最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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第二十三話

カツン、カツン、と足音を鳴らしながら二人は金属製の階段を降りていく。

簪はフロイトの腕にしがみついたままゆっくりと歩を進める。この状況───本来であれば簪はこのようなこと、恥ずかしくて出来やしないのだが・・・状況が状況だった。

 

『遠くから新しい友人が尋ねてくる・・・素敵だ・・・本当に心が踊ります』

 

道中で聞こえてくるこの気持ち悪い声が簪の背筋を撫でるのだ。おかげで全身に鳥肌が立って仕方がない。

 

『お待ちしておりますよご友人。私は、貴女と上手にお話が出来るでしょうか?心配だ・・・けれどそれよりずっと楽しみです』

 

「ひぅ・・・」

 

ハァハァとした吐息混じりのブルートゥの気持ち悪い声に、簪は普段絶対に上げることがないであろう情けない声を上げ、フロイトの服の袖を強く握った。

 

「おい大丈夫か?本人を前に隠れるなよ」

 

腕から離れない簪にフロイトは言うと、前の金属製の扉を無遠慮に開け放つ。

 

「来たぞ、ブルートゥ」

 

部屋には一人の男がいた。

大柄な体格にどこか優しそうな雰囲気の男。

だが、この男が可笑しいのは此処まで来るのに十分に理解する羽目になった。

遠慮なく部屋に入るフロイトと彼の背中に隠れるように動く簪に、目の前の男は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「お待ちしておりました。フロイト、それにご友人。さあ、どうぞこちらへ」

 

「おう」

 

「・・・・・・」

 

そう言って部屋に並べれれた長机と椅子に誘導するブルートゥの姿は紳士的だ。

だが、ソレを全て台無しにする粘着があるその声が簪の全身に悪寒が走らせる。

もっとマトモな喋り方なら良い声なのも相まって人気が出そうなのだが・・・本当に残念な奴である。

二人が案内された椅子に腰を下ろすと同時、ブルートゥが突然振り返り簪を見る。

そしてニコリと笑みを浮かべた。

 

「・・・・・ひっ」

 

その笑みに簪は身体を強張らせる。

そしてそんな彼女に対しフロイトはブルートゥに言った。

 

「それで完成品は?」

 

首を回すフロイトにブルートゥは言う。

 

「ええこちらですよフロイト。最高の出来に仕上がりました」

 

そう言って机の上に包まっていた毛布をゆっくりと開ける。そこにあったのは巨大な砲身だった。

 

「ベイラム製の拡散バズーカ。再現するのに時間は掛かりましたが・・・私のミルクトゥースにも採用出来るほどの最高の出来です」

 

「よし買った」

 

拡散バズーカを前にしたフロイトは即答する。

元々はこれが欲しかったのだ。グレネードも悪くはないが、拡散バズーカほどの引っ掛け能力はない。

それに比べて拡散バズーカは近距離でも扱いやすいので牽制にも使える。

まあ、重量に関してはお察しの代物だが。

即答したフロイトにブルートゥはお買い上げありがとうございますと一礼した後、簪を見る。

 

「そちらのご友人も何か見ていきますか。お安くしますよ」

 

「い、いえ・・・大丈夫、です」

 

「それは・・・残念です」

 

簪の引き気味なその返事にブルートゥは残念そうな顔をした。

と、そんなブルートゥの後ろにISがあることに簪は気づく。

 

「あれ・・・?」

 

簪はそのISを見てフロイトは言った。

 

「あれはコイツのISだ。だな?ブルートゥ」

 

「ええ。ミルクトゥースは私の可愛い子ですよ」

 

「えっ?じゃ、じゃあこの人も───」

 

男性操縦者?と思った所で簪はブルートゥに目を向ける。

この男が男性操縦者だとして───もし、学園にこの男が来たとしたら?と、そんなことを考えてしまった。

 

さあ、新しいご友人!楽しい一時を過ごしましょう!

 

スロー、スロー、クイック、クイック、スロー

 

素敵なステップです!ご友人!

 

駄目だ。この男が学園に来ると私どころか織斑先生達の胃に確実にトドメが刺される。

簪はそこまで考えて───これ以上なにも言わなかった。

 

「じゃあな、ブルートゥ。また、新しい武器が出来たら取りに来る」

 

「ええ。お待ちしておりますよ───フロイト。それにご友人も是非遊びに来てください」

 

「は、はい」

 

流石に一人では絶対に来ない。多分行くとしたらフロイトと一緒に来るときだろうと決めた簪はふと、フロイトの手にした請求書を見る。

そう言えば───IS関連の請求書は先生に出さないといけないのだが・・・フロイトはちゃんと出しているのだろうか?

 

簪と千冬は知らない。

 

フロイトの机の中にロックスミス及び打鉄弍式のパーツ代請求書20枚(三ヵ月分)が眠っていることを知るのは、もう少し先である。

 

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