(・・・間接キスしちゃった)
一年生寮の自室。簪はシャワーから出る温かい水を浴びながら今日、格納庫でしたことに再び胸を高鳴らせた。
「・・・・・・・・」
唇をなぞる。
そして簪は再び顔を赤くし、ずっとドキドキと鳴りっぱなしの心臓を壊れ物を扱うかのような優しさで手を自分の胸に触れる。
(・・・明日も一緒に出来るかな)
そんな盲目とした彼女は鏡を見る。
あまり大きくはないその膨らみ。それを見るとどうしても姉さんと比べてしまう。
そこまで考えて、急激に頭が冷えていく。
胸奥に燻る熱に浮かれていた簪は、現実のコンプレックスに捕まってしまい、身を小さく震わせた。
(楯無・・・姉さん・・・)
憧れでもあり、けして手の届かない目標である存在・・・更識楯無。
(・・・フロイトをお姉ちゃんに取られたくない)
きっとフロイトはお姉ちゃんに接触すると必ずそちらに興味をもってしまう。
だからもっと───
(・・・・頑張らなくちゃ)
姉さんは姉さん。私は───私。
そう思いながら簪はシャワールームから出た。
◇◇◇◇◇
翌日、朝のホームルーム。あり得ないことが起きていた。
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
どこか無理をしているような笑顔で喋る山田先生とクラスの女子達も大いに盛り上がっている。
「先生、俺は昨日の試合に負けたのになんでクラス代表になっているんですか!?普通はセシリアかフロイトでしょう!?」
「それは───」
「私は辞退しましたの」
「な、なんで?」
顔を引きつらせる一夏に対し、セシリアは口を開いた。
「フロイトさんに敗けて一度考えましたの。今の私のIS操縦では必ず何処かでボロが出ると。なら、未だに未熟な私より伸びしろがある一夏さんの方が糧になると思いまして」
「な───なら、フロイトは!」
一夏はフロイトのいる場所へと振り返る。
コイツのことは嫌いだが、実力はクラスの中では一番だ。それに戦うことが好きならこの男は絶対に食いつくはず。
「面白みがない雑魚狩りをしてどうする?二年や三年が入るなら話は別だが、一年だけだったらシミュレーションで腕を磨いた方がまだ面白い」
フロイトとて戦闘であれば何でも首を突っ込む訳では無い。要するにこの男は戦闘を選り好みするのだ。
面白みがなければやる気すら見せない。
面白ければ周りを無視して無断出撃をする。
この男がヴェスパー部隊にいた時も無断出撃をしてはその度に始末書をスネイルに押しつけたり、依頼を受けなかったりしていたのだ。
これが原因で何度スネイルがブチギレたことか。
「そう言う訳だ。納得しろ」
こうして真面目な奴は損をするのか。なんという理不尽。
「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
こうしてクラス代表は決まった。
なお、フロイトの無断出撃はたまにスネイルの睡眠を救っていたこともある模様。
なお始末書