テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。


第六話『茜』

6-1

 

ブォン、ブォンブォンブォン、ブォーーン!!ブォーン...!!

 

「うぉー!!最強最速No.1だぜ!!」

 

「クソッ、待て、待ちやがれ!!」

 

廃道となった深夜の高速道路にバイクの走行音が響いていた。その音の正体はスーパーバイク型の怪人『ロードスパイカー』の爆走音。テグサーチーム三人組はその怪人を走って追いかけている最中であった。

 

「ヒャッハー!!こんなに自由気ままに走れてるんだ!!待つ訳ねーだろっ!!」

 

「はぁ、はぁ、もう走れないよ~」

 

「しっかりしろ、穂乃花!!」

 

長距離を全力疾走した為に息切れ起こして弱音を吐くテグサー2に、叱咤激励をするテグサー1。そんな二人に飛田の通信が入る。

 

『まずいですよ、トウマさん!!このままでは奴は市街地に入ります!その前に仕留めないと…!!』

 

「わかってる!!チェンジ、ウイングパーツ!!」

 

ウイングパーツを装着したテグサー1は宙を舞う。

 

「狙いは決まった...!!行くぞ、バイク野郎!!うおりゃぁっ!!」

 

そして上空から狙いを定め、勢いよく急降下してキックを放つ。

 

「なにっ!?クソッ!!」

 

しかし、そのキックはギリギリでドリフトで避けられ、テグサー1は回ってきたタイヤに跳ねられてしまう。

 

「ぐわっ!!」

 

「ハッハー!!折角のキックも無駄になっちまったなぁ!!今度はコッチの番だぁ!!いくぜぇーーーーっ!!」

 

一旦前進し、ブレーキを掛けてテグサチームの方に向き直したロードスパイカーは爆音を鳴らし、前輪を上げたままで彼らへ向けて爆走した。

 

「わわわっ、来た来た!!」

 

慌てふためくテグサー2。

 

「フッ!!」

 

その横で、テグサー3は冷静に後輪目掛けてクナイを投げ飛ばし、見事にタイヤに命中させた。

 

「お、おろおろ!?ヤベ、バ、バランスが...!!うわぁーっ!!」

 

クナイを避けきれずに大きくバランスを崩したロードスパイカーはテグサーチームを横切り、その先の高速道路の壁を突き抜けてまっ逆さまに転落した。落ちた先は、深く、広大なクレーター。その中心の穴に吸い込まれるように落ち続けるロードスパイカーは豆粒のように小さくなり、最後には暗い闇の底に消えてしまった。そんな彼の様子をマツナガとコブンロは遠くから悔しそうに監視していた。

 

「チッ、ロードスパイカーめ、やはり運転手がいないと本領を発揮出来ないか...」

 

「どうします、兄貴?」

 

「人間達から運転手を探すしかねぇな...ロードスパイカー!!戻ってこい!!運転手をスカウトする!!」

 

「お...おう」

 

マツナガからの通信命令を受け、クレーターの穴から飛び上がったロードスパイカーは再度爆走し、夜の闇へと消えていくのであった。

 

闇へと消えたロードスパイカーを見つけられず、テグサーチームは事務所へ戻っていた。

 

「まさか、乗り物型の怪人級がいるとは思わなかったな...あいつ、次に来た時にはパワーアップして来るに違いないぜ。どうする、飛田?」

 

新たなる脅威を感じ、対策はあるのかと問いかけるトウマ。聞かれた飛田は妙に自信満々であった。

 

「大丈夫、こんな事もあろうかと、新型のテグサーマンのデータを造ってあるんです。そう、バイクに乗って縦横無尽に駆け巡るテグサーマン。その名もテグサー4!!」

 

「テグサー4!?」

 

「もう新型のヤツを造ったなんて流石飛田!!やっぱりアンタを選んだ私の目に狂いはなかったわ!!それで、どんな感じなの!?」

 

「ふっふっふっ、コレがそのデータですっ!!」

 

既に新型テグサーマンを造ったというまさかの返答に驚く穂乃花とレミーからのお褒めの言葉を頂いた飛田は優越感に浸りながらデータを表示したPCモニターを全員に見せた。

 

そのテグサーマンは青を基調としていた。側頭部にバイクのマフラーを三つずつ装着したオフロードヘルメットにバイクのプロテクターを装備したボディ。そしてメインのバイクは前にカバーを付けた大型のスーパーバイク型とかなりの本格的なバイク乗りの仕様をしていた。

 

しばらく三人がデータを眺めていると、穂乃花がある事に気付き、飛田に質問を投げ掛けた。

 

「あっ、でも新しいテグサーマンが出来るって事は新しい人を雇うんだよね。その点はどうするの?」

 

「その点に関しては...トウマさん、お願いしたい事があるんです。」

 

「へ、俺か?」

 

6-2

 

翌日の夜。飛田の頼みで山中の曲がりくねった道に来ていたトウマは彼を連れて、自身のバイクでエンジンを吹かしながら待機をしていた。

 

「いいですね、トウマさん、さっき話した様に目の前にあるあの急カーブ、あれを減速無しで走り抜けた人がいたらその人を追いかけてスカウトしましょう。といってもこれから戦えってのは無理なので、教育コンピューターに教えられるテストパイロットの人ですけどね」

 

「それはいいけど、あのカーブは地元の走り屋から相当恐れられている魔のカーブだからそうそういないと思うけどな...そもそも突然の誘いに乗ってくれると思わないし...」

 

「大丈夫ですっ!!トウマさん達と同じで人々を守りたいと考えている人はきっといる筈です!!」

 

「だといいけどな...」

 

空いているスペースにバイクを駐車したトウマは坂の上から爆走する走り屋達の様子を見ていた。しかし、自己アピールをするかの様に爆音を鳴らして突っ走るバイク野郎共も例の急カーブの前では急に引っ込み思案になり、まるで別人の様に大人しくならざるを得なかった。調査開始から三十分経過、飛田は集中して見続けていたが、トウマは内心帰りたいと思いながら、大あくびをしていた。

 

「なぁ~、飛田。もう帰ろうぜ。そろそろ帰らないと明日の学校に響くぜ」

 

「もう少しだけ待って下さい。後少し、後少し...」

 

意地でも帰ろうとしない飛田にやれやれとトウマが目をこすったその瞬間、一台のバイクが横切った。そのバイクは今までのと違い、躊躇や恐怖心がなく、減速を全くせずに見事にカーブを曲がりきったのであった。

 

「トウマさん、今のですよ、今の!!今のすごい人を追いかけましょう!!」

 

「えっ、あっ、ああ、よし、行くかっ!!」

 

姿勢を正して追いかける二人。息を吹き返すエンジン。二台のヘッドライトが山中を駆け巡った。

 

「あの運転手、中々のテクニックだな...中々追いつけねぇ」

 

(しかし、あの運転…まるで自分の命を顧みない感じで危なっかしいな。それにあの爆音、まるで暴走族みたいに何かをアピールしたいという気持ちを感じるな)

 

トウマがそう考えながらしばらく走っていると例のバイクは減速、二人が乗るバイクは徐々に近付く事が可能となった。この距離なら話し掛けられるかもしれない。そう感じた飛田は身を乗り出して話しかけ始めた。

 

「すいませ~ん!!そこの方、ちょっとお話が...うわっととと!!」

 

「うわわっ、バカ、身を乗り出す奴があるか!」

 

同乗者の突然の身の乗り出しにトウマは思わずバランスを崩してしまい、必死にバランスを立て直して停車する。その間に例のバイクは一瞬の内に走り去ってしまった。

 

「...あ~もう、折角近付いたのに逃げられちまった」

 

「す、すいません...」

 

「仕方がない、この先に走り屋がよく来る空き地があるから、そこに行っているかどうか確認するぞ」

 

「は、はい...」

 

トウマの提案した場所にバイクで向かうとそこには空き地の自販機コーナー。その前で先程見かけたバイクを停めてジュースを買う運転手の姿があった。その運転手はフルフェイスのヘルメットにバイクスーツを着ていた為、顔はおろか、性別すら全く分からない出で立ちをしていた。

 

「あっ、いた!!僕、スカウトしてきます!!」

 

「お、おい待てよ...」

 

トウマの静止も聞かずに飛田は早速スカウトを始める為に例の運転手に駆け寄った。

 

「あ、あのすいません、先程の素晴らしい運転技術を拝見させて頂きました。よければその運転技術を...」

 

「飛田、危ないっ!!」

 

何を思ったのかその運転手は振り向きざまに飛田の顔面目掛けて回し蹴りを放つ。しかし、間一髪トウマが飛田のパーカーを後ろから引っ張ったお陰で素早く下がり、その足は空を切るだけで彼に当たる事はなかった。いきなりの事で放心状態の飛田。代わって、トウマは仲間を傷つけようとした相手に激怒し、前に出て詰め寄り始めた。

 

「テメェ、いきなりのスカウトに警戒心を持つのは解るが、蹴り飛ばそうとするなんてひでぇ奴だな...!!」

 

しかし、その運転手は全く意に介さず、バイクにさっさと乗り込んで走り去ってしまった。

 

「い、いっちまいやがった...」

 

トウマはそう呟きながら、黒煙を吐き続けるバイクを見送る事しか出来なかった。

 

6-3

 

翌日、学校の昼休みにトウマと飛田は廊下を歩きながら昨日の運転手について話し合っていた。

 

「それで飛田、あの運転手にまた会いにいくのか?」

 

「勿論です!!あんなに素晴らしいテクニックを持った人は技術者としては放っておけません!!次は菓子折り持って行きましょう!!」

 

「...菓子折りでどうこう出来るとは思えないけどな」

 

「え、ウチの会社のタオルとかの方がいいんですか?」

 

「いや、そういう問題じゃなくてね?」

 

話し合う二人。その時、熱く語る飛田の肩が前から歩いてきた不良グループのリーダーの肩とぶつかってしまう。体が比較的丈夫でない飛田ですら気にならない程の衝撃にも関わらず、不良は飛田に突っかかった。

 

「オゥコラ、ガリ勉。ドコに目ぇつけてんだ、なぁ?」

 

デカい図体と態度で詰め寄る不良リーダー。その背後では小さい子分も同じポーズをしていた。この時になって、飛田は彼にぶつかった事に気付くのであった。

 

「あっ、ごめんなさい」

 

「ゴメンで済むかオォッ!?悪いと思ってんなら金で誠意見せろや!!」

 

「そ、そんな...」

 

突然の恐喝に困る飛田。すると、トウマは不良を見て何かを思い出したかの様に彼を指差した。

 

「あっ、誰かと思ったらゴリ山じゃねーか。やっと動物園の檻から抜け出せたのか?」

 

「そうそう、飼育員の目を何とか盗んで...って違うわっ!!停学が終わったんじゃっ!!クソォ...トウマテメェ、穂乃花ちゃんに気に入られてるからって調子に乗りやがって、それがなきゃボコボコにしてやるってのに...」

 

「何言ってんだ、お前が俺に穂乃花を賭けて勝負だとか言い出して、校舎裏に俺を呼び出し、俺にしかけた所を用務員の高柳さんに見つかってシバかれて、学校から停学にされたのをもう忘れたのか?」

 

「グッ...!!この野郎...!!全部当たってるから、尚更腹が立つ…こうなったら…!!ん!?」

 

子分の前で恥をさらし、彼らに笑われて悔しがるゴリ山。その肩に、何者かの指がチョイチョイと叩かれた。

 

「ん!?なんだぁ!?」

 

振り向くと、そこにいたのは一人の女子生徒。彼女は長い髪の毛をポニーテールで束ねたトウマと同じ位の背丈の子で、カーディガンのポケットに手を突っ込み、睨んで立っていた。その女子生徒は振り向いたゴリ山にポツリと呟く。

 

「...邪魔。デカい体で道を塞ぐなよ」

 

「あぁ?誰かと思ったらウチのクラスの大城茜(おおしろあかね)かよ。今良い所なんだ、邪魔すんじゃねぇ!!」

 

「そんな風には見えないけど。このまま大人しく引き下がった方が惨めな結果にならないんじゃない?」

 

「グッ...こ、これから大逆転が始まるんだよ!!...お前の兄貴と違って頭の悪いお前には解らんと思うけどな!!」

 

「...ッ!!」

 

ゴリ山に貶されて頭に来た茜は彼の顎目掛けて回し蹴りを放った。その蹴りはゴッ!!と鈍い音を立て、相手が大柄な男にも関わらず一発で倒してしまった。

 

「ぐはっ...!!」

 

受け身を取る事なく、惨めに背中からズシンと崩れ落ちるゴリ山。その音に周囲の生徒は彼らに向かって一斉に注目した。

 

「お、小山くーん!!」

 

「チキショー、覚えてろ!!」

 

気まずさと恥ずかしさと、親分の醜態を心配して駆け寄る子分。肩を持たれながら運ばれるゴリ山。騒動は終わっても、周りの生徒達は未だに騒ぎ、声を潜めて茜についてお互い話し合っていた。

 

「あの子、一発で不良を...」

 

「あの子って確か大城家の...」

 

「えぇ…!!あの、お金持ちの…!?」

 

「チッ...!!」

 

周りの怯えた小声を聞いた茜はその場が気まずく感じ、目を伏せて、その場を後にした。

 

(アイツ、あの蹴り...、間違いない、昨日のヤツだ...)

 

そんな中、その蹴りを見てトウマは昨日の蹴りのヤツと同じだと感じていた。

 

放課後、帰ろうと校門から出る茜は後ろから「あの...」と話しかけられる。彼女が振り向くと、そこには飛田が立っていた。昼休みに見た男だと思い出した茜は「...何?」と素っ気なく返す。そんな彼女に飛田は丁寧に返した。

 

「突然すいません。昨日のあの山にいたバイクの運転手ですよね?僕はあのテクニックを見て非常に感激しまして...」

 

「余計な事言わなくていいから、さっさと要件を話してくれない?」

 

「あっ、すいません。その、よければウチのテグサーチームに入って貰えませんか?あなたのバイクテクニックが欲しいんですっ!!」

 

「テグサーチーム?あぁ、あの最近、新聞の隅で噂のテグサーマンって奴か。言っとくけど、私そんなの興味ないから」

 

「そ、そんなぁ。君のテクニックは皆を守る事が出来るんです。もう少し話だけでも...」

 

「あのなぁ...私はアンタ達みたいな『世界の平和を守る』なんて抜かす頭でっかちでお高くとまったよい子みたいな集まりなんてだいキライなんだ!!アンタ達とつるむ位なら、誰も気にせず一人でかっ飛ばした方がずっとマシだね!!」

 

「...だからあんなうるさい音を出して無謀な運転をしていたのか」

 

「トウマさん!!」

 

飛田の後ろには話を聞いていたトウマが後から来て立っていた。

 

「穂乃花から聞いたが、茜だったな。なんでも、家にもたまにしか帰らず、ずっとバイクで爆走してるそうじゃねぇか。確かにお前の運転はすごい。けど、あの運転はなんつーか、何かから逃げようと爆音を鳴らし、命も省みずに走っている様に見えたぜ。あんな走り方してたらいつか痛い目に遭うぞ」

 

「...ハッ、お誘いが終わったと思ったら今度はお説教かよ!?エラソーに言ってるけど、アンタに私の孤独な気持ちの何が解るの!?」

 

「...わかるさ。俺も昔は一人だった」

 

「嘘つけ!!アンタにゃこんなに立派なお友達がいるじゃないか!!大体、私にはバイクさえあればいいんだ!!邪魔するんじゃ...」

 

「いやぁ、あなたのその孤高のプライド、素晴らしいですねぇ」

 

トウマ達の話を割り込んで来た謎の男の声。振り向くと、スーツ姿の中年紳士が立っていた。茜はトウマから受けた苛立ちを八つ当たり気味に彼にもぶつけ始める。

 

「誰だアンタ!!急に話しかけんなよ!!」

 

「おっと、これは失礼致しました。私、宍戸モーターズの者です。いやぁ、あなたの昨日の運転テクニック、実は私も拝見させて頂きました」

 

「あの走りは正に誰も寄せ付けない強靭な一匹狼の様な見事な走りでした。それで、是非とも我が社のバイクレーサーになっていただけませんでしょうか?あなたの孤高のハングリー精神ならきっと世界チャンピオンになれますよっ!!」

 

自分の孤独さを褒め、バイクのテクニックを認めてくれた事を内心嬉しく感じた茜はトウマ達の方へ振り向いた。

 

「ま、マジかよ...見たかお前ら、私の孤独の心を認めてくれる人がいるんだ。これで自分を変える必要がないのがわかったろ...早速案内してくれるか?」

 

「えぇ、勿論!!ささ、車へどうぞ!!」

 

茜は紳士が乗ってきた車に一緒に乗り込み、その場を後にした。

 

「トウマさん、あの人妙じゃありませんか...?」

 

「あぁ、あの声、どっかで聞いた事が...」

 

そして残された二人は茜の事と謎のモーターズの会社が気になり、調べる為に一旦その場を後にするのであった。

 

6-4

 

その夜、茜は紳士とスタッフと共に先日トウマが戦った高速道路に来ていた。スタッフがバイクを用意している間、紳士は茜に説明する。

 

「それでは大城さん、このバイクで高速道路の出口の所まで走って下さい。そこまでのタイムを計らせて貰います」

 

「わかった。それにしてもこんなボロボロな所で走るなんて。確かココって十年前に隕石が落ちてきてそのままほったらかしになった場所だろ?」

 

「えぇ、おっしゃる通りの場所です。すいませんねぇ、人のいる所でバイクを走らせるとすぐクレームが来ますので、こういった場所しか走らせる事が出来ないんですよ」

 

「準備完了しました!!」

 

後ろから来たスタッフの報告に、紳士はウンと頷く。

 

「出来たか...さて大城さん、良いタイムを期待していますよ」

 

「フッ、任せておきなよ!!」

 

「では、よーい、スタート!!」

 

カッコつけてメットを被った茜はバイクに乗り込み、爆音を鳴らして、エンジン全開で走り始めた。そのテクニックは凄まじく、でこぼこの道では平然と走り続け、道を塞ぐ大きい瓦礫があれば僅かな隙間を縫って進んでいた。その走りに個人的に良いタイムが出ると感じた茜はニヤリと呟く。

 

「このタイムならチャンピオンになれる...!!見ていろよ、バカにした奴らめ!!必ずコレで見返してやる!!」

 

「ケッケッケッ、その夢、叶えられるといいなぁ~」

 

「!?バイクから声が...!?」

 

突然バイクが喋り始め、驚愕する茜。するとそのバイクはぐにゃぐにゃと凶悪なデザインへと歪み、テグサーチームと戦った「ロードスパイカー」と変貌した。

 

「こ、コレは...!!まさかアンタ達、モーターズの人間じゃねーな!?」

 

「その通り!!俺達は人間より格上のジン・ガイア帝国のエリート戦士だ!!テメェはまんまと俺達の罠に引っ掛かった訳だぜ!!」

 

「そ、そんな...どうして私みたいな人間を狙ったんだ...」

 

「俺は運転手を乗っける事でテクニックとパワーが増すんだ。だから俺達は運転手を探して回ってた訳さ...特にお前みたいな誰にも相手されない、いなくなっても気づかれないゴロツキをな!!ケケケケ、こんなに目標通りの人材を見つけるなんて、マツナガの兄貴も大したもんだぜ!!」

 

「くっ...!!」

 

このままではコイツのいいようにされてしまう。そう感じた茜は危険を承知でバイクから飛び降りようとしたが、ハンドルやペダルからシュルシュルと伸びてきたコードに掴まれて身動きが取れなくなってしまった。

 

「う、動けない...!!」

 

「ケッケッケッ、実にいい気分だ!!このまま街に突っ込ませて貰うぜ!!」

 

茜が前を見ると、街の灯りがポツポツと見え始めた。このままでは街を破壊してしまう。焦った茜はロードスパイカーに必死で頼み込み始めた。

 

「ねぇお願い!!私の命あげるからこんな事やめて!!」

 

「あぁ?一匹狼(笑)のお前の命なんか貰ったってなんも意味ねぇよ。それに、お前みたいなバカはそうそういないしな!!」

 

「それにしてもいい技術だ…これなら防衛軍にも追いつけやしねぇで街を破壊出来るってモンよぉ!!」

 

眼下の怪人はどうあっても離さない。街の灯りは刻々と迫っている。もうどうにもならない事を聞かされた茜は心の中で大いに悔やんだ。

 

(私はバカだ...!! あの白髪頭の忠告を聞いていればこんな事にはならなかったのに...!!それだけじゃない、家族や学校の言う事を聞いていれば...!!)

 

(やり直したい...!!もう一度、皆と仲良くしたい...!!助けて...!!)

 

「誰か、助けてぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

悲鳴にも似た声で助けを呼ぶ茜。当然応える者はいない。そう考えたその時であった。

 

「おうっ!!」

 

「えっ!?」

 

力強い声が後ろから返ってきた。驚いた茜が後ろを振り向くと、そこには全力疾走で駆け付けるテグサー1の姿があった。

 

「待っていろ茜ー!!今助けるぞ!!」

 

「その声は...あの時の白髪頭!?」

 

「...トウマだ!!腰と頭を下げて身を伏せていろ!!チェンジ、ウイングパーツ!!」

 

ウイングパーツを装備したテグサー1は茜の元へと急接近。捉えられた彼女まで残り一mになったその時、ロードスパイカーはマフラーから濃い黒煙を出し始め、テグサー1の視界を遮った。

 

「グアッ、ま、前が...!!」

 

前が見えなくなり、墜落し、地面へと激突するテグサー1。

 

「トウマッ!!」

 

段々と遠くなるテグサー1を見て茜は不安になり始め、それに反してロードスパイカーは後ろを見ながら意気揚々と爆走を続けていた。

 

「ケケケケ、一度も追い付けなかった癖にカッコつけてんじゃねーぜバーカ!! アバヨ!!」

 

「...バカはお前だ。不注意運転をして!!」

 

「何!?」

 

不意に前方から聞こえてきた声。ロードスパイカーが前を見ると、目の前の瓦礫の物陰からテグサー3が姿を現した。その手には既に、刀を持っていた。

 

「し、しまった!!避けきれ...」

 

「はぁっ!!」

 

後方のテグサー1に気を取られ、前方のテグサー3に気付かなかったロードスパイカーは避けきれず、彼女の得意とする居合斬りでコードを斬られてしまう。

 

「キャアアアアアッ!!」

 

宙に放り出された茜。すかさずテグサー1は彼女を空中でキャッチ、救出に成功した。ロードスパイカーは爆音上げて走り去る。テグサー2と3は追いかける。安全な場所まで移動したテグサー1は変身を解除し、茜に話し掛けた。

 

「大丈夫か、茜?放課後に会った奴がマツナガって奴と喋り方が似ていたからまさかと思ってウチの企業に調べて貰ったらモーターズにそんな人はいないって回答が返ってきたんだ。ウチの会社の傘下だったからすぐに連絡出来たのが幸いだったぜ。そこで、お前を探して...どうした?どっか痛むのか...?」

 

トウマが思わず話題を変えたのは、茜がしゃがんでポロポロと涙を流しているのに気付いたからだ。すると、彼女は自身の身の上話を始めた。

 

「私の家、両親も兄貴二人も教授や学者が出来る程皆頭の良い人達ばっかりなんだ...グスッ、そ、それなのに私だけはいくら勉強しても、ちっとも良い成績が出なくて、皆から将来性のない出来損ないとして疎まれて...それで...将来の事忘れたくて唯一得意なバイクで一人毎日爆走してたんだ...。でも、唯一の特技も只利用されるだけにしか使われなかったなんて...やっぱり私は将来の道なんかないバカで孤独な女として死んでいくんだ...うっ、うぅ...」

 

地べたに座ってすぐに騙された自分の愚かさ、思慮の浅さに嘆き悲しむ茜。そんな彼女の前にトウマは腰を降ろした。

 

「...自分を見つめ直せたんなら、今から気持ちを最初からに切り替えて、もう一度別の道を走ればいいじゃねーか。その道が家族と共に創れないんなら仲間と一緒に創ればいいしな」

 

「俺もガキの頃、親がいない寂しさを紛らわしたくていつも喧嘩ばっかしてて一人ぼっちだった...でも、小学生の時、穂乃花とその友達に会って、一緒にバカな事したり、泣いたり、喜びあったり...そんな事を経験して、仲間って結構いいもんだなって、思ったんだ。そこからは寂しさはなくなったし、元気も貰えた。だから、そう簡単に諦めず仲間作ってからもう一度考えろ。こんな世界だ、色々道はあるだろうし、な?」

 

「うぅ...トウマー!!」

 

久しぶりに優しい言葉を掛けられた茜は感謝と嬉しさで飛びつくようにトウマに抱きついた。

 

「わわっ、いきなり抱きつくな!!...さて、ロードスパイカーをぶちのめしに行くか」

 

茜を元気づけ、立ち去ろうとトウマ。彼らの元に一台の大型トラックが駆け付け、ピタリと止まると助手席から飛田が飛び降りた。

 

「トウマさん、茜さんは無事ですか!?」

 

「あぁ、なんとかな...それより、後ろのトラック、いよいよ完成したんだな、テグサー4が!!」

 

「えぇ、調整もバッチリです!!只、問題は装着者がいなくて...」

 

「そ、そうか…なら、俺がやろうか?」

 

トウマが提案をする。その時であった。

 

「そのテグサーマン、私がやる!!やり方を教えて!!」

 

涙を拭いた茜の突然の申し出が飛び出したのは。

 

「え、茜さん...!?」

 

突然の申し出もあって驚き、戸惑う飛田。しかし、頷くトウマを見て、飛田は茜にテグサロイドを手渡した。

 

「茜さん、これがテグサロイドです。これを持って『チェンジ、テグサー4』と言えば変身出来ます。」

 

「うん、わかった。チェンジ、テグサー4!!」

 

装甲と光に包まれ、茜はテグサー4へと変身。飛田に連れられ、共にトラックの荷台へと移動した。そこには完成した青い二輪が、新たな運転手を今か今かと待ち構えてピカピカに輝いていた。

 

「これか...私のバイク...」

 

「茜さん、この『フォーチェイサー』はかなりピーキーで扱いにくい代物です。ですが、茜さんならきっと乗りこなせると信じています!!...期待してますよ!!」

 

「ありがと、ハカセ!!頑張るよ!!」

 

「は、ハカセって...僕の名前は飛田慶喜なんですけど...」

 

「乗りなよ、トウマ!!一緒に戦おう!!」

 

「あぁ!!チェンジ、テグサー1!!」

 

テグサー1に変身したトウマはテグサー4の後ろに2人乗りをし、彼女に準備完了の合図を送る。それを受けたテグサー4はうんと頷き、しっかりと前を見直した。

 

「新たな相棒フォーチェイサー、これからよろしくな!!テグサー4、行くぜぇ!!」

 

エンジンに気合いを入れたテグサー4は一瞬の内に夜の高速道路へと消える。その姿はまるで過去の自分に振り切る様に突っ走るのであった。

 

「えぇっと、この辺に落下したと思ったんだけどな...」

 

一方、テグサー2と3は高速道路から落ちたロードスパイカーを探していた。テグサー2が大きい瓦礫をどけて覗きこんだその時、彼女の後ろからロードスパイカーが折り重なった瓦礫の山から飛び出し、テグサー2を轢き殺そうと襲いかかる。しかし…

 

「穂乃花、危ない!!!」

 

ロードスパイカーに気付いたテグサー3が彼女を抱き抱えて飛び、難を逃れた。

 

「ちくしょー、避けんじゃねー!!まぁいい、どうせ不意討ち以外で俺には追い付けねーんだから、このまま街に繰り出して人間皆殺しにしてやるぜー!!」

 

「くっ、ま、待て!!」

 

刀を抜いてロードスパイカーを叩き斬ろうとしたテグサー3。しかし、相手の瞬発力の方が高く、その斬撃は避けられてしまう。そして、ロードスパイカーは嘲笑うかの様に目にも止まらぬスピードで走り去ってしまうのであった。

 

「ど、どうしよう涼さん。このままじゃ、アイツの思い通りに...」

 

テグサー2が悩んだその瞬間、暴風を纏った影が彼女の右横を通りすぎた。

 

「えっ、今のは何!?」

 

テグサー2は通り過ぎたその姿を注視。それは煌々と光るテールランプを追従させるテグサー4とバイクの姿であった。

 

「テグサー4、完成したんだ...」

 

テグサー2が呟いたのとほぼ同時刻、ロードスパイカーは変わらず爆走して突き進んでいた。

 

「ケッケッケッ、街まで後二百メートル位って所か!?辿り着いたらまず道路にたむろする車をぶちのめして、それから...ん!?」

 

ロードスパイカーは自分のではないエンジン音を聞いて振り向き、驚いた。新たなテグサーマンが今まで瓦礫を避けながら走り抜けた所を自分より早くくぐり抜けて来たからだ。

 

「ゲェッ!?あのテグサーマン、なんてテクニックしてやがる!?俺が来た道をああも簡単に突破するなんて!!」

 

「トウマ、追い付いたぜ!!」

 

「よし、任せろ!!」

 

テグサー4の後ろに乗っていたテグサー1は銃を抜き、ロードスパイカーに並走したその瞬間、相手にありったけの弾丸をお見舞いした。

 

「ギャアッ!!」

 

弾丸を全て浴びたロードスパイカーはバランスを崩して横転する。その隙にテグサー4は急ブレーキを掛けて90度ターンをし、ロードスパイカーの前に立ち塞がった。

 

『ロードスパイカー、もういい、逃げやがれ!!』

 

「ぐそぉ...!!ここで逃げたら男の勲章が失われちまう!!こうなりゃ、破れかぶれだぜぇっ!!」

 

マツナガの通信を無視して起き上がり、何を思ったのかロードスパイカーはその場で何周もドリフトを始めた。

 

「必殺、ロード・タービン!!」

 

そう叫んだ瞬間、ロードスパイカーのタイヤにメラメラと火が着き始る。

 

「行くぜ、テグサーマン!!うぉぉぉぉぉぉ!!」

 

ウィリー走行で体当たりを敢行するロードスパイカー。しかし、テグサー4は冷静にグリップの根元のスイッチを押した。すると、フロントのカバーが新幹線の連結器の様にズレ、中からキャノン砲が現れた。テグサー4はキャノン砲と同時に速度計の上に現れた照準器でロードスパイカーを捉える。

 

「ターゲットロック完了...!!喰らえ、スロットル・キャノンッ!!」

 

キャノン砲は少しばかりのチャージの後、一直線の極太の光線がズバッと勢いよく放たれた。

 

「うぎゃああああああ...!!!」

 

光線がクリティカルヒットしたロードスパイカーは絶叫、爆散。

 

「あぁ、ロードスパイカーが...!!クソォ、覚えていろ、テグサーマン!!」

 

その姿を見たマツナガは悔しがりながら撤退するのであった。

 

戦いが終わって翌日、茜はテグサーマンの詳細を知る為に事務所を訪れ、飛田から資料を受け取っていた。

 

「では茜さん、これがテグサーマンに関する資料で、なるべく一週間読んで、暗記して...」

 

「はいはい、オッケー。ところで、ト・ウ・マ~」

 

茜はソファーに腰かけるトウマの左隣にボフッ、と音が鳴る程勢いよく座り、彼の腕にギュッ、としがみついた。

 

「昨日は色々とありがと。これからは皆の為に、一生懸命頑張るから、よろしくな!!とりあえず色々とアンタの事知りたいから、今度の休みに二人でツーリングに行かないか?」

 

「あぁ?何をいきなり...」

 

トウマに顔を近づけ、積極的にスキンシップを始める茜に、無関心な表情をしながらも彼女と目を合わせるトウマ。その光景を見てムッとした穂乃花はトウマの右隣に座った。

 

「ちょ~っと、茜ちゃん?この前まで蹴り飛ばす程嫌ってたのにそんな事忘れてデートに誘うなんてちょっと段階飛ばしすぎじゃな~い?それに、今度の休みは私と一緒に二人きりでバイクに乗せて貰って特撮ロケ地巡りに行く事になってんの!!」

 

「そんなら、三人で一緒に行くか?」

 

「な、何言ってんの!?茜ちゃん、こんなの興味ないでしょ!!だから私達二人で...」

 

「いや、そんな約束した覚えがないんだが...」

 

「だ、だから今から約束するんだって!!こういうのは職場の先輩優先だし!!ね、トウマ、私と一緒に二人きりで行きたいよね!!」

 

約束をトウマに否定され、滅茶苦茶な理屈と共に予定をねじ込もうとする穂乃花。すると彼らの背後からレミーが覆い被さるように近づいた

 

「ちょっと穂乃花!!そういう事ならトウマは今度の休みにいちっばん偉い私とショッピングに行くんだからね!!」

 

「えーー!!そんなの勝手すぎるよー!!」

 

「アンタ今同じ様な事言ってたでしょーが!!」

 

言い争い始める二人。それを見て茜はトウマに意見を求めた。

 

「よーし、それなら、トウマに誰と行きたいか決めて貰おうじゃないか?トウマ、誰と行きたい?」

 

「えっ...!?」

 

「え、えっと、皆で一緒に行くってのは...」

 

「「「ダメッ!!!!」」」

 

「えぇ...お、おい、涼...」

 

三人に詰められて戸惑うトウマ。助けを請おうと涼に目線を合わせると、彼女は苦笑しながら、小さくため息をつく。

 

「トウマ...モテるのは結構だが、職場の雰囲気を乱すのは止めてくれよ...」

 

「な!?ち、ちょっとちょっと...」

 

部屋を後にする涼と飛田。残されたトウマは三人にドンドンと詰められるのであった。

 

「さぁ、トウマ!?」

 

「この中で誰と一緒に行くんだ!?」

 

「決めてくれなきゃ、減給するからね!?」

 

「だ、誰か助けてくれ~!!」

 




皆さんどうも!!
第六話と共にキャラクターと今回のハイライト画像を投稿致します!!
相変わらず下手ですがよろしくお願いします!!

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