千冬にはフロイトのあの戦闘が目に焼き付いていた。
真耶に急接近してからのグレネードによる牽制、そして近接戦を仕掛ける振りをしながらイグニッションブーストで背後に周り、不意打ちからのグレネード。
単純にフロイトがあの模擬戦で行った動きはたったそれだが、果たして真耶の反応速度を超えながらそんな動きが出来るのはこの学園で何人いることか。
恐らくだが両手で数えるほどしかいないだろう。
そんなことをISを初めて動かした時にしたフロイト。
そんな彼は先に行った戦闘をしたと思えない表情で───
「・・・・・・起きろ。フロイト・ヴェスパー」
教師としても、大人としても頭の痛い千冬であった。
あの模擬戦から数日が経った。
今現在、フロイトは入学式を終え、取り敢えず一年間過ごすクラスの自身の席だと言われた場所に座っていた。
式を終えると、案内された一年一組の教室で周りからの好奇な視線もどこ吹く風とやり過ごしたフロイトは、そのまま最初のホームルームに突入することになったのだが・・・
IS学園は一般的な学校とは大きく異なると言われているが、基本は同じ学校であるため、教科書や参考書というものは基本的に入学してから配られることになる。その際、確認のために乱丁がないかを見ている時、生徒がキチンと作業しているのかを確認していた千冬がフロイトにかけた言葉が先の言葉であった。
「・・・・・・」
「ヴェ、ヴェスパー君。起きてくださいよー!」
山田先生が涙目になりながらフロイトの肩を揺らすがこの男、一向に起きる気配がない。
そんなフロイトに対し、周りの目は一瞥するものと興味を引くもののどちらかだ。
───とそんな中、真耶の揺さぶりが効いたのかフロイトが目を覚ました。
「・・・・終わったか」
「終わってないですよ!」
よく寝たと言わんばかりに首を回すフロイトに真那は声を上げた。
初っ端からコレは本当に先が思いやられる。
だがそんなフロイトを見て怒りを上げるものがいた。
「織斑先生!彼は何故ここに居るのですか?!」
「今は質問の時間ではないのだがな・・・・発言したいのであれば、まずは名前を言ってからにしろ」
立ち上がり、フロイトに向けて指差しながら叫んだのは金髪と、少し大きめのイヤーカフスをつけているのが特徴の女生徒だった。
「ッ、セシリア・オルコットですわ。改めて織斑先生にお尋ねしたいことがあります」
「言ってみろ」
「何故、こんな男が此処にいるのです!私達はISにおける最新知識を学びに来たのであって、不真面目に授業を受けるつもりはありませんの!」
恐らく彼女はこの場をそんな崇高な場所だとそう思っているのだろう。
寝る間も惜しみ、血の滲むような努力をし、国からは専用機を受け取るくらいまでのその努力を報われるくらいには。
だからこその不満もあるのだろう。
こんな男が自分達と同じ場所にいることに。
世界で二番目の男性操縦者。
そんな男がこんな問題児なのだ。必死に努力をして勝ち上がった彼女が憤慨するのは分かる。だが───
「フロイト・ヴェスパーは二番目の男性操縦者だ」
「そんな男がですか?!」
噂程度には既に流れていたのだろう。ざわざわと小さく騒いでいた生徒たちから、本当のことだったんだなどという声が周囲から聞こえてくる。
だが、そんな言葉だけで納得できない人間はいる。
「証拠はありますの!?あるのなら映像なり、なんなり見せてくださいまし!」
「ならアリーナにあるシミュレーションを使ってみるといい。アリーナランキングのトップにフロイト・ヴェスパーの名前が並んでいるぞ」
「───なっ!?」
千冬の返答にセシリアを含め、クラス全員が驚いたような顔をする。
模擬戦が終わった日、あの後フロイトはアリーナのISシミュレーションシステムを利用していたのだが、何回か繰り返したった数時間でシミュレーションとはいえ、この学園でトップだった更識を自身の敗北から瞬殺するまでに至った男だ。
下手をすれば自分もすぐに抜かれかねない。
と、そんな驚愕をする彼女達に寝起きのフロイトがセシリアを見た。
「お前は確か・・・イギリスの代表候補生だったか?名前は誰だったか・・・」
「ッ!セシリア・オルコットですわ!」
フロイトのそんな質問にセシリアは怒りで声を荒げる。が、フロイトはそんな彼女につまらなさそうに言葉を吐いた。
「前にお前のシミュレーションデータがあったから試しに遊んでみたんだが・・・面白くなかったぞ。IS自体は面白い性能をしているみたいだがな」
「やめろ、ヴェスパー」
フロイトの相手を煽るような言葉を諌める千冬の声は既にセシリアには聞こえていなかった。
身体の芯が冷えながらも、腹のそこは熱い感情がドロドロと溜まっていく感触を彼女は確かにしていた。
それが怒りの感情と気付く前に、彼女は声を張り上げた。
「決闘ですわ!」
ここまで原作主人公が出ていないんですけど