最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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な、難産でした・・・


第二十六話

「意外だな千冬の弟と代表候補生。お前達とこんな所で出会うとは・・・運がいい」

 

「俺はお前とは会いたくなかった」

 

「おいおいそんなことを言うなよ」

 

笑うフロイトを拒絶する一夏を見て、弾と蘭は鈴音に目をやった。そんな二人の視線に気づいた鈴音は小さな声で二人に説明した。

 

「弾、さっき部屋で代表候補戦があったって言ったでしょ?その後、一夏がフロイトと喧嘩したのよ。なんで俺達を攻撃したんだって」

 

「あ、ああ。そう言えばそんなこと言ってたな・・・」

 

「でも、一夏さんがあんなふうになるなんて」

 

あり得ないと言う表情の二人に鈴音は首を横に振る。

 

「アイツはあんなふうになるわよ。あの男、私達と戦うとき私を見て『安そうな方から片付けよう』とか言ったのよ?そんなこと言われたらものすっごいムカつくし、それに一夏が噛みつかないわけないでしょ?」

 

「そりゃあ一夏もあんな態度になるわけだ」

 

一夏がそんな性格だからこそフロイトとの相性が悪い。

一夏と鈴音の話を聞き、それで本人を見れば確かに一夏が嫌いなタイプだと分かるくらいだ。

しかもそれだけではない。

 

「二人との戦い結構面白かったぞ。代表候補生のお前も少ないシールドエネルギーでなかなかに粘ったじゃないか」

 

「龍砲を初見で避けて無傷で蹴散らした癖によく言うわよ」

 

渋い顔をする鈴音。

そんな会話に弾は納得した。

コイツは独り善がりの自分勝手な人間だと。

フロイトという男性操縦者。この男は自分が楽しいか楽しくないかで物事を見ている。

それでいて他人を全く見ていない。

そして一夏達の話を聞いていてたちの悪いのはコイツは天才肌であるのと同時に努力家だ。

ISでの戦闘をこの男はゲームとして見ている。『操縦者』ではなく、『プレイヤー』。

弾もゲームはするし、強くなれば嬉しいという気持ちは分からなくはない。

だが、フロイトのそれは一般人からしても異質過ぎる。

そんな一夏達との気まずい雰囲気の中、フロイトの後ろにいた簪が彼に言った。

 

「フロイト、お昼を食べに来たんでしょ?早く注文しよ」

 

「ああ、そういえばだったな」

 

そう短くフロイトは答え、簪と一緒に一夏達の隣の席に腰を降ろす。

 

「なんで隣に座るんだよ」

 

「いいじゃないか。何処に座っても一緒だろう?」

 

「・・・・・」

 

一夏がフロイトを一方的に敵視しているせいか空気が悪い。だが、フロイトはどこ吹く風だ。

 

「フロイトはなに食べる?」

 

「旨そうなものがあればそれにする。簪はどうする?」

 

「じゃあ私は・・・」

 

フロイトと簪との会話に四人は唖然とする。

先ほど一夏達と話していた時よりも、彼女と会話しているフロイトに違和感があったからだ。

 

「・・・なんだ?」

 

一夏達の視線にフロイトがつまらなさそうに顔を向ける。

 

「あ、いや・・・さっきから人が変わったみたいだなって・・・」

 

蘭の正直な返事に簪は言った。

 

「フロイトはISが絡まなかったらいつもこんな感じ」

 

「そ、そう・・・ていうかアンタは・・・」

 

鈴音のその質問に簪は少し考えたような一呼吸を入れ

 

「・・・更識簪」

 

「更識・・・?確か生徒会長がそんな名前───」

 

鈴音がそう言おうとした瞬間───

 

「お姉ちゃんは関係ないッ!」

 

バンッ!と机を叩き、簪は立ち上がった。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

フロイトを除いた全員が簪のその行動にギョッとする。

 

「お姉ちゃんは・・・関係ない」

 

「ごめん。悪かったわ」

 

彼女の気に触ったのか鈴音はすぐに謝罪すると、簪は椅子に腰を降ろした。

その様子をすぐ近くで見ていたフロイトは笑う。

 

「あんまり簪の前で姉の話や千冬の弟の話はするなよ?気を悪くする」

 

「・・・なんで俺が出てくるんだよ」

 

一夏はフロイトの言葉の意味が分からず睨みつけると、そんな一夏にフロイトは笑ったままだ。

 

「お前のIS・・・白式だったか。その開発先が倉持技研だって話は知っているな?」

 

「・・・ああ」

 

「で、簪の専用機の元々の開発先は倉持技研だ。つまり、お前のISを開発するために簪のISは完成しないまま放置されたわけだな。つまり簪はお前に私怨があるってことだ。あまり刺激してくれるなよ」

 

「・・・・っ」

 

フロイトのその言葉に、この場にいた四人は息を詰まらせる。

 

「・・・・フロイト。デリカシーがない」

 

「いずれ話すことになるだろう?なら早い方がいい」

 

「・・・さっきの店のイチゴパフェ奢ってもらうから」

 

「まあ、いいだろう」

 

肩を竦めるフロイトに簪はメニュー表を閉じた。

そんな簪に一夏が申し訳なさそうな表情で簪を見る。

 

「なんか・・・ごめん」 

 

「・・・私には、あなたを・・・殴る権利がある・・・。けど、疲れるから・・・やらない」

 

「・・・・・」

 

簪のその言葉に一夏は何も言えなかった。

 

「けど・・・少しだけ感謝している」

 

「え?」

 

「今はフロイトと一緒にISを作れているから」

 

それ以上、簪は何も言わなくなった。

そんなことを言われて一夏が呆然とする中でフロイトは笑う。

 

「良かったな。感謝されているようで」

 

フロイトのその言葉は今の一夏にとって強烈な皮肉だった。

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