に見送られつつ、夜の闇に消えて行くのであった。

 

「…ねぇ、兄貴。あぁは言ったけどさ、これからなにするの?俺、なにも聞いてないんだけど」

 

満月の下、闇と同化する二人。黙々と歩き続けるマツナガに対し、背後のコブンロは不安そうに尋ねた。

 

「コブンロ。確か、この大陸には人間から買った巨大倉庫があったよな?」

 

と、マツナガは振り向き、コブンロに尋ねた。

 

「へ?あ、あぁ確か人間のフリして土地ごと買ったのがポツポツと各都道府県に…でもアレって、武器とかを隠してたり、いざって時の避難所として俺達軍事部が…ま、まさか兄貴っ!?」

 

「そうだ、軍事部の同胞は恐らくそこらに身を潜めている筈だ、俺はその同胞に、人間達と共存しあうように説得するつもりだ。それが、俺達帝国の平和へと繋がる道だと思うし、あのゴッドラストだって倒せる筈だ」

 

「いやいやいや、そんなの無理ですって!!この十年その人間と戦ってきたんですよ!?それをふいにしろって言ってるもんじゃあないですか!?絶対無理無理!!断固拒否されて最悪殺されますよ!!命令でも行きませんからねっ!!」

 

「…それは人間側だって同じだ。それに、もう帝国は無に等しい。命令にはしないし、別に一緒に来なくてもいい。とにかく、俺は行くぞ。じゃあな」

 

「えぇ、さようなら。もう会う事はないでしょうけど」

 

コブンロは足を止め、マツナガは歩み続ける。

 

「…」

 

だんだんと小さく見えるマツナガ。コブンロは黙って見送るだけ。

 

「…」

 

「……」

 

「………ああ、もうっ!!」

 

だが、コブンロはその場で足踏みをし、意を決して走った。闇へと消えようとするマツナガの傍らへと。

 

24-2

 

「…よし、ここだ」

 

陽は昇り始め、青白く、薄暗い空の下でマツナガはようやく目当ての倉庫を見つけた。その倉庫は手入れがされておらず、所々面する海の潮風で錆び付いていた。しかしそれでも、労働者が入る為のドアに備え付けられている暗証番号付きのドアロックは最新機種らしく汚れた形すら見当たらなかった。

 

「え~と番号は…1103732…っと」

 

マツナガは手慣れた手つきでパスワードを入力、『ガチャン!!』と、ドアの施錠が開く音がした。

 

「よし、ビンゴ!!コブンロ、ついて来い」

 

「あ、はい…おじゃましま~す…」

 

ドアを開けて、マツナガはゆっくりと、コブンロはおっかなびっくりに入室する。倉庫の内部は無機質であった。ひんやりとし、窓も殆どない為に真下も暗闇で見えない。

 

「ね、ねぇ、兄貴…ここって誰もいないんじゃ…」

 

物音ひとつない為か、耳がキンとする。コブンロはその感覚に恐怖感を覚え、マツナガにすがるように腕に抱き着こうとした。

 

「いや、待て…!!」

 

その時、二人の顔面目掛けて一発のエネルギー弾が襲い掛かった。とっさに避ける二人。彼らが元いた場所で着弾したエネルギー弾が爆発した。

 

「くっ…」

 

発射地点を見つめるマツナガ。姿は見えずとも、ピシュン、ピシュン、と何者かが高速移動しているのは耳と肌で感じている。

 

「ウサラビ、止めろっ!!俺だ、マツナガだっ!!」

 

「えっ!?ま、マツナガ様…!?」

 

高速移動していた怪人はマツナガの声にピタリと止まった。その怪人はその名の通り、兎型の怪人であった。同時に、倉庫内の明かりが点く。照明の下にいたのは、天井まで届く棚、倉庫内デッキ、コンクリートの床に密集し、少なくとも百人以上はいる帝国人であった。

 

「やっぱり皆、ここにいたのか…ここが一番、海、未来島に近いもんな…」

 

「マツナガ様も、よくぞご無事で…!!」

 

ウサラビは嬉しそうに人間態、中性的な顔立ちをした優男へと変身する。その瞳は心の底から安堵感を覚えていた。それは、背後からぞろぞろと集まる同胞達も同様であった。

 

「おぉ、マツナガ様…!!」

 

「よかった、これで仲間が一人…!!」

 

「コブンロもいるぞっ!!」

 

マツナガは再開を喜ぶ前に質問を投げかける。

 

「なんにしても、お前達も無事でよかったぜ…あれからずっとここで待っていたのか…?」

 

と、ウサラビが飛び出すように答えた。

 

「え、えぇっ!!なんとかここの備蓄を切り詰めて、位も関係なしに皆で頑張って耐え忍んでいたんですっ!!そして現在も待ち続けていたです、我々の反撃の時を…!!」

 

「…」

 

「マツナガ様の指揮があれば裏切ったバドリードは勿論、この隙を狙って、悪鬼羅刹の人間共も侵略してやりましょうっ!!我々を無理矢理産み出した事を、必ず後悔させてやりま─」

 

「ウサラビ、その件に関して俺は止めに来た。そして、その人間との停戦を皆で申し出ようと言いに来たんだ」

 

「な…!?」

 

予想外の返答にウサラビは絶句。同胞もまた、ざわめくばかり。

 

「ば、馬鹿な…!?人間との戦いを止めろ…!?」

 

「マツナガ様は一体、なにを考えているんだ!?」

 

そして、同意見だと耳にしたウサラビは一歩迫る。

 

「…皆の言う通りです。マツナガ様、本気で言ってるんですか!?」

 

「本気だ。俺は…」

 

マツナガが話し始めたその時、ウサラビは無我夢中で彼の胸倉を掴み、壁へと叩きつけた。衝突音が倉庫内に響く。

 

「ふざけた事、言わんでくださいよマツナガ様ぁ!!奴らが俺達になにをしたのか忘れたわけじゃあないでしょう!?生まれたての我々を駆除しようとし、しかも、十年経ってもそれは変わらず地球の頂点に君臨しようとしている。それなのに、そんな奴らに頭を下げろと言うのですか!?今まで俺達がやって来た事、無下にしろって言うんですかぁ!?」

 

ウサラビはマツナガを掴んだまま激しく揺らす。彼の目は裏切られた怒りか悲しみか大きく開いている。マツナガは、そんな彼の手を諭すように握った。

 

「…なにも、全てを無駄に捨てて、頭を下げろとは言ってない。もう人間と争う必要はないと言ってるんだ。だってよ、そもそも人間を襲うように、頂点に立つように思っているのは、あの室田修って野郎がそう作ったからだろう?」

 

「あ、あぁ…」

 

ハッとするウサラビ。彼の手は自然とマツナガの襟から離れていた。

 

「皆、聞いてくれ。今の俺達だけでゴッドラストが倒せると思うか?奴にとって俺達は餌みたいなもんだ。もし倒せたとしても次の相手、戦力を使い果たした人間には勝てると思うか?更に泥沼化するか、これで頂点に立ってもまた狙われ続けるに決まっているぜ」

 

気がつけば、同胞達はざわめきを止め、マツナガの話を黙って耳を傾けていた。

 

「それによ、確かに人間には原因作っておきながら、責任を取らない悪い奴が幅を利かせているが、それでも、そんな世界でも頑張ろうとしている良い奴もいるんだ。見てくれ」

 

マツナガは倉庫の片隅にあったパソコンを起動し、動画サイトを見せる。再生されていたのはGooGooZによる生配信のライブ映像のアーカイブ。先程裕司と聞いていた、平和を願うバラード調の歌であった。

 

「いい歌だ…」

 

同胞の誰かがポツリと呟いた。マツナガはその呟きを聞き逃さなかった。

 

「そうだ。いい歌だ。でもな、この子達は今理不尽に上の奴らの手で追い出された。もう利益を手にする事も出来ないし、下手に目立てば、後ろ盾のない状態だから俺達に狙われるかもしれない。でも、それでもな、この子達は頑張ろうとしている誰かを支えようとしてるんだよ。そんな他者を思いやる、強い意思の子もいるんだ」

 

「そしてな、そんな歌から元気を貰って、俺達帝国人と助け合っている人もいる。信じられるか?こんな俺にも、人間の食い物をくれた人がいるんだぜ?」

 

マツナガはタッパーを取り出して蓋を開ける。入っていたのは、夕べ食べていた豚汁であった。

 

「こいつは帝国の同胞や人間に頼んで分けて貰った物だ。ここを出るって言ったら、自分達も大変な身にも関わらず、喜んでくれたよ。全く、人間がこんなにも優しくしてくれるとは思わなかったぜ」

 

「いまやもう、争う必要はない。お互い手を繋ごうとしている者もいる。だからよ、悪い奴にも、ゴッドラストにも見せつけてやろうぜ、俺達はこれからは自分の意思で進んで行くんだ。俺達と、正しいと思った人間と共に守り合う事を!!そうすれば、俺達を勝手に産んだ奴らも考え直す筈だ!!頼む皆、力を貸してくれっ!!」

 

深く深く頭を下げるマツナガ。しかし彼を前に、同胞達はお互い顔を見合わせるだけであった。

 

(み、皆…!!お願いだ!!)

 

押し黙る同胞達に焦るマツナガ。すると、彼らを掻き分けて一人、前へと出た。

 

「やれやれ、アンタだけじゃ人は動かせないみたいね…」

 

「そ、その声、お前はまさか…!!」

 

聞き覚えのある静かな女性の声にマツナガは思わず頭を上げる。予想通り、そこに立っていたのは、腐れ縁であるミルメであった。

 

「ミルメ!!お前もここにいたのか!!」

 

「えぇそうよ、私がここの音頭を取っていたの。で、アンタの話を奥で聞いていたって訳」

 

「そ、そうか…ところで、お前はどうなんだ?俺の話聞いてよ?」

 

「そうね、あの時、閣下と離れ離れになってから、私はどうしたらいいか正直、判断に困ってるわ」

 

「だ、だよな…それなら─」

 

「それなら周囲の圧に負けて意見が言えない子の話を聞いてみようじゃないの。レニー、おいで?」

 

ミルメに手招きと共に言われ、おずおずと前に出たのはレニー。

 

「は、はい…」

 

かつて、ディーンの教育担当をしていた女性である。

 

「わ、私はマツナガ様の意見に賛成したいと思います。私は以前、人間の中で最も強い存在のテグサーマンに会いました…確か、マツナガ様が誘拐した時に…」

 

「えぇっ!?マツナガ様が!?」

 

再びざわめく同胞達。

 

「それじゃあこの前の島のぼや騒ぎとかはテグサーマンを連れて来た時だったのか…!!」

 

「バドリードからは事故だと聞いていたが?」

 

「ディーンがいなくなったのも、それと同時だったな…」

 

静まり返ってからレニーは話を続けた。

 

「最初に出会ったのは、逃げ惑っていたテグサー1の装着者が教育室に訪れた時です。色々と話し合っている最中、彼の素性を知った私は、教育中の子が殺されると感じ、復習と共に必死で抵抗しました。すると、彼は私にこんな話をしてくれました。以前戦ったドルカを助けようとしたが力及ばず出来なかった。その事を、ずっと悔やんでいると」

 

「私はその時二つ思いました。一つは、あの娘は優しかった。人間にも、例え敵対する相手であっても敵意がなければ思いやりを持ってくれるのだと。二つ目は、それに関して口から出まかせを言ってるだけではないか、と」

 

「その時でした。彼の下に、テグサーマンの仲間が危険を顧みずに救出に現れ、再会に涙した事を。そこで私は確信しました。人間には力あれば決心し、勇気を出して行動する思いやりの心がある事を」

 

「それだけじゃありません。後から来たディーンがバドリードの手によって暴走した時、彼が身を呈して止めてくれたんです…あれからずっと、私は人間とはどんな存在かとモヤモヤしていましたが、今の話を持って賛同したいと、より思いました」

 

レニーが話し終えると同時に、同胞達が彼女の元へと群がった。

 

「そうだったのか…って、なんだって?バドリードが!?ディーン様を!?」

 

そして、それまで潜んでいた事が嘘だったかのように騒ぎ出した。

 

「くそぉアイツ、あんな時から裏切り、利用をしてやがったのか!?バドリードはディーン様が裏切ったと言ったのに、アイツが酷い事してやがったのか!!」

 

「許せねぇ野郎だ、そりゃディーンも脱走する訳だ!!」

 

「そして、そんな彼を人間が助けて、保護している。少しは信頼してもいいのかも…」

 

誰かの纏めの発言に、同胞達は同意するように静まる。そんな彼らに向かって、ミルメはパン、パンと手を叩いた。

 

「よしよし、それじゃあ私達はこれから人間の元へ交渉に行く。勿論これは命令じゃない。同意しないのはここに残って頂戴。同意するのは…ついて来て」

 

「おうっ!!」

 

「よっしゃ、行くか!!」

 

「わからせてやるぜ、人間共!!俺達の絆をよ!!」

 

「あと、ゴッドラストもなっ!!」

 

決心した同胞達に、マツナガは涙目。

 

「み、みんなぁ…」

 

そんな彼に、ミルメは軽く彼の肩を叩くのであった。

 

「さ、マツナガ。指示を頂戴。これからどうするかを」

 

「よ、よぉ~し!!それじゃあこれからテグサーマンのいる所、GRNの日本支部へ行くっ!!来たい奴、準備してついて来いっ!!共に仲良くし、ゴッドラストを共に倒すよう伝えようじゃあねぇかっ!!」

 

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」

 

「それじゃあ善は急げ、一分で支度しな!!」

 

帝国人は各々、倉庫奥に準備した車、バイクに乗り込み、ライトを点ける。その光の筋は、新たな道を照らすようであった。

 

「それじゃあジン・ガイア帝国の新たな出発に…進行じゃぁぁぁぁっ!!」

 

倉庫のシャッターを開き、マツナガの合図と同時に車両はエンジンを吹かして外へと突っ走る。人が消え、もぬけの殻の倉庫は、寂しそうに彼らを見送るのであった。

 

24-3

 

曇り空の下のGRN日本支部。ゴッドラストとの戦いを終えてから、テグサーチームはここに泊まり込んでいた。

 

「やっぱりそうだ、このいままでにないエネルギー量、ゴッドラストは未来島全体を繭のようにして、あの中で篭って育っているんだ。次の行動の為に」

 

検証の為、飛田は机に向かって座り、ノートパソコンのキーボードを素早く打ち込んで個室内にいる周囲の仲間へ向けて呟く。しかし、暗い表情で穂乃花と茜はソファーで俯き、そしてトウマは窓際に姿勢悪く座って外を眺めたままであった。そんな中、少しの間を置いて、重い腰を上げた涼と、遅れてディーンが飛田に近寄った。

 

「ということは飛田、あの光の柱はその高エネルギーであるゴッドラストから発している物なのかい?」

 

ディーンの解釈に、飛田は頷く。

 

「そうです。それもあの柱、どうやら大気圏外まで伸びているようなんです。一体なんの為にやっているのか、今の所僕のパソコンではわかりませんが、ゴッドラストがここまでした上で、役獣も全部島の中に入れてでも引き下がるという事は、なにかデカい事を計画しているに違いありませんよ。今、GRNでも行っていますが、こっちでも検証を続けます」

 

「そうかい、それにしてもいつになったらここの人達は俺達に指示をくれるんだ?修理と言ってテグサロイドは預かりっ放しだし、ここも何て言うか牢屋に閉じ込められている感じでどうもやだね…」

 

ぼやきながらディーンは周囲を見渡す。与えられた事務所代わりの個室の内装は事務机や用品だけでなく、くつろげるソファーやウォーターサーバー、ついでにトイレまで完備されている。だが、それらで誤魔化す様にスライド式の扉は何故か分厚く、外の景色が見える窓には開閉機能すらついていなかった。

 

「まぁまぁディーン、橋爪専務があれこれここに指示して用意してくれたんです。気にせずに使いましょう?それに、今じゃ旋風重工や日本政府は殆ど機能していないですから、とりあえずここを利用してみましょう?」

 

「う~ん、そうだねぇ、まぁ飛田がそういうなら…」

 

「さて!!そんな事より、僕達は考えなくてはいけません!!これからゴッドラストをどうやって倒すか、そして、レミー社長をどうすれば助けられる、かを…」

 

飛田は自身が言った最後の言葉に気持ちが沈んだ。同時に今まで別方向を向いていた遠くの三人は一斉に彼に注目していた。

 

「す、すいません皆さん。ただでさえゴッドラストは面倒なのに、更に問題を思い出させてしまって…」

 

「ううん、気にしないで飛田くん。皆わかってる事だし…」

 

気弱になる飛田に、穂乃花は気丈に振る舞う。その様子をトウマは傍らで見つつ、「レミー…」と呟くだけであった。それを吹っ飛ばす様に、飛田は説明を始めた。

 

「まず、これからなにをするか、わかってる事だけを言うと、もう一度未来島に行って、ゴッドラストを倒す事。そして問題はどうやって倒すかです。現状、世界的に戦力はボロボロ。他の方は当てに出来ない。そもそも、大勢で行けば役獣に襲われ、最期にはゴッドラストに食い尽くされるのがオチです。なので、少数精鋭で行くべきですが、問題はそれが出来るテグサーマンです」

 

「とは言っても、レミーさんと合体した後、放った撃竜波が効かなかった。物凄くパワーアップしたのは間違いないです。しかも、テグサー1はその力の源が引きずり落ろされ失われてしまった為、工場で起こった覚醒による技で切り札でもある、想竜弾はもう使えないという事です。ハッキリ言って、戦力でも数でも、そして体内に人質がいるって時点で負けています…し」

 

話の途中、さすがの彼でも気付いた。周囲の仲間達がバッチリと凹んでいる事を。

 

「あ、あの、すいません…」

 

涼はため息をつき、ディーンはやれやれと天井を見上げる。そんな中で、トウマはポツリと呟いた。「レミー…俺のせいだ」と。

 

「俺があの時、レミーに共に戦おう、力を貸してくれなんて言ったからこうなっちまったんだ。あの時、逃がしさえすれば…レミー、すまん…」

 

「だ、大丈夫ですよ、トウマさん!!あの時はああするしかなかったですよ!!それに、今はゴッドラストの動きが止まっている。つまり、反撃できるチャンスがあるって事です!!今はGRNの修理と指示を期待しましょう!!長年ジン・ガイア帝国の対策を講じていた国際的組織です!!きっと、いい方法がありますよ!!」

 

飛田の随分と漠然とした提案。であったが、トウマは少し顔を上げて彼を見た。

 

「飛田…そうだな。よし、俺は戦うぞ。最後まで諦めず、ゴッドラストを倒し、そしてレミーも救ってみせる!!」

 

「そう、それでこそ僕が見込んだ男です!!必ずレミー社長をご家族に返してあげましょう!!そう、海斗社長、に…」

 

「おい、飛田ぁ?今のアイツの事は…」

 

「あっ、すいません…ついうっかりと…」

 

決意するトウマに、やぶ蛇であった飛田。それと同じ頃、GRN日本支部の司令室でモーラはハワードと通信を交わしていた。

 

『…それで、旋風重工のカイトはどうしているのかね?』

 

「はい、ゴッドラストとの戦闘後、精神が完全に崩壊してしまい、現在病院に入院させています。恐らく、ゴッドラストと対峙が引き金となっており、終始うわごとを…もう、責任を取らせるのも難しいかと」

 

『そうか、それは仕方がないな…』

 

「申し訳ございません、このような結果で」

 

『いや、いいんだ。それよりも、テグサーマンの方はどうだ?』

 

「はい、現在旋風重工から正式に受け取り、ドックで修理を進めています。それと、装着者の方は現在待機部屋で休憩させています。ところで長官、今後はどのように動けばいいのでしょうか?ご指示をお願い致します」

 

「うむ。その件だが、君達は明日にでも本部に帰って来て貰う。近いうちに専用機を日本に飛ばすから、それにテグサーマン積んで帰ってきてくれないか?長期間の研究に使うからな」

 

「…は?」

 

指示を理解出来ないモーラは一考し、呟くように返した。

 

「ま、待って下さい。今テグサーマンを日本より外に持ち出す余裕はないんですよ!?それに、今はあの力と、彼らと協力して今すぐにでも戦うべきではないでしょうか!?」

 

『ん?そうか、君は先日の決断の話を聞いていなかったんだな』

 

「決断…?」

 

『そうだ。明後日には溶融弾『0-Z(ゼロゼット)弾』を島に向けて撃つ予定だからな』

 

「『0-Z弾』を!?」

 

モーラはそれがなにを意味するのか熟知していた。0-Z弾は国家の壁を超え、音頭を取ったGRNが極秘に開発したミサイルである事。その威力は凄まじく、着弾による爆発と同時に特殊な薬剤がばらまかれ、それに触れた者は原子の単位でバラバラに分離させる事。そして、その効果は範囲100kmまで渡り、効果はおよそ数十年続くというデメリットもある事も。

 

「ま、待って下さい。今、ゴッドラストは日本の本州に密接してるんですよ?それなのに、撃つという事はそこに住む関係ない人々まで巻き込んでしまうんですよ!?止めて下さい、そんな事は!!」

 

『モーラ。もう遅いよ、これは艦隊全滅後、GRNに加盟している国家間で決めた極秘事項だ。今更変更は出来ない。それに、ゴッドラストは今、なぜああも引きこもっているのか原因が判明した。それは、あの光の柱によって、巨大隕石を宇宙から引っ張っている事だ』

 

「な、隕石を…!?」

 

『そうだ。我が組織の望遠鏡で見つけた。恐らく、地上制圧のトドメとして、ゴッドラストはこの星全土を灼熱の地とする予定だろう。なので、それを止める。もう、猶予は僅かしかないのだよ』

 

「そ、そんな…まさか、皆、知っていたの!?」

 

モーラはおもわず周囲を見渡す。視線の先にいた同僚達は全員、ばつが悪そうにモーラから視線を逸らした。

 

「ひ、酷いわ皆…目的の為に大勢の人を見殺しにして、自分だけ生き延びようとするなんてイカれているわっ!!もしかしたらこの先、その力が原因で帝国残党のみならず、人々の争いが激化する、なんて考えてないの!?」

 

『モーラ。気持ちはわかる。しかし、だからだよ。ゴッドラスト駆除後に起こるであろうそれらの争いを、この兵器と今後量産されるテグサーマンで鎮め、我々が再び世界を管理運営していく予定だ』

 

「し、しかし!!それではジン・ガイア帝国と変わりないではありませんか!?」

 

『おいおい、勘違いしないでくれたまえ。我々はあれと違って作られた存在ではない。故に暴走や過剰な破壊行為はしない。あくまで他国の下で管理するだけだよ。それと、テグサーマンを調べてくれたこれまでの功績として黙って帰ってくれれば君の幹部への昇進を約束しよう。どうかね?』

 

「…」

 

(確かに、猶予はないのならば最強、凶悪の兵器を使うべきかもしれない。でも、だからってなにも知らない人まで巻き込んでいいの!?こんな暴挙を許していいの!?この事実、果たして皆に伝えるべきか…いや、伝えた所でなにか変わるのかしら…!?)

 

胸中で考えるモーラ。その時、けたたましい警報が鳴った。

 

「な、何事!?」

 

モーラの脇に座る女性オペレーターがキーボードを叩き、モニターを見て叫ぶ。

 

「大変です!!ジン・ガイア帝国がここに押し寄せて来ました!!その数、約百五十体!!」

 

「えぇっ!?モニターに出して頂戴!!」

 

「はいっ!!」

 

続いて、監視カメラの映像をモニターに映し出す。画面に映っていたのは彼女の言う通り、ジン・ガイア帝国の旗を持った帝国人が人間態となって、ぞろぞろと列をなして日本支部に向かって歩んでいた。

 

「あ、あぁ…遂にこんな所にまで帝国の手が…モーラ隊長、どうしましょう!?っていうか逃げましょう!!」

 

「いや、待って!!なんだかアイツら、様子が変よ!!」

 

モーラがモニターに映る彼らの様子に疑問を感じていた。それは、支部の広場に立ち入っても彼らが本来の姿にならない事と、なにかを訴えるように叫んでいる事であった。

 

「オペレーター、外部のマイクを彼らに近づけて。なにを言ってるか聞いてみるわ!!」

 

「りょ、了解!!」

 

オペレーターはキーボードを操作して外に設置したマイクを起動させる。徐々に音声が聞こえてきた。その言葉に、モーラは我が耳を疑った。

 

『…俺達に今、敵意はな~いっ!!共に、この地球の平和の為に戦いましょぉぉぉうっ!!』

 

『話をさせてくれ~っ!!』

 

『地球に生きる者としてのお願いだぁぁぁっ!!皆で頑張ろう!!』

 

モーラは先頭に立つ者の名を呼んだ。

 

「…アイツは、マツナガ…?」

 

恐らく、彼がこの運動の発端となったのは彼女の経験上予測出来た。そんな音声を前に、各々の意見を放つモーラの同僚達。

 

「な、なに言ってるんだアイツら!?いきなり平和だと!?」

 

「協力するですって!?嘘臭いわっ!!」

 

一方、モーラは変わらず冷静にオペレーターに質問した。

 

「…オペレーター、今防衛軍はどうしてる?」

 

「今、防衛軍の隊員を向かわせています。モーラ隊長、この隙に逃げ…」

 

「待ちなさい、ここで逃げてどうするの?私達は地球の平和を守る、組織の一員なのよ?」

 

「そ、それは…」

 

「あなた達はここでまだ様子を見ていなさい。私は…彼らの下に行ってくるわっ!!」

 

そう言うと、モーラはその場を走り去った。その姿に迷いはない。あるのは自らの意思で戦う、戦士の様相であった。

 




どうも皆さん!!今回は一週間より早く投稿出来ました!!

久々の登場した人々もあり、物語はより大きく動き出しました!!

果たしてGRN、テグサーマン、ジン・ガイア帝国の三つの組織はどうなるのでしょうか!?

さて、今回のハイライトと共にこの辺りで失礼しますっ!!


【挿絵表示】



それでは、次回をお楽しみに~っ!!

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