最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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第十ニ話

深夜。

簪との作業を終え、カツカツと誰もいない夜の廊下を一人で歩くフロイトはふと足を止めた。

そして口もとに笑みを浮かべながら自分の後をつけてきている奴へと言葉を投げる。

 

「いい加減隠れてないで出てこいよ。つけているのは分かっている」

 

「・・・あら、勘がいいのね。おねーさんびっくり」

 

薄暗い廊下の曲がり角。

一人の生徒が扇子で口もとを隠しながら現れた。

その女子生徒をフロイトは知っている。

シミュレーションでは散々世話になったし、この学園でこの女より歯ごたえがある人間だと織斑千冬くらいしかいないだろう。

 

「お前のIS・・・“霧纏の淑女“だったか。アリーナでは勘を戻すのに世話になった。一度、生のお前ともやりあってみたかったんだ」

 

「・・・そう」

 

隠すつもりのない本性を現しながらフロイトは目の前に立つ生徒を見る。

そんなフロイトを見ても彼女は表情を崩すことはない。それより今のフロイトを見て楯無は警戒のランクを上げる。

 

(・・・・やっぱり普通の子じゃないわね。気を抜いたらこっちが呑み込まれそう)

 

楯無はフロイトが普通の人間ではないと見抜いていた。それはアリーナで分かっていた。自慢ではないがいくらCPUとはいえ、織斑千冬や篠ノ之束でない限り、楯無を相手に二回目で圧勝出来る訳がない。

そしてそんな彼を目の前にしてどうだ。その感想が化け物である。

 

(これは・・・私でも厳しいかな)

 

ISで今のフロイトと戦うとまず負ける。

流石に瞬殺とまではいかないだろうが、コレと戦うとなると本気の殺し合いになるのは間違いない。

しかも───

 

(まだ“本調子“じゃなさそうなのよね)

 

本気の殺し合いをしたら恐らく彼はあの織斑千冬ですら勝てる。

それこそ彼に勝つには同じイレギュラーをぶつけない限りは勝てないだろう。

産まれる時代を間違えた化け物と言うべきか。

此方に隠そうともしない本性を向けながら笑うフロイトに楯無は口を開いた。

 

「でも残念。今日は戦うつもりで来たわけじゃないの」

 

「・・・・なに?」

 

楯無のその言葉にフロイトは眉を顰める。

そんな不満げな顔をするフロイトに楯無は言った。

 

「今日はね、貴方が私の妹に何の用があって接触したのか聞きに来たの」

 

「・・・妹?ああ、アイツか。確かにお前に似ているな」

 

そう言ってフロイトは納得したような顔をする。

そして楯無の言った質問にフロイトは答えた。

 

「なんで接触したのかって言ったな。それはな───“やり合いたい“からだよ」

 

「────ッ」

 

息を詰まらせる楯無に対し、フロイトは喋り続ける。

 

「アイツの完成したISで本気でやり合いたい。アイツが本気を出せば番号持ちまではいけるんじゃないかと俺は思っている。メーテルリンクか・・・スウィンバーンか・・・その辺りまでいければ多少は楽しめるからな。ああでも少し勿体無いが・・・」

 

「アイツを“殺れば“本気のお前と戦えるか」

 

その言葉と同時───金属音と共に火花が散った。

 

「殺すわよ」

 

「殺すつもりで抜いたくせによく言う」

 

笑みを浮かべるフロイトに対し、殺気を隠そうともしない楯無。

ギリギリと槍と剣がせめぎ合う。

 

「何をしている。馬鹿共が」

 

そんな二人の間に織斑千冬が割って入った。

 

「校舎内でISを使うな馬鹿共。始末書を書きたいか?あとヴェスパー、お前もすぐに何度も問題行為を起こすな。謹慎にするぞ」

 

「・・・・すみません」

 

「それは困るな」

 

一人は反省した声を上げるが、もう一人はそんな様子はない。

 

「わかったならさっさと行け。今ならみなかったことにしてやる」

 

「・・・ありがとうございます。では失礼します」

 

一瞬───楯無はフロイトを見たが、すぐに隣を通り過ぎてその場から去る。

薄暗い廊下に残ったのはフロイトと千冬だけになった。

 

「お前もさっさと部屋に戻れ。いいな」

 

「ああ。了解した」

 

今日はもう大人しくした方がいい。そう判断したフロイトはさっさと部屋に戻ろうとして───

 

「ヴェスパー」

 

織斑千冬に止められた。

 

「なんだ?」

 

足を止めたフロイトは千冬に視線を向ける。

そんなフロイトに千冬は言った。

 

「お前は更識と何を話していた?」

 

その質問に───  

 

「何も話してないな」

 

そう短く答えた。

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