ロックスミスのジェネがキツイんよ・・・
「くっ、うう・・・。まさかこのわたくしが・・・」
山田先生とセシリア、鈴音の一対ニのISの実戦訓練は山田先生の圧勝で終わった。
投擲されたグレネードの直撃をまともに貰い、墜落した二人が互いに言い争う。
「あ、アンタねえ・・・何面白いように回避先読まれてんのよ・・・」
「り、鈴さんこそ!無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」
「こっちの台詞よ!なんですぐにビットを出すのよ!しかもエネルギー切れるの早いし!」
「ぐぐぐぐっ・・・・!」
「ぎぎぎぎっ・・・・!」
相変わらず仲の悪い二人である。
そんな二人に対し、千冬はほぼ無傷の山田先生に近づくと、先ほどの試合の質問をする。
「前より腕が上がったように見えたが・・・ヴェスパーが原因か?」
「・・・はい。ヴェスパー君のお遊びに毎週のように付き合わされてますから・・・」
遠い目をする山田先生に千冬は同情の目を向けた。
「・・・ああ。山田先生も大変だな」
「・・・はい」
最近の真耶はフロイトに見つかると、通り魔のように連れ去られて模擬戦をするという日々を送っていた。
しかも無駄に粘って面白い試合をしてしまうと、次もフロイトに目を付けられるという負の無限ループになってしまうのである。
なお近い内に哀れな被害者がもう一人増えるわけだが。
「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。何処ぞの馬鹿のように安々と勝てると思わないことだ。以後は敬意を持って接するように」
ぱんぱんと手を叩いて千冬は皆の意識を切り替える。
「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰だな。では八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?」
「俺の相手は誰がするんだ?千冬。真耶か?それとも───」
そう言いかけるフロイトに千冬は言った。
「お前は織斑かデュノアの補助をしろ。お前は言い方がアレなだけで全て的を射ている。お前の遊びは今日はなしだ」
「・・・そうか」
そう言う千冬にフロイトは残念そうに呟いた。実戦訓練だと聞いて遊べると思ったのだが、どうやら今日の訓練は教えるだけらしい。
「そもそも、だ。前にお前の相手を“してやっただろう”。なら、授業くらいは我慢しろ」
「仕方ない。なら今日は我慢するか」
そう言う千冬に一夏と鈴音、そして山田先生を除く全員が一斉に千冬とフロイトを見る。
そして先の言葉にセシリアが言った。
「あの、織斑先生?フロイトさんと戦ったんです?」
その質問に千冬は溜め息をつきながら答えた。
「ああ久しぶりにな。本調子ではなかったとはいえヴェスパーに“負ける”とは思わなかったが」
「「「・・・・は?」」」
千冬のその言葉に生徒全員がそう言っていた。
あの最強と名高いブリュンヒルデが男性操縦者に負けた?
ありえないその現実に叫んだのはラウラ・ボーデヴィッヒだった。
「教官!それは本当なのですか!?教官がこんな人間に負けたなど・・・ありえない!!」
千冬のその言葉が本当なら世界に一瞬で広まることだろう。ラウラのその否定したいその言葉を千冬本人が答える。
「織斑先生、だ。馬鹿者。言っておくが本当の話だ。私はヴェスパーに一度負けた。ヴェスパーの今のIS操縦技術だけなら恐らく私と同等かそれ以上だ」
本人から語られるその言葉にラウラがセシリアが箒がこの場にいる皆がありえないといった表情だった。
一夏や鈴音だって最初はそう思いたくなるくらいの衝撃を受けたのだ。千冬に憧れを抱く生徒の衝撃はそれ以上のものだろう。
そんな呆然とする生徒達を見て千冬はフロイトに視線を向ける。
戦えないと聞いて残念そうな顔をするフロイトだが、戦闘時のその観察眼は千冬から見ても恐ろしいものだった。
『なるほど。そういう動きもあるのか。───面白いな』
『お前の戦い方・・・まさにブリュンヒルデという感じだ。それに今のお前は本調子じゃないな。機体の反応速度が追いついていないのか』
千冬の動きに打鉄がついていけないのを一瞬で見抜くその洞察力。そしてあの操縦技術だ。千冬が全盛期の時でも相手にするとなると勝てるかどうかといった相手。
「いいか?私とて人間だ。負けることもある。ヴェスパーが規格外と言ってもいいが」
「俺が人間じゃないみたいな言い方だな。俺だって負けることもある」
「だとすればソイツは余程のイレギュラーなのだろうよ」
その千冬の言葉にフロイトは言った。
「そうだな。アイツは確かに”イレギュラー”だったよ」