「大した相手じゃないな。ただまあ始めの肩慣らしの相手には丁度良い」
多少動いてくれる方が遊び甲斐があるし、かと言って案山子を相手にするのは面白くない。
ACに乗っていた癖で何度かペダルを踏む動作を無意味にしてしまうが、そこはISに乗って身体に馴染ませればいい。
アサルトブーストやクイックブーストをした時にかかる圧力も数をこなしていけば慣れるだろう。
だが、不満もある。
「操作をしている感じがしないのは面白くない」
ISに乗って感じたこと。それはレバーやパネルによって操作をするという操作性が必要ないということであった。
「手足を延長させてその感覚でISを操作する。一種のパワード・スーツみたいなものか。面白い発想だが・・・俺の趣味じゃないな」
それでもフロイトにとっては楽しいおもちゃだ。それをむざむざ手放すつもりもない。
「それで?今度はお前が俺の相手をしてくれるのか?俺はそっちの方が遊び甲斐があるが」
「稼働試験は終了だ。これでも多忙の身なのでな。お前だけに構っている訳にはいかん」
「そうか。ならしばらくコイツに乗らせてもらう。感覚がまだ掴みきれてないからな。お前とやり合うのはその後でもいい」
「・・・・・」
千冬はそんなことを言う協調性がないフロイトに自身の眉間を押さえた。
この男・・・フロイトはあまりにも問題児過ぎる。
下手をすればあの『天災』よりも協調性がない。
とんでもない男が来たものだと千冬はため息をついた。
「・・・なら山田先生をつかせる。終わったらISを彼女に渡せ。いいな?」
至近距離でグレネードを二発食らったことで伸びている真耶にすまないと思いながらそう言うと、フロイトは目を輝かせる。
「・・・そうか!なら、思う存分やらせてもらう」
そう言って空へと飛び立つフロイトの後ろ姿を千冬は見送ると、再びのため息をついた。
「とんでもない問題児が来たものだな・・・これは」
あの『馬鹿』が知り合いに居なければ千冬でも頭痛の種になるところだ。
もっとも一番苦労するのは山田先生だろうが。
「それにしても・・・フロイト・ヴェスパー」
縦横無尽にISで空を飛ぶフロイトを千冬は見上げる。
「元とはいえ代表候補生であった真耶を一瞬で倒すその腕にその操作能力・・・本当にただの一般人か?」
フロイトの個人情報をあらかた見たが、学校では問題児だったことを除いてコレと言って特別な経歴はない。
「・・・これは相当荒れるだろうな」
あの男は手に余りすぎる。恐らく一夏ともどこかで必ずぶつかるだろう。
本当にとんでもない奴が来たものだと千冬は額を押さえた。