フロイトとシャルル、そして簪の謎の三角関係(簪がそう思っているだけ・・・だけだよね?)の状態になってから早五日。
今日は土曜日───なのだが、IS学園では土曜日の午前は理論学習、午後は完全に自由時間となっている。
その自由時間の中でフロイトは珍しくシャルルと共に一夏達にIS戦闘に関するレクチャーをしていた。
「お前がそこの代表候補生に勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだ」
「そ、そうなのか?一応わかっているつもりだったんだが・・・」
フロイトのその言葉に一夏がそう言い返す。が、フロイトからしてみれば今の一夏では一般MTにも負けるだろう。
「お前の分かっているつもりは“そう思っているだけ”だ。さっきの戦闘で碌に間合いを詰められなかったのは、お前が避けることに気を取られすぎて引き撃ちする相手の的になっていたからだ」
一夏に対して歯に衣着せぬ言葉に一夏は眉を歪める。だが、一夏は何も言い返せない。何故ならフロイトは正論を言っているに過ぎないからだ。
「だからお前は焦り、相手は余裕が出来る。お前が『瞬時加速』をした時もシャルルには読まれていただろう?」
「うっ・・・確かに」
別に格闘特化が弱いわけではない。
アイランド・フォーの動乱ではダブルハンドガンで一気に距離を詰めて近接を叩き込む奴や中には拳と近接武器一本だけで戦うような変態もいた。
フロイトも一時期やったことがあったのだが、マニピュレータが破損したACと大量の始末書を見たスネイルが発狂して一度フロイトを再教育センターにブチ込んだことがあった。
まあ、権限はフロイトの方がスネイルよりも上なのでさっさと帰ってきたが。
「まあお前のISは近接武器オンリーの局所型だ。しかも拡張領域がないから他武装をしまうことが出来ないときた。なら、お前の出来ることは二つだ」
「・・・二つ?」
「ああ。まずは一つ。近接武器オンリーでいくならまず自分の立ち回りを徹底的に覚えろ。特に千冬の立ち回りはお前だと確実に役に立つ。まずはそこからだ」
「千冬姉の・・・」
そう呟く一夏にフロイトは二つ目を出す。
「そしてもう一つ。お前のISには拡張領域がない。ならどうするか?簡単だ。俺のISの様に肩に装備をつければいい」
「か、肩に?」
戸惑う一夏に箒と鈴音、そしてオルコットが渋い顔をする。
「まあ、見た目は悪くなるけど確かに有効なのよねアレ。特にフロイトと戦闘する時は特に気をつけるわ。あの肩のバズーカ」
拡散するバズーカとか最初はふざけてんのかと思っていたのだが、コレが鈴音や箒にとってはかなりキツイ。
何故なら近接武器を主体とする彼女等にはあの武装を至近距離で喰らうわけにはいかないのだ。
至近距離で直撃を貰うと、シールドエネルギーの半分以上はもっていかれるし、何よりも衝撃力が凄まじい。
一度、鈴音が至近距離で拡散バズーカを喰らって絶対防御が作動したにも関わらず、一瞬で意識を刈り取られてノックダウンしたことがある。
アレが肩に装備されているだけで、フロイト相手にあまり近づきたくはない。
まあ、あっちから急接近してぶっ放してくるので大して意味はないが。
「まあ何にせよ一回触ってみろ」
そう言ってフロイトは一夏にブルートゥが経営するコヨーテスで作らせたアサルトライフルTURNERを手渡す。
「コイツは俺が基本に使うアサルトライフルだ。牽制から引き撃ち、弾幕張りまで基本的にはこれ一本でなんとかなる。試しに撃ってみろ」
「お、おう」
両手でTURNERを撃つ一夏。別にTURNERの反動は他のIS用アサルトライフルとは違い、かなり小さいので腕さえあれば片腕だけでも連射をすることが出来る。
弾幕ならハンドガトリング、威力重視ならリニアライフルの方が良いのだが、まだそこまで小型化出来ていないらしく製作中なのだとか。
まあ、デュノア社のテストパイロットに正式になれば遊び放題なので面白い武器は設計図だけ提供して作ってもらえばいい。
いっそのことシュナイダーの高速機体を作らせてみるのもいいなと考えるフロイトにシャルルが一夏に言う。
「どうだった?一夏」
「なんて言うか・・・速いっていう感想だ」
「そう。速いんだよ。一夏の瞬時加速も速いけど、弾丸はもっと速い。しかもフロイトが使っているアサルトライフルって結構特殊なモノなんだ」
「特殊って・・・何がだ?」
聞き返す一夏にシャルルは言う。
「フロイトのアサルトライフルはかなり軽いし、しかも反動がものすごく小さいんだ。だから片腕で連射しても問題ないくらいなんだよ?」
「まあその分、他のアサルトライフルより口径は小さいから威力はあまりないが」
あくまでも衝撃の維持、及び牽制用である。
「そういえば、シャルルのISってリヴァイヴなんだよな?」
「うん。僕のは専用機だからかなりいじってあるよ。基本装備をいくつか外してその上で拡張領域を倍にしてある。まあ、フロイトのラファールもかなりいじってあるみたいなんだけど・・・」
フロイトが自分で魔改造したラファール・リヴァイヴ。しかも学校の備品のソレをジェネレーターから装甲まで何から何まで全て弄ってあるからか、原型を留めていない。
そんな話をしていると、アリーナ内がざわつき始める。
皆が注目している的へ皆が視線を移すと、そこにいたのはもう一人の転校生───ドイツ代表候補生ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
一夏からしてみればいきなり平手打ちをされたので、彼女には良い印象がない。
と───
「おい」
ISの開放回線で声が飛んでくる。初対面がアレだったのだから、その声は一夏にとって忘れもしない。
「・・・なんだよ」
気が進まないが無視をするわけにもいかない。一夏が返事をすると、言葉を続けながらラウラがふわりと飛翔してきた。
「貴様も専用機持ちだそうだな。ならば話が早い。私と戦え」
ラウラは一夏に向けてそう言った。