・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
5-1
イーヴィル・ディーンがコツコツと歩み寄り、死のカウントダウンが刻々と近付くテグサーチーム。あと数mまで接近されると、穂乃花は震え、トウマは死を覚悟した。その時、二人の前に一台の自転車が現場に割り込んだ。降り立ち、バッと腕を広げるのは、レミーであった。
「ま、待ちなさい怪人!!テグサーマンを倒したければわ、私を倒してからにしなさいっ!!」
威勢は良いものの、その足はガクガクと小刻みに震わせる。そんな彼女を心配したトウマと穂乃花、涼はよろよろと立ち上がる。
「社長!?やめろ、死ぬ気か!!」
「社長、やめて!!」
「ど、どくんだ社長...!!」
「あ~らら、こんな子がでしゃばってくるとは。これじゃどうもやり辛いなぁ...ん?増援か」
商店街奥から自分に向かって突撃する防衛軍の増援『メニー』を発見し、そちらに顔を向けるイーヴィル・ディーン。一瞬の隙を見逃さなかった涼は、懐に忍ばせていた煙幕玉を投げて辺りを煙で充満させた。
「小賢しい真似を...!!ム、逃げられたか」
突撃し、煙幕を切り抜けた涼達の元に近付いたイーヴィル・ディーン。しかしその先で彼らが退いた事を知り、あくびをするとふわりと空を飛んだ。
「ならばここにいる理由はないな。面白くもないし、撤退するか」
「に、逃げたぞっ!!撃て、撃てぇ!!」
防衛軍隊長の命令の元、並んだメニーは空中のディーンに向けて一斉にマシンガンを連射した。しかし、弾丸は一発も命中する事はなく、遊覧飛行の如くバレルロールで去り帝国人は街を見届けるだけだった。
「クソッ、完敗だっ!!」
事務所に戻ったトウマは椅子にドカッと座りながら嘆いた。その横では涼から包帯を巻かれている最中の穂乃花が彼を心配そうに見つめ、他の二人も同じ様に見つめていた。初めて受けた完敗に、意気消沈した空気を変える為か、飛田はノートPCの前に座ってテグサーマンの破損状況を全員に報告する。
「まさかここまでやられるなんて...あの電撃で装甲面がボロボロ、複数のコードが焼き切れてます。」
「ジン・ガイアの幹部級があんなにも強いなんて思わなかったよ...これから勝てるか不安だよ...」
弱音を吐く穂乃花。
「...怖くなったのならこのチームから降りた方がいい。無理してまで戦うことはないだろう...これだから降りろと予め言ったんだ私は」
対して辛辣に答える涼。それを聞いて閉口する穂乃花に代わってトウマが立ち上がる。
「おい、そんな言い方ねぇだろ!!大体お前があの時でしゃばらなければ上手くいってたかもしれねぇだろ!!」
「...あの後、三人で同時攻撃して失敗したのを忘れたか?」
「な、なにぃ...!!」
言い争い、睨み合う二人。それを止めるかの様にレミーはパンッと手を叩いた。
「降りる降りないは後にして、今は奴を倒す方法を先に考えるべきでしょ!?飛田、なんかない!?」
「相手が空を飛べるなら今開発中のウイングパーツによるパーツ換装が有効だと思います。」
そう言いながら飛田はノートPCのモニターを皆に見せた。そこには正面から見たジェット機の翼の様なパーツを背中に装着したテグサー1が表示されていた。
「これを使えば滞空が可能となって奴に対抗出来るかもしれません!!
「おお、マジかよ!!もうこんなの用意していたなんて…」
「ただ...」
「ただ...?」
「今は開発段階でテグサー1しか使えない上に、かなりの訓練を積まなければなりません。トウマさん、やりますか?」
「当たり前だ、奴が次来るまでには絶対に使いこなして見せるぜ!!」
はっきりと宣言するトウマ。対して飛田は「ではどうぞ」と言わんばかりにゴーグルを渡した。
「このゴーグルで仮想空間でウイングパーツの飛行訓練が出来ます」
「成る程、これならいつでも誰にも気付かれず、迷惑をかけずに訓練が出来るな…よし、早速始めようっ!!」
気合を入れたトウマは早速、地下の研究室のスペース猛特訓を重ねた。
「うわわわっ、落ちる~、落ちたっ!!」
しかし本人が予想するより操作が難しく、仮想空間の中で彼は何度も墜落していた。ただ歩いたり跳ねたりするのとは訳が違うのだ。かつて人類が空への一歩を目指したのと同様に。
「くそっ、あの時もう少しバランスを調整すれば…よし、もう一回だ!!」
トウマの猛特訓は事務所に泊まる程夜通し行われた。その間飛田は開発を進め、涼は刀を振って修行、後の二人は少しでも役立てるように彼らの手伝い、家事を行っていた。各々やる事は違うが、想いは一つ。大事な人々を守る為。
「くっ、私がしっかりしなければ…アイツらに…」
そんな想いと月光の下、涼は一人、悔しそうに小さく呟いた。
5-2
「おい、ディーン!!手前ぇ、もう少しでテグサーマンを倒せそうだったのに見逃したそうじゃねぇか、一体どういうつもりだ、あぁ!?」
未来島内部の港口。銀色の金属の壁に囲まれたそこでマツナガはディーンに向けて啖呵を切った。彼の剣幕に、ディーンを囲う異形の部下達は思わず後ずさり。
「う、うぅ…」
「あっ、マツナガ様…」
「ん、あぁ~マツナガ諜報部隊隊長か。その通りですが、なにか?」
そんな中、飄々とした態度で振り向くディーン。舐めた様子はマツナガの怒りの油に火を注いだ。
「なにかじゃねぇ!!理由を聞いてんだろうが!!」
「理由ですか…まぁ、強いて言えば面白くないから、でしょうか…」
「面白くない…だと?」
「ええ。変身が解除されて人間に戻った所を叩きのめしても心に満足がいく結果にはなりませんから。それに、後から来た防衛軍の数から考えて多勢に無勢。そんな戦いでは戦力差もさることながら、数を蹂躙してもこれまた面白くないと考えました。それに…」
「こ、この野郎!!さっきから聞いていれば面白くないだの、面白味だの!!手前ぇはそれでも帝国に忠誠を誓う軍のモンかぁ!?」
「分かってますよ。だから今から、こんな朝っぱらから出撃して人間の軍基地を制圧、ついでに今日視察をしている国の偉い人を始末してくる予定ですから…」
そう言いながらディーンは怪人態に変身、テグサーマン達を蹂躙したあの姿へと変わった。
「さ、行きますか。各員は作戦通り俺が一人で基地を襲撃する。その後に各員は基地に乗り込んで物資や武器を略奪するんだ、いいね?」
「「ハッ!!」」
「それじゃあ、出撃!!」
周りを囲っていた部下達はディーンの号令と共に黒いメットやアーマーを素早く装着、以前のホッグルとの戦いと同様の恰好になると港に停泊している潜水艦に次々と乗り込んだ。
「よし、全員乗り込んだか…それじゃあ行くか!!」
潜水艦の潜航と共に、ディーンは海へと飛び込んだ。そして、手足を動かすことなく未来島の出入口から暗い海底へと魚雷の如くに飛び出し、その後を潜水艦を追った。その姿に性別問わず誰もが彼に港から大勢の憧憬の目を向ける。目の当たりにしたマツナガは恨めしそうに、もはや姿の見えない水面を睨むのであった。
「くそっ、あの野郎かっこつけやがって…!!」
三十分後の防衛軍軍事東部基地。激しい爆発と共にフェンスが破壊され、イーヴィル・ディーンが正面入り口から出現した。
「くそっ、撃て、撃てぇ!!」
メニー達はディーンに向けてマシンガンによる一斉射撃を浴びせた。しかし、激しい弾幕の煙が晴れ、視界の先に現れたのは引き続きゆっくりと歩くディーンの姿であった。
「つまらない攻撃だ。この拠点は昼飯前には制圧出来そうだなぁ」
「う、う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
無傷の相手を前に恐怖に駆られたメニーの絶叫。それに構うことなくディーンは一飛びで逃げる殿の首根っこを掴み、投げ飛ばす。
「ふん、殺す価値もない…」
アスファルトに叩きつけられたメニーは意識があるらしく手足をピクリと動かし、這うように逃げ出す。ディーンは彼に見向きもせず基地入り口から堂々と入り込む。瞬間、基地内部から爆発が発生、三階建てのうち、一階の窓ガラスが一度に爆散した。この惨状を涼と穂乃花、レミーはテレビ局のヘリ中継で見ていた。
『このままこの地はジン・ガイア人の手に落ちてしまうのでしょうか!!さようなら、さようなら...』
「くっ…」
テレビのリポーターの悲痛な叫び声を聞いた涼は刀と車のキーを持って玄関に向かった。
「涼さん待って!!私も行く!!」
涼の出動に気付いた穂乃花は彼女に続いた。しかし、彼女の声に振り向くことはない。
「今のお前は奴に恐怖感を抱いている。ここで待っていろ」
「そ、そんな...」
辛辣な言葉を投げ掛けられて立ちすくむ穂乃花。そんな彼女に涼は更に言葉を投げ掛ける。
「怯えた奴が戦いに出るのは...はっきり言って邪魔だ。来るんじゃない」
玄関の扉を開けて事務所を後にする涼。それを見て、レミーは彼女への悪態をつき始める。
「な、なによアイツ...!!人の事を邪魔者呼ばわりして...!!あんな酷い奴だと思わなかったわ!!」
その声を聞いたかの様に訓練と調整中のトウマと飛田が地下室の階段から上がって来た。それを見た穂乃花は訓練はどうなったか聞く為に二人に近寄った。
「あ、トウマ!!ウイングパーツはどう?」
「あぁ、もう少しでモノに出来るよ...それより、どうしたんだよ社長?そんなに怒って...」
「聞いてよトウマ、涼がテグサロイド持って一人で敵の、ディーンって奴の所に行ったのよ!!」
「えぇっ、テグサロイドを!?涼さんのは一番破損が酷くて修理がまだ終わってないのに!!」
「えぇっ!?」
飛田の発言を聞いて驚く一同。その時、トウマは皆が立っている玄関で布の切れ端が落ちているのを見つけた。
「なんだコレ?...これは包帯の切れ端か...包帯に血が付いてる!!まさかアイツ、こんな怪我でイーヴィル・ディーンに立ち向かう気か!?」
「そんな、どうしてそんな無茶を…どうして?」
不安と疑問を持つ残された穂乃花。そんな中、トウマは一人、彼女の心情を察したのであった。
「まさかアイツ…」
5-3
一方で防衛軍の基地は壊滅的な被害を受け、後から来た戦闘員級が多数押し寄せて基地の武器や備品を略奪し、踏んだり蹴ったりの状態となっていた。その状況を防衛軍の兵士はただ見ているだけ、もしくは今か今かと撤退の準備しか出来ず、イーヴィル・ディーンは捕らえた『国の偉い人』という中年男性のスーツの襟を掴んで待機していた。
「は、離してくれ…頼む、命だけは…」
「やれやれ、大して面白くない相手だったねぇ。殺す気にもなりゃしない。ん?」
偉い人を無視して、ディーンは前にやって来た若い女性を見た。防衛軍の軍服と違い、彼女は黒いスーツにハイヒールを身にまとっていた。彼女は『偉い人』の秘書であった。
「せ、先生を離しなさい…!!じゃ、じゃないと…!!」
「先生?あぁ、この視察に来たっていうこの年寄りの事かな?君も大変だねぇ、こんな口だけ回る老いた奴の為に自らを犠牲にし、秘書としての職務を全うしようなんてさ…」
「う、うぅ…」
彼女の手に構えられる拳銃は恐怖で大きく震えた。
「まぁいいや、力のない奴を殺すのは気が引ける。このまま下がってくれるのであれば、君の命までは奪わない。どうかな?」
「…えっ、えぇ?」
ディーンの話を聞いて、秘書は驚きつつ、一歩、二歩、ゆっくりと後ろに下がった。それに気付いた『偉い人』である議員は顔を上げ、怯えから一変、怒りの表情へと変貌した。
「き、貴様っ!!私を見捨てる気かぁっ!?いくら給料を払ったと思っている!?クビにするぞ、クビにぃっ!?」
「うるさいなぁ、耳元で…」
騒ぐ議員を鬱陶しく感じたディーンは彼の両頬を指で挟み、力ずくで黙らせた。
「立場だけの力しか持ってない奴が偉そうにするんじゃあないよ。それ以上つまらない事を騒ぐなら…潰すよ」
「む、むぐぅ…ぐぅ…!!」
無理矢理威圧感で口を塞がれ、言葉を発せなくなった議員。その時、凛々しい声が彼らを貫いた。
「待て、これ以上の狼藉は許さんぞ!!」
「ん?」
ディーンが声がした方を見ると、涼が刀を構えて睨んでいた。
「その声はこの前の新型の...他の連中はどうしたんだい?」
「この戦いは私一人で充分だ...!!」
「やれやれ無茶しちゃって...ん?」
ディーンが周りを見ると、戦闘員級数人が略奪行為を止めて舌なめずりを始めていた。
「成る程。お前達、テグサーマンを倒した功績を欲しいのか。いいよ、好きにしな」
上司の許可を頂いた戦闘員達は「イーッ!!」と叫びながら涼に立ち向かう。しかし、
「はぁーーーっ!!」
涼の剣術捌きは凄まじく、大勢いた屈強な戦闘員達は次々と斬り倒されてしまう。
「...言っただろう。私一人で充分だと。次はお前だ、イーヴィル・ディーン!!行くぞ!!チェンジ、テグサー3!!」
啖呵を切った涼はテグサロイドを構えてテグサー3へと変身する。しかし、その姿は所々破損し、満足に戦える状態には見えなかった。それでもテグサー3は刀を下段に構えてイーヴィル・ディーンに立ち向かう。
「随分とボロボロだねぇ…まぁいいさ、こんなつまらないのを相手するより、君を相手した方がよさそうだ!!どきな!!」
「はぁっ!!」
ディーンは邪魔者を払うように捕まえていた議員の尻を蹴り飛ばす。秘書がそれをキャッチした。同時に、テグサー3は構えた刀をディーンに向けて振り上げる。しかし、一閃の斬撃はいとも簡単に右腕で防がれ、反対に左手で右肩を掴まれると、膝で思い切り腹を蹴飛ばされてしまった。
「ぐっ、うぅぅぅぅ...」
前回の戦いで受けた傷を膝で抉られたテグサー3はその衝撃で呻き声を上げながらその場に座り込む。
「くっくっくっ、どうしたテグサー3?腹への一発でダウンするなんて、そんな調子で勝つつもりかい?」
「フッ...さぁな、飯の食いすぎが原因かもしれんな…」
「そうかい、それじゃあ、それ以外の所も痛め付けてやろう!!」
軽口を叩かれたイーヴィル・ディーンはそれに応えるかの様に鈍い音が響く程、腹以外への部位、顔面、胸部を容赦なく殴り始めた。
「そらそらどうした、さっきまでの強気な態度は!?少しは反撃してみろ!!」
「ぐっ、あぁぁぁぁ...!!」
一撃を受ける度、もがき、苦しむテグサー3。この一方的な殺戮を、事務所のモニター越しで穂乃花は見ていた。
「涼さん、逃げて!!このままじゃ死んじゃうよ!!」
穂乃花は本人に聞こえないのは承知の上で必死で叫んでいた。しかし、その魂の叫びも空しく、遂にテグサー3は地に伏せる。勝利を確信したディーンはトドメを刺す前に、絶対不利な戦いに挑むテグサー3の行動に疑問を持ち始めた。
「何故だ?何故、そんな怪我をしていても挑んできたんだ?...まさか、他のテグサーマンが何か対策を立てているのか?ならば、街で戦えば嫌でも出てくるか…」
察したディーンは倒れたテグサー3を跨いで町へと向かい始めた。その時、テグサー3はバッと起き上がり、ディーンのがら空きの背中に死に物狂いでしがみつき始めた。
「行かせはしない...!!トウマ達の元へ、町の人々の元へは!!」
「チッ!!しつこいぞお前!!いい加減諦めろ!!」
往生際の悪い相手に苛立ちを覚えたイーヴィル・ディーンは彼女の顔面に容赦なく拳を浴びせる。その衝撃で遂にテグサー3のヘルメット部分が砕け、下に隠れていた左目周辺の顔が露出してしまう。
「涼さん、どうしてそこまで一人で戦い続けるの…?もうやめて...」
引き続きモニター中継で見ていた穂乃花はハラハラと様子を見ていた。
「何故だ...何故そこまで戦い続ける...?俺と同じ様に戦いが好きなのか...?」
同じく疑問を持ったディーンもまた、穂乃花と似た質問をテグサー3にぶつける。
「貴様と一緒にするな...!!他のテグサーマンは私の力が足りず、まだまだ若いあいつらを巻き込んでしまった...!!だから、今ここで最後まで踏ん張って少しでもあいつらが怪我をしない様に、戦いに巻き込まれない様にしなければいけない...!!」
「それが戦える人間の務めだ…!!」
「涼さん、だから私を置いていったんだ...ごめん、涼さん、私が一度負けただけで弱気になっていたばかりに...!!」
涼の覚悟と信念を聞いた穂乃花は静かに涙した。その涙を拭いて覚悟を決めた彼女は横で一緒に見ていたトウマに話し掛けようとしたが、その姿は飛田と共に消えていた。
「社長、トウマ達は何処へ...?」
「あの二人なら地下室へ戻ったわよ...」
社長に言われた様に地下室へ向かうとトウマはVRゴーグルを装着して飛田の立ち会いの元最終調整を行っていた。
「待っていろ涼...!!今、コイツをモノにする...それまで死ぬんじゃねぇぞ!!」
「トウマ...」
穂乃花は今まで見たことがないトウマの必死な姿を背中から見守り続けた。平和に過ごす人々を守る為、そして、自身を守ろうとする仲間を救う為に。
5-4
必死の攻防を続けていたテグサー3。しかし、ダメージが蓄積し、強制解除され、元の姿である涼に戻っていた。
「いよいよクライマックスだなぁ...今度こそトドメを...刺してやろうっ!!」
ディーンは青竜刀を抜いて、倒れた涼に向けて勢い良く振り下ろす。
「シャアッ!!」
(こ、ここまでか...!!)
迫る斬撃。涼は死を覚悟した。その時。
「待て!!」
一つの叫びがディーンの後ろから聞こえ、刃を止めた。振り向くと、そこにいたのはトウマと穂乃花。立ち上がった二人の戦士の姿があった。
「待たせたな、涼」
「涼さん、私、これからも皆と一緒に頑張りたい...!!皆を守る力になりたい!!これからも一緒に戦おう!!」
トウマと穂乃花、二人の若き主張。それを聞いた涼の表情は一瞬、柔らかさを持つと、二人に向けて凛々しさを持ち合わた、キザな微笑みを返した。
「遅いぞ、お前達。さっさと変身しろ。皆、お前達の事を待ってるんだからな」
「こんな時までツンツンしやがって...まぁいい、いくぜ、穂乃花!!」
「うん、いこう、トウマ!!」
顔を見合わせた二人はテグサロイドを構える。
「チェンジ、テグサー...」
「1!!」「2!!」
テグサーマンに変身した二人。早速テグサー1はテグサロイドの画面を操作してウイングパーツのアイコンをタップし、対象のパーツを起動させた。
『セット・ウイング』
男性風の機械音声が流れると、テグサー1に設計図で見たあのパーツが装着されていく。
「完成、テグサー1ウイング!!」
背中に飛行機の羽根、胸に姿勢安定用の胸部パーツを装着させたテグサー1はイーヴィル・ディーンに向かって駆け出す。それと同時に翼のブースターが点火し始め、テグサー1の足が徐々にスピードを増してきた。
「行くぜ、イーヴィル・ディーン!!うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
離陸したテグサー1は低空飛行でイーヴィル・ディーンに接近し、機動力と、得意の怪力で相手の左頬を殴り飛ばす。
「ぐあぁぁっ!!」
油断していたディーンは大きく吹き飛び、後方のコンテナへと激突。テグサー1は間を置かずに飛び出したディーンを、右足で空中へ蹴り飛ばした。
「フッ、面白くなってきたなぁ…!!」
蹴飛ばされた衝撃を空中浮遊でブレーキを掛け、飛んで追いかけて来たテグサー1を待ち構えるディーン。二人の激しい空中戦が、今始まる。
「うおおおりゃあああっ!!」
テグサー1の右アッパーが決まればお返しにとディーンは空中で一回転。その力を利用して頭部への踵落とし。
「ぐあっ!!」
激しい振動が全身を駆け巡ったが、負けじとテグサー1は右フックで返した。怯むディーン。追撃としてテグサー1はハンマーパンチで彼の後頭部を激しく叩きつけた。
「チッ、やるなぁ…!!」
衝撃で角にヒビが入り、このままでは埒が明かないと感じたディーンは一旦距離を置き、地上の戦闘員級を見た。そこでは、テグサー2が迫る彼らに超高速で向かって二刀流の風竜剣を振るい、防衛軍の兵士達、ついでに議員と秘書を逃がしている最中であった。
「くっ、援護は期待できないか…!!ならば…!!」
ディーンは青竜刀を抜き、風を浴びながらテグサー1に突進、急接近すると、その頭上目掛けて一気に振り下ろした。
「ぐっ!!」
間一髪、真剣白刃取りで受け止めるテグサー1。しかし、空中では経験の差、そしてなにより、力が入らない事で、刃は徐々に顔面にに向かって降り始めていた。
「どうだ、テグサーマン?経験の差が物を言ったな…」
「ぐ、くそっ…畜生…」
なんとか踏ん張ろうと力むテグサー1。その時、地上からの一筋の閃光が二人の間を裂いた。
「チッ、なんだ?」
ディーンが見ると、そこには風竜剣を銃撃モードで構えるテグサー2の姿があった。
「つまらない真似をする…邪魔をするなっ!!」
苛立つディーンは地上に向けてディーン・ブレイカーを放った。地に落ちる波。コンクリートをも裂く破壊力は、テグサー2を激しく吹き飛ばした。
「キャァッ!!」
「や、野郎ォォッ!!」
仲間の悲鳴を聞いたテグサー1は怒り心頭、ディーンに突っ込んだ。
「フン、遅いっ!!」
ディーンは超反応でテグサー1の方に向き、再度青龍刀を振り下ろした。しかし、テグサー1は怯まない。それどころか、刃に向けて、自らの右肩のパーツを差し出した。甲高い音と共に、そこに刃が食い込む。ディーンは両腕、それも渾身の力で刃を押し込んだ。しかし、そこから刃は微動だにしない。どれだけ踏ん張っても、角度を変えても。
「そ、そんな馬鹿な…こんな事が…!?こんな事が!?俺の力が通用しないなんて…!?」
「…こいつでお前の刃は使えなくなった。そして、技をブッ放すには丁度いい距離にいてくれてるなぁ…!?」
「な、なにぃっ!!し、しまった!!」
ディーンは慌てて青龍刀を手放し、距離を取ろうとした。だが時すでに遅し。テグサー1は必殺技を放つ準備、左右の胸部パーツに装着したエンジンが熱風を巻き起こしていた。
「必殺、エアロ・シュータァァー!!」
テグサー1が叫ぶと同時に、エンジンのファンから竜巻が凄まじい風の音を立てながら一直線にディーンへと向かう。
「ぐ、ぐおあああああああ!!」
直撃を浴びたディーンは竜巻に巻き込まれ切り刻まれた。硬質な肩、脚部、腕、胸部も同様だ。あまりの衝撃に、彼は力を失って、ふらふらと墜落した。だがその先は基地ではない。視界の前方、住宅がひしめく街の方角であった。
「ヤバい、奴を追いかけねぇと!!」
自棄になった奴は街で暴れるのでは。そう考えたテグサー1は墜落して行くディーンの後を追う。長い滑空の後、二人が辿り着いた先は大きめの児童公園であった。
「もう戦いは止めて、大人しく降参しろ!!そんな体じゃあ、なんも出来ないだろう!?」
両者は対立しあう。テグサー1の言う通り、やっとの思いで起き上がるディーンの全身は傷だらけ。右肩の鎧部分も先端が完全に砕けていた。それでも、彼の瞳は闘志を秘めている。目の前の強大となった相手を倒す為に。そして…
「ハァ…ハァ…帝国に敗北は許されない…!!そしてなにより、こんなに面白い相手、最後まで戦わなきゃ損だろう…!!」
そう言いながら、ディーンは破損した角に力を溜める。
「ば、化け物かよ…!!」
「受けてみろ、ディーン・ブレイカー!!」
チャージを完了させたディーンの角は凄まじい超音波を巻き起こし、テグサー1に向かった。
「また音波か!!そんなの飛んで避け...」
テグサー1は避けようとした。しかし、彼の視界に何かが入る。
「...くっ、まずい!!」
テグサー1は飛ぶのを止め、足を踏ん張り、その場に踏みとどまった。目の前に音波が迫っても、物怖じをせずに。
「ぐああああっ!!」
激しい音波が身構えたテグサー1を激しく包み、彼を倒させた。そんな様子をディーンはどこか納得の行かない様子で睨んでいた。
「何故だ...何故今の攻撃を避けられなかった!?いや、避けなかった!?後ろに何が…」
ディーンはテグサー1の背後を見てハッとした。そこには公園で遊んでいたであろう少年達が三人、怯えた瞳で化け物を見る姿があったからだ。
「後ろに子供がいたのか...!!だから敢えて避けなかったというのか...!!」
「強き者が弱い者を守る...我が帝国ではあり得ない話だが、その信念がお前達を動かすと言うのか...」
「グハァッ!!」
エアロ・シューターを受けたダメージと技の反動で傷が開き、ディーンは膝を地面に付ける。
「面白いよ、テグサー1とやら。だが、次は俺が必ず勝つ!!それまでもっと面白い戦いを期待しているよ…ハァッ!!」
ディーンは負け惜しみを言い終えると、その場からフラフラと飛び去った。この時、彼は知らない。テグサー1は気を失っており、宣言を全く聞いていない事を…
5-5
気を失ったトウマの意識は暗い闇の中にいた。その中で、以前聞いた謎の声が闇に響く。
『強敵を見事撃破したな…おめでとう。君の…いや、君達の想いが勝ったのだ』
『だが、油断するな…君の敵は、この星を滅ぼすのはまだいる…君の周りには…』
『私は…宇宙の…』
「ん、んん…」
「...ハァッ!あれ、ここは...事務所?」
闇から解き放たれたトウマの意識は現実へと戻り、事務所のベッドから起き上がった。
「あっ、トウマがやっと起きた。もう、お昼から今の夜までずっと気を失ってたから心配したよ~」
トウマの傍らで看病していた穂乃花が安堵の表情を浮かべながら声をかける。
「穂乃花か…アイツは、イーヴィル・ディーンはどうなった...?」
「さぁ~?トウマが倒れていた公園にはいなかったから多分逃げたんじゃないかな~」
「そうか...今度会ったら警戒しねぇとな…ところで穂乃花、今さっき、寝ている俺になんか言ったか?なんか、宇宙がどうとか…」
「え?そんな変なこと言わないよ、夢でも見てたんじゃない?」
「そうかもな…なぁ穂乃花」
「へ、今度はなに?」
「お前、テグサーマンに変身した時、なんか声が聞こえなかったか?なんつーか、おっさんの声みたいな…」
「えぇっ!?そんなの聞いた事ないよ~気のせいじゃない?」
「そうなのかな…しかしなんだろうなあの声。危険が周りにもあるとか、なんとか…」
「なにそれ…ねぇ、そんなんで変身しても大丈夫なの!?」
「あぁ、健康状態は問題ないって飛田や本社の健康診断では言ってたがな…」
「ねぇ、本当に大丈夫?もしなにかあったら相談してね、ホント」
「あぁ、サンキュー…ん?何だこの匂いは?」
穂乃花との会話の途中で、下からいい匂いを感じたトウマは彼女に質問した。
「あっ、そうだ。今、下のリビングで親睦を深める為に焼肉を準備してるんだった。涼さんが奮発してくれたの。トウマも食べる?」
「あぁ、すっかり腹も減ったしな!!」
トウマと穂乃花は一緒にリビングへと降りた。そこでは涼が焼肉の準備を始めていた。
「あっ、トウマさんが来た。それじゃ始めますか!」
飛田が飲み物を各々のコップに注ぎ終わり、全員が揃った食卓。その中心でレミーがコホン、と咳払いをした。
「え~、皆さんお疲れ様でした。今日の戦いに勝てたのは皆さんのたゆまぬ努力と叡智、そして改めて紡いだ絆が...」
「社長、話は手短にお願いします。...皆さん肉を占領したくてウズウズしてますから」
飛田に促された社長は「んもぉ、折角社長っぽい事したかったのにぃ~」と小さく呟き、再度咳払いをした後、コップを天高く掲げ始めて叫んだ。
「それじゃ皆、乾杯!!」
「「乾杯~!!」」
親睦を深める「テグサーチーム」。肉に舌鼓を打つ彼らにわだかまりはもうない。
「おい、穂乃花!!それは俺が焼いた肉だぞ!!勝手に食うな!!食いたきゃ自分で焼け!!」
「社長、お前も飲み物位自分で入れろ!!俺の前に置くんじゃない!!」
「飛田!!肉お願いします。じゃねーよっ!!自分で焼け!!っていうか、肉ばっか食うな!!」
「イデデ!!涼、俺の足踏んでる踏んでる!!脚長いんだからちゃんと折りたたんでろ!!」
最も、高級な肉を前にしては疑わしい点があるが…
「あ、アレ…?に、肉がない…俺、まだ食ってないのに…」
「お、俺の肉が~!!」
深夜、肉を食いそびれたトウマは枕を濡らしたのは言うまでもない。