最強のエンジョイ勢が空を駆る   作:鉄血

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第三十九話

「まあ、そんな訳で昼間にあのドイツ代表に喧嘩をふっかけてみたんだが、監視員に邪魔をされてな。戦うことが出来なかった」

 

放課後。

フロイトはいつもの格納庫で簪に昼にあった出来事を話題のタネにしながら彼女の打鉄弐式のエネルギー供給グラフとにらめっこしていた。

そんなフロイトの横で簪は言う。

 

「それは、そう。もしそれで戦うことになったとしても多分、先生に止められていたと思う」

 

「それはそれでおもしろそうだ。千冬が止めに入るならもっといい」

 

ちっとも反省するどころかむしろその方が面白そうだと言ってパソコンの画面を見るフロイトに簪は呆れるしかない。

 

「それで、どうだったの?そのドイツの代表候補生の人は」

 

質問する簪にフロイトは答えた。

 

「性格だけで見るなら・・・・そうだな。軍人らしくはない。俺の知っている連中は基本煽っても、メーテルリンク以外は嫌味を返すか適当に流そうとする連中が多かった」

 

フロイトの口から人の名前が出てくるのを聞いて簪は少しフロイトの交友関係が知りたくなった。

そして打鉄弐式のデータから目を離し、フロイトに目を向ける。

 

「・・・フロイトの友達?」

 

恐る恐るといった様子で簪はそう聞くと、フロイトはパソコンの画面に注視したまま答えた。

 

「いや、仕事仲間に近いな。メーテルリンクの奴は俺が部隊のトップだったのは気に食わなかったみたいだったが」

 

「・・・・部隊?」

 

簪の呟きはフロイトに聞こえていなかったのだろう。カタカタとキーボードを打ち鳴らすフロイトは何も答えなかった。

そんなフロイトに対し、簪は頭の中で考える。

つまりフロイトも軍人か何かだったのだろうか?

いやでも、彼から自分の家は一般家庭だと聞いている。

もしかして・・・ゲームの話?

キーボードを打つ手を止め、簪の頭の中はフロイトの事でいっぱいになっていく。

そしてだからこそ気が付かなかった。

 

「おい。簪」

 

「・・・・えっ?あ、ご、ごめ」

 

んなさいと言おうとして顔を上げた時、簪の目と鼻の先にフロイトの顔があった。

 

(ち、近い・・・っ)

 

簪は視界いっぱいに広がるフロイトの顔を見て自身の顔が熱くなるのを感じた。

 

「顔が赤いが熱でもあるのか」

 

誰のせいで!と思わず口にしそうになるが、簪は喉元でぐっとこらえる。そして覗きこむフロイトに簪は言った。

 

「・・・わ、私は大丈夫・・・だからっ」

 

「そうか。ならいい」

 

そう言ってフロイトは身を引くと再びパソコンの画面に視線を戻し、キーボードを打ち始める。

そんなフロイトに対し、簪は先程から頬を染め、ずっとドキドキと鳴りっぱなしの胸元を押さえながら打鉄弐式の出力調節を行っているフロイトの横顔を見る。

 

「・・・・・」

 

ISと真剣に向き合うフロイトはとても格好良く見えた。別に普段のフロイトがカッコ悪いと言う訳ではないが、こう・・・子供っぽさがあり 今のフロイトには大人っぽさが前面に出ているのでそのギャップが簪にはとても印象に残る。

そんな彼の横で簪は少し、ほんの少しだけ距離を詰めた。

少し手を伸ばせば彼に手が届く。

そこまで近づいた簪の鼻腔にフロイトの匂いが立ち込める。

鉄と油、そして硝煙の匂い。でもその中に安心出来るような彼の匂いがあった。

 

(あ・・・れ・・・?)

 

ソレを嗅いだ簪は急に眠気に襲われ、目をトロンとさせる。

 

(そう言えば・・・ちゃんと寝たのは何時だったけ・・・)

 

フロイトの匂いに安心感を覚え、眠気に耐えるようにこっくりこっくりと隣で船を漕ぐ簪にフロイトは気付いた。

 

「眠いのか」

 

今の時間は午後十時。門限もとうのまえに過ぎている。

 

「だい、じょう・・・ぶ・・・」

 

そういう簪だったが、今でも夢の中に落ちていきそうな彼女にフロイトは────

 

「ほらよ」

 

自分の上着を眠そうにしている簪に被せてやる。

そしてそれが決め手になったのだろう。

眠気に限界だった簪はコテンとフロイトにもたれ掛かるようにして眠ってしまった。

 

「・・・・すぅ・・・すぅ・・・・」

 

幸せそうに寝息を立てて眠る簪にフロイトは何も言わず、一人誰もいない夜の格納庫でキーボードを打ち続けた。

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