テグサーマン   作:クロッカーズ

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《登場人物》
・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。


第七話『親睦』

7-1

 

「な、なんだコレは!?」

 

とある日の午後、街に突如出現したマツナガとコブンロに駆け付けたテグサー1は真っ先に驚愕した。先に出動していた連合防衛軍の兵士であるメニー達がコレといった怪我や損傷もなく、のたうち回っていたからだ。

 

「どうしたんですか、大丈夫ですか!?」

 

「おい、しっかりしろ!!なにがあった!?」

 

「うぁぁぁ...怖い...怖いよぉ...あぁぁぁぁぁっ!!」

 

テグサー2、4は近くにいた兵士に事情を聞こうとしたが、恐怖で叫ぶだけで何も情報を得る事が出来なかった。そんな彼らに向かってマツナガは高笑いする。

 

「ハッハッハッ、無駄無駄。そいつらは今過去のトラウマに囚われているんだ。そして、お前らもこうなるんだ...そう、この、我が設計の戦士、トランチックによってなぁ~!!」

 

「ドラァ~!!」

 

マツナガの言う通り、彼の後ろには頭に蓄音機を取り付けた怪人が腕を上げて威嚇をしていた。その怪人が原因だと知ったテグサーチームは各々武器を構える。

 

「構えたところで無駄だ!!やれ、トランチック!!」

 

「ドラァ~!!」

 

マツナガの命令で自身の蓄音機のスイッチを押すトランチック。すると彼の蓄音機から不気味な曲が流れ始めた。

 

「なによ、そんな音楽鳴らした所で痛くも痒くも...ウッ!?」

 

啖呵を切ろうとしたテグサー2の目の前には今までいた場所と違う、懐かしの沼地が広がっていた。そして彼女は変身が解け、小学二年生の頃の穂乃花としてそこに立っていた。

 

「ここは...昔行った沼地!?でもどうして突然...!?」

 

穂乃花が現状について考えたその瞬間、目の前にあの時の野犬が唸りをあげて現れた。穂乃花が恐怖でおののいくと、その犬は飛び掛かり、一瞬で馬乗りにのし掛かった。

 

「キャッ!!ちょっと、やめて、離して!!トウマー!!助けてトウマァァ!!」

 

穂乃花は何度も助けを呼んだが、その悲痛な叫び声は誰にも届かず、野犬にされるがままであった。

 

「あれ、私は一体...」

 

一方でテグサー4から変身解除していた茜は中学生の頃の姿で自宅の椅子に座っていた。そして、目の前では机越しに両親がしかめっ面で自身を睨んでいた。茜がこの光景に見覚えがあると感じたその時、父が机にあった用紙を手に取って茜に突き付けた。

 

「…茜、なんだこの成績は。しっかり勉強しろと言った筈だぞ。それとも、必死で勉強してこれだと言うのか?」

 

その用紙は茜の名前と間違った答え、そしてバッテンばかり書いてある答案用紙であった。父の叱責と答案用紙。この二点によって茜は完全に思い出した。今目の前にあるのは家族から疎まれる事を決定打にした中学三年生の期末試験の直後の出来事であると。茜はこの状況を何とか取り繕うと父の問いに答え始めた。

 

「あ、あの、お父さん、違うの。これは...」

 

「言い訳をするな。いいか、この大城家は代々人の先頭に立って指導・研究を進める職に勤めてきた由緒ある家系だ。だからお前の兄二人は大学でほぼ満点の好成績を残して今や教師と研究員を勤めている。にも関わらず、お前のこの成績はなんだと言うんだ...!!家庭教師も雇ったというのに、遊んだ挙げ句、赤点ばかり取って恥ずかしいと思わないのか!!」

 

激昂を前に閉口する茜。すると、答える気さえ見せない娘の情けない姿を見せられた茜の父は目を伏せて深くため息をつく。

 

「…もういい、お前みたいな出来損ないには何も期待せん。これからは金と飯だけは家政婦を通して用意しておく。後はお前の好きにしろ...以上だ」

 

「ま、待ってお父さん...!!」

 

「話は終わりだっ!!」

 

そう吐き捨てながら立ち去る両親を茜はただ見送ることしか出来なかった。そして、ショックで立ちすくんだその直後。茜の脳内に声が響き始めた。

 

(アイツ、本当に俺達の妹かよ。)

 

(へっ、俺達の絞りカスとして生まれたのがアイツかもな?)

 

(大城さん家の娘さん、この前のテストで最下位に近い得点を出したんですって)

 

(あら~、あの家も随分と落ちぶれたものね~)

 

「うぁぁぁ...やめろ、やめろ...!!」

 

兄と近所の主婦の心ない言葉に傷つく茜。受け止めきれなくなると、耳を伏せてその場にうずくまるが、それでも言葉の刃は絶えず彼女に降り注ぎ続けるのであった。

 

「くそっ、防衛隊だけじゃなく、穂乃花や茜まで...!!なにが起こってるんだ!?」

 

その頃、『現実』にいるテグサー1は前方で突然呻きながらうずくまる二人に近付こうとしたが、背後の飛田の警告でその歩みを止めた。

 

「トウマさん、それ以上近づいちゃダメだ!!」

 

「なにっ!?」

 

「今二人はあの蓄音機から鳴る音で幻覚を見せられてるんです!!トウマさんと涼さんのその位置ならアーマーの防壁でなんとかなりますが、それ以上近付けば二人も同じ目に遭います!!」

 

「成る程、二人が苦しみ出したのはそれが原因か...トウマ、クレーンアームを使え!!それで奴の音を止める!!」

 

「分かった!!来い、クレーンアーム!!」

 

テグサー3の指示でクレーンアームを呼び出し、左腕に装着させたテグサー1は早速トランチックに向けて伸ばした。しかし、そのアームはあっさりと掴まれてしまい、テグサー1をずるずると引きずり始めた。

 

「くっ、やべぇ...!!」

 

テグサー1は踏ん張って耐えようと足に力を込める。しかし、トランチックのパワーは予想以上にあり、テグサー1はズリ、ズリ…と徐々に引っ張られつつあった。

 

「へっ、トランチックを只の音出しマシーンだと思ったら大間違いだ!!やれ、トランチック!!」

 

「トラァ~!!」

 

マツナガの指示の下、トランチックは全力で一気に引き上げた。

 

「うわぁっ!!」

 

「トウマ!!」

 

助けようとテグサー3は駆け寄ろうとしたが間に合わず、テグサー1は釣り上げられた魚の様に引っ張られ、トランチックの前に連れてこられてしまった。早速トランチックは蓄音機をテグサー1に近付け、その不気味な音色を集中的に彼に聞かせた。

 

「う、うぅ…」

 

その場に座り込む、呻く、憎きテグサー1。完全勝利を確信したマツナガはガッツポーズをして大いに喜んだ。

 

「よっしゃ、よっしゃー!!これで今までの汚名が返上出来るぜ!!さぁ、テグサー1、このマツナガ様に懺悔しながら苦しむがいいぜっ!!」

 

しかし、テグサー1は一度座り込んだものの、顔を上げ、即効で立ち上がってトランチックの頬に強烈な一発をお見舞いした。まさかの展開にマツナガとコブンロは二人そろってあんぐりと口を開く。

 

「な、なんで...!?人間は過去のトラウマをまざまざと見せつけられたら、苦しむはずなのに...!!」

 

マツナガの問いにテグサー1はゆっくりと答える。

 

「...悪いな。俺は、昔の事を思い出す度、恐怖じゃなく、怒りと悲しみ、そして、苛立ちが沸いてくるんだ。特に、あの時何も出来なかった自分に対してなぁっ!!」

 

そう言い放ちながらテグサー1は左手でトランチックの首根っこを掴みながら、右の拳で容赦なく顔面を殴り付けた。その姿はまるで何年も溜めに溜めた怒りを吐き出す様であった。

 

「あの時、俺は多くの友達を失った...!!返せ...豊、健二、亜希、秀...!!みんなを返せぇぇぇぇっ!!」

 

テグサー1の怒りを込めた最後の一撃。それは周囲に大きく響く程の凄まじい破壊力であった。そのパワーを真正面から受けたトランチックは数十mまで吹き飛ばされた。

 

「す、すごい...!!全く効かない所かテグサー1のバイオユニットのパワーが今までにない位に上がっている...!!こんな数値、初めてだ...!!」

 

今までに見た事がないテグサー1の姿に引く仲間、住人の中、飛田は冷静に分析する。そして当のテグサー1は止めを刺そうと地面を蹴り、トランチックに向けて一直線に飛び出した。しかし、トランチックはこの状況に逃げる事なく、蓄音機のスイッチを入れた。蓄音機の音波を真正面から受けたテグサー1は徐々に失速し、最後には膝を付いてしまう。突然の失速に飛田はテグサー1と3に通信を入れる。

 

「いけない!!あの音波は殺傷用に変わっている!!浴びたらいくら装甲があっても命に関わってしまう!!トウマさん、そいつから離れて下さい!!」

 

しかしテグサー1は命令を無視し、ゆっくりと歩を進めた。それを見たテグサー3は思わず叫ぶ。

 

「おい、トウマ!!聞こえているだろう!!ここは退くんだ!!おい、聞こえないのか!!」

 

「...断る...!!」

 

「な!?これは命令だぞ!!」

 

「今ここでやらなきゃ、皆を取り戻せねぇ...!!未来島だけじゃなく、今の仲間も...!!」

 

「あの時と違って、今は力がある...!!目の前で何も出来ないのは、もうゴメンだぁっ!!」

 

マスク越しでも分かる敵の鬼気迫る表情、覇気に怯えるトランチック。   

 

「ト、トラァ~…?」

 

そして遂にテグサー1は自分の意思を貫き通し、トランチックの元へと辿り着いた。

 

「やっと届いたぜ......つおりゃああああああああっ!!!」

 

「ギャアーッ!!」

 

トランチックが恐怖のあまり叫ぶと同時にテグサー1は強く固めた拳を憎い相手の顔面に叩きつけた。その打撃はトランチックにとって致命傷となり、ひしゃげた蓄音機と共に仰向けに倒れた。マツナガが慌てて顔を覗いたが、その顔は生気が無く、完全に機能を停止していた。それを見たマツナガはテグサー1を指差す。

 

「くそ~、覚えてろテグサー1!!次はこんなもんじゃないぞ!!次は、その、アレだ...!!え~と...」

 

「あぁ?」

 

「ヒィッ...と、兎に角覚えてろ、さ、さよなら~!!」

 

「あ、待って下さいよ、兄貴~!!」

 

テグサー1に凄まれたマツナガはコブンロを放って足をもつれさせながら一直線に逃げ出した。それと同じくしてトランチックから音波を受けた人達は徐々に平常心を取り戻した。

 

7-2

 

事務所に戻ったテグサーチーム。いつもは賑やかで平穏である筈の場所だが今は気まずい雰囲気が漂っていた。というのも、トウマが命令無視をした件で涼が厳しく問い詰めているからである。

 

「トウマ、何故あの時命令を無視した!!下手をすればお前は死んでいたかもしれないんだぞ!!」

 

「ま、まぁまぁ、涼ねぇ。結果的には勝ったからいいじゃん…ねぇ?」

 

「茜は黙っていろ…!!いいか、お前の過去については詮索はしない...!!だが、後の事、そして仲間の事も考えろ...!!お前が死んだら誰も助けられないんだぞ!!」

 

激しく責め立てる涼の話を椅子に座り、俯いて聞くトウマ。彼は少しの沈黙の後、「悪かった...もうしない」とだけ答えた。その素っ気ない返答は涼の火に油を注ぎ、涼は「なにっ!?」とトウマに詰め寄った。しかし、飛田の「と、トウマさんも十分に反省してますから...!!だからもう大丈夫です!!ですから...!!」という必死の宥めによって最悪の状況を免れることとなった。

 

それから退勤の時刻となり、トウマは誰よりも先に事務所を出、涼と飛田も重工の本社へ出向いた。残されたメンバーで静まり返った事務所で茜は穂乃花に質問した。

 

「なぁ、穂乃花。アンタ、トウマとは幼なじみなんだろ?トウマの過去についてなんか知らねーのかよ?」

 

その質問に珍しく険しい表情をしながら穂乃花は答える。

 

「う~ん、多分アレだと思うけど、これについてはプライベートで深刻な話だから私の口からは言えないんだ。」

 

「えー、頼むよ。アイツの過去の原因を知って、皆で解決すればこのわだかまりは消えると思うんだよ。だから...」

 

「ゴメン、こればっかりはどーしても話せないよ。えーっと、それじゃそろそろ時間だし、私帰るね。」

 

「あ、ちょっと!!」

 

誤魔化す様にその場をそそくさと後にする穂乃花。彼女が帰って一瞬の沈黙の後、茜はレミーに問い掛ける。

 

「ど、どうしよう社長!?このままじゃ気まずい時間が伸びちゃうよ!!」

 

「う~ん…あっ、そうだ!!知り合いに聞けばいいんじゃないかな?」

 

「えっ、それってつまり...?」

 

「トウマの家に行って、下宿先の身内の人にそれとなく聞けばいいのよ!!もし聞けなくても何かヒントが得られるかもしれないし、行って損はないと思うわ!!」

 

「成る程、さっすが社長!!あったまいいー!!」

 

「えへへ~、でしょでしょ~。それじゃ、茜は一旦家に戻って、着替えとか用意しといて!」

 

「えっ、まさかの泊まり込み!?」

 

時刻は午後六時。人工的な灯以外は暗闇に包まれたこの街で響く防災無線を背に受けて、茜は泊まりに必要な物を背負い、更にはレミーを後部に乗せてバイクを走らせていた。

 

「着いた、ここだ…」

 

バイクを停めた先はトウマの下宿先、富田電器であった。

 

「いい?まずは目的を悟られない様に身内の人と仲良くなるの。それから、トウマがいない時に遠回しに聞くのよ。たったこれだけ、わかった?」

 

バイクから降り、店の前でレミーは茜に今回の『任務』を再度確認する。

 

「分かってるよ。そう何回も言わなくても...」

 

それに対し、叩き込まれた張本人はうんざりとした様子であった。

 

「アンタだと入ってすぐに直球で聞きそうだから言ってんのよ!!それじゃ入るわよ...」

 

レミーは扉の前で一旦深呼吸。窪んだ箇所に手を掛けると、一気に引いた。

 

「こ、こんにちはー」

 

同時で店内に入った二人は目を丸くした。

 

「あ、いらっしゃいませー」

 

二人に挨拶をした店員はトウマと同年代位のショートヘアーの似合う女の子だったからだ。もしかしてトウマの恋人...?そう感じた茜はその女の子に質問をする。

 

「あ、あのトウマ君の友人ですが、トウマ君はいらっしゃいますか?」

 

「あ、にぃにぃ..じゃなかった、トウマですか?今、二階にいますよ。」

 

(にぃにぃ!?トウマとはそんな呼び名で呼び合うの!?え、マジで恋仲!?)

 

茜が心の中で色々な考えを巡らせているとはつゆ知らず、その女の子は話を続ける。

 

「あ、お知り合いですか?ちょっと待って下さいね、今すぐ呼びますから。おーい、にぃにぃー!!お友だちの方が来てるよー!!」

 

「お、なんだ、トウマのお友だちか?」

 

最初に出て来たのは二階のトウマではなく、奥の事務所にいた闘牙であった。二人に目が合った闘牙は二人に軽く会釈をした。

 

「やぁ、どうも初めまして。俺はトウマの叔父の闘牙だ、よろしく。おい、トウマ!!お友だちが待ってんだ、早く来い!!早くしろ!!」

 

「だぁー!!ちょっと待ってろって!!トイレ行ってたたんだからよ!!...って、なんだ、お前らか、こんな夜になにしに来たんだ?...そんなデカい荷物を持って?」

 

闘牙に急かされたトウマは階段を急いで駆け降り、めんどくさそうに現れた。トウマの指摘で二人の大きな荷物に気付いた闘牙も同じ様な質問をする。

 

「ん、そういえばそうだな。二人ともその荷物は一体...?」

 

「うわぁぁぁぁん、トウマ、酷いわ!!」

 

突然、闘牙が言い終わらない内にレミーが泣き崩れた...と言っても、横にいる茜から見ると、完全に泣き真似だが。それに茜が気付いているのをわかっていながらも、レミーは泣き真似を続ける。

 

「私達が今日泊まりに来るって約束したのに、それをすっぽかした挙げ句、店に来させて、恋人を見せびらかすなんて、酷いわ、酷いわー!!」

 

「はぁ!?なに訳わかんねー事言ってんだよ!!コイツは俺の従妹の凛奈(りんな)だし、そんな約束はした覚えは...」

 

レミーの突然の理不尽な泣き言に戸惑うトウマ。彼の後ろに闘牙が迫る。

 

「トウマ...な~に友達との約束を破ってんだ、お前は!!」

 

「は!?い、いや俺はなにも知らないって…」

 

「問答無用!!おしおきだぁ~!!」

 

「いや、だから知らんて...あ~だだ!!コブラツイストはやめろぉー!!」

 

トウマはお仕置きとして闘牙から完璧に嵌まったコブラツイストを掛けられる。この時、レミーは(こうしておけば、トウマが拒否しても、確実に泊まる事が出来るとやってみたら上手くいったわ...ナイス、私...!!)と心の中で呟いたのは勿論、誰も知らないのであった。

 

7-3

 

「いや~、それしても、穂乃花ちゃんだけでなく、女の子が二人も遊びに来るなんて、トウマも隅には置けねぇな!!ガッハッハッハ!!」

 

「そっか~、にぃにぃもいよいよ彼女が出来るのかな~」

 

「いやいや、凛奈、そういう関係じゃねぇって!!」

 

店を閉め、茜、レミーも含めて皆で夕飯を食べる事となった富田家。昔と比べて交遊が増えてきたのを誉める闘牙と、恋人がいよいよ出来ると勘違いしている凛奈に対して、照れ隠しなのか、トウマは強がりを見せる。親睦を深められると感じたレミーはその二人に合わせる様にその会話に加わった。

 

「彼女になるのは別として、トウマはチームの中じゃ結構強いし、頼りになるわよ。今思うと家の会社に引き入れた私の判断は流石だったと、思っているわ!!」

 

来た直後に貶していた癖に何言ってんだコイツ。そう思うトウマの横で闘牙はレミーに質問する。

 

「家の会社?君の家は会社を経営しているのか?」

 

「おっちゃん、コイツは旋風重工の社長令嬢で、俺達テグサーチームの一応リーダーとして活動してんだよ」

 

「なに!?それは本当かトウマ!!旋風重工っていったら世界的企業じゃないか!!」

 

「本当だけど…そんなに驚かんでも」

 

「これが驚かずにいられるかっ!!確か十年前、多くの企業を守る為に工業、建設、商業のみならず芸術文化、果てはスポーツなどなど業種、国内外問わず一纏めにし、グループ内で協力させあう事で帝国の攻撃から多くの業種を救った企業じゃーねーかっ!!確かそのお陰で、政府にも一目置かれているとかなんとか…」

 

「き、君!!レミーちゃんと言ったな!!トウマ、穂乃花ちゃんもいいが、付き合うならこういう気品のある子にしなさい!!」

 

「え、えぇっ!?」

 

突然のトウマへの婚約アドバイスにレミーは顔を赤らめて驚愕した。

 

「はぁ!?いきなり、何言ってんだよ、おっちゃん!?社長困ってんだろ!?」

 

トウマも闘牙の突然の助言は予想出来ず、うろたえるだけであった。

 

「ちょーっと待ったぁ!!それなら私もどうよ!!私の家は大学教授と学者の超エリートの集まりだぜ!!」

 

「ほぉっ、それは素晴らしい!!」

 

「なっ、茜!?お前はなに対抗心燃やしてるんだよ!?おっちゃんもそれに乗るな!!」

 

「ワハハハハ!!」

 

茜の乱入で笑いとツッコミの絶えない夕食。トウマ達は食後の一戦として少し懐かしいテレビゲームを楽しんでいた。

 

「喰らえ茜、これが俺の必殺、ビックバン・シューター!!」

 

「効くもんかそんなこうげき!!超竜烈波!!」

 

「なっなに!?オアッー!!オァッー!!オァッー...!!」

 

ゲームで連勝していたトウマであったが、一瞬の隙を突かれ、最後には茜の逆転勝ちとなった。

 

「しゃっ!!どうよトウマ!!最後には正義が勝つっ!!」

 

「畜生、もう一戦、もう一戦だっ!!今のはアレだ、ラグがあったからだ!!」

 

「アンタ達ノリノリね...」

 

つかみ取った一勝に喜ぶ茜、初めて負けて悔しがるトウマ。そして、そんな二人の様子を離れて見るレミー。それから少しして、風呂掃除に向かったトウマ。彼がいないその隙に茜とレミーは居間の椅子に座ってこれまでの活動を自省していた。そう、二人はゲームによる激闘と観戦で目的を忘れ、ただの『お泊まり会』を楽しんでしまったのだ。

 

「どうしよう、社長?この後お風呂入ったら、もう後は寝るだけじゃん!!このままだとなにも聞けずに只遊びに来て終わりになっちゃうぜ!?」

 

「う~ん、どうしよう...って、そもそもアンタがあのゲームに熱中したのがいけないんじゃない!!アレがなかったら、トウマについて色々聞けたかもしれないのに、このバカバカ!!」

 

「あ、アレはトウマの気を引く作戦だったの!!大体、ゲーム止めさせたいなら、口でちゃんといってよ!!」

 

「言ったら作戦がパーでしょうが!!」

 

「どうしたんだ君達?トウマがどうかしたのか?」

 

「えっ!?」

 

不意に話しかけられ後ろを振り向くと、食後の一仕事を終えた闘牙が居間に入って来た。

 

「え、えとその、きょ、今日の夕食のコツを聞こうかな、なんて…」

 

邪な理由で遊びに来た事を悟られまいとしどろもどろになる茜の前に、レミーはスクッと立ち上がった。

 

「叔父さんごめんなさい。実は遊びに来たのがメインじゃなく、トウマのある事について聞きに来たのが本来の目的なの」

 

「本来の目的?」

 

「ええ、実は...」

 

これ以上隠しても意味がないと感じたレミーは今日起こった事を踏まえて聞きたい事を話した。それを聞いた闘牙は人数分のコーヒーを用意して真剣な顔をして二人に対面する形で座った。

 

「そうか、そんな事があったのか...アイツがそこまでキレるとは...」

 

「本当にごめんなさい、こんなプライベートな事を嗅ぎ回ろうとして...」

 

レミーは今まで騙していた事を深く陳謝した。

 

「いや、気にしないでくれ。喧嘩までしたら気になるのはしょうがねぇよ。それじゃ~そうだな...どこから話そうか...まずはなんで家族と暮らさず、親戚の俺達と長いこと暮らしているのか話そうか?」

 

「…アイツの両親は優秀な科学者だったんだ。それも世界有数の科学者達が招待され、居住が許可される未来島に選ばれる程にな。それで、トウマは生まれた時からその島で五年間両親と共に暮らしていたんだ。そう、島が奪われるその日まではな...」

 

「も、もしかしてその日って...」

 

「そうだ、トウマの両親はジン・ガイア人に殺されたんだ」

 

「…!!そんなの、初めて知った」

 

恐る恐る聞いたレミーは戦慄。闘牙の話は続く。

 

「小型のボートで海上を漂流していたのを防衛軍の人が保護した時、トウマはしきりに言っていたそうだ。お母さんは家で殺された。お父さんは外に逃げた時、目の前で喰われたってな」

 

「俺達家族はその時海外に住んでててな。でも、ジン・ガイアのせいでしばらく日本に帰れなかったんだ。その間、トウマはずっと色んな施設やら病院をたらい回しにされたんだ。規制が解けて戻った俺達が見たトウマは以前に見た黒髪がすっかり白くなっていたよ…医者によると、目の前でいろんなの失ったショックでああなったらしい」

 

話を聞いていた二人はあの時の意味が府に落ちたと同時に絶句した。以前茜に言っていた両親がいない理由、そしてトランチックの音波が効かず、殴り付けた際に叫んだ名前の理由、あの名前はトウマの未来島にいた友人達の名前であると。

 

「トウマにそんな過去があったなんて...私、知らなかったとはいえ、なんて事を聞こうと...トウマ!?」

 

震える手で猛省する茜。後ろに気配を感じた。振り向くと、そこには風呂掃除を終えたトウマが立っていた。

 

「風呂、入ったぜ、先に入りな...」

 

そう言ってトウマは階段を上がった。本人に黙って秘密を聞いて申し訳ないと感じた二人は慌てて彼の後を追いかけた。二人がトウマの部屋へ上がり込むと、トウマは入口から背を向けて風呂から上がった後の着替え、布団を用意していた。

 

「トウマ、ごめんなさい!!」

 

「…」

 

レミーの謝罪に、反応はない。

 

「もしトウマの過去を知ればトウマの手助けになれると思って来たの!!でも、あんな過去があるなんて知らなくて、私、私...」

 

弁明しながら涙ぐむレミー。するとトウマは振り向き、指で優しくその涙を拭った。

 

「いや、ちゃんと過去を話さなかった俺も悪かったよ...悪かったな、俺があの時、ふてくされちまったばっかりに...」

 

「トウマ...でも、私...」

 

「...そんなに気にするなよ。悪いのは俺なんだし」

 

「でも、どうしてあの時、言ってくれなかったんだ?理由を話せば、涼ねぇだって分かってくれたのに...」

 

茜の質問にトウマは一瞬目を伏せ、それから口を開いた。

 

「...言わなかったのは、話せば皆が変に気を使って近寄るかもしれないと感じたからだ。もしかしたら戦いで俺は命を落とすかもしれない。だから俺は、死んだ時、深く知り合っていたら皆を悲しませちまうかもしれないだろ?だから...お、おい!?」

 

突然、レミーはトウマが理由を言い終える前に急に抱きつき始めた。

 

「トウマ、そんな悲しい事言わないで...。私達はそんな過去があっても変な目で見たりしないわ!!」

 

「ああ、社長の言う通りだぜ!!」

 

二人に励まされたトウマは部屋に入ってから初めて微笑みを見せた。すると、レミーは涙ながらに近くのカバンからパスケースを取り出し、開いた。そこにあったのは微笑む金髪の成人女性の写真が一枚挿入されていた。

 

「私ね…トウマの気持ちは分かっているつもりなの。だって私も産まれたと同時にママを亡くしてるんだもん…」

 

「私のママ、重い病気で私を産めば残り少ない寿命が更に減るし、産んでも子供はすぐ死ぬかもしれないって言われていたそうなの。でも、それでも…このまま死ぬより子供に生きる意味を教えたいって言って産むのを決意した。それを聞いておじいちゃん、私だけでも助けようと色んな病院とかを周り続けたの…」

 

「それで、ママは私を産んだと同時に死んじゃって…しかも、おじいちゃんは無理が祟ってママと同じに…だから私、今無事でいられるのは、二人が頑張ったから、それで…」

 

嗚咽を繰り返し、言葉が出ないレミー。それでもトウマは言いたい事を理解し、小さく頷いた。

 

「そうか、そうだったのか…社長、茜…ありがとうよ。さっきは関わりたくはないと言っちまったが、正直な所、俺は皆に感謝してるんだ」

 

「実は俺が島から脱出する直前、父さんから「いつかお前は世界を救う時が来る。その時まで生きろ、生きるんだ‼」と言われたんだ。どういう意味か聞く前に俺の目の前で殺されたから詳細は分からなかったが、恐らく自分が作ったテグサーマンを俺が装着するのを見越していたんだろうぜ...」

 

「だから、皆には感謝してるんだ。父さんが作ってくれたテグサーマンを今こうして甦らせてくれてありがとうってな」

 

「トウマ...」

 

嗚咽を止めたレミーは顔を上げる。視線の先にはトウマの微笑みがあった。

 

「そんなに悲しい顔するなよ...あっ、お前涙と一緒に鼻水まで出てんな!!!女の子なのにきったねぇ奴だなぁ~」

 

「な!?ど、ど、ど、どこ見て言ってんの、トウマ~!!」

 

「うわわっ、いきなり蹴るなよ!!」

 

トウマがからかい、レミーが追いかける。そんな二人を茜は笑う。三人はいつもの調子に戻った。その時、トウマと茜のテグサロイドの着信音がけたたましく鳴った。その着信音にトウマは応対した。

 

「はい、もしもし...」

 

『トウマか!?涼だ、ジン・ガイアのマツナガが怪人を連れて町を襲っている!!場所はSー37ポイントだ、早く二人を連れて来てくれ!!』

 

「ああ、分かった...!!茜、聞いた通りだ。俺は奥からバイクを出すから、社長乗っけて先に行っててくれ!!」

 

「えっ、いやそんな事言われてもポイントの場所が分からない...」

 

「何!?ええい、仕方がない、俺が先導するから先に店の前で待ってろ!!」

 

部屋を飛び出し、階段をかけ降りて裏の納屋に向かったトウマ。一方で茜達は指示通り、店内の入り口付近で彼を待っていた。すると、騒ぎを聞いて闘牙が二人の前に再度現れた。

 

「二人共、戦いに行くのか?」

 

いち早く反応したのはレミーであった。

 

「え、ええ...といっても、私は後方にいるだけだけど...あっ、トウマは私達が責任を持って預かるから安心して!!」

 

「そうか...やはり、トウマも戦うのか...」

 

我が子が戦いに出る事をレミーから知った闘牙は大きく頷く。と、二人の前に立ち、改めて背筋を伸ばした。

 

「…アイツは...トウマは自分一人で黙ってなんでも背負って、勝手に悩んで苦しむどうしようもないヤツだ...だから、だから一人突っ走るアイツの事を...どうかよろしくお願いします...」

 

頭を深々と下げ、保護者として挨拶をする闘牙。その丁寧な姿に茜は彼の手を強く握る。

 

「大丈夫だって、叔父さん!!アイツは私達よりずっと強いし、ちっとやそっとじゃ挫けないよ!!寧ろお願いするのは私の方だし!!」

 

「茜ちゃん...」

 

茜の言葉に闘牙が安堵の表情を見せたその瞬間、

 

「二人とも、行くぞ!!」

 

外からトウマの声が響く。

 

「あ、はいはい今行くって!!」

 

茜は慌てて外に飛び出す。レミーはその後を追おうとしたが、すぐに闘牙の方に向き直った。

 

「それじゃあ、叔父さん、行ってきます!!」

 

「あぁ、いってらっしゃい...!!」

 

心配ないと笑顔で出るレミー。安堵した闘牙もまた笑顔を返すのだった。そして、バイクで現場へ辿り着いた三人。同時に涼と穂乃花も駆けつけた。全員揃ったテグサーチーム。マツナガは彼らに啖呵を切る。

 

「来たな、テグサーマン!!積年と今日の昼の恨みを今ここで晴らし、汚名を挽回してやるぜ!!」

 

「おい、汚名は返上するものだぞ...」

 

「う、うるせぇ!!ジン・ガイア帝国じゃそう言うんだよ!!行け、トランチック、戦闘員共!!」

 

涼に間違いを指摘されたマツナガは誤魔化す様に用意した怪人達に指示を出した。

 

「トラァ~!!」

 

今にも襲い掛かろうとする怪人に全員テグサロイドを構える。変身する直前、涼は彼に視線を合わせずにトウマに話し掛けた。

 

「…トウマ、もう一人だけで無茶だけはするな。お前が死んで悲しむ者は少なくともここにいる。なんでも一人で抱えず、困ったら私達を頼れ。いいな?」

 

「涼...あぁ、了解だ!!行くぞ、皆‼」

 

「「おぉっ!!」」

 

「チェンジ、テグサーマン!!」

 

「テグサー、1!!」

 

「テグサァァァァァァ、2!!」

 

「テグサー3…!!」

 

「テグサー4ッ!!」

 

「「「「旋風重工、テグサーマン!!!!!」」」」

 

「行くぞぉっ!!」

 

「やれ、戦闘員共!!」

 

逃げ遅れた人々を背に、大勢の戦闘員に立ち向かうテグサーチーム。彼らの平和はまだまだ遠い先かもしれない。しかし、彼らの固い絆があれば必ずこの世界に希望をもたらす筈だろう。真の希望と平和を掴むまで、戦え、テグサーマン!!

 




皆さんどうも!!
今回は登場したビルドパーツ、ハイライト、怪人の画像をお送り致します!!ここまでご覧頂き誠にありがとうございます!!

【挿絵表示】


【挿絵表示】


【挿絵表示】

・(右上段)カモシガン:身長2.3m、体重80kg
高い脚力でテグサー1を翻弄した。
・(右下段)イーヴィル・ディーン(上画像、前数値は人間態):身長1.6m~1.8m、体重45~100kg
空を飛び、高い戦闘能力でテグサーマン三人を相手に圧倒した。
・(左上段)ロードスパイカー:全高80cm、体重250kg
バイク型の怪人級で運転手を取り込む能力がある。
・(左下段)トランチック:身長1.9m体重325kg
蓄音機型の役獣で、相手の嫌な思い出をフラッシュバックさせる能力がある。

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