「なあ簪。二組の新しい転校生が代表候補生だと言う話・・・聞いているか」
「───えっ?」
昼休み。
格納庫でフロイトとお昼ご飯をしていた簪は、ふと思い出したように転校生の話題を上げるフロイトに対し、簪は無意識にグシャリと購買で買ったサンドイッチを握り潰しながらそう返事を返す。
「・・・・あっ」
「なに握り潰しているんだお前」
自分の手のひらでぐちゃぐちゃになったサンドイッチを見て、フロイトは呆れながらしなしなになったフライドポテトを口に運ぶ。
というかフライドポテトは学園の外にある街にまで行かないと買えない筈なのだが・・・フロイトはどうやって調達したのだろうか?
「な、なんでもない。それで・・・何の話?」
「二組に新しい代表候補生が入ったって話。なにか聞いているか?」
「い、一応。クラスで話題になってるから・・・」
簪がいる四組にもその話題は上がっている。だが、それはフロイトももう知っている筈だ。
それなのに何故?
そう疑問に思った簪に対し、フロイトはすぐに答えた。
「ああ。戦ってみたいからすぐに二組に向かったんだが、中々会えなくてな。どういった奴かも分からんからお前なら知っているかと思って聞いてみただけだ」
残念そうな顔をするフロイトに対し、簪は少しだけ顔を俯かせてフロイトのその問いに答える。
「確か・・・中国の代表候補生だって聞いてる」
「なるほど。ソイツの特徴は分かるか」
「・・・ううん。話に聞いただけだから知らない」
「そうか。どれくらい強い奴なのか気になるが・・・それは戦う時の楽しみにとっておこう」
そう言って笑うフロイトに対し、簪は顔を曇らせた。
やっぱり───そっちを見るんだ。
フロイトは戦いのことになるととても嬉しそうな顔をする。
前にシミュレーションで試合をしている所を見せてもらったことがあるが、お姉ちゃんの相手をしている時が一番楽しそうにしていた。
フロイト自身は強い相手に勝って自分の腕が上達するか、もしくは相手がより強くなって善戦してくれるようになるのが一番の楽しみだと言っていた。
確かにソレは分からない訳でもない。
ISを上手く動けるようになって勝てない相手に勝てた時の達成。それはとても嬉しくなるのは自分でも分かる。
けど───それはあくまで一時的なもの。
攻略が分かっていき、それを何度も繰り返しやり続けても・・・いずれは飽きが来る。
フロイトがもう得るものがないと判断した場合どうなるか。それは───
「─────ッ!」
そうあの目だ。飽きた物に向けるゴミを見るような目。
その目を向けられるのが怖い。
「どうした」
フロイトが声をかけてくる。
その声に簪はピクンと身体を揺らしながら答えた。
「・・・なんでもない」
今はまだ───大丈夫。