「弱い。これが今の代表候補生か。よくこんな実力で代表候補生になれたものだな」
「アイツ・・・ッ!」
「待て、何をする気だ。織斑」
気を失っているセシリアを見下ろしながらそう言うフロイトに一夏が噛みつこうとした時、千冬が静止の声を上げる。
「止めさせるに決まってるだろ!セシリアも悪いところは確かにあったけど流石にあんな言い方はないだろ!」
「くだらんな」
「なにが」
食ってかかる一夏だったが、ギロリと睨む千冬のその視線に身体を強ばらせる。
眼力で一夏を射抜きながら、彼女は言う。
「だからお前は子供なんだ。織斑。お前は今、どれ程自分が甘い考えを口にしたのかが解っているのか? なら訊くがな? 真剣勝負のISの国際試合で他国の者と戦って、オルコットが今のように力量差があって圧倒的に叩きのめされたら、お前はそれに割って入るつもりか?」
「・・・ソレとコレとは違うだろう!?」
「何が違う? 何も違わんさ」
「ッ・・・」
「私闘だろうが、国際試合だろうが、あの二人は互いに納得した上での真剣勝負だ。それをどうして部外者であるお前が邪魔する権利がある? オルコットが相手の力量を見誤った。・・・違うか?」
正論を叩きつける千冬に一夏は何も言えなかった。
アリーナのピットにそんな嫌な空気が広がる中、フロイトが戻ってくる。
「千冬。コイツとの試合は無しだ。アレが弱すぎて熱が冷めた」
「・・・お前ッ!!」
本人の前でそう言ったフロイトに一夏が叫ぶ。
「・・・なんだ?」
「お前!セシリアに謝れよ!」
そう言う一夏に対し、フロイトは首を傾げる。
「・・・謝れ?弱い奴に弱いって言って何が悪い?」
「────ッ!」
その言葉が一夏の怒りに触れた。
「止めろ馬鹿共」
二人の間に千冬が割って入り、両者を止めに入った。
「千冬姉ッ!」
「頭を冷やして来い織斑。ヴェスパー・・・お前もいちいち煽るな」
「煽っているつもりはなかったんだが」
そう答えるフロイトに対し、一夏は出来るなら今すぐこの場でフロイトを殴り飛ばしたい気分に駆り立てられていた。
だが、それを押し込め、彼は一言だけを口にする。
「俺・・・・お前が嫌いだ」
「そうか。俺は気分が良かったらお前とは一度戦ってみたいんだがな」
どこまでも話が平行線な二人に千冬はため息をついた。
「い、一夏!」
そして部屋から出ていく一夏とそんな一夏を追い掛けていく箒の後ろ姿を見送り、千冬はフロイトに視線を戻す。
「ヴェスパー・・・お前も言い過ぎだ。こうなることくらい分かっていただろう」
「俺としてはそれでアイツが強くなるなら大歓迎なんだがな」
そう笑うフロイトに千冬は眉を顰めながら、何故そんなに戦うことに固執するのかを聞いた。
「お前は何故そんなに戦うことに固執する?」
「“やり合うのが楽しいからだ“。強さの理由は他にいらないだろう」
「なに?」
そう即答したフロイトに千冬はさらにシワを寄せる。
「楽しいことをするのに理由はいらないだろ?千冬は楽しいことをするのに理由をつけるのか?」
その返答に千冬と真耶は答えられなかった。
「まあ最近は退屈で仕方ないが。それで、もういいか?」
「・・・ああ」
部屋を出ていくフロイトに千冬は深くため息をついた。
「なるほどな。まともな奴ではないと思っていたが・・・束とはまた違う狂人の類か」
戦うことが好きな戦闘狂であり天災。
───それが本当のフロイトの顔だった。