最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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第二十七話

「・・・そういえば千冬の弟と代表候補生。お前達は今月のトーナメントはどうする。相手はいるのか?」

 

昼飯をとっている最中、フロイトは突然、一夏と鈴音に話題を出す。その話題は今月に行われる学年別個人トーナメントについてだった。

学年別個人トーナメント───。

一週間かけて行われる文字通り学年別のIS対決トーナメント戦。一週間もかかる理由は単純だ。何故なら全員強制参加のイベントだからだ。

一学年が大体百二十名。これをトーナメントでやるものだから、規模も相当なものになる。

一年の時は先天的才能評価となっているが、確実に目の前のこの男がトップに君臨するだろう。

 

「安心しろ。俺は今回のトーナメントは参加しない」

 

「「は?」」

 

「えっ?」

 

フロイトの口から出たその返答に三人は驚きの目を向ける。何故なら戦闘狂であるこの男がトーナメントに参加しないのがあまりにも予想外過ぎたからだ。

驚きで箸を止める三人にフロイトは笑みを浮かべたまま言う。

 

「千冬に言われていてな。お前が相手だと勝負にならないと言われて不参加になった。まあトーナメントに参加しない代わりに千冬にはある条件を飲んでもらったが」

 

「・・・条件?」

 

一夏が笑うフロイトに問う。

その問いにフロイトは答えた。

 

「ああ。あれは”とても楽しかった”。”ウォルターの猟犬とやりあったとき以来だったよ”。千冬と戦うのは」

 

「「・・・なっ!?」」

 

「もしかして・・・もう戦ったの?織斑先生と」

 

フロイトのその返答に一夏と鈴音が絶句し、簪は驚きを隠せていない。弾や蘭もフロイトが織斑千冬と戦ったことに絶句している。

そして簪の問いにフロイトは面白そうに頷いた。

 

「ああ。まさか打鉄の刀で弾丸を弾くとは思いもしなかった。動きも映像でみただけだが全盛期と比べてそこまで鈍っていない。あれはキングやG1ミシガンと良い勝負するだろう。今の俺でも”ギリギリ勝てた”くらいだ」

 

「・・・は?」

 

「あの千冬さんに・・・?」

 

「・・・勝った?」

 

フロイトのその言葉に弾や蘭を含めた全員があり得ないといった表情でフロイトを見る。

世界最強のブリュンヒルデ───織斑千冬に勝利した。

冗談としか思えない。

 

「千冬姉が負けるはずがないだろ!?」

 

最初に反応したのは一夏だった。

姉が負けるはずがないとそう言うが、フロイトの顔から笑みが消えることはない。

 

「なら聞いてみろよ。千冬にな」

 

「・・・・・!」

 

フロイトのその言葉に嘘は言っていないと察することが出来る。だが、それでも信じられない。

 

「本当はもっと戦いたかったんだが・・・千冬に断られてな。それで今は真耶以外の遊び相手を探しているところだ」

 

フロイトが無人機の襲来以来、最近大人しい理由はこれがあったからだ。最初に報酬を貰ったからフロイトは大人しくしているのだ。

スネイルもフロイトを扱う為の一時処置でこの手段をとっていたことがあるが、予想外の事が起こるとすぐにフロイトが跳び出すのであんまり意味はなかったが。

 

「さて・・・俺達は帰らせてもらう。行くぞ」

 

「う、うん」

 

昼ご飯を食べ終わった簪にフロイトはそう言ってカードで会計を済ませ、そしてもう一度一夏達を見て言った。

 

「じゃあな、千冬の弟。次戦う時はもっと強くなれよ」

 

そう言って店から出ていくフロイトに簪は一度振り返る。そして───

 

「じゃあ・・・また」

 

そう言って簪は出ていった。

そして弾の言葉が食堂に響いた。

 

「あの千冬さんに勝つなんて・・・アイツバケモンかよ」

 

その言葉に全員は答えることが出来なかった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

「ねえ、フロイト」

 

「どうした?」

 

歩道をフロイトと歩く簪は唇を開く。

 

「本当に・・・織斑先生に勝ったの?」

 

「ああ。本当に楽しかった。ウォルターの猟犬と戦ったときと同じくらいにな」

 

「ウォルターの・・・猟犬」

 

どうしてだろうか。聞いたことがない筈なのに、どこかしっくりくる。

 

「どうした?簪」

 

「あ、ううん。なんでもない」

 

簪はそう言ってフロイトの手をおそるおそる握った。

 

「フロイト・・・あのね」

 

「ん?」

 

顔を此方に向けるフロイトに簪は言った。

 

「ごめん。なんでもない」

 

「そうか。ならお前が言った店に行くぞ」

 

「うん」

 

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