「狡いよ!」
「何がだよ!」
学校にて、めぐるが真央の前に現れる。まるで、アラバスタの時のように。
「何なんだお前は。スモーカーか? 一緒に俺と海楼石の檻にぶち込まれる気か?」
「ちっがうよ!」
「言っとくけど、海賊の戦いに卑怯なんて言葉はねーからな。お前が何を言ったって、俺が狡いなんてことにはならない」
「なるよ!」
「ところで何が狡いの?」
「何も分かってないのに狡くないとか言ってんの⁉︎」
なんかすごく怒っているが、何をそんなに怒っているのだろう? 何か悪いことしたっけ? とか首を傾げる。
「ていうか、何怒ってんの?」
「羨ましいの!」
「何がさ」
「灯織にワンピースカードの特訓してるでしょ!」
「……はぁ?」
何言ってんの? と言わんばかりの声が漏れる。覚えがないどころの騒ぎではない。
「してねーよ。なんで特訓なんて……」
「すごく強かったもん、灯織!」
「そりゃ環境デッキだし。お前にあげたナミデッキも強い……てかお前組んだの?」
「組んだけどボロ負けしたの!」
「……レシピ見せてみろ?」
「え、私料理できないよ」
「デッキのだよ」
何で今の流れで料理だと思うのか分からない。デッキレシピという言葉に聞き馴染みがないと言うことだろうか? まぁどうでも良いが。
「はい。持って来たから見て」
言われて、鞄から出されたデッキケースを借りて眺める。基本的に強大な敵だけで組んでいる感じだ。
……だが、中身は素人そのものという感じ。
そもそも青ナミのリーダー効果自体が「ルール上、自分のデッキが0枚になった場合、自分は敗北する代わりに勝利する。【ドン!! ×1】このリーダーのアタックによって、相手のライフにダメージを与えた時、自分のデッキの上から1枚をトラッシュに置いてもよい」というもの。
つまり、相手のライフを削ってとどめを刺す必要もなく、とにかくドローをすれば勝てるのだ。その上、ナミ自身も攻撃さえすれば山札を1枚削れる。
……が、後者の効果はいわゆる罠だ。まず攻撃をしてしまうと、相手は手札を1枚増やしてしまう。チャンスを広げてしまうと言うことだ。
そうでなくても、アタックにはドン‼︎を1枚つけないといけないので、コストが勿体無い。2ターン目にコストが余っていたらやっても良いんじゃない? と言う効果なのだ。
にも関わらず……入っているカードは「ウソップ」「ガイモン」「ベルメール」「ノジコ」……思わずため息が漏れる。
「ほんとはそげキングも欲しいんだよね〜」
「この4種類軒並みいらない」
「なんで⁉︎」
「あとそげキングもいらない」
「どういうこと⁉︎」
「まずウソップからな」
ウソップの効果は「【速攻】(このカードは登場したターンにアタックできる)
【ドン!! ×1】このキャラのアタックによって、相手のライフにダメージを与えた時、自分のデッキの上から7枚をトラッシュに置いてもよい」というもの。
つまり、ガンガン殴ってデッキを減らす……というのが使い方ではある。
「まず、ウソップのコスト4は重い。ていうか、これを活かすなら実質コスト5か。出したターン殴らないといけないけど、ドン‼︎をつけないと効果も使えないから5コス払ってこれをした上で、攻撃を通さないといけない」
「だって、ウソップパワー5000でドン‼︎1枚つけるんだから、パワー6000でしょ?」
「そんなもん簡単に防がれるだろ。ブロッカーいたら簡単に凌がれるし、カウンターついてないから手札で腐るし使い道がない」
「ドン‼︎もっとつければ?」
「10コス溜まってる状態で使うならそれもありだけど、そしたらナミの守りのカウンター使えないだろ。言っとくけど、青ナミを相手にしたら全員必死こいてリーダーをボコボコにしてくるぞ」
「……うっ」
どのデッキでもコストの管理は大事だが、青ナミは特にその節が強い。手札次第とはいえ、3コスは残してターンを切り替えたいところなので、正直余程のメリットがない限りでは4コス以上のキャラを出すことはない。
「同じ理屈でガイモンとベルメールもボツ。ライフにダメージを与えた時、って時点で無理」
「え……確かにまぁこの前、灯織とやった時、驚くほどダメージ与えられなくてキツかったし……でも、ナミと縁があるキャラクター入れたいなぁ……」
「……」
確かに、ノジコとベルメールどっちか入れたい気持ちはわからないでもない。実際、真央はどっちも入れられないってことでこのデッキをやめたところもある。
「……まぁ、ノジコは無しじゃないから。一応キープな」
「! や、やった……!」
ノジコはコスト2、パワー0で「【登場時】自分のリーダーが「ナミ」の場合、相手のコスト5以下のキャラ1枚までを、持ち主の手札に戻す」という効果。
なるべく相手に殴られたくもないナミとしては、相手のキャラを手札に戻せるのは悪くない。……デッキを削れないので有りでもないけど。
「でも、ウソップもベルメールさんもガイモンもダメなら誰入れるの?」
「一つ前の弾のカードだな」
「? どゆこと?」
「バギー、ダズ、インペルダウンオールスター、唐草瓦正拳、DEATH WINK……らしい」
「らしい?」
「いや、倣って俺もデッキ組んだけどそんなに強さを感じなかったから」
とはいえ、一応理屈は説明しておく。流石に組んでいないカードの実物は持っていないので、持って来たカードで代用して説明する。
「例えば、まずはバギーな。効果は『【登場時】自分のデッキの上から5枚を見て、「バギー」以外の青の特徴《インペルダウン》を持つカード1枚までを公開し、手札に加える。その後、残りを好きな順番でデッキの下に置く」。1コスだから、まずはこいつを使ってダズをサーチする」
机の上にバギーの代用のカードであるカタクリのカードを置いてから、デッキからダズの代用であるペロスペローを見せる。
「ダズの効果は『【登場時】自分のトラッシュからコスト1の青のイベント1枚までを、手札に加える』で、これで大槌か輪ゴムをトラッシュから回収する」
話しながら、この2枚はめぐるのデッキにも入っているので、そこからカードを借りる。
二つともイベントカード。ウソップ輪ゴムはコスト1で「【カウンター】自分のリーダーかキャラ1枚までを、このバトル中、パワー+2000。その後、自分のデッキの上から1枚をトラッシュに置いてもよい」。というもの。
ゴムゴムの大鎚もコスト1で「【カウンター】自分の手札1枚を捨てることができる:自分のリーダー1枚までを、このバトル中、パワー+4000。その後、自分のデッキの上から2枚をトラッシュに置いてもよい」だ。
「こいつらがあればリーダーを殴られた時にカウンターで防げる上にデッキを削れる。ダズはその効果を何度でも再利用できるってことな」
「な、なるほど……そうやってデッキを無くすんだ……」
「まだあるぞ。そのダズの効果をさらに再利用するための唐草瓦正拳。コスト4以下のキャラを手札に戻せるから、こいつでダズを手札に戻して、ダズを出してダズで輪ゴムが大槌を戻して……って、ループして守りながらデッキ削るって流れ……らしい」
まぁそんなに上手く行ったことがないのであくまでも理論的な話だが。
説明を聞いためぐるは、少しだけを肩を落としながら呟く。
「じゃあ……あんまり東の海のキャラは使われないんだね……」
「いやいや、んなわけないじゃん」
「え?」
「例えばこいつ」
そう言いながらめぐるのデッキから出したのはカヤ。1コストで「【登場時】カード2枚を引き、自分の手札2枚を捨てる」というもの。
「こいつをループさせるカードもあるぞ」
「どんな?」
「ゼフ、デッキに入ってるじゃん」
話しながら、デッキからゼフのカードを出した。5コストパワー6000で「【ドン!! ×1】このキャラのアタックによって、相手のライフにダメージを与えた時、自分のデッキの上から7枚をトラッシュに置いてもよい。【登場時】コスト3以下のキャラ1枚までを、持ち主の手札に戻し、自分のデッキの上から2枚をトラッシュに置いてもよい」と言う効果。
「えっ、さっき4コスト以上のキャラ入れないって……」
「こいつは別。重要なのは登場時効果の方。これでカヤを手札に戻してもう一回効果を使える上に、デッキもトラッシュに置ける。あとパワー6000あるから、敵の面倒なアタッカーを処理に使っても良いし、あわよくばリーダー殴って7枚削る効果を狙っても良い」
「ああ〜……」
「何より重要なのはサンジのピラフ。とにかくカードを2枚引けるイベントだから、こいつは来たらとりあえずまた使えば良い」
そう言いながら、サンジのピラフのカードを見せる。カヤと違って捨てる必要もないから、このデッキの切り札と言える存在だろう。
「な、なるほど……」
「この辺を軸にして、もう一回組み直してみろよ。試運転ならいつでも付き合うから」
「あ、ありがと……」
他にも色々あるが、一先ずはこんな所で良いだろう。すると、めぐるはにっこりと微笑んだ。さっきまでとっても理不尽なことで怒って来ていたやつとは思えないほどの笑顔だ。
「ありがと、真央!」
その屈託のないお礼と笑みに、思わず目を逸らしてしまう。最近、こいつの顔を見るとこう言うことがよく起きて困る。
「これで私、今度こそ灯織に勝てるよね?」
「いやそれは知らん……」
正直、赤緑ローは相性が悪い。何度でも攻撃してくるし、展開力もあるから。1コスのブロッカーが多く入っていることもあるが、それこそローにとってはシャンブルズのもとにできる。
その上、ブロッカーをすり抜けるルフィもいるので簡単にはいかないだろう。
「じゃあ今夜、とりあえず一戦ね」
「良いだろう。言っておくけど、俺手加減しないからね。しっかりと防ぐように」
「はーい」
そんなわけで、今日の夜は二人でワンピースカードをやることになった。
×××
翌日、事務所にて灯織は軽く伸びをしていた。少し、気にすることがある。
「めぐる、どうしたの?」
「ふっふっふっ……」
やたらとめぐるがドヤ顔で笑みをこぼしていた。
「完成しちゃったんだ〜、青ナミデッキが」
「あ、そうなんだ……おめでとう」
「ありがとー」
そう言いながら、めぐるはチラチラと自分を見て来た。どうしたのだろうか。見聞色の覇気の練習?
「ど、どうしたの?」
「わ、私ねー、真央と結構互角だったんだよー? まぁ勝てなかったけど、向こう本気出したって言ってたしー。結構強いんだよー?」
「そ、そうなんだ……すごいね」
言えない。一度とはいえ勝ちました、なんて口が裂けても言えない。
「……むー」
「えっ、ど、どうしたの?」
「誘ってよ! ワンピースカードやろって!」
「えっ? あ、ああ……」
それを待っていたのか、と今更分かった。なんかやたらとチラチラ見てくるな、と思った。
まぁやるのは構わないのだが……正直、負ける気がしない。だってパラレルのローを買ってから、灯織はさらにワンピースカードの研究をたくさんしている。真央とも互角に戦えるだろう。
なら……めぐるが「もう嫌」って言わないように戦うのはもう少し後にしたほうが良い気もする……。
「や、やめとく。めぐるにワンピースカードやめて欲しくないし」
「っ……へ、へぇ〜……言うじゃん、勝つのは確実ってこと……?」
「え? あ、いやそんなつもりじゃ……」
しまった、また選択肢を間違えてしまったらしい。めぐるは分かりやすくぷくーっと頬を膨らませている。可愛い。
「今日、目にモノ見せてあげるんだから!」
「えっ……き、今日はちょっと……」
「真乃もやるよね⁉︎」
「ほわっ? ご、ごめんね。今日は私もちょっと……」
「何かあるの?」
「もう直ぐ中間試験だから。……それに、私はワンピース全部見てからデッキ作ろうと思ってるから、デッキもまだないんだ」
「ちゅう、かん……?」
めぐるが固まり始めた。どうやら、全然勉強していないらしい。
「……めぐる。ワンピースカードやってる場合じゃないんじゃないの?」
「うっ……ひ、灯織は勉強してるの?」
「してる。学業もアイドルもワンピースカードも手は抜かない」
「り、立派だ……」
いや、灯織にとってはむしろ当たり前のことだったりする。……ていうか、プロデューサーがどちらを優先させるのか分からないけど、成績が悪くて活動停止とか本当に勘弁してほしい。
「じゃあ、真乃、めぐる。今夜は一緒に勉強しよっか」
ちょうど自分もこのあとは勉強する予定だった。高校最初の試験だ。しくじるわけにはいかない。
「うん。私は良いよ」
「え、えー⁉︎ やだー!」
ここまで両極端な返事が来るなんて思ってもいなかった。だが、ここで「嫌だ」なんて返事が出る時点で勉強確定である。
「ダメ。せめて赤点は回避してもらわないと」
「が、頑張ろ? めぐるちゃん」
「ま、真乃までー……?」
よし、2対1。こうなればめぐるも従わざるを得ないだろう。事務所……は他の人達も使うかもしれないし、マックか何処かで良いだろう。この時間なら多少騒がしくても他に人はいないと思うし。
「決まりだから。地学とか特殊なのはないよね? なら、多分教えられると思うから」
「あ、生物なら私に任せて。得意だもん」
「し、試験範囲が同じとは限らないよ?」
「高校一年生の授業にそんな差はないでしょ」
「ノートはとってるなら、多分傾向くらいは分かると思うよっ」
「うっ……」
逃がさない。相手がブロッカーを出して来たのなら、こちらはルフィにドン‼︎をつけるだけである。これでブロッカーがいようとブロックされない。
「それに、教材持って来てないよ」
「鞄にたくさん本入ってたよね」
「ううっ……!」
学校帰りの鞄なのですぐにバレる。あの鞄、やたらとズシっとしていたし、教科書は一冊くらい確実に入っているだろう。
処理し切れない場合は、相手のキャラクターの火力を下げる。ブロックされてもブロッカーは助からないように。
さて……あとはどうする? と、めぐるに目を向けると、めぐるは肩を落としながらため息をついた。
「わ、分かったよ……」
「うん。決まり」
「あ、じゃあさ、もう一人だけ面倒見てあげて欲しい人がいるんだけど」
「?」
まぁ、別に構わない。一応、真乃に聞いた方が良いだろう。
「良いよ。……真乃は?」
「めぐるちゃんのお友達でしょ? 私も大丈夫」
しかし……類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。勉強が苦手なめぐるの近くに勉強が苦手な子が現れるとは……やはり、ことわざというのは趣味で作られている物ではない。
そんな事を思いながら、そろそろ始まるレッスンに備えた。
×××
「人を巻き込む奴があるかああああああ‼︎」
「旅はみっ……み、ミリズレ? だもん!」
呼び出されていたのは真央だった。まぁ、何となく灯織も察しはついていたわけだが。
「ちっげーよバーカ。旅は抜け道だろ。旅がミリ単位でズレてどうなるってんだ」
「う、うううるさいな! 言い間違えだもん! ルフィだって御愁傷様言えてなかったもん!」
「ほわ……ちなみに、旅は道連れだよ? 真央くん」
「えっ」
「ぷっ……抜け道って、忍者なの?」
「うううるせーよ! 言い間違えだよ!」
そんなやりとりを聞くだけで、何となく苦労しそうであることは察してしまった。この子も勉強は苦手らしい。
「ほら、いいからやるよ。日吉くん、教科書持って来た?」
「ああ、はい」
そう言いながら鞄から出したのは、ワンピースの単行本だった。
「教科書!」
「教科書だろ。人生の」
「学校の教科書に決まってるでしょ!」
「次読ませて」
「めぐるも手を出さない!」
だめだ、この子達。早く何とかしないと……なんて頭に手を当てる中、真央はずっと立ち上がる。
「ま、持って来るの忘れた以上は仕方ないよね。俺帰るわ」
「はい、真央」
その直後、その真央にめぐるが教科書を差し出す。
「使えるよね? 同じクラスだもん」
「……」
「よし、じゃあやろっか。ワンピースは没収」
そう言いながら、単行本を取り上げた。
とりあえず、めぐるよりもやる気がないアホな男の子は灯織が担当した方が良い。
「真乃、めぐるをお願い。私が日吉くんを見るから」
「分かった。じゃあ頑張ろうね、めぐるちゃん。むんっ」
「むんっ」
あっちは仲良さそうだ。……こっちもそうしたいのだが、まぁどちらかと言うと厳しくしないとダメな気もする。
めぐるから借りた教科書は英語。ならば、まずはそこからだ。
「はい、じゃあ日吉くん教科書開いて」
「ルフィの落書きしてやろ」
「真面目にやって」
「あ、カッコよく描いて?」
「めぐるも許可しない!」
ダメだ、本当にやる気がない。こうなったら……仕方がない。ため息を漏らしながら、耳元で告げてやった。
「……日吉くん、石焼きシチューって知ってる?」
「知ってるよそりゃ、サンジのでしょ?」
「うん。……実はね、私空島読んだあたりであのシチューを再現してて……」
「……マジで?」
「試験で良い点取ったら、作ってあげるけど……」
「……」
……流石に無理かな? と小首を傾げる。だってレシピとか出ているわけではないから「こんな感じかな」と研究しただけだし。父親と母親は美味しいと言ってくれたけど、これが果たして真央を唆らせることが出来るのか……。
「食べる! 頑張る!」
「……」
……なんか、たまにこの子は高校生ではないんじゃないかと思うほど素直で可愛く見える時があって困る。
いや、まぁそれなら良い。早速、勉強を見てあげることにした。
「じゃあ、教科書開いて」
「よーっし、やってやる」
そのまま勉強を始めた。……まぁ、実際の所、ワンピースカードについてあれこれ教えてくれたし、ワンピースそのものを教えてくれたのも彼だ。
だから、こう言う機会でお返ししてあげたい、と言うのは正直ある。灯織も心の中で「むんっ」と気合を入れると、そのまま面倒を見てあげた。
「be動詞と助動詞って一緒じゃないの⁉︎」
「違うよ!」
「何この単語……負け? 負けって英語でルーズじゃないの?」
「make! 作るって意味!」
「あ、銃って英語は知ってる! ゴムゴムの『ピストル』でしょ?」
「一般的にはgunだから! それは拳銃!」
「拳銃はレッドホークだろ。何言ってんの?」
「ルフィで間違った単語覚えるのはやめて!」
割と心が挫けそうになった。こいつこれでどうやって高校に入ったのか非常に気になるところだったりする。
さて、何にしてもその様子で面倒を見始めて、早一時間が経過。残念ながら、未成年者は10時以降の徘徊が出来ないためもうお勉強の時間も終了。
「……じゃあ、次からはこのページからこのページまで出来るようにしておくように」
「……死ぬ」
「いや、死なないから。まだ二週間あるから、少しずつ頑張ろう」
「あ、二週間後までにやれば良いの? なら余裕」
「二週間後は試験でしょ! 次にみんなで勉強する時ってこと!」
この子は本物の馬鹿なのだろうか? もう少し普通に考えていただきたい。
その真央の横から、巻き込んだ元凶とも言えるめぐるがニヤニヤした様子で口を挟んだ。
「へへー、真央私より勉強出来てないでやんのー」
「うるせーよ。てかお前より英語できないのは当たり前だろうが……ルフィ以上にゴムゴムの銃を撃てる奴がいるか?」
「そう言う例えを出されたらいないけど……」
「カタクリ?」
「風野、茶々を入れるな」
モチモチの実を使えば可能だ。実際、ルフィの技をルフィ以上の威力で返していた。
「逆にめぐる、お前だって生物全然じゃん。血液の働きくらいギア2で覚えとけや」
「う、うるさいよ! そんなので理解できるの真央くらいだから!」
「つまりお前の頭、ルフィ以下」
「なんだとー⁉︎」
「はいはい、もうお店で騒がない」
そんなやりとりの中、真乃が「ふふっ」と声を漏らす。
「でもめぐるちゃん、頑張ってたよ?」
「だよね⁉︎」
「この調子なら40点は硬いと思う」
「よーし、頑張……えっ、この調子で頑張っても40点なの私⁉︎」
「プッ……」
「そこー! 笑うなー!」
なんだか……めぐると真央は仲が良いものだ。クラスだと隣の席らしいが、なんだか真央が羨ましい。付き合いの長さは灯織の方が上なのに、ああやってめぐると冗談を言い合える仲になっている。
ここは一つ……自分も何かジョークを交えて混ざった方が良いだろう。ワンピースで少しずつコミュニケーションも学んでいる。
ルフィの面白さ……いわば、あの直球さを使えばきっと今より仲良くなれる。
コホン、と咳払いしてから、二人にぎこちない笑みを浮かべながら言ってみた。
「ほら、2人とも。バカ同士でどんぐりの背比べをしても何にもならないから。他人と比較するのはやめなさい」
「「アアン⁉︎」」
「ヒィっ……!」
怒らせてしまった。