ライン生命生態課所属e分類の1番隔離指定研究対象 作:e-2
今週も二話投稿したので、前話を読んでからいらっしゃってください。
最終話です。
「あ、え、ミュルジス……?」
視線が交差する。
アナスタシアは首を傾げていた。俺が不思議なくらいに吃っていたからだろう。
ミュルジスの笑顔が偽物だと気づかずに、俺を許したのだろうとでも思っているんだろう。
「あたしだから、ダメなの?」
ミュルジスは何でもないことのように言った。声はハッキリとして、震えてなんかいなかった。怒っているのか、それとも他の感情なのか、そんなことすらわからない。
「ターシアはいいの?」
ミュルジスの隣に居座ることは拒絶したくせして、俺はアナスタシアの横で笑っていた。ミュルジスにしてみれば、確かに理解できないだろう。
アナスタシアに罪悪感を抱かない理由、か。
率直に言うなら、俺がクソ野郎だから、だろう。アナスタシアはアークナイツに登場しないモブ職員だ。原作でどうなっていたかなんて知らない。本来のアナスタシアを知らない。
だから俺は歪めたって罪悪感がない。好きになってくれるなら好都合とさえ思えるし、今この時にチートがなくなって俺を嫌ったなら、俺は受け入れられないだろう。
ライドのように不幸にしてしまったなら別の話だが、そうでないなら、きっと俺は罪悪感を持てない。
素直に吐露してしまいたい。俺が原作のミュルジスを知っていて、だからそれを目指してしまったんだと。
しかし、ミュルジスは前提を知らない。
何も言えなかった。
「答えられないの? そう、それならそれでいいわ。どうせ関係ないのよね。それを知ったって、あたしに出来ることは一つしかないもの」
表情の変化まで嘘臭い。被った仮面の下がわかるほどではなくとも、それが偽物だということくらいは判別できる。
ミュルジスの言葉に内心恐々とする。そんなに取り繕って、いったい何を思っているのか。まさかミュルジスに嫌われたのか? ——それだけはない、と言い切れる。
「お願いがあるの」
お願い。何を求めているのだろうか。
ミュルジスが一歩近付いた。
「あたし、と……」
淡々と話していたのが初めてつっかえた。今の今まで耐えられていた仮面が決壊する。その顔に浮かぶ感情の名前は、どうやら俺が予想していたそれとは全く違ったものらしい。
切ない。
ただそれだけをミュルジスは感じている。
伸ばした手がどうにも届かなくて、大切な何かが奪い去られてしまうのだ。
ミュルジスの心は絶えず押し寄せる胸痛に歪んでいて、それは俺やチートが与える影響よりずっと、存在してはいけないことのように思えた。
「ねえ、ジズ。お願い」
倒れ込むように膝を折った。縋るように——いや、まさに縋っていた。ミュルジスは俺の足を抱きしめるようにして離さなかった。
「あたしと、生きて欲しいの」
頭の中が困惑でいっぱいになる。怒っていたのではなかったのかと、どうしてそんなことをと、疑問で埋まって動けなかった。
ミュルジスは俺の足を抱えて俯いている。
顔が見えない。
何を思っているのか、わからない。
「あたしといることがジズにとって正しくない、そう言われたってしょうがないじゃない。あたしにはジズが必要なの、あたしの人生にはジズがいなくちゃいけないのよ」
アナスタシアに助けを求める。
こっち見ないでください、知りません。
そんな風の言葉が顔に書いてあった。
俺が対処すべきだとは分かってる。しかしそれ以上に何を言えばいいか分からない。静かに聞いているだけでいいのか? そんなことすら分からない。
「ジズは、ターシアと話している方が楽しいのよね。でも、あたしはジズと話している時が一番に心地いいのよ」
ぎゅう、と強く。
それは俺に向けての言葉ではない。ミュルジスは大地に嘆いているだけだ。滂沱たる感情を抑えきれなくて、そのままでは崩れ落ちてしまいそうだから、俺の足を掴んで離せない。
「ジズにとってあたしは一番じゃなくたって、ジズはあたしの一番なの。だから、ねえ、あたしを優先してよっ……!」
吐き出すようにそう言った。
ミュルジスは俺に怒っていたはずだ。
どうしてこうなっているのか。
「落ち着け、ミュルジス」
感情が弾けている。それは分かったが、頭が追いつかなかった。熱量に圧倒されるばかりで思考と口が回らない。
ミュルジスは俺にとって一番の存在だ。それが揺らぐことは今後一切ないだろう。ミュルジスを優先しないことだってありえない。
それを言うべきだと分かるより先に、ミュルジスが次の言葉を吐いた。
「あたしだけのジズになって、あたし以外に心開かないで。あたしから離れていかないで、ずっと一緒にいて。これが本心なのよ。……笑っちゃうでしょ?」
今にも泣き出しそうな声だった。
顔は見えないが、だからこそ震えていることがよくわかった。
「それなら、どうして俺を外に」
「あたしとジズはずっと一緒だって思い込んで疑わなかったのよ。あなたは、あたしがいなくたって生きていけるのにね」
「それは……」
大きく引っかかる。
俺がミュルジスなしで生きていける、ミュルジスは俺がいなかったら生きられない?
「逆じゃないか?」
ばちん、と何かがおかしくなった音が聞こえた。ミュルジスが顔を上げた。頬に流れている涙が場違いに思えるほど、ミュルジスの顔には何の感情も見えなかった。
「どうして、そうやって、決めつけるの?」
人形のようだった。感情が欠落した声は背筋をぞわりと撫でていった。ミュルジスは感情の限界値を迎えていた。
「ジズがいなきゃ生きていけないって、何度も言ったわよね。どうして信じてくれないのかしら。何が信じられないの?」
「……ごめん」
「ジズはきっと、あたしから離れたいのよね。だからあたしを一人にしようとしてそんなことを言い続けてる。何か間違ってる?」
そんなつもりではなかった。そう言って許されたかったが、とうにその資格は剥奪されていた。
弁解しても意味はないだろう。そうとしか見えない振る舞いをして、否定ばかりするくせに理由がないのだから。
「今までハッキリさせられなかったのはあたしのせいよね。でも、今は、あたしの言葉を無視しているとしか思えないわ」
苦虫を噛み潰した。
いっそのこと、今、転生とかチートとか、一から十まで説明するべきか? チートに歪められて原作から離れてしまうことが嫌なんだ、と。
まあ、無理だろう。ミュルジスは俺の言葉を信じられない。間違っていると決めつけることはないだろうが、だからと言ってそのまま受け入れるには非現実的が過ぎる。
それに、言い出しにくいのはそうだが、これまで何も言わなかった俺が急に話すのも不自然だ。
黙り込んだ俺に、ミュルジスはようやく表情を取り戻した。俺の手を取って強く握る。
「お願いだから話を聞いて」
繋ぎ止めるように握ってくれる。
「あたしはジズが思うような強い人間じゃないの。どうしてあなたが正しくないと思うのかは分からないけど、あたしはもう、ジズがいなきゃだめなのよ」
どうしてだろう、幼い頃のことを思い出した。いつのまにか俺の手を取ってくれていた少女のことを。
痩せ細った手には上手く力が入らなくて、だから彼女ばかりがしっかりと繋いでくれていたんだ。
ああ、今目の前にいる彼女だって、俺を繋ぎ止めるために握ってくれているんだろうか。
——そうだとしたら、さっきの俺はいったい、何を考えていたんだ?
「あたしのことを、信じて」
ミュルジスの言葉を素直に聞けないことに、転生やチートが関係あるのか? 全くない。ありえないに決まってる。それは俺の責任でしかない。
俺が無神経な言葉を言った。その理由は転生したからじゃない。チートがあるからじゃない。
ただ、俺が馬鹿だったからだ。目の前のミュルジスが言っている言葉を信じられずに、「ミュルジスは強い」と押し付けたからだ。
原作のミュルジスは強かった。だからミュルジスにはそうあってほしい。それを告げて何になる?
俺が今ここにいるミュルジスを見ることが出来ないでいるのは、全く違う理由だろう? 責任を他に押し付けるのか?
まるで何も変わってない。違うんだ、俺が言うべきはそんな否定の言葉じゃない。ミュルジスを悲しませる言葉じゃない。
——答えを出すんだ。
「ミュルジス」
「信じられないなら信じさせてみせるわ。だから、あたしから、離れていかないで」
「ミュルジス、俺は」
パッと手で制される。
「待って。ええと、その、ちょこっとだけ待って。何も言わないで。黙っていて」
そう言うと、ミュルジスは立ち上がって背を向けた。深呼吸しているようだ。俺の真剣な様子を感じ取ったからだろう。今後の趨勢を決める返事だ。そうもなるか。
「あのね、ジズ。もしあたしを置いていったら、なんて卑怯な話をするつもりはないわ。それで迫るのはやっぱり違うじゃない? でも、事実として一つだけ、その、あなたがいなくなったらあたしは……」
振り返ってすぐ、ミュルジスはまた話を始めた。何やら長くなりそうだったので遮らせてもらう。
「ミュルジス、俺の話は」
「待って。まだ、もうちょっとだけ、話をさせて。結論を急ぐのはだめよ。軽率に答えを出しても良いことはないわ。だから、待って」
「違うんだ」
「何も間違ってなんかないのよ、ジズ。だからお願い、話を聞いて」
「話なら聞いた」
「聞いてないし、分かってないわ! ジズが確実にあたしを選んでくれるって思えるまで話を続けさせて」
それが本音か。
「いや、だから」
「『だから』も『でも』も要らないわ。まだ何も言わないで、じっくり考えてから結論を出して欲しいの」
「ミュルジス! 俺を信じてくれ!」
「それでお払い箱にされたら笑いものよ! 最善を尽くしたいの!」
「いいから聞けって!」
立ち上がって肩を引っ掴むと、ようやくミュルジスと視線が合った。これから死刑宣告でもされるかのような顔だ。
まあ、確かに、構造課との実験を主導したり、正しくないとか言ったのは悪かった。それなのに信じてくれと宣うのは馬鹿らしいかもしれない。
ただ、ミュルジスを2番目に置いたことは一度だってない。いつだって一番に考えていたはずだ。それだけは認めてくれたっていいじゃないか。
精一杯穏やかな声を出す。
「俺が間違ってたって分かったんだ。正しくないとか勝手に言って、ごめん。ミュルジスに理想を重ね合わせて、俺なんか必要ない人だって思い込んでた」
「……そんなあたしの、どこが理想なのよ。寂しくって見てられないわ」
原作より弱い。それが今のミュルジスだ。俺という半端な支柱があったせいで強くなれなかった。それを認めるべきだ。
以前の俺なら耐えられないことだったが、今となってはもう諦めるしかない、そう思える。なってしまったものはしょうがないし、それに、俺はそんなミュルジスのことも愛しているから。
「必要だって言ってくれるなら、俺は応えたい。俺がミュルジスの夢に不可欠なら、俺がいることで幸せになってくれるなら、そうしたい」
ミュルジスを幸せにさせられるのは俺じゃない。歪めてしまうことを禁忌のように思っているなら、それは確かにそうなんだろう。
しかし、既にミュルジスは歪みきっている。修復不可能なくらいの別物になってしまった。それなのに遠ざけるのは罪を重ねているに等しい。
本当の幸せを見つけるまで、俺はミュルジスを幸せにさせなければいけない。ロドスと、ドクターと出会うまで、俺はミュルジスを支えよう。
「俺の一番は、昔から変わらない」
ミュルジスは理解が追いついていないらしい。
呆けて、小さな声で繰り返して、ようやく期待が目に戻ってきた。顔が朱色に染まっていく。
「それって」
頷こうとして、少し恥ずかしくなった。今までの俺は正反対のことを言っていたからだ。
ロドスには「どの面下げて来たんだ」と思われるようなオペレーターがそれなりにいたが、俺はそこまで鉄面皮になれない。
前を向いたからと言って、ミュルジスを悲しませたことを忘れてはいけない。俺が間違えていた事実が無になることはない。「その隣に居座らせてほしい」なんて言葉は似合わない。
俯いた。それから、ほんの少しだけ勇気を出して、ミュルジスの目を真っ直ぐに見据えた。
綺麗な輝きが俺を覗いていた。
「隣にいることを、許してくれるか?」
期待に満ち満ちていたミュルジスは一転して呆れたような顔になる。やれやれだ、とでも言うように首を振る。
「あたしの話、聞いてなかったの? 一から十までもう一度話してあげる方がいい?」
そう言ってこれ見よがしにため息をつく。
間違えてしまったと思った次の瞬間に、ミュルジスはニヤッと悪戯っぽく口元を歪めた。
「……なんて、どうでもいいわね」
そして、笑った。
「答えはイエスに決まってるでしょ、ジズ!」
大輪の花を見せてくれたあと、ミュルジスは感極まったように俺を抱きしめた。コロコロと変わる表情に翻弄されていた俺は動揺して、どうにか後ろに倒れることだけは耐えた。
そんなに幸せそうな笑顔をしてくれるとは思っていなかったのでかなり照れくさい。ハグのおかげでお互いの顔が見えなくて助かった。
「本当、待ってたんだから」
……これは、抱きしめ返していいのか? そうだとしても、どこに手を置けばいい? 経験がなくて本当にわからない。今の俺はひっくり返った虫みたいに手を突き出している状態だ。
「ジズ、愛してるわ」
「……俺も、愛してる」
アメリカンな人って全員こんな感じなのだろうか。いや、そもそも答えてよかったのか? ミュルジス、アナスタシア、俺に一般常識を教えてくれ。
アナスタシアはにこにこと笑っていた。
ふふふふふと声が聞こえてきそうだった。
居心地が。居心地が悪い。
背に手をやって何の反応もないってことは正解なのか? 考えすぎているのか? もう何もわからない。分かるのはただアナスタシアが俺を見て楽しんでいるってことだけだ。
「もう離さないんだから」
「その通りだ、離れない。離れないから、その、ミュルジス。ちょっとやめないか?」
キャパオーバーだ。そう言って狼狽える俺に何を思ったか、抱きしめられる力が強くなった。
どうせ意地悪な笑顔を浮かべているに違いない。照れているだけだと分かってくれるのは嬉しいが、そこから悪戯に走るのはやめよう、俺が耐えられない。
アナスタシアに助けを求める。変わらずとても良い笑顔を浮かべていた。ああ助けにならないな、とよく分かる微笑みだった。両手でサムズアップするな、こっちに向けるな。
百面相の俺にアナスタシアは小さく笑うと、感慨深そうな目をして言った。
「主任もとうとう入籍ですか」
えっ。
「えっ」
「えっ?」
「うっ」
上から順番に、理解できなかった俺の声。顔を勢いよくアナスタシアに向けて聞き返したミュルジスの声。ミュルジスの頭が顎にクリーンヒットした俺の声。
アナスタシアは不思議そうに首を傾げた。
「あたしだけのジズになって、とか、ジズがいなくちゃ生きていけない、とか。プロポーズですよね?」
「そう、なの?」
「ミュルジス、落ち着こうか。俺に聞くのが一番意味分からないからな」
「ジズはどうしたいのかしら?」
言葉に詰まる。
結婚だって?
思わず否定しそうになった口を噤む。
俺はそんなことを全く思っていなかったが、万が一ミュルジスがそういうことを考えて言っていたのだとしたら、このまま鯖折りにされかねない。それくらいはわかる。
ミュルジスは俺のことを家族として好きでいてくれるのだろうと思っていたし、そう言えばいいとも思っている。
しかし、チートの存在がそれを揺らがせてしまう。自意識過剰ではなく、事実としてチートを持って転生しているのだからそれを考慮しなければいけない。
選んだ答えは、俺にしては上出来だった。
「そうやって揶揄うのはやめてくれ」
「あら、ごめんなさい。そうね、それなら——あたしと結婚、してくれる?」
ミュルジスは意地悪だ。小悪魔だ。俺がどれだけ困るか、分からないはずないだろうに。
もう嫌だ。異性として意識してしまいそうになる。余裕がない。心臓が耐えられない。口から血を吐きそうなくらいに強く脈を打っている。
ミュルジスを睨む。顔が見えたなら、きっと性格の悪い笑みを浮かべていて、それを見て俺は安心できたはずだ。切実に、やめてくれないかと思う。本当に、好きになってしまいそうだ。
とは言え、そんな感情さえ抑え込めてしまえば、ミュルジスは分かりやすい。俺のことを純粋に揶揄っているだけだとよく分かる。
「しない」
端的に言って引き剥がした。
アナスタシアの隣に座って、ようやく緊張が解けた。ミュルジスの顔が見えないと分からないことが多すぎる。余裕がない俺を容赦なく揶揄ってくるものだから、疲れる。
まあ、冗談が言えるのは余裕がある証拠か。そう思えば悪くないのかもしれない。泣いているミュルジスを見るよりはずっといい。
はぁ。深く息を吐いた。
「ターシア、そこを代わってくれるかしら」
「落ち着いてからの方が良いと思いますよ」
背もたれに体重を預けると、力が抜けていく。
俺が原作を目指し始めたあの日から随分と変わった。心強い友人が出来て、その片方を失ったが、それでも得られたものがある。その中で勘違いを正して、ミュルジスと和解した。
強い達成感と心地よい疲労感があった。
テラ歴1092年。孤星まで凡そ7年だ。サリアが俺に不採用を叩きつける可能性は高いが、取り返せない失敗じゃない。
原作のミュルジスを取り戻そうとして失敗した。迷惑をかけた。今更俺が消えたってミュルジスが幸せになるわけもないのに、それを無視した。自己満足だった。
魅力的な選択肢だったことは認めよう。追い詰められていたことも理由にはあっただろうし、一概に悪いとは言えない。ただ、ミュルジスの幸せを考えるなら落第点だ。
そうして反省して、後悔して。大事なのは、失敗を取り返そうとすること。飲み下して、受け入れて、前を向くことだ。
「いつからジズに愛称を許したの?」
「主任が居なくなったその日です」
「……随分と、仲が良いわよね」
「取りませんよ?」
これからも、ミュルジスが幸せになるための道を探っていこう。ドクターと出会えるその日を目指して、邁進するしかない。
目下のタスクは、孤星の話をよく思い出して、どう動けばいいのか考えること。
そしてそのためには、使えそうな手札——アーツとかエルフの力とか——を探ってみることも大事だ。
どうしてここまでするのか。
何故怠惰な俺がこうやって動けるのか。
それは俺にとって不思議なことだった。自分がこんなに人のためを思って動ける人間だとは思っていなかったからだ。
理由はすぐに分かった。余りに単純で子供らしい理由だった。人によっては笑い飛ばされるような、幼い理由。
原作キャラとか、そんなのはもうどうだっていい。前世でミュルジスが好きだったから、とか、そういう原作のことは関係ない。
罪悪感? それはあるかもしれない。でもそれが一番の理由じゃない。そんなマイナスの暗い感情で動いているわけじゃない。
「ミュルジス」
「なにかしら?」
綺麗な琥珀の目がこちらを向く。
「色々迷惑かけたし、かけることになるだろうけど」
その目は信頼に染まっている。
「それでいいなら、これからもよろしく」
ふわりと、
「ええ、勿論よ!」
この笑顔を見ていたい。
それだけなんだ。
ライン生命生態課所属e分類の1番隔離指定研究対象、これにて完結! しません!
前書きでは最終話と言いましたが、アレはほぼ嘘です。一旦締めるだけです。孤星までは書くと思うので安心してください。まあ、その前にジズくんが死んだら終わりますけど。
ここからそこそこ長い後書きです。
初めに『最終話について』です。
正直に言って、この最終話は満足の行く出来ではありませんでした。前話と一緒くたに投稿するのはやめようかと何度も思いました。でもミュルジスがほとんど登場しない前話はぶっちゃけ大して面白くもないですし、ジズくんが笑っていやがりますので、それ単体で出すのはちょっとどうなのと思いまして。それに今の作者ではこれ以上の最終話を書けないと判断し、面白くない話で2週間消費するより、潔く2話投稿することにしました。
さて。満足が行く出来ではありませんでしたが、曇らせが少ないことには多少の言い訳があります。「なに幸せにしてんだもっと曇らせろ」と思っている方は、よく聞いてください。曇らせるために幸せは必要不可欠なんです。幸せは曇らせるためにあり、曇らせは幸せのためにあります。より良い曇らせを感じ取るためには、設定とか過去編で言及される幸せな日々だけでなく、こういった衝突を乗り越えて獲得した幸せを一度知らなければいけないと思うんです。つまりここまで下準備です。まだギアは一速です。安心してください。
2番目に『作品について』です。
実は第一話の時点ではこれで終わりの予定でした。それどころか、ミュルジスが研究園に帰ったあとの描写は一話で終わらせて、さっさと物語を締める予定でした。とんでもなく面白い海関連の小説が書かれたり、とんでもなく面白いゲームとリンクさせた小説が書かれたりして、執筆中ですらもう書かなくてもいいかなと思ったりしてました。
しかし、なんかみなさんが感想をくださるし、評価していただけて、プロット伸ばしたり伏線追加したりしちゃって、そうこうしてるうちに一足先に完結されて、逃げ場なくなっちゃいまして。完結させたら投稿やめて自分だけの楽しみのためにダラダラ書くつもりだったのに、いつのまにかこんなところまで来てしまって……
ですが、とても感謝しています。読んでくださるみなさんのおかげでこの小説を完結させずに済みました。本当にありがとうございます。
続いて、『謝罪』です。
孤星ファンの皆さんには本当に申し訳ありません。私はミュルジスを曇らせるために、原作の良さを失わせています。ここまで読んでくださった方は承知のことかと思いますが、ミュルジスのライン生命にかける思いや、ドクターとの関係性を傷つけています。ミュルジスを弱体化させて、その隙に付け入るような小説を書いています。もし気分を害されてしまっていたら、申し訳ありません。
それでもいいよと許してくださる方は、これからもよろしくお願いします。
最後に『これからの予定』です。
次回は第一部の後日談、と言うよりはエピローグのような回にします。その次はifの話を一つ投稿します。それから第二部に移ります。なので第一部の感想や評価は今のうちに付けちゃってください。作者の執筆意欲に繋がります。
これにて後書きを終わります。
それでは、評価、感想、よろしくお願いします。
ご愛読ありがとうございました。