「・・・可愛い」
「そうか?」
ペットショップの前でジッと仔犬を見つめる簪と、そんな彼女の横で首を傾げるフロイト。
そんな彼等を他者の目から見ると、高校生の男女がデートをしているようにしか見えない。
もっとも、男の方はそのつもりは微塵も思っていないようだが。
そんな中、簪はフロイトに言う。
「ねえ、フロイト」
「なんだ」
フロイトはスマホから目を逸らし、簪の方を見る。そこには仔犬を抱えた簪がいた。
「触ってみる?」
「・・・・・いや、俺はいい」
「・・・そっか」
そんなフロイトの返事に仔犬と共にシュンとする簪。
そんな様子の簪にフロイトはわかりやすい奴だなと小さく吐息を吐いた後、突然フロイトの電話が鳴った。
「電話だ。少し待っていろ」
「あ・・・うん」
そう言ってその場から居なくなるフロイトに、簪は少し躊躇うように頷いた。
そして簪は一人───フロイトを待つ。
───と
「すまない。少しいいかね?」
声をかけられた。
「・・・・え?」
ピクリと身体を揺らしながら簪は声がかけられた方に顔を向けると、そこに男が立っていた。
まるで漫画やアニメに出てくるような爽やかそうな男性だった。
周りからもあの人、カッコイイと言われるほどの人物。
まさにイケメンと言われるような男だ。
そんな彼が簪に尋ねてきた。
「此処に行きたいのだが・・・どの辺りにあるか分かるかい?」
そう言って地図を見せてくる男に、簪はたどたどしくその場所の方角に指を指す。
「多分・・・あっち、です」
「あっち?・・・ああ、あれか」
そう答える簪に男性は指を指した方へ顔を向けると、目的地があったのだろう。納得したように頷き、簪に礼を言った。
「礼を言うよ、ありがとう。どうやら無事に目的地へとつけそうだ」
「大丈夫、です」
「では、失礼するよ。また会おう”戦友”」
そんな返事をする簪に対し、男はそう言ってその場から去った。
「・・・戦友?」
最後に彼が残したその言葉に簪は首を傾げた。
戦友・・・彼とは初対面の筈だが何故そんなことを彼は言ったのだろうか?
「・・・聞き間違えたのかな」
thank youと聞き間違えたのだろうと簪は納得し、フロイトを待っていると、フロイトはすぐに戻ってきた。
「悪いな。ブルートゥの奴からだった」
「ううん、大丈夫。それで、次はどこに行くの?」
「お前が見に行きたい所でいい。俺の買い物は終わったからな」
「じゃあ・・・アニメとかDVDが売っているお店とかある?」
「アニメ?そんなのに興味があるのか」
「まあ、うん」
「ならいい所がある。逸れるなよ」
「うん」
そう言って簪はフロイトと逸れないように手を繋ぐ。
その姿はまるで恋人のようだった。