試験が終わった。残念ながらプロデューサーが気を利かせてくれて試験期間中に仕事がなかったこともあり、終わってからは仕事が増えたため全員での打ち上げは一週間ほど延期。
……で、本日の机の上はMr.13のフィギュアが置かれる日。試験当日までフィギュアを持ってきて試験管と普通に揉め事があった様子を見て普通に引いためぐるは、ようやく休みが取れそうな日が出来たので真央の机に集まっていた。
「真央ー! 金曜日の夜暇ー?」
「……」
「暇だよね? 暇だから灯織の家に集合だからねー!」
「……」
「……ねぇ、聞いてる?」
なんか返事がない。頬杖をついたまま窓の外を眺める少年を見て、少しめぐるも眉間に皺を寄せてしまった。
「真央?」
「別に怒ってない」
「は?」
「どうせ三人で楽しくやってたんだろ。こっちの誘いは断って。せっかく試験が終わったのにず──────っと放っておかれてても全然怒ってない」
「……あ、あー……」
仕事だったのだから仕方ないじゃん、とは言えない。灯織や真乃と話して、アイドルである事は黙っておくことにしたのだから。たまにテレビとかに出るのだが、このワンピースバカの少年はテレビなんてワンピースしか見ていないのだろう。
「ご、ごめんって……拗ねないでよ」
「拗ねてないし」
拗ねている子供が一番、言いそうな反応をされてしまった。……ていうか、やっぱりこの子は少し子供っぽい。
「ほ、ほら、遊べる日があったらまたこっちから連絡するからさ」
「言っとくけど、俺バイト始めたから。もう前みたいに簡単に集まれないよ」
「えっ、ど、何処で?」
「何処だって良いでしょ」
「う、う〜……」
怒っている。すごく怒っている。まぁ……めぐるも友達に同じことされればむすっとするだろう。
残念ながら、今後ともこういう日は増えるだろう。その度にごまかすのは無理なので、やはりいつかネタバラシをする日が来る。
それを踏まえて誤魔化すのなら……これしかない。
「ごめん。実は私達、同じバイト先で知り合って友達になってるんだよね。だから、三人で集まって真央と一緒にいられない時間とかは出来ちゃうんだ、どうしても……」
「……」
「ほ、ほら、金曜の夜は四人でいられるから。灯織が石焼シチュー作ってくれるって言うから、みんなで打ち上げしよう」
何とか盛り立ててみると……真央はようやく顔をこっちに向けた。でも視線だけは逸らしたまま相変わらず拗ねた表情で呟くように答えた。
「まぁ……良いけど」
「……」
……困った。こんな弟がいたら溺愛しちゃうかも、なんて思う程度には少し可愛かった。
そのまま少し頬を赤らめながら、あらためて誘ってみることにした。
「じゃあさ、今日の夜も私と二人でカードやっちゃう?」
「いや俺今日バイトだし。謀略の王国買うから金貯めないと」
「……」
やっぱり可愛くねーわ、なんて思いながら、とりあえず席についた。
×××
さて、そんなこんなで金曜日の夜。四人で灯織の家に集まり、食事を始めた。たかだか中間試験で打ち上げは大袈裟だが、大袈裟じゃないくらいに灯織は苦戦していた。主にバカへの教育で。
その打ち上げで料理を灯織が作ったのだから、中々に変な集会ではある。
「おお〜……美味い! ジャリジャリしない!」
「ほわっ……ほんと。お野菜もホクホクで……」
「ほんとは刀で石を焼きたかったんだけどね……刀がどこにも売ってなくて……」
「そ、それは今度にしようね灯織……」
なんかユニットメンバーまで頭が悪くなっている気がして、めぐるは少し心配だった。……ていうか、この料理を本気で作っているあたり、割と既にワンピースに毒されている気がする。
「刀かー。俺も一回は持ってみてーなー」
「どの技をやりたいの?」
めぐるが聞くと、真央は真っ直ぐした目で応える。
「二剛力斬」
「えっ、な、なんで?」
かなりマイナーな技な気がする。……が、確かにインパクトはあった。両腕を「一剛力羅、二剛力羅」の掛け声と共に筋肉で膨らませ、口に咥えている一本と同時に振りかぶりながら三刀で殴り付けるように切り裂く力技だ。
「カッコ良いし面白いじゃん! 二剛力斬!」
「ああ……やっぱ理由はシンプルだよね真央は……」
「あんま使われてない技だけど、今使ったらヤバいって絶対。閻魔であんな力技を、覇気込めてやったらどんな奴だってぶった斬られるでしょ絶対。俺もあんな筋肉欲しいわー」
言われて少し想像する。ゾロみたいな筋肉の真央……せっかく子供みたいな可愛い顔しているのにあんなゴリマッチョに……なんか嫌だ。
「やめて!」
「えっ、やだよ。俺はマッチョになる」
「ま、真乃や灯織がマッチョになったらアンバランスでしょ⁉︎」
「? いや二人がマッチョになりたいならアンバランスでも良いじゃん」
「あの、めぐる……? 何その例えは……?」
「ていうか、あの……私、別にマッチョになりたくないよ……?」
こいつはほんと見事にこっちの思惑を外してくるものだ。おかげで何故かめぐるだけ否定されているような形になってしまった。
そのめぐるの隣で、真央は灯織に声を掛ける。
「にしても、風野。本当にありがとな」
「ううん。それより、どうだったの? 試験の結果」
「お陰さんで平均50点超えたよ」
「あ、あれだけの苦労で50……」
うん、確かに灯織が肩を落とすのも分からなくはない。本当に苦労していた。どれくらいの苦労かと言われると、CP9がプルトンの設計図のために5年も潜入していたくらいの苦労。
だが、隣の席にいためぐるは彼の点数をよく知っている。
「ま、まぁでも、基本的に点は悪くなかったよ! 英語とか社会系科目は60〜70点だし、国語系も50点前後だったから!」
「? じゃあ、何が悪かったの?」
「……数学と物理」
「……何点?」
「お前言うなよ。絶対やめろよほんと」
いや止められるが、点数を教えるのは教えてくれた人へ当然の報告だ。
「数1が32点、数Aが19点。……物理が6点」
「……」
「お前言うなやー!」
「自業自得だからー!」
掴みかかってくるが、それに応戦して手を組んで押し合いになる。理数系がとにかく死んでいる。基礎の段階では暗記でしかない生物だけがまだ良かったと言えるだろう(42点)。
そんな中、真央に真乃がむんっと両手で拳を作って言う。
「だ、大丈夫。真央くん。次は私もお手伝いするから……!」
「えっ……い、いや、なるべくなら勉強したくない……」
「頑張ろうねっ」
「……うっす」
意外と善意に弱いらしい。素直に返事をして小さく項垂れていた。これで期末試験もみんなでお勉強が確定してしまった。
まぁでも、あと二ヶ月くらい先の話だし別に今から嫌なことを考える必要はない。
楽しい話題に変えるために、めぐるはそのまま真乃に聞いた。
「そういえばさ、真乃は次のパックでデッキ組むんだよね?」
「う、うん……! 考えてるのはビビちゃんのデッキだけど……今、アニメでドレスローザの途中まで来たからレベッカちゃんと迷ってるんだ」
「……えっ、真乃もうそんなとこまで見たの?」
「ほわっ……?」
灯織に聞かれるが、真乃はキョトンとした顔で小首をかしげる。ちなみに、めぐるもまだそこまで読んでいない。
「ひ、灯織も真乃もその……ど、ドレスナントカって言うの、知ってるの?」
「うん。新世界の三つ目の島かな」
「ち、ちょっと真央! 私まだ頂上戦争も見てないんだけど!」
「知るか。遊んでくれなかったお前が悪い。……てか、自由に読みたきゃ自分で買えよ」
直球のど正論パンチで腰を抜かしそうになった。それはそうなのだが、思った以上の威力で何も言えなくなる。
そんな中で、さらに真央は真顔で真乃に声を掛ける。
「つーかお前、作るデッキが決まってんのは良いけど、ちゃんと抽選に応募はしたの?」
「ほわっ? ち、抽選?」
「そう。抽選。当たらないと買えないよ」
そういえば、めぐるが初めて箱を開けた時も「今は買いにくい」みたいなことを言っていた気がする。しかし、それが本当だとするとまさか過ぎる。
「してねーの? ガンガン応募しないと当たらんよ。ルフィだってどんなに追い返されてもガンガン突っ込んだんだからエース助けられたんだから」
「真央の例え、たまにへたくそだよね」
「うるせーよ!」
今のは全然ピンと来なかった。ルフィは別に何の策も無い神頼みで何度も突撃していたわけではない。抽選とは別だ。
……まぁ、パッと浮かんでこなかっただけなのだろうが、それでも自覚はあるようで真央は顔を赤くしている。
「とにかく、応募した方が良いよ。まだ応募出来る店あるし」
「「「する!」」」
「えっ、三人とも?」
それは勿論だ。めぐるとしても青ナミを強化出来るかもしれないのだから。特にあのデッキは高いカードは必要ない。つまり、1ボックスであったとしても必要な分、手に入るかもしれない。
「まぁそれならチェインでURL送るから、それでやってみ。すぐやった方が良いよ。今日までのとことかあるだろうし」
とのことで、とりあえず送られたものを見てそのURLから登録を始めた。
まずはアカウント作ってアドレスを登録して……とやって、色んな店舗のものをこなしていく。とりあえず三つやった、
「ちなみに、真央は何店くらい応募したの?」
「8」
「8⁉︎」
「場所によっては埼玉まで行く」
「ほ、本気だ……」
「当たり前だろ。ちなみに次のデッキ、キャラはサボが最強だと思う」
「どんな効果なの?」
灯織に聞かれて真央は少し得意げに答える。
「5コス6000のブロッカー。登場時、次の自分のターン開始時まで味方全員効果でKOされない」
「……このゲーム、効果でKOとかあったっけ?」
きょとんと首を傾げるのはめぐる。なんかあんまり覚えがない。
「櫻木が買ってたルフィのデッキのJETピストルとかで死ななくなるってこと」
「でも1ターンでしょ?」
「バッカお前、1ターンあったら」
「攻撃が出来るようになる。つまり、こっちもライフで受けるか手札を消費してカウンターをしないといけないって事」
灯織が説明してくれる。それを聞いて、真央は少し驚いたように目を丸くする。
「おお……さっすが。理解が早い」
「これくらい誰でも分かるでしょ」
「分かってない金髪がそこにいるじゃん」
「んがっ……⁉︎」
「いくら英語が出来てもその辺を思考することが出来ないなら勉強とか意味なくない?」
「それとこれとは話が別」
「ていうか何で私今ディスられたの⁉︎」
他所の会話から変化球の流れ弾で虐めてくるのはやめて欲しい。なんか恥ずかしいから。
そんな中、今度は真乃が尋ねる。
「ちなみに、色は?」
「黒」
「ほわっ……黒って、前から思ってたけど強いカード多いよね?」
「そうだな……なんでだろうな」
そうなのかな? と、めぐるはよく分からないが、その間に話が進んでしまう。
「そういえば、黒のカードは効果KOが多いよね。コストを下げてコスト以下のKOをして来るし」
「そうなんだよ……。コスト下げるカードが低コストだから10コスだろうと強引に消せるし、正直クソやってらんねーよ」
「赤や紫でも効果でKOってあるよね? ピーちゃ……マルコさんとか」
「マルコ強いよね。イベント一枚でKOされなくなるのはずるいと思う」
「でも、それで仮にコスト5パワー7000のキャラをKOするとしたら、お玉2枚とマルコだから合計コスト7。ガープと大噴火ならカード2枚で済む上にコストも6だぜ。それに追加してガープの効果は1ターンに一度なら何回でも使えるし、大噴火で1ドロー出来るからやっぱずるいわ」
「ほわっ……それに、お玉ちゃんだとカウンター2000を消費するもんねっ」
「そう考えると、確かに黒のカードって強いのかも……」
灯織、真央、真乃、また灯織……と、話す様子を聞きながら、めぐるは「ぐむむっ」と下唇を噛み締める。
……話に入れない。みんな、ワンピースカードについて詳し過ぎる。真央はともかく、灯織と真乃は同時期に始めたのに何でそんなに知っているのか。
なんか……悔しくて、釈然としなくて、それでいて悔しくて。
「ず、ずるいよ!」
「何が?」
「色々!」
「いや……意味わからん」
「だって……なんか、私だけ蚊帳の外じゃん!」
「何でだよ。お前だってワンピースカードやってんだろ」
「そ、そうだけど……狡いよ!」
「分かったよ。ずるくて良いから打ち上げ続けようや」
「続けられないの! 私だけ!」
話に混ざれないのが辛い。一番、真央ともイルミネとも一番多く関わっているはずなのに、何で自分だけこんなに話に入らないのか。
「あーもう分かったよ。じゃあはい」
「……?」
そう言うと、真央はスマホを手渡してきた。その画面にはワンピースカードのカードリストが載っている。
「お前だけこれで勉強してろ」
「結局、混ぜてくれないの⁉︎」
「八百屋の会話に果物屋が入って来るには、それなりに予習が必要になんだよ」
「畑が違うってか⁉︎」
「ほわっ、うまい」
「ありがとう。……いやありがとうじゃないよ真乃!」
真央に真乃が加わってこられて、思わず声を荒げてしまう。微塵も嬉しくなかった。
そんな中、ようやく灯織がいさめに来てくれた。
「ま、まぁ落ち着いてよ、めぐる」
「う〜……」
「えーっと……私達もめぐるが置いていかれてると思わなかったの」
「煽り⁉︎」
「えっ、ええっ⁉︎ なんで?」
どいつもこいつも人を馬鹿にしてくれるものだ。おかげでめぐるのボルテージは留まることを知らない。
「もー分かりましたよー! みんながそうやって話すなら、私だってみんなが分からない話するもん!」
「はぁ?」
「知ってる? 私がいたアメリカのマサチューセッツ州ではね、少し北の方に行くとね……」
「それ誰もついていけねーよ。ただのお前の講演会になるわ」
「こうっ……!」
地味にショックだった。どんな比喩を使われているのか。
もうダメだ。この人達の会話に今日は入れない……と、少しため息を漏らす中「あっ」と真央は声を漏らす。
「講演会って言えばさ、風野」
「何?」
「お前らってなんか三大将に当てはめられねーかなって」
「えっ、講演会全く関係なくない?」
それはめぐるも同感。1+1=2だけど漢字でモグラって土竜って書くよね、と言われた気分だ。
「まず、めぐるは黄猿じゃん」
「それ髪の色だけでしょ⁉︎」
「何言ってんだ。ボルサリーノの髪は黒だぞ」
「いや名前的に……ていうか、そこ以外でなんで私が黄猿なの?」
「足速いじゃん。体育の時、ちらっと見たけど超速かった」
「……」
前々から思っていたけど、こいつは本当に自分を外見だけで見てないんだな、と少し思ってしまったり。今まで割といろんな男子に告白されて来たけれど、二ヶ月弱馬鹿騒ぎして何もされていないのは初めてかもしれない。
「じゃあ私は?」
「櫻木は……クザン?」
「え、なんで?」
「動物に優しいじゃん? 海の上で自転車漕いでる時にすれ違った動物に挨拶とかしてたし」
「ああ〜……」
「じゃあ、灯織ちゃんは?」
「……たしぎ?」
「「分かる」」
「分からないで! 一人だけ大佐?」
大将じゃないんかい、と、思わないでもないけど、でも分かる。しっくりき過ぎた。
「……てか、櫻木もどちらかと言えばおつるさんとかだよね。穏やかだし」
「ほわっ……そ、そうかな……?」
「あと名前的にも、真乃はぴったりかも……ほら、鶴だし真乃も鳥好きだし」
「あ……そっか。ピーちゃんがまたいたんだ」
「いやピーちゃんではないと思うけど……」
鳥ならなんでも良いんか、と思わないでも良いけど、まぁ真乃も冗談で言っているのはわかる。
それより……大将という枷がなくなった今、自分も女性キャラに変えてもらえる流れかもしれない。流れで聞いてみた。
「じゃあさ、私は?」
「黄猿」
「なんでよー⁉︎」
思わず掴みかかってグラグラと揺すってしまった。
「いや足速いし……」
「私も雰囲気で選んでよー!」
「……3人で一番重そう?」
「ぶっ飛ばすよほんとに! てかそれ黄猿関係ないし!」
「速度は重さって言ってたじゃん?」
「いやだから何⁉︎」
「重そう」
「こんのー!」
掴み掛かった両手を頬に移動させ、抓りながら揺りまくる。この男、今日は本当に腹立たしい。
「大体、黄猿は挨拶がわりにハグとかしないじゃん!」
「そうだな」
「男の人だし私サングラスかけてないし!」
「そうだな?」
「私のどこが黄猿⁉︎」
「速くて重そう」
「その一点突破をやめろー!」
「馬鹿野郎、一点突破ほどワンピースで好まれる作戦はねーぞ。それでルフィはエースの処刑台に届いたんだろうが」
「知るかー!」
なんて少しずつ騒がしくなる中、灯織がめぐると真央の間にやんわりと口を挟む。
「ま、まぁまぁ……じゃあ、真央は誰だと思う?」
「モーガン! ……いや、ネズミ大佐!」
「バッカ俺そんな良くねーよ」
「良っ……えっ、今バカにしたつもりだったんだけど……」
あの二人、海軍でもトップクラスの最低男だったと思うのだが……こいつワンピース好きなんだよね? と、小首をかしげる。
「だってお前、そしたら麦わらの一味に相手してもらえるんだろ? ルフィにでもナミにでも殴られたら最高じゃん」
「え……な、斜め下の喜び方……」
どこまで好きなのだろうか? ていうか似ているか似ていないかの話なのだが……もしかして、殴られるためならば最低になると言うつもりなのだろうか?
「え、じゃあお前羨ましくないの? ルフィとナミに殴られるの」
「いやだよ……え、嫌だよね真乃、灯織」
「う、うん……」
「痛そうだし嫌だ……」
「お前ら変だよ」
「「「いやそれはそっち」」」
口を揃えてしまった。この子の価値観は少しよく分からない。
「とにかく、めぐるは黄猿な?」
「やだ! じゃああんたネズミ大佐!」
「サンキュー、ボルサリーノ」
「早速呼ばないでよー!」
喧嘩になりそうになるが、今度は真乃も灯織も止めに入って来なかった。代わりに聞こえてきたのは、割と失礼なひそひそ話。
「なんか……小学生の男の子と女の子みたいだね?」
「真乃……た、確かにそうだけども……」
そんな言葉が聞こえたが、このムカつく男を成敗する方が先である。そのまま、しばらく取っ組み合いをしたままバトルを続けた。
×××
さて、まぁそうこうしているうちに、良い時間になってきた。みんなでワンピースを見たりと騒いで、そろそろ帰る時間。そこで、問題が発生した。
「真央は?」
「え? ……あ」
寝ている。よりにもよって男の子の真央が爆睡している。子供みたいに大の字になって「くかー」なんて分かりやすいイビキをかいていた。
「寝てる……どうしよう?」
「起こすしかないでしょ」
そう言って、三人で真央を見下ろす。……しかし、男の子がよくもまぁ女の子三人の中で眠れるものだ。無防備というのはこういう子のことを言うのだろう。
真乃が、思わずというように呟く。
「……なんか、ほんとに子供みたいだね」
「高校生どころか小学生って感じ」
「背もあんま高くないしね……」
というか……ちょっと長尾があどけなさ過ぎて起こすのが申し訳なくなる。本当に子供みたいな寝相だ。
「……誰か家分かる?」
「私知ってる。持って帰るよ」
「物みたいな言い方しないであげて」
そう言ってめぐるが真央をおんぶする。思ったより重かったのか、少しバランスを崩しながらも何とか立ち上がった。
「……」
「めぐる? どうしたの?」
「あ……いや、思ったよりゴツゴツしてて……前、麦わらの一味に入れるように筋トレしてるとか言ってたけど、だいぶ本格的みたい」
「ほわっ……そ、そうなんだ……」
さっきは無防備だなんだと思ったけど、こうしてみると中々男の子みたいだ。
「めぐるちゃん、大丈夫?」
「大丈夫! じゃあ灯織、明日からまた頑張ろうね」
「うん」
そう返事して、めぐるは真央を背負ったまま真乃と一緒に風野家を出た。
歩きながら、真乃がニコニコ微笑みながら声を掛ける。
「私も一緒に真央くんの家まで行くね」
「ありがとー」
時刻は20時過ぎているので、遅いと言えば遅い。女の子一人は危険だ。
そのまましばらく二人で話しながら帰宅した。