・富田トウマ…文武両道な高校生。テグサー1に変身する。
・飛田慶喜…天才的な頭脳を持つ高校生。
・三千院穂乃花…トウマの幼馴染みである女子高生。テグサー2に変身する。
・森涼…冷静沈着な成人女性。卓越した剣術の持ち主。テグサー3に変身する。
・大城茜…天才的なバイクセンスを持った女子高生。テグサー4に変身する。
・レミー・旋風…小生意気な少女。自称『社長』。
・マツナガ…ジン・ガイア帝国の兵士。
・コブンロ…マツナガの部下。
・イーヴィル・ディーン…ジン・ガイア帝国のエリート兵士。
9-1
「ふ、あぁぁぁ…」
晴れ晴れとした秋空の昼下がり。事務所のソファーで昼寝をしていたトウマは、大きくあくびをしながら目を覚ました。
「あぁ、よく寝た…っと。あれ、穂乃花、来てたのか?」
上半身だけを起きあがらせた彼の横。そこで穂乃花とレミーは共にカーペットに座って少し古いカセット式のゲームで遊んでいた。コントローラーと画面上のキャラクターがせわしなく動くあたり、白熱したプレイとなっているようだ。それ故か、穂乃花はトウマに振り向く事なく答える。
「うん、来てるよー。後で茜もコンビニ寄ってから来るよー」
「そうか…それにしても、涼と飛田の奴遅いなぁ…テグサー1の新必殺技が出来たから来てくれって昨日言われたから日曜なのに来たっつーのによ…」
トウマは頭を掻きながら面倒くさそうに立ち上がる。すると、レミーがやはり振り向く事なく彼に提案をした。
「まぁまぁ、調整に時間掛かってるんでしょ?ただ待つのもなんだし、私達とゲームしない?」
「あぁ…」
適当な相槌を打ちつつトウマは無造作に置いてあったコントローラーを取った。
「ジャンルはサバイバル式のアクションか…最近ゲームやってないからついていけるかな」
「フッフッフッ…まぁ、コッチは長いコトこのゲームやってるからね。経験を活かしてボコボコにしてあげるわっ!!」
ゲームを最近プレイしていない。そんなトウマの発言にレミーはほくそ笑む。長期間のジンクスというハンデを持ったトウマになら絶対勝てると確信したからだ。しかし…
「あ、アレ?アレ?」
トウマの予想以上のテクニックに女子二人で挑んでもボコボコに蹂躙され、レミーは思わず戸惑いの声を上げた。そして、そのプレイに半分ナメて掛かっていた穂乃花は思わず叫ぶ。
「トウマ、ホントはゲームやってんでしょ!?アンタ、嘘ついたね!?」
「…嘘は言ってねーよ。ただ、下手かどうかは言ってないけどな…」
「は、謀ったな~、トウマ!!」
「二人掛かりでボコろうとする奴らに言われたくねーよ…ん!?あ、イテテ、なんだ?」
突然の左足への痛みにトウマは思わず左を見た。そこには正座しながら器用に自身の左足を蹴るレミーの姿があった。
「お、おい社長!!リアルの妨害はやめろよ!!子供かお前は!?」
「いいもん!!私、子供だもん!!」
「都合よく子供を使うなよ!!」
言い争うトウマとレミー。その時、事務所のチャイムがピンポーンと部屋に響き渡る程に鳴った。
「お、なんだ?涼達か?」
トウマは未だに蹴り続けるレミーの右足を左手で無造作にあしらい、立ち上がって玄関に向かった。そして、居間を飛び出して廊下から玄関へと急ぐ。彼が歩いている間にも、チャイムはゆっくりながらも何度も鳴り続けていた。
「なんだよ、アイツら?何度もチャイム鳴らしてうるせーな。鍵忘れたのか?」
玄関に着いたトウマはサンダルを履く。それから、チャイムが鳴り続ける中で「はいはい、今出るっつーの」と呟きながら扉を勢い良く開けた。
「なんだよ、涼。鍵忘れたんなら裏口からでも入ればいいじゃねーか…よ…」
その先にいた人物を笑いながらも睨むトウマ。だが次の瞬間思わず言葉を詰まらせた。目の前には身なりのよいスーツを着て、眼鏡の奥でしかめっ面をした中年男性が立っていたからだ。
「あ、あの…事務所になんのご用件でしょうか…?」
全く関係のない人に悪態をついてしまい、ばつの悪い顔でトウマは質問した。
「こちらの事務所に娘が…茜が世話になっていると聞いて来たんだが…いるかな?」
「い、いえ、今はいませんが…ええっと、茜とはどういう関係で…?」
「あぁ、私は…」
中年男性が答えようとした。と、その時、彼の後ろから声がした。
「お、お父さん…?どうしてここに?」
声の主は茜であった。その後ろには涼と飛田の姿もあった。茜の声に中年男性は表情を変える事もなく答える。
「私がここに来たのはこの職場から茜を辞めさせる為だ。さぁ茜、こんな所にいないでさっさと帰るぞ」
突然の宣告。様子を見に来たレミーと穂乃花は『営業スマイル』を中年男性に向ける。
「あっ、そうですか…」
「茜、辞めちゃうんだ…」
だが、言葉の意味を理解した瞬間、二人は驚愕の表情を表に出さずにはいられなかった。
「「えーっ!?茜が辞めるーっ!?」」
そんな中、宣告を出された茜は、不安げな顔で実の父の顔を見つめるばかりであった。
9-2
「そうだ、思い出したぞ…茜さんのお父さんは防衛軍の兵器、特にパワードアーミーを開発、提供している大学教授、大城大樹さんだ…」
飛田は茜と涼、そして大樹が対面式でテーブルに座って話し合っている様子を尻目に、ノートパソコンで彼の詳細をトウマ達に伝えていた。
「そうか…防衛軍って事はこの旋風重工とはライバル関係になる存在だな…そういえば思ったんだけどよ飛田」
「なんです、トウマさん?」
「なんでウチの企業って防衛軍に技術を提供しなかったんだ?」
「それがですね、一回提供しようと持ちかけたら、コストが高すぎるって理由で断られたんです。あと、GRN(ジェルナ)の技術に日本が頼り切りってのもありますが」
「GRNって対ジン・ガイア帝国対策の海外の国際的な組織だったよな?防衛軍もそこの傘下っていう…ってことは、もしかしたら娘が余所の企業で活躍して、自身が開発した兵器が負けてるってのが面白くないのが理由だったりして…」
「ウウンッ!!ウンッ!!」
トウマの発言に答えるように茜の父、大樹は深く咳払い。そして、涼に向けて自身の意見を述べ始めた。
「…兎に角、娘にこれ以上危険な目に合わせる訳にはいかない。辞めさせて貰うぞ」
「待ってよお父さん。それに関して私、戦っていいか聞いたでしょ。でもお父さんもお母さんも家に滅多に帰らない上に話を聞かなかったじゃん。それなのにいきなり辞めさせるなんて言われても…」
「茜は黙っていろ。大体、私の娘と知って誘ったかどうかは知らんが、こんな未熟者を誘うなんぞどうかしているぞ!」
大樹の発言に、涼は静かに答える。
「…確かに最初に誘ったのは我々です。しかし、最終的に選んだのは他でもない茜さんですが。それに、茜さんは我々のチームの中で立派でよく頑張っています。どんな相手にも負けず、仲間が傷ついても挫けずに…もっと娘さんの事を見てあげて下さい」
「涼ねぇ…」
涼の茜を褒め称える言葉に茜は嬉しそうに呟くと、先程までの沈んだ調子と違い、強気な態度で話し始めた。
「そういう事だよ、お父さん!!私は守りたいモノがあるの!!だから…」
しかし、大樹は娘の発言をかき消すかの様に声を荒げた。
「守りたい?自分の居場所の確保がしたいだけだろう?」
「そ、それは…」
思わず閉口する茜。思う所があったようだ。
「茜。どう言い繕っても所詮、お前は自分の事しか考えていないんだ」
茜を責める大樹。涼は、俯く彼女に助け船を出す。
「大樹さん、茜さんは今、自分がなんの為に戦うか、それを考える前にまず、目の前にある脅威と戦っているんです。だから…」
「娘はそんな者じゃない!!君たちにはまだ知らんかもしれないがどうせまたその内にボロを出してヘマをするに違いない!!この娘はいつもそうだったからな!!しかも今はあの感情の高ぶりでパワーが上がると言われているバイオユニットなんて不安定な装備で戦っているんだろう!?」
「大樹さん…」
「そんなの…いずれこの出来損ないの娘はミスを犯してそれを暴走させて多くの人を傷つけるに違いない!!そんな事をすれば我が大城家の名誉に関わる!!だから早急に辞めさせるべきだっ!!」
「できそこっ…」
実の父親が放った耳を疑う言葉に茜の表情は不快感で険しくなった。それは後ろにいた四人も一緒であった。すると、怒りを覚えたトウマは大樹に詰め寄った。
「おい、アンタ!!実の娘でも言っていい事があるだろ!!第一アンタは茜に勝手に生きていろと言ったそうじゃねーかっ!!そう言われて茜はなぁ、最初はバイクで爆走して暴れていたが、今じゃそう言われても真面目に頑張ろうとしてるんだ!!それなのに、その頑張りを無理矢理止めるなんておかしくないか!?」
「なんだ、君は!?家族の問題に入ってくるな!!」
「その家族を見捨てようとした奴が言えた事かよ!?」
激しく言い争うトウマと大樹。それを宥めようにもその雰囲気に押されて身動きが取れない穂乃花とレミー。一触即発の様子を目の当たりにし、いたたまれなくなった茜。と、無言で椅子から勢いよく立ち上がったかと思えば、駆けて居間を飛び出していった。
「おい、茜!!」
「待って、茜!!」
それにいち早く反応したトウマとレミーは彼女を追いかけた。だがその二人を気にする事なく、更に道中で穂乃花に肩がぶつかっても気にも止めず、外へと出た茜は自前のバイクに乗り、事務所からも飛び出した。当然追いかけていたトウマも自前のバイクにレミーと二人乗りで同じ様に飛び出した。
「トウマ…」
事務所の窓から穂乃花が呟く。
「フン、堪らず飛び出したか。やはりアイツはどうしようもない娘だ…」
対して、相変わらず娘に対して暴言を吐き続ける大樹。残った者達はなにも言えず、口をつぐみ続けた。その時、飛田のノートパソコンから警告音がけたたましく流れた。その音はジン・ガイアの敵襲の警報だと知っている飛田はキーボードを叩いてその詳細を調べた。
「これは…皆さん、大変です!!市街地のCNS国際ビルに怪人級が現れた様です!!」
この報告に涼は立ち上がる。
「了解だ、テグサーチーム、出撃!!大城さん、申し訳ありませんが茜さんの話はまた今度にさせて頂きます」
「いいだろう、私としても現れたジン・ガイアに関して研究をしなくてはならないからな」
そう言って大樹は席を立ち、その場を後にした。涼は彼を見送る事なく、飛田に指示を伝え始める。
「飛田、トウマ達に連絡しろ」
「それが…さっきから送ってるんですが、応答がありません。多分、バイクに乗っているから気付かないのではないかと…」
「そうか、それなら仕方がない。私と穂乃花だけで戦う事にしよう…行くぞ!!」
「了解!!」
現場であるCNS国際ビルに到着した三人。穂乃花はいの一番に口を開いた。
「戦いが…終わってる?」
三人の目の前の現場では破片などが散乱した現場の事後処理や、現場に居合わせた人々に聴取を行う連合防衛軍の軍人の姿が残るだけであった。
「えぇっと…なにがあったか現場の人に聞かなきゃ…でも…」
予想外かつ拍子抜けの展開に飛田は事情を聞こうとしたが、既に軍人が人々に取り付いている為、彼は右往左往をする事しか出来なかった。すると、うしろから穂乃花がポン、と肩を軽く叩いた。
「リアルタイムで情報を手に入れるならSNSが一番だよ、飛田君!!」
「あっ、そうか…!!」
飛田はノートパソコンを立ち上げ、SNSのページを開いた。
「えっと、『ジン・ガイア』『出現情報』っと…ん、出たっ!!」
飛田は一般人が撮影したであろうSNSの動画を開いた。そこには狼の姿を模した二足歩行の怪人が現場に急行した防衛軍のメニーと対峙していた。その際の静寂を切り裂く様に、メニーの持つマシンガンから放たれる弾丸の嵐。それをサイドステップで避ける怪人。やがて、動き回った怪人がビルの一角に着くと、メニーの一人が銃を構え直した。次の瞬間、怪人がした事に飛田と穂乃花は同時に「えっ!?」と声を漏らした。なんとその怪人は避けようと動いたものの、急に足を止め、腕を広げて銃撃の直撃を受けた。弾との激突で、怪人の周りには多量の煙が立ち込めた。そして、それが晴れた頃には、その場に怪人の姿はなかった。
「なんか、変な決着だったね」
動画を見終え、穂乃花の感想に飛田は頷く。
「そうですね、あの程度の砲撃なら避けられるでしょうし、それ以前にメニーのマシンガン程度で撤退する程致命的なダメージを与えるとは思えません。確かに妙ですねぇ」
「う~ん、なにがあったんだろう…あっ、もしかして!!」
「なにか分かりましたか?」
「突然お腹が痛くなった!!…とか?」
「ハハッ、面白い推測ですね…」
「う~ん、それじゃあ…」
事務所で大樹にテグサーマンを貶されてか、メニーの性能についてさりげなく毒を吐く飛田。それに気付かずに敵について考察を始める穂乃花。そんな二人の会話を余所に、涼はその怪人がいたビルの一角の壁に近付き、くまなく見始めた。その視線の先が黒と灰色を基調としたビル。白く全面ガラス張りの明るいビル。そしてそこに設置されている照明になった時、ある物が目に止まり、涼は一人呟く。
「…もしかして、これか?」
その上にはツバメの巣があり、その中で雛鳥がピー、ピーと鳴いていた。
9-3
「ねぇ、完全に茜を見失ったよ!!どうすんの!?」
涼が呟く同時刻、レミーはトウマが運転するバイクに二人乗りで乗っていた。
「もう~、しっかりしてよねっ!!」
フルフェイスメット越しに悪態をつくレミーに、赤信号でバイクを止めたトウマは言葉を返す。
「無茶言うな。運転技術はアイツの方が上だし、抜け道やらなにやらあっちが知ってるんだからよ」
「それでもなんとかするのが仕事でしょうがっ!!」
「なんとか…あのですね社長。やらなきゃならないのは意地でもやるのが仕事でも、無理な物は無理なの!!」
「あっ、海だ」
誤魔化すかの様にレミーは対向車線の奥、工場の隙間から見える海を見た。
「おい、人の話を…ん、海?そうだ!!」
呑気な彼女の『海』発言にトウマはある事を思い出す。そして信号が青になった瞬間、フルスロットルでバイクを飛ばした。
「ちょっ、うわっ!!」
気と手の力を緩めていたレミーは突然の急発進に慌ててトウマにがっしりと抱きついた。
十分ほど走り続け、トウマはある場所にバイクを駐車した。そこは海が見渡せる小さな港。錆びた工場や倉庫がある以外はなにもなく、コンクリートの地面の隙間から伸びる雑草が長年そこが使われていない事を物語っている様であった。
「あ、いたいた!!茜ー!!」
バイクを降りたレミーは思わず指を差して叫ぶ。その先には海を眺める茜の姿があった。
「あ、社長…」
声に気付いた茜が、ゆっくりと二人の方を振り向いた。
「もー、心配したんだよっ!!急に飛び出してっ!!」
ズンズンと大きな歩みで近付くレミー。その間、茜の表情は暗いままであった。
「ごめん、二人共…でも、ここがよく分かったな…」
今度はトウマが茜の元に歩み出る。
「前に穂乃花に言った事があるんだろ?『茜は落ち込んだり、嫌なことがあると人気のない港で海を見る』って」
「うん、まだ家族と仲がよかった時、よく遊びに来ていたからな」
「そうだったのか…でも、もう充分に見ただろ?早く帰ってもう一度話し合おう…」
「いや、私はもう帰らない。もう辞めるからな」
「えっ!?」
仲間の退職宣言を前にトウマは言葉を詰まらせた。その隙に、茜は理由を述べ始める。
「だってさ、これ以上いたら皆に迷惑かけちゃうし、親の立場があるし、ね…」
「あっちだって茜の立場を無視して怒鳴り込んで来ただろ?自分の都合しか考えない親なんか気にするなよ、な?」
「そうよ、それに私達は茜の事について迷惑なんか考えていないわっ!!」
トウマのアドバイスにレミーも加わる。しかし、茜はその言葉に納得せずに暗いまま俯き続けていた。と、その時、三人の後ろにある大きな倉庫の側で何かが倒れた物音がした。全員、突然の物音で一斉に振り向く。そこにはトウマ達と同年代に見える、髪の長い少女が倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
その少女をよく見ると全身が傷つき、服装もボロボロであった。その様子になにかあったと考えたトウマは真っ先にその少女に駆け寄った。二人もその後を追う。
「ん、あれ…?」
しゃがんだトウマが肩に手を回し、上半身を起こすと少女は微かな声で呟いた。更には、首を回して周囲を見渡していた。その様子にトウマは安堵の息を漏らす。
「よかった、意識はあるみたいだな。その怪我どうしたんだ?」
「…え、えと、ちょっとここの倉庫で足を引っかけてしまって…更に、その、そこにあった物が落ちてきたんです…」
そう言いながら、少女はトウマの手から離れゆっくりと立ち上がった。同時にトウマも立ち上がる。
「そうか。念のため救急車を呼んでおく。ええと、携帯はどこに…っと」
トウマが携帯を探そうと上着の内ポケットをゴソゴソ探していると、テグサロイドが外ポケットからこぼれ落ちそうになった。
「危ねっ!!」
慌ててテグサロイドを掴むトウマ。その様子を少女は驚愕の表情で見つめていた。
「さて、連絡するか…」
少女に背を向けてスマホを起動させるトウマ。通話のアプリを起動しようとしたが、その前にSNSによる連絡が一件入っている事に気付いた。
「あん、なんだこのメッセージ?飛田からだ。一体なんの用…」
「トウマ、危ない!!」
突如、茜がトウマに覆い被さって押し倒した。その背中を鋭い爪が掠める。
「グルルル…」
トウマが起き上がって少女の方を見ると、少女は穂乃花達がSNSで見た狼の怪人へと姿を変えていた。
「こいつ、ジン・ガイアの怪人級だったのか!」
目の前に現れた脅威にトウマと茜はテグサロイドを構える。
「チェンジ、テグサーマン!!」
トウマと茜は同時にテグサー1、4へ変身。狼の怪人目掛けて、テグサー1が先陣を切って格闘戦を仕掛けた。カウンターとして爪を水平に腕両を伸ばして突き刺そうとする怪人。だがテグサー1は怯むことなく、持ち前のパワーで爪の根本、毛の生えた大きな手を掴む。そこから両者は足を踏ん張り、力比べの様相となる。テグサー1の腕の震えからお互いの力は拮抗しているように見えた。しかし、怪人の力が弱まったのを感じたのか、テグサーは膝を曲げ、後ろに倒れ始めた。突然の出来事に足がもつれさせる怪人。
「うぉりゃあっ!!」
テグサー1はその勢いのまま、雄叫びと共に巴投げの要領で怪人を投げ飛ばした。その勢いは凄まじく、怪人は受け身を取る暇もなく、コンクリートの地面へ激突した。その衝撃は激痛である事は地面の抉れ具合から見て取れるが、それでも怪人は素早く起き上がった。そこにテグサー4の追い打ち、彼女の武器スロットル・ロッドが振り下ろされる。間一髪、怪人はそれを手をクロスさせて受け止める。テグサー4は受け止められた事に臆することなく、蹴りで相手をのけぞらせる。その隙に彼女は距離を詰め、接近戦を仕掛ける。繰り出したのは勢いをつけたドロップキック。そこからテグサー4はスロットル・ロッドで連続して叩く。その連続攻撃に怪人は爪を振るって反撃を始めるが、動作が大きい上に近すぎる為、なかなか命中しない。そのもどかしさにしびれを切らし、怪人は口から光弾を放つ。突然の飛び道具で防御も出来ずにテグサー4は光弾の直撃を前進に受けてしまう。
「きゃぁっ!!」
その衝撃で当たった箇所から火花を散らして後ずさる。距離が離れ、怪人の爪攻撃の有効範囲となり、怪人は爪を振り下ろす。その攻撃にテグサー4は体を捻らせながら、地面に激突。怪人は今一度彼女を襲おうと駆けるが、光弾の反動か怪人は膝を地面に着ける。
「茜、そこから離れろっ!!」
テグサー1は胸のアーマーを開き、撃竜波の構えを取る。だが、その時。
「待って、トウマ!!」
突然のレミーの叫びにテグサー1は砲撃の準備を止めた。すると、怪人はその姿を解き、元の少女の姿へと戻った。その顔には涙が流れ、水の跡が血の跡と共に流れていた。静まりかえった港に、少女は一人呟く。
「やはり、なにもない、戦う事すら出来ない私には自由がないんだ…いいわ、私に止めをさして…でも待って。その前に少しだけ移動させて。今ここでテグサーマンの攻撃を受けたら、後ろの花を傷つけてしまうから…」
そう言って少女はよろめきながら歩いた。その足元にはコンクリートの隙間から、今にも咲きそうな蕾が顔を覗かせていた。
「…あなたもしかして、襲撃に来たんじゃなくて、ジン・ガイア帝国から抜け出したんじゃない?」
レミーの質問に少女は頷く。と、変身を解除したトウマは少女に質問を投げ掛ける。
「なに!?どうしてだ?どうして抜け出したんだ?」
「それは…」
少女は俯いて答えようとしない。代わるように、同じく変身を解除した茜から提案が出された。
「そういえばコイツ、私達と戦う前に怪我してた…トウマ、一体なにがあったかそこの倉庫で聞こうぜ!色々と引っかかる物があるしさ!!」
トウマは頷き、少女に肩を貸して倉庫まで運ぶ事にした。かくして、港は元の静けさを取り戻した。しかし、一つ変わった点がある。それは、その様子を少し離れたコンテナから眺める者…イーヴィル・ディーンの姿であった。
倉庫は長年使われていない為か、錆び付いた天井にはいくつもの穴が開き、そこから燦々と陽が差していた。そこでトウマ達は天井と同じ様に錆び付き、座席が裂けている椅子に少女を座らせた。
「じゃまず、名前を教えてくれるか?アイツだの少女だのじゃ呼びにくいからよ」
「…私の名前はドルカ。ジン・ガイア帝国の軍事位(ぐんじい)に所属しているわ」
トウマの質問に少女ドルカは俯いて答える。今度は茜が質問をした。
「軍事位?戦闘を担当する部署って事?」
ドルカは頷く。
「でも、どうして戦いを選んだ部署の人が抜け出したりなんかしたの?」
「…気になる事があったからよ」
「気になる事?」
「私の中に産まれた、謎の安らぎについて知りたかったからよ…」
「安らぎ?」
「そうよ。ところで、私達がどうやって生まれるか知ってる?」
「え、さぁ…」
「私のこれまでのいきさつを話す前にジン・ガイア帝国について教えるわ。私達は海底に複数生えている植物、始まりの花、ガイアランの蕾から産まれる生き物。それも我々は芽の中で一、二週間の間であなた達の言う子供の期間を終え、人格を形成された状態で産まれてくるの。それで、産まれてからは適性を検査され、士官要員、技術開発要員、戦闘要員、そして生産・教育要員として仕分けられるわ」
「それで、私は戦闘要員として厳しい訓練を積み重ねていた…」
「でも、私はどうしようもない程に落ちこぼれ。同期の皆が卒業、実戦に出ている間にも未だに訓練を続けていた」
「そしてある日、私の元にある報告が届いてきたわ。そう、同期が皆戦死したという報せがね…」
「それから私は人間が憎くてたまらなかった。落ちこぼれだ、役立たずと烙印を下された私を励ましてくれた仲間を殺した人間達を…」
「それからは憎しみを元に必死に訓練を重ねた。仲間を殺した人間を抹殺する為に…」
「それで、先日やっとの事で戦いに出して貰った。そこで私は大勢の戦場で戦った。どんな強敵にも屈せずに、自身の信念と共に」
「でも、そんなある時だった。私はある日他の部隊仲間とはぐれてしまったの」
「私は道も分からずに右往左往と街中、商店街を当てもなく、途方に暮れて歩いていた。夜になり、行き着いた先で、私は素晴らしい光に会えた。それは屋外の音楽堂で私は争いに巻き込まれた人達に向けたチャリティーの音楽だったわ。その場にあった管楽器から流れる美しい音と歌。それを初めて知った、感じた私の眼から涙が流れた…それと共に訪れた安らぎもあった」
「私が今まで涙を流したのは烙印を押されての悔しさと戦いで仲間が傷つき倒れた時だった。でもアレは違う。そういった物の涙ではなかった」
「私はその涙から人間達に興味が湧いたの。果たして人間は私の仲間を殺した敵だけなのかと。人々が自分や他者を癒す為に生み出した文明、相手が自分より弱い者でも助け合う人々。そして、それを選び、実行出来る自由」
「だから私はジン・ガイアを人間を知ろうとした。でも、その事を同僚に打ち明けたら突然、その話を聞いた上官達が私を捕らえて処刑しようしたわ。そこで私は何とか抜け出し、その途中で他の兵士に見つかり怪我を負って、更に防衛軍の手で重傷を負ったの…」
「はは…やっぱり、私の考えって可笑しいわよね…憎い敵に興味を示すなんて…実際、同僚に変だと言われたし…」
「もう話す事はないわ。トドメを刺して頂戴…」
手をだらりと垂らして、降参の意思を示すドルカに茜とレミーは真剣な表情で聞いていた。一方でトウマは苦渋の決断を迫られたかの様な複雑な表情を見せていた。相手は自由を求めて旅立ち、戦いの意思を捨てた者。しかし、彼女の種族は自分の家族と友人を奪った自身の、そしてこれから守るべき人々の笑顔を奪う憎き敵の一味。その時、茜がドルカの前に駆け寄り、その手を強く握りしめた。
「大丈夫!!アンタのその考えは変じゃない、美しい物に涙を流すのは普通の事だよっ!!」
「お、おい茜!?」
突然の言葉にトウマは思わず彼女を引き止めるかの様に叫んだ。すると、茜は二人の方を振り向いた。
「ねぇトウマ、社長!!この人の事救ってあげられないか!?」
「茜…お前…」
「トウマ!!トウマはさっき私に上の奴の言いなりになるなって言ったろ!?ドルカもきっと同じ様に周りから決められた道に押さえつけられて、勝手に烙印を押されているんだよ!!それに、ドルカは戦い以外の道を選びたいと願っている!!それを無下にするなんて可哀想だよ!!」
「それに、テグサーマンは皆の希望なんだろ!?なら、人種関係なしに平和を願うドルカも救うべきなんじゃないか!?」
「それは確かにそうだが…」
「私は今思った!!こうやって手を繋ぎ合えば、いつか戦いが終わり、不幸な目に会う人が減るって!!だからまず、なんらかの対策を考えようぜっ!!」
「…!!」
お互いが手を繋げば不幸な目に会う人が減る。その言葉にトウマの心は動いた。そして気づかされた。彼らには俺たちと同じ意志がある。ならば、対等に手を取り合えば、平和への早期解決が計れ、自分と同じ様な不幸が繰り返される事がなくなると。
「そう…そうだな。自身の周りを守り、戦い抜く事だけが全てじゃないよな…ありがとよ、茜。大事な事に気付かせてくれてよ」
「えへへ~」
茜は満面の笑みで答えた。
「よし、そうと決まれば…!!どこに匿えばいい、社長?」
「そ、そこを私に押しつけないでよっ!!」
唐突な投げかけにレミーは思わず突っ込んだ。そして少し考え込んだ。
「…正直、言っちゃ悪いけど、匿うのは難しいと思うわ」
「えぇっ、なんでよっ!?」
「今の彼女を見るに、相手は必死で彼女を殺そうとしている。もしもどこかの辺境の地、例えば山奥に匿っても始末する奴が必ずやってくるわ。もしそうだとしたら、その周辺に住んでいる人も同時に始末するかもしれないわ…」
「それに、今の世界の考えとしてはジン・ガイア帝国は十年前からの大戦もあって全員敵だって考えの方が大きい。だから、ウチの企業で下手に匿えば世論だけじゃない、国が許してくれないわ。実際、ウチと同じでテグサーマンみたいなのがいる同業者がジン・ガイアの実験目的で怪人級を捕獲したら営業停止処分を受けたそうよ。だからもし彼女を匿えばテグサーマンが…」
「そ、そんな!!それじゃあ社長はこの子の事放っとけって言うのかよっ!?」
淡々と現実を話すレミーの言葉に耐えきれなくなったかの様に、茜は思わず声を荒げた。
「そうは言ってないわよ!!目先の事だけに囚われていたら後々大変な事になるって言ってんの!!」
「でも、今動かなくても大変な事になるだろっ!!社長ってそんなに頭硬かったのかよ!?そんな子だとは思わなかったぜ!!」
「な、なによ!!」
「お、おい!!よせよ、喧嘩すんな!」
険悪な雰囲気になった二人の会話にトウマが割って入った。それでも静かに睨みあう二人。だがその時、一人の歌声が聞こえてきた。
「な、なんだ?」
突然の声に三人は耳をそばだてた。それはドルカの声であった。
「ドルカ…その歌声…」
茜の問いかけにドルカは歌うのを止めた。
「…この歌は私がさっき言ったチャリティーのコンサートで聞いた歌よ。気になってこっそり練習したら出来るようになったの」
「ラー…ラー、ラー…」
その歌声は一度聞いただけとは思えない程、清く、美しい歌声であった。人間側の三人はその歌声に聞き惚れ、先程の口喧嘩が嘘の様に穏やかな表情でしばらく聞き続けていた。ドルカが歌い終わったその時、レミーはハッとある事に気付いた。それは無意識にトウマの手を握っていた事であった。彼女はトウマに悟られないよう、照れながらゆっくりと手を離した。と同時に、茜が二人の前に飛び出した。
「ねぇ、社長!!私達や向こうにもお互いが繋がり、分かり合う意志があると思うんだっ!!だからまずは手本として率先して平和を願う人を救おうぜっ!!私はそれに賭けたい、たとえこの身がどうなっても!!」
茜の強い主張にレミーは目を伏せ、考えた。
「そう、そうよね…歩み寄って来てくれた人を蔑ろになんてしていたら、訪れる平和も来なくなるわよね。分かった、私もその意志に協力するわ。勿論、本部にも掛け合ってね…」
「しゃ、社長…!!ありがとう…!!」
茜はうれしさのあまり、思わずレミーの両手を握りしめた。
「社長、さっきは社長の気持ちも知らずに怒鳴ってゴメンね」
「ううん、私ももっと平和について考えるべきだったわ…」
「おーい、二人とも、握手するなら彼女も入れてやってくれ」
二人に呼びかけたのはトウマ。この輪にはドルカも入れるべきだ。それに気付いた二人は笑顔で彼女を迎え入れた。
「ドルカ、今は理解されずに苦しむかも知れないけど、お互いの平和の為に協力してくれるな?」
茜の提案にドルカは静かに頷く。その頷きは先程の物とは違う、穏やかな動きであった。
「よろしくお願いするわ、茜…」
円陣を組んだ四人は手を折り重ねようと自身の手を差し出した。
だが、その時であった。
茜の背後数十mの大型の窓ガラスが割れ、人ではない何者かが二体、砂埃を上げて着地したのは。
「な、なんだぁっ!?」
四人の中でトウマが真っ先に振り向き、それらを見た。二体は明らかに異形の姿。ジン・ガイアの手の者である事は容易に想像出来た。
「か、彼らはパニッシャーズ…!!まさか、私を始末する為にここまで…」
ドルカは呟いた。その声は先程の歌声とは打って変わって完全に震えあがっていた。
「ドルカ、奴らは何者だ?」
トウマの問いかけにドルカはレミーに寄り添って答える。
「パニッシャーズは私みたいに裏切り、逃亡を企てた者を始末する二人よ…その始末率は確か…100%…」
「気をつけて皆、あっちのハンマーを持ったマンモスはグシャンモス、手が地面まであるがに股足の方はプレゼンター…奴らの能力は…」
「シャァァッ!!」
ドルカが二人の能力を伝える前にプレゼンターが雄叫びと共に両腕をゴムの様に伸ばした。手の先には鋭い爪。それを見たトウマ、茜はドルカとレミーの前に飛び出した。
「「チェンジ、テグサーマン!!」」
二人はテグサーマンに変身し、テグサー1は一直線に伸び続けるプレゼンターの右腕を掴もうと両手を出した。しかし、その腕は手前でぐにゃりと90度上に曲がり、テグサー1の顔面を掴んだ。一方でテグサー4もプレゼンターの腕を掴もうとしたが、掴みそこね、そのまま腹部に直撃、近くの壁に激突した。
「ぐぁぁぁっ、コノヤロー…!!」
テグサー1の顔面を掴むプレゼンターの掌は吸盤の様になっており、怪力でも剥がすのは容易ではなかった。だがそれでも力を振り絞って剥がせば視界が晴れ、上から覆い被さる影に気付いた。それはグシャンモスのハンマーがテグサー1めがけて今にも振り下ろされる瞬間の影であった。
「オオアッ!!」
避ける暇がないと判断したテグサー1はそのハンマーに向けて全力のアッパーを放った。その衝撃でハンマーが後方へ大きく仰け反り、二、三歩下がるグシャンモス。それに対してテグサー1は自身の拳の反動で十数m吹き飛び、近くのドラム缶に激突した。
「ぐっ、コイツら、強い…!!抜群のチームワークだ…!!」
テグサー1はドラム缶を乱雑にどかしながら立ち上がった。その時、グシャンモスの肩にテグサー4が乗っているのを見た。
「やらせない…!!初めて助けたい、守りたいと思った皆をやらせはしないっ!!」
激しい叫びと共に、テグサー4は手に持つスロットル・ロッドをグシャンモスの頭上めがけて突き立てた。しかし、その攻撃はアイスピックで氷を刺す様に、頭頂部を僅かしか削る事が出来なかった。それでも諦めずに何度も突き刺すテグサー4。しかし相手は身動き一つしない氷ではない為、やがてグシャンモスは頭上の者を掴み、思い切り地面に叩きつけた。テグサー4はその場に背中から激突。その衝撃で舞い上がる砂埃。グシャンモスは間髪入れずにハンマーを振り下ろす。しかし間一髪テグサー4は横に転がって避け、その打撃はかするだけで済み、側頭部のマフラーパーツがへし折れるだけとなった。
「大丈夫か、茜?」
テグサー4の元にテグサー1が駆け寄る。
「だ、大丈夫…それより、どうやってあの二人を倒す?」
「アイツらにタッグを組ませるのは危険だ。だから、あのグシャンモスは俺がやる、茜、お前はプレゼンターの方を任せるぜ」
「オッケー、任せてよっ!」
「それじゃ行くか…ゴーッ!!」
トウマの合図と共に二人はお互いのターゲットへ向けて駆け出した。テグサー4の方はスロットル・ロッドを振り回してプレゼンターを何度も叩きつけた。だがプレゼンターは腕を巧みに折り曲げてその攻撃を受け流した。そして一瞬の大振り、その隙を狙ってプレゼンターは右腕の掌を彼女の顔面に向けて張り付けた。
「ぐっ、前が…!!」
なんとかその手を振りほどこうと首を回すテグサー4であったが、強力な吸盤である為、全く剥がれない。その隙にプレゼンターは左腕の爪で突き刺す準備を始めていた。
「…そうやってくっつけてくると思ったぜ。来い、フォーチェイサー!!」
予想通りだと話すテグサー4に一瞬、プレゼンターは動きを止めた。その時、倉庫の入り口から一筋の光が入ってきた。それはテグサー4のバイク、フォーチェイサーであった。無人で走るそれは、彼女の横に滑り込んだ。
「よしよし、しっかりと頼むよ!!」
テグサー4は前が見えないにも関わらず、手慣れた手つきで乗り込もうとした。その様子にプレゼンターはなにかを察し、突如、深く息を吐いた。その息はテグサー4の足に掛かり、やがて石状の固体となって彼女の足に重りとなってエンジンを始動させようとする動きを止めた。
「な、なに!?足が動かないっ!?」
視界が不良な上に足は謎の塊で地面に着地して身動きが取れず。戸惑うテグサー4の背中にプレゼンターの爪が迫る。
「それなら、このまま発進だぁっ!!」
そこでテグサー4はスロットル・ロッドでアクセルを押し、エンジンを始動させて、フォーチェイサーの後部を掴んだ。それと同時に無人のバイクは急発進。テグサー4は足で踏ん張り、その行進に引っ張られる事になった。その後ろでプレゼンターは突然の事で足をもつれさせて倒され、テグサー4と違い背中で引きずられる事となった。地面との接地面で火花が散る両者。テグサー4は曲芸乗りの要領で余裕があるが、プレゼンターはそうはいかなかった。
「うぉぉぉぉぉっ!!」
テグサー4は腕を動かしてバイクを右へ左へと動かした。その度に皮膚が大きく擦れ、プレゼンターは痛みに耐えきれず、手を離した。その衝撃で勢いよく転がる彼の体は、近くの山積みの段ボールに激突する羽目となった。
「よしっ!!」
「やるな、茜…!!」
その様子を横目で見ていたテグサー1はグシャンモスと改めて睨みあった。そして肩のパーツを開き、砲撃・撃竜波の構えを取った。
「よし、一気に決めてやるぜ!!撃、竜、波ぁーっ!!」
胸の砲台から放たれた光線は、グシャンモス目掛けて一直線に飛んだ。狙うは彼の胴体。
「ふん…」
一方でグシャンモスは避ける動作すら見せず、手持ちのハンマーを扇風機の様に回した。その瞬間、それと激突した撃竜波の光線はいとも簡単に拡散され、弾かれてしまった。
「なっ、なに!?」
これに驚いたのはテグサー1。弾かれるとは思わず、撃竜波の光線の放出を止めた。その瞬間、隙が出来たと感じたグシャンモスはハンマーをブーメランの要領で投げ飛ばした。回転しながら飛ぶそれはテグサー1の胸部装甲に激突。その衝撃で彼は近くの鉄筋の柱が曲がる程に衝突した。
「ぐっ…あぁ…」
テグサー1の装甲が堅牢とはいえ、その衝撃は装着している人間にとってかなりの物であった。立ち上がってはみるものの、その動作は非常にゆっくりであった。その隙をグシャンモスは見逃さず、一気に近づき、肩に背負ったハンマーを一気に振り下ろした。間一髪避けるテグサー1。かろうじてであったが、その足はふらついていた。ダメージは足にも響いていたのだ。距離を置いたテグサー1は構え、ガンマンの早撃ち対決の様に対峙していた。二人は感じていた。次で決着をつけるべきだと。
「つおぁっ!!」
僅かな静寂の後、最初に駆け出したのはテグサー1であった。グシャンモスは臆することなく、ハンマーを腰に付けた。迫るテグサー1。そしてハンマーの射程にテグサー1を捉えた瞬間、一気に横へ振り回した。
「そこだっ!!」
横から迫るハンマーの猛威にテグサー1は足で急ブレーキをかけ、目の前を通過するハンマーヘッドに両手をかけた。そして次の瞬間、前方倒立回転でハンマーヘッドの上を乗り越え、そのまま一気に踵落としをお見舞いした。
「グゥッ!!」
予想外の攻撃に防御する間もなく、踵落としが直撃したグシャンモスの頭からは火花が散った。
「この距離ならハンマーは上手く回せねぇだろっ!!」
懐に入ったテグサー1。今度は手を組んで強烈なハンマーパンチを見舞った。再度火花が散り、グシャンモスの頭部はその衝撃で僅かにヘコんでいた。
「グゥオオオーッ!!」
強烈な連続攻撃にグシャンモスはハンマーを手から離し、雄叫びをあげながら敵の脚を掴もうとした。だがその瞬間、テグサー1は宙を舞った為、グシャンモスは彼の脚を掴みそこねた。そしてその隙にテグサー1は最後の一発と言わんばかりに再度強烈な右ストレートをグシャンモスの鼻に放った。衝撃音が室内に響く。
「アアウ…」
その圧倒的な破壊力に後ずさるグシャンモスに、見事地面に着地したテグサー1。
「もう諦めろ、これからの平和の為にドルカは俺たちが守るっ!!」
警告するテグサー1。それに対し、グシャンモスはニヤリと不敵な笑みをこぼした。
「ふん、人間共め…そっちから迫って来た癖になにが平和だ…」
「しゃ、しゃべった…!?いや、そんなことより、そっちからって、どういう事だ!?」
「なんだ、知らんのか?何故我々が急に高度な知識を得たのかを…」
「かつて海底より中途半端に産まれ、未来島を襲った時の我々は獣と同レベルの知能しかなかった。だがある時、人間共は我々を調べる為に未来島へ乗り込んだのだ」
「だが、奴らは調べるだけでなく、我々を圧倒的な火力兵器で我が同胞の蹂躙を始めた…!」
「そこで我々は生きる為、奴らの知識を取り入れ、急速に高度な自我を形成した。そしてその自我は組織を造り、国となった」
「つまりだ、貴様ら人間共が余計な事をしなければ十年間に渡る世界規模の争いはなかった…という訳だ」
「…」
何故ジン・ガイア帝国がこの短期間でここまで大きくなったのか。当人から初めて聞かされたトウマはしばらく無言であった。
「俺はそれを知ったから人間共を徹底的に滅ぼし、邪な事を考える裏切り者は始末するこの部署に入っているのだ。さ、話は以上だ、人間が悪いっ、と思ったら大人しくドルカをこちらに…」
「例えそうだとしても…」
「あん?」
『トウマ』の割り込んだ呟きにグシャンモスは威圧感を溢れさしながら聞き返した。
「例えそうだとしても、お互いの平和を願う者を滅亡を願う奴に手渡す訳がねぇだろ!!俺は皆を守りたい、だが、その絆を滅ぼそうとする奴は容赦はしないぜ!!」
「…ケッ、我が儘で一方的な事を抜かしやがって!!いいだろう、その思想、このハンマーで粉々に打ち砕いてくれるわっ!!」
「来いっ!!」
お互いの意志を確かめ合った二人は構え、駆け出した。そしてお互いの拳とハンマーがぶつかり合う、その時であった。
「各員、散開しろっ!!」
「ゴーッ、ゴーッ、ゴーッ!!」
大勢の乾いた足音と共に、十数人のメニーが入り口から駆け込んできた。メニーは軍のプロフェッショナルらしく、最小限の動きで素早く横一列に整列し、銃を構えた。その銃口が狙うのはグシャンモス、プレゼンター、そしてドルカ。
「動くな、ジン・ガイアの怪人級!!ここは完全に包囲されているぞっ!!大人しく我々に駆逐されるがいいっ!!」
隊長格であろうメニーが拡声器で殲滅を宣告する。それに対し、プレゼンターは「ケッケッケッ」とあざ笑い始めた。
「お、おい動くなっ!!動けば…」
メニーの隊長格が言い終わる前にプレゼンターは脚をバネの様にして飛び上がり、一瞬の動揺を狙って腕を伸ばす。その腕は横一列に並び続けるメニーの、中心の隊員の肩を貫いた。
「ぐあっ!!」
「うわぁっ!!」
突然の攻撃に驚愕した他の隊員達は蜘蛛の子を散らすかの様に列を一気に乱し始めた。その中で銃を乱射するメニー達。しかし、全く歯が立たず、プレゼンターの手によって殴られ続け、一方的に蹂躙されるだけであった。
「くっ、やべぇっ!!」
テグサー1はメニーを助けようと駆け出した。しかし、背後からグシャンモスのハンマーが襲いかかる。
「て、テメェ、邪魔すんじゃねぇっ!!」
「フッフッフッ…」
一方でテグサー4はテグサー1より一足先にプレゼンターの元に背後から接近していた。
「こ、このぉっ!!」
「ケェーッ!!」
テグサー4は背後から不意打ちを仕掛けた。が、あっさりと感づかれ、肘打ち一発で吹き飛ばされてしまった。
「あうっ!!」
砂埃をあげて後方に倒れるテグサー4。アイツをどう止めるか。彼女がそれを考えたその時、遠くの入り口からある人がメニーの一人と共にいる事に気付く。
そして、その顔をよく知っていた為に思わず呟く。
「お、お父さん…?」と。
「大樹博士、あそこにいる怪人級を狙いましょうか…?」
「そうだな、なぜ禄に動いていないか知らんがチャンスだ、やれ」
「ハッ」
大樹の近くにいたメニーの隊員は手に持っていた狙撃銃、それもマガジンがシリンダー状になっている銃の照準をドルカに合わせ、銃弾を発射した。
「ぐぅっ!?」
銃弾はテグサーマン達の戦いを見守っていたドルカに容赦なく突き刺さった。
「う、うぅぅ…」
「ドルカ、どうしたの?」
突き刺さってからすぐに顔が青ざめ、うずくまるドルカ。心配したレミーが駆け寄って話しかける。しかし。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
「ドルカッ!!」
ドルカは聞く耳を持たず、その場にのたうち始めた。目の前で右に左へと暴れるドルカに止める事が出来ず、レミーはその場でオロオロと叫ぶだけであった。
「ま、まさか…!?」
ドルカが暴れ始めた一連の原因。目撃していたテグサー4は大樹に詰め寄った。
「お父さん!!ドルカに…あそこにいたジン・ガイアの人になにしたの!?」
「ん、その声は茜か…なに、大した事じゃない。今、軍で開発中の対ジン・ガイア人向けの猛毒弾を撃っただけだ」
「も、猛毒弾…!?なんて事を…!!」
「なんだ、私の開発に文句を言うつもりか?」
「そうじゃない…!!お父さんが今撃ったあの子に侵略の意志はない、それどころか平和を願っていたの…!!それなのに…それなのに…!!」
「ふん、人間に害をなす化け物など全て敵だ。それに、倒せる者を今倒さないでいつ倒す?そんな風に手をこまねていたら私の開発の沽券に関わるだろう…」
「アンタは、アンタって人は…!!」
テグサー4は更に詰め寄った。その険悪な雰囲気に大樹は一歩下がった。その時であった。
「キャアッ!!」
レミーの甲高い叫び声が倉庫中に響き渡った。二人が振り向くと、ドルカが怪人の姿のまま、レミーに襲いかかっている光景であった。
「社長!!」
テグサー4は全力のダッシュでレミーに向けて駆け出し、彼女に近寄ってからすぐに抱きかかえ、瞬足で大樹やメニー達の元へ戻った。
「グゥゥゥ…グァアアアアッ!!」
目の前のレミーがいなくなってもドルカは闇雲に爪を振り回していた。その光景にレミーは戦慄する。
「い、いったい何があったの…?」
「実は…」
テグサー4はレミーにいきさつを説明した。
「そ、そんな…!!ドルカは誰も襲わずにずっと私の事を守ってくれたのに…!!」
事情を理解したレミーは大樹に詰め寄った。
「あの子には侵略や攻撃の意志はなかった…それは私の側にいて守ってくれたあの状況を見れば分かった筈…」
「もしかしたらあの子はこの戦いが終わる架け橋になったかもしれないのに…それなのに、アンタは自分の名誉の為だけ考えずに攻撃を仕掛けた…そんな事をして、恥ずかしくないの!?」
彼女の激しい詰め寄り。しかし、大樹には冷徹に返す。
「ふん、そうは言うが君の所は公的な場でもない癖に父親の権力を使って戦場へしゃしゃりでているじゃないか。他の企業もしているとはいえ、企業アピールをして恥ずかしいと思わんかね?」
「私は戦いで企業をアピールしたつもりはないっ!!ただ、色んな人達が帝国に蹂躙される様を見て、黙っていられなかっただけよっ!!」
「ふん、口ではなんとも…」
すると、レミーの背後から「キシャアッ!!」と甲高い雄叫びが聞こえた。見ると、テグサー4とドルカが取っ組み合っている姿があった。
「ドルカ、止めて!!これから色んな物に触れあって来るんだろ!?ここで暴れたら、それが出来なくなっちまうぞっ!!」
「グゥゥゥ!!」
テグサー4の必死の説得も空しく、ドルカはもがき続ける。その様子にテグサー1は二人に向けて「茜、ドルカ!!」と叫びながら走り出す。しかし、そのボディにプレゼンターがだっこの要領で張りついてきた。
「く、この野郎!!邪魔すんじゃねぇっ!!ぶっ飛ばすぞ!!」
テグサー1の脅しに関せず、プレゼンターは不敵な笑みで張り付き続ける。すると、グシャンモスが「パオッフフフフ…」と、テグサー1の背後で笑い始めた。
「テメェ、なにが可笑しい!?」
「フッ、いやなに、我々が手を下さなくてもドルカは進化を発揮するとは思わなかったんでな…」
「なに、どういう事だ!?」
「結論から言おうか。ドルカはガイアランから産まれ、ただ育てられた戦士ではない。そこから更に強化させた改造種なんだよ」
「改造種!?」
「そうだ、閣下はお前達テグサーマンを参考にされてな。役に立たないアイツを感受性を高めさせ、怒りや憎しみといった負の感情によって力を蓄える性質を持った戦士に改造したのだよ」
「そ、それじゃ、アイツがコッチの文化や優しさに触れたのは…」
「そうだ。改造によって植え付けられた感情が変化した物だ。だが閣下はその不要な感情を高めさせるのを危険視した為、処刑、始末を俺に頼んだ…という訳だ」
「だが、幸運だな!!その感情があの人間の毒物によって一気に爆発するとは思わんかった!!この点を報告して、戦いをもっと有利に、そして過激にしてやるぞ、ウワッハハハハ!!」
「な、なんて事を…!!許せねぇ…!!勝手に貪った挙げ句、自分の都合で勝手に始末するなんて絶対に許せねぇっ!!」
テグサー1の爆発した怒り。それは力となってプレゼンターを一気に引き剥がし、グシャンモスに向けて思い切り投げ飛ばした。
「フン、そう思っても俺達二人を相手に出来るのか?」
グジャンモスは張り付いたプレゼンターを放り投げテグサー1を睨む。
「やってやるぜ、来いオラァッ!!」
両者の第二ラウンドが始まった。
『待って下さい、トウマさん!!』
と、突如、テグサー1に通信が入ってきた。それは飛田であった。
「飛田!!今どこにいるんだ!?」
『僕達は今、三人でそちらに向かってます!!それより、モニターで話は全て把握しました!!トウマさん、そちらに新必殺技をインストールさせたんで使って下さい!!』
『技のコードは…撃竜拳!!』
「了解した…撃竜拳!!」
コードを認証したテグサー1。その右手には蒼い炎がメラメラと宿る。テグサー1は拳を固く握り、敵に向けて左半身を向け、左手を前に突き出し、右手を奥に構える。
「ム、このエネルギー反応は…!?」
グシャンモスが驚愕したその時、横からプレゼンターが駆け抜けた。その表情は怒りに満ちていた。
「ケキャー!!」
「お、おい待て!!行くな、危険だっ!!」
グシャンモスの必死の呼び止め。しかし、プレゼンターは聞く耳を持たず、テグサー1に向けて走り、爪を光らせる。
「キシャアッ!!」
プレゼンターはテグサー1に爪を振り下ろした。
「うりゃああっ!!」
だがテグサー1は爪に臆する事なく飛び上がり、右の拳で強力な打撃、撃竜拳を振り下ろした。
その攻撃は蒼き炎の力とスピードが乗り、爪が到達するより早くプレゼンターの身体にクリーンヒットした。
「グェアーッ!!!」
撃竜拳のエネルギーが直撃したプレゼンターは大きく後方に吹き飛び、後ろにいたグシャンモスにぶつかった。それでもプレゼンターは吹き飛び続け、二人一緒に奥の扉に激突、そのダメージでプレゼンターは爆発した。
「ぐ、ぐぅぅぅ…俺のハンマーが…!?あぁっ!!俺のか、顔がぁぁっ!!」
爆発をモロに受けたグシャンモス。仲間の死より先に、ハンマーがへし折れた事と、顔がへしゃげている事に叫び声を上げていた。
「お、おのれぇぇ…!!」
悔しがり、立ち上がるグシャンモス。
「ぐ、グハァ!!」
しかし彼は大きくよろめくと同時に、大量の血反吐を吐いた。
「ぐ、くそぉぉぉっ!!聞けテグサーマン!!どうせドルカはもう元に戻らん!!ああなったら、死ぬまで直らないのは研究の結果で出ているからなぁ!!撤退する!!」
「ま、待ちやがれ!!」
テグサー1は駆け出したが、グシャンモスが投げた閃光爆弾の激しい光に一瞬躊躇した。そして、次に眼を開けた時にはもう既に敵はいなかった。
「クソ、逃げられたか…そうだ、それより、茜は、ドルカはどうなった!?」
9-4
二人を心配したテグサー1は彼女達の方を振り向いた。そこには負傷して引き下がるメニー達と、全身が傷ついても、なんとか止めようと食いしばるテグサー4の姿があった。
「グァアアアア!!」
「止めろ、ドルカ!!止めてくれーっ!!」
彼女の必死の叫びと踏ん張りも空しく、獣となったドルカはテグサー4の側頭部に爪を振り下ろす。その衝撃で側頭部に付くマフラーがへし折れた。
「ぐあっ!!」
攻撃を受けたテグサー4は思わずドルカに抱きついていた腕を放した。それを合図にするかの様にドルカは駆ける。その先にいるのは…大樹であった。
「し、しまった!!待って、ドル…」
ドルカを追いかけようとテグサー4は走った。しかし、長時間踏ん張っていた足は本人が思っている以上に負荷が掛かっており、大きくもつれて、激しく転倒した。そんな中でもドルカは大樹目掛けて駆け続ける。
「や、やべぇっ、やべぇぞっ!!」
テグサー1は慌てて走り出した。しかし、テグサー4より後ろにいる彼はドルカに追いつけないのは誰の目から見ても明らかであった。
「キシャーッ!!」
そして、ドルカは遂に大樹の元で飛び上がり、その鋭い爪を彼に目掛けて振り下ろした。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
「キャアッ!!」
目の前に迫る脅威に大樹と横にいたレミーは叫んだ。
「お、お父さーん!!」
叫んだテグサー4は思わず眼を背けた。しかし、それでも現実を直視しようと、もう一度正面をゆっくりと見つめた。その先にあった光景に、思わずテグサー4は驚愕の声を漏らす。
「こ、これは…!?」
その光景は予想外の光景であった。その場で尻餅をついている大樹。身を伏せるレミー。そして、右手の爪を左手で抑えるドルカの姿であった。
「に、逃げ…テ」
抑えている左手から血を滴らせながら、ドルカは消え入りそうな声で大樹に呼び掛けた。その声に反応した大樹は慌てて立ち上がり、その場から這う様に走り去る。レミーも彼の後を追った。
「ド、ドルカ…アンタ、もしかして…」
もしかしたらドルカは正気に戻ったのではないか。そう考えたテグサー4は引き返してそっと彼女に近寄った。しかし、その希望は脆くも一瞬で崩れ去った。ドルカは振り向くと同時にその爪でテグサー4の胸を切り裂いたからだ。
「ぐぅっ!!」
予想外のダメージで後方に大きく下がる。思わず、悲しみの声が漏れ出した。
「や、やっぱりダメなのか…!?でも、嫌だ、倒したくないっ!!でも、どうすれば…」
「トドメヲ…オネガイ…」
「えっ!?」
ドルカが必死で絞り出した言葉。その前にテグサー4は思わず聞き返した。
「そ、そんなの出来ないよ…」
「オネガイ、コノママジャ、ミンナヲ…ミンナヲォォォォォォォッ!!」
叫びを最後にドルカはもう一度暴れ始めた。口から放つ球状の光線は屋根を破壊し、柱を折り、そこから崩れた物達はメニー達を襲った。その悲惨な光景にテグサー4は拳を握りしめる。
「わかったよ、ドルカ…アンタがそう願うなら…私がやるっ!!来い、フォーチェイサー!!」
テグサー4に呼ばれたフォーチェイサーは自動運転で彼女の元へ辿り着いた。それに乗り込むテグサー4はバイクのフロントを新幹線の連結器の様に開き、砲身を展開させた。
「ターゲット・ロックオン…!!狙いは…ジン・ガイアの怪人級…!!」
フォーチェイサーの砲身にエネルギーが集まる。そしてそのエネルギーが臨界点まで達した時、テグサー4はスロットル部分のスイッチに指を重ねた。
「さよなら、ドルカ…」
「スロットル・キャノン!!」
テグサー4は一気にスイッチを押した。それと同時に砲身からは一気にエネルギーの光線が一直線に放たれた。この瞬間、テグサー4はもう一本一直線の光線が横から閉口に放たれている事に気がついた。
振り向くとそこには、テグサー1が撃竜波を放つ姿があった。
「グゥゥゥアァァァァッ!!」
スロットル・キャノンと撃竜波。二本同時に直撃したドルカは絶叫と共に倉庫の外まで吹き飛ばされた。
「ドルカーッ!!」
テグサー4から変身を解除した茜は倉庫外まで駆け出した。その後をレミー、トウマが追う。
「いた…ドルカ…!!」
外に出た茜はダメージで人間の姿に戻ったドルカの元に駆け寄り、彼女の右手を握った。
「ゴメン、私…私…!!」
強く握る茜の左手。すると、彼女の手をドルカは左手で優しく握った。
「いいのよ、茜…僅かな時でも、あなたに会えてよか…った」
微笑みながら話すドルカに茜は安堵の表情を見せた。しかし、微笑んだままドルカの瞼はゆっくりと閉じ、それと共に左手は静かに地面に降りた。
「ドルカ…」
その姿に茜の瞳は潤み、大粒の涙を流し始めた。
「ドルカ…ドルカァァァァァァァー!!う、うぅぅ…」
茜は冷たくなったドルカの手を強く握った。
「ヒック、ヒック…こんなの、こんなのあんまりだわ…」
後ろで見ていたレミーはトウマに顔を押しつけ、涙を拭った。その姿にトウマは強くうなだれた。悲しみに包まれる三人。その横では、ドルカが守った蕾が花を咲かせていた。陽の光を浴び、海に向かって静かに見つめるかのように。