「織斑くん、おはよー。ねえ、転校生の噂聞いた?」
───次の日の朝。一夏は席に着くなり、クラスメイトに話しかけられた。入学からの数週間で、それなりに女の子と話せるようになった。一夏にとっては大きな前進と言えるだろう。
「転校生?今の時期に?」
今はまだ四月だ。なぜ入学ではなく転入なのだろう。しかもこのIS学園、転入にはかなり条件が厳しかったはずだ。
試験はもちろん、国の推薦がないとできないようになっている。ということはつまり───
「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」
「ふーん」
代表候補生といえば。
「あら?わたくしの存在を今更ながら危ぶんでの転入かしら」
一組にイギリスの代表候補生がいる。今はここにいないもう一人の男に瞬殺されたが。
「このクラスに転入してくる訳では無いのだろう?騒ぐほどのことでもあるまい」
さっき自分の席に行った筈の箒が、気がつけば側にいた。
「どんなやつなんだろうな」
代表候補生というからには強いのだろう。あの男は絶対に食いつきそうだが、正直どういう奴なのかは気になる。
「む・・・・気になるのか?」
「ん?ああ、少しは」
「ふん・・・・」
聞かれたことを素直に答えたら、何故か箒の機嫌が悪くなる。最近はやたらと機嫌が悪くなったり良くなったりと、忙しい奴だ。
「今のお前に女子を気にしている余裕があるのか?来月にはクラス対抗戦があるというのに」
「そう!そうですわ、一夏さん。クラス対抗戦に向けて、より実践的な訓練をしましょう」
「───その情報、古いわよ」
教室の入口から声が聞こえた。・・・凄い聞いたことのあるような声だ。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれていたのは───
「鈴・・・?お前、鈴か?」
「そうよ。中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
そう言ってふっと小さく笑みを漏らす。トレードマークのツインテールが軽く左右に揺れた。
「何格好つけてるんだ?すげえ似合わないぞ」
「んなっ・・・!?なんてこと言うのよ、アンタは!」
「おい」
「なによ!?」
そう叫ぶ彼女の後ろから低い声が響く。
バシンッ!と、聞き返した鈴に痛烈な出席簿の打撃が入った。───鬼教官の登場である。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん・・・」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入口を塞ぐな。入るのに邪魔だ」
「す、すみません・・・」
すごすごと扉からどく鈴。
「またあとで来るからね!逃げないでよ、一夏!」
「さっさと戻れ」
「は、はいっ!」
二組へ向かって猛ダッシュする彼女を見て、一夏は昔のまま変わっていないなぁと呟く。
「っていうかアイツIS操縦者だったのか。初めて知った」
「・・・一夏、今のは誰だ?知り合いか?えらく親しそうだったな?」
「一夏さん?あの子とはどういう関係で───」
そのほか、クラスメイトから質問の集中砲火。
その中で───
「席を着け、馬鹿共。あとヴェスパーの奴はどうした?」
「織斑先生!フロイト君はまだ来ていません!」
「あの馬鹿は・・・・」
平気で遅刻するフロイトに千冬は頭を押さえるのと同時、教室の扉がガララッと開いた。
「・・・カ、ぁ──────」
眠そうにしながら教室に入って来たフロイトを見て、千冬は言う。
「ヴェスパー・・・さっさと席につけ。遅刻だ馬鹿者」
千冬の疲れたような声が教室に響き渡った。