最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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第二十八話

「なあ、千冬」

 

「なんだ、ヴェスパー」

 

職員室。織斑千冬の正面席でフロイトは机に足を置きながら、ISの武器カタログに目を通していた。

千冬も言うことを聞かないフロイトに何を言っても無駄とわかっていてか何も言わない。

なお、フロイトが足を組みながら座っている場所はここにはいない山田先生の席である。

そんな素っ気ない千冬の反応にフロイトは遠慮なく言う。

 

「今日、転校生が来るらしいじゃないか。どうしてそんな面白い話を俺に言わなかったんだ?」

 

その言葉にパソコンの画面とにらめっこをしていた千冬は画面から目を逸らさずに答えた。

 

「急な転校だ。私達教師の間でもその対応で追われている。一人はともかく、もう一人は“三人目の男性操縦者”だ。私もその手続きにこうして追われているわけだ」

 

「・・・シャルル・デュノアだったか?その三人目の男性操縦者は」

 

デュノア。

 

その名前はフロイトも把握している。

フロイトが現在使っているIS───ラファール・リヴァイヴを開発した企業の名前だ。

一度こちらから千冬に手続きをしたことがあるが、すぐに却下された覚えがある。

フロイトは千冬の席から勝手に抜き出した三人目の男性操縦者であるシャルル・デュノアともう一人の転校生の履歴書に目を通す。が、すぐに千冬に感想を溢した。

 

「千冬、コイツ”女“だろ。女っぽい見た目の男は何度か見たことあるが、それでもここまで女らしくない」

 

単刀直入に絹を隠さないその言葉に千冬は言った。

 

「そんなことは“分かっている”。恐らくデュノア社からの密偵だろう。そして一夏かヴェスパー・・・お前達のどちらかに必ず接触してくる筈だ」

 

「ああ、そう言えばそうだったな。今、デュノア社は第三世代のIS開発にやけになっているんだったか」

 

「そう言うことだ・・・ん?まて、ヴェスパー。何故お前はその事を知っている?」

 

適当に返しそうになったが、千冬は何故フロイトがその事を知っているのかとキーボードの打つ手を止めてフロイトを見る。

 

「そんなことはどうでもいいだろう」

 

そう言って千冬をあしらうフロイト。

どうやら答える気はさらさらないらしい。

そんなフロイトはもう一枚の履歴書を見ていた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・ドイツの代表候補生であり、軍人でもありながらIS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊長か・・・なるほど。それなりに楽しめそうだ」

 

軍人というだけでもフロイトを刺激するのに、それよりもドイツの第三世代IS シュヴァルツェア・レーゲンの特殊武装にフロイトにとってなかなかに惹かれるものがある。

 

「戦うなよ?最近、ようやく落ち着いたところだ。面倒事に首を突っ込んで私が後始末をしなければならないのは私としても避けたいんだ」

 

「あっちから突っかかってきたら別に楽しんでもいいんだろう?」

 

「その際は叩きのめしてやれ。”私に勝った“お前なら簡単に倒せるだろう」

 

「お互いに本調子でない時のお前に勝っても仕方ないだろう?まあ、それでも随分と楽しめたがな」

 

「・・・ふん」

 

千冬は鼻を鳴らし、再びパソコンの画面に目を向け、キーボードを打ちつける。

そしてそんな千冬にフロイトは思い出したように言った。

 

「ああ、そう言えばコレを忘れるところだった。千冬、ISの武器とパーツを買ったから請求書を渡しておく」

 

「そこに置いておいてくれ」

 

「了解した」

 

フロイトはそう言ってロックスミス及び打鉄弍式のパーツ代請求書21枚(三ヵ月分)が入ったクリアファイルを千冬の机に置き、そのまま職員室から出ていった。 

そしてフロイトが出ていった数分後、千冬はひと休憩とばかりに目元を押さえる。

 

「・・・やっと終わった」

 

会計管理データの整理がようやく終わった。

ようやく数字からおさらばできると思いながら千冬はフロイトが置いたクリアファイルを手に取った。

そしてその中身を見て───

 

「は?」

 

そう呟いていた。

それはパーツ代の請求書。それが二十一枚。

余談だが本日は月の終わり。会計〆の日である。

それを見た千冬は───

 

「ア"ーーーーー!!なんでよりによって今日なんだ!!フロイトォーーー!!」

 

本日、千冬の徹夜が決まった瞬間であった。

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