ルールも会話も深読みしたって良いことはない。
結局、三人揃ってデッキを買ってしまった。
まぁ、せっかく三人の趣味も一緒だと分かったことだし、ここはひとまずポジティブに捉えることにした。
さて、そんなわけで、早速プレイしてみることにした。ルールもちゃんとスターターデッキの中に入っているし、多分大丈夫なはずだ。
「じゃあ早速、やってみよっか!」
本当ならお店でやれば良いところなのだろうが、席が空いていなかったので急遽、めぐるの家でやることになった。
早速、デッキを開封する。箱を開けて中身を確認。プラスチックのケースにカードの束が二つ入っている。
その束こそがデッキ。リーダーカード1枚、デッキ本体が50枚、ドン‼︎カードデッキが10枚と入っている……らしい。同じく内封されている説明書にはそう書いてある。
その説明書は、裏面にはデッキの置き方のようなものが書いてあった。
「なんか……カッコ良いね。リーダーカード」
めぐるがビッグマムのデッキを眺めながらそんなことを呟く。絵の中では、剣のようなものを振り上げたシャーロット・リンリンが目立っている。
ワンピースの不思議なところだ。シャーロット・リンリンという女は別に美形ではない。身長880センチ、体型も丸々と太っていて自身の子供を食べてしまうと言う恐ろしさ……だが、こうして戦っているシーンを見るとやたらとカッコよく見える。
「めぐる、ビッグマムにしたんだ?」
「うん。黄色いから! 灯織は何にしたの?」
「ワンピースfilmにした。これ強いカードがたくさん入ってるらしいから」
「そうなの?」
「うん。ウタと……テゾーロ? ってカードが特に使えるみたい」
わざわざ事前に調べておくあたり、灯織らしい。でも、強さを求めるのは少し意外だった。結構、ガチでやるつもりなのだろうか?
「やる気満々だねー。大会とか出るの?」
「出る。実は私、会いたい人がいるんだ。その人の名前も連絡先も知らないけどワンピースカードをやってることは知ってるから、大会に出てればいつか会えるかなって」
「そ、そうなんだ……」
相変わらず真面目かつ何事にも本気過ぎて天然が見え隠れしている。ロマンがある話だけど、無理じゃないの、と言う感じがひしひしする。
さて、この場にいるもう一人にデッキを何にしたのか聞いてみた。
「真乃は?」
「わ、私は麦わらの一味にしたよっ」
「あー真乃らしいかも」
「えへへ……そ、そうかな」
「真乃、それに入ってる毛皮強化ってカード強いらしいよ」
「ほわっ……そ、そうなんだ」
他のデッキについてもちゃんと調べている。そうなると、当然めぐるだって気になるものだ。
「ねーねー灯織、私のデッキは?」
「めぐるのは、カタクリとブリュレとリンリンだったかな」
「なるほどなるほど……覚えておこっと」
カードの中を見ると、カタクリのカードが目に入る。強いかどうかはわからないが……確かに、カッコ良い。というか、この人のイラストは触っているだけなのに超絵になるくらいイケメンだ。口元は隠れてしまっているが、おそらく寡黙な人で口も小さいのだろう。
しかし……正直な話、スリーブを買うのは迷ったのだ。たかだか紙じゃん、と思っていたから。
でも、こうして実物を見ると傷がつくのは確かに嫌過ぎる。
「先にスリーブにカード入れよっか」
「そ、そうだね。……私も、ルフィのカードカッコ良いから入れたいな」
「あ、ホントだ」
真乃の持っているカードを見させてもらうと、ルフィがこちらを睨みつけているのが見えた。
「あ、ほんとだ。カッコ良いー」
「わ、私も麦わらにすれば良かったかな……」
「そういえば、灯織のデッキのカードはアニメっぽい絵ばかりだよね」
「ま、まぁ……映画のキャラクター達のデッキだから仕方ないかな……」
「灯織、映画も見たの?」
「ううん。ただ、これならネタバレにならないんじゃないかなって」
言われてハッとした。ネタバレとかその辺のこと、全然考えていなかった。ビッグマム海賊団なんてむしろネタバレしかないような……と思ってカードを見る。
……が、なんだろう。知らない人ばかりで逆に気にならない。
「あー……私、ちょっとネタバレすごいかも……」
それを呟いたのは真乃。そもそも、麦わらの一味の姿が今三人が読んでいるところと全然違う。
もう街中で貼られているポスターなどの姿だ。
「まぁ……気にしなくて良いんじゃない? それにほら、何があってこんな姿になったのか、って言うのを考える楽しみも出来るし」
「ほわっ、そ、そうだね……!」
「ちなみに、真乃は何処まで見たの?」
「わ、私はアニメで偉大なる航路に入ったところかな……」
「あー、じゃあラブーンのとこ?」
「そ、そう!」
あそこはめぐるもヤバかった。あれから同級生の少年の家に結構な頻度で入り浸り、読んでいたわけで今は空島が終わったところ……なのだが、アーロンパークからドラム王国、アラバスタ王国と全力で泣いてきたのでちょっと読むのが怖いまである。
「ラブーンのとこもやばいよ。私、なんとか耐えたけど泣きそうになっちゃったもん」
「そ、そうなんだ……あ、泣きそうになったといえば、私ウソップさんのところでちょっと涙腺緩んじゃったかな」
「あー分かる! 解散する所で思い出垂れ流すのずるいよね!」
ウソップは元々、小さな島の少年だった。その中で、小さな男の子達を子分にして「ウソップ海賊団」を名乗り、たくさん面倒を見てあげていたのだ。
その少年達と最後は本物の海賊を相手にルフィ達と手を組み、村を守ったのだ。
そしてその冒険を最後に、ウソップは海を出ることを決意し、ウソップ海賊団は解散……あそこは、本当に泣きそうだった。
「灯織はどう思う?」
「……ぐしゅっ」
「えっ?」
「ごめっ……思い出が蘇ってきて……ぐすっ」
流石に思い出して涙ぐむことはないかな、と思ったのだが……灯織が泣いているのを見て、思わずめぐるの頭の中にもウソップ海賊団解散のシーンがぶわっと流れ込んで来る。
そう、残念ながら世の中、どんなに楽しくても終わらない環境なんてない。もしかしたら、このイルミネーションスターズも解散する時が来るかもしれないのだ。
そう思うと……涙腺が……。
「うあああああ‼︎ 私達は絶対、解散しないからねええええええ‼︎」
「めぐっ、めぐる〜……!」
なんと、珍しく灯織がハグに応じてくれて、二人で泣いてしまった。そう、ワンピースの世界の出来事は他人事ではないのだ。現実に起こることも踏まえると泣けてしまう。
そんな時だった。「ほわ?」と真乃から声が漏れる。
「どうしたの? 真乃……」
「この女性……ラブーンのお肉を取ろうとしていた人じゃ……」
一人だけカードを見ていた真乃が、そんな言葉を漏らす。握られているのは、ネフェルタリ・ビビ。正確に言えば麦わら海賊団ではないが、船に乗っていたことは確かにあった。
……そういう意味では、ネタバレもやはり往々と含まれている。思い出を振り返るのはやめておいた方が良いかもしれない。
「……カードゲームやろっか」
「そ、そうだね……」
そんなわけで、スリーブにカードを入れ始めた。
その内職みたいな作業を終えてから、ようやくカードをシャッフルする。カードを置く紙に倣ってデッキを並べる。
「誰からやる?」
「はいはーい! 私やりたい」
「じゃあめぐると……真乃、先にやる?」
「ほわっ……わ、私で良いの?」
「うん。麦わら海賊団だし、せっかくだから」
「じ、じゃあ……やろっかな」
「負けないからねー、真乃」
そんなわけで、めぐるvs真乃のマッチングとなった。
お互いのルールブックにある通り、まずはデッキを右側、真ん中にリーダーカード、そして左にドン‼︎カードデッキを置く。
まだゲームが始まる前から、ルフィとビッグマムが対峙ているような様子だ。
「なんか……リーダー同士、ちょっと緊張感あるね……」
「ほわっ……た、確かに」
ビッグマムについてはまだ何も知らないメンバーだが、なんとなくルフィと向かい合うその様は絵になっていた。
さて、まずはじゃんけん。めぐるが勝ったので、先行はめぐるが貰うことにした。
「ルールは私が読み上げるね」
「あ、うん。お願い」
1人だけ空いている灯織がそう言うと、ルールブックのようなものを読み始める。
「まず、お互いに5枚カード引いて。それが手札」
言われた通り、お互い5枚引いた。めぐるの手札には、カタクリ、フランペ、ゼウス、力餅、男爵の5枚が来た。
「で、この時に手札を変えたかったら、一度だけ5枚、デッキに戻してシャッフルして、5枚引き直し出来ます」
「……って言われても、この手札が良いのかわからないし……」
「わ、私は今はいいかな……」
分からないのに変えても仕方ない気がする。……そうでなくても、灯織が「強い」と言っていたカタクリが来ているし、変えるのは勿体無い。
「じゃあ、続いてライフを用意します。リーダーカードの右下を見て」
言われて見ると、5という数字が入っていた。
「その枚数分、ライフを用意します。山札……じゃなくてデッキの上から5枚引いて、ドン‼︎デッキの上に置いて下さい」
「はーい」
置いた。ライフ、と言うことはこれが命なのだろうか?
「このライフはお互いのリーダーのライフで、リーダーが攻撃を受けると上から1枚ずつ手札に加わる。それが0枚になった上でさらにリーダーが攻撃を受けると敗北……だって」
「あーなるほどね。じゃあ、大事にしないといけないんだ」
「そうだね」
ルールは分かった。シンプルだ。要するにリーダー……すなわち船長をやっつければ良いと言う話だから。
他のカードにはライフが書いていないあたり、恐らく他のカードは攻撃されるとやられてしまうのだろう。
つまり、戦いは敵の頭を取るまで終わらないと言うことだ。
「じゃあ、めぐるのターンから始めよっか」
「うん。じゃあ……俺のターン、ドロー!」
「あ、先行はドロー出来ないって」
「……ごめん」
ついよく聞くフレーズだったのでやってしまったが、まさかだった。
さて、そうこうしている間に灯織は説明を続ける。
「じゃあ、とりあえず順番通り行くね。まずは『リフレッシュフェイズ』」
「フェイズ?」
「あ、カードゲームなだけあってターン制で続いていくから、それに伴って行える行動に順番があるみたい」
ポーカーの順番みたいなものかな? と、無理矢理理解しておく。
「えーっと……『自分のレストのキャラを全てアクティブにし、自分の付与されているドン‼︎カードをアクティブにしてコストエリアに戻します』……レストってなんだろ」
「灯織先生! アクティブも分かりません!」
「あ、あの……コストエリアって……?」
「……」
「……」
「……」
専門用語が多い。ルールのところに何か書いていないだろうか?
「ひ、灯織。何か書いてない?」
「あ、ある。攻撃とかしたキャラクターはレストになって、カードの向きを横にするんだって」
「? キャラクターいなくない?」
「ど、どれを戻すんだろ……」
……解説が欲しい。みんなカードゲームに慣れていないから、少し迷ってしまう。
そんなわけで、めぐるは「よしっ」と決めた。
「ちょっと待ってて」
「? めぐる?」
「頼りになる子を連れて来るから」
こういう時、一番に飛びつきそうなクラスメートがいる。どうせワンピース関係の何かを漁っているだろうし、電話してみよう。
×××
「え、友達とワンピースカード?」
「そうそう。ごめんねー、急に呼び出して」
そう言って現れたのは、フォッサのミニフィギュアを持って現れた日吉真央。駅前で待ち合わせして、家まで案内する。
「いや、それは超嬉しい。俺もワンピースカード一緒にやる友達欲しかったから」
「えー、言ってくれれば私やったのに」
「いや、金かかるから流石に誘うの憚られてた」
「……で、その人は今日が誕生日のキャラ?」
「うん。白ひげ海賊団15番隊隊長」
「そ、そうなんだ……」
流石に知らない。出てくるのを楽しみにさせてもらおう。
「ま、ワンピースカードなら任せろ。家族で一番強ぇから俺」
「家族みんなやってるの?」
「やってる」
楽しそうな家族ではあるな、なんて思ってしまったり。
「でも逆に俺が入っていって良いのか? 他みんな女なんだろ?」
「大丈夫大丈夫。むしろそっちこそ大丈夫ー? 女の子ばっかで緊張しない?」
「? 俺との差なんておっぱいがあってち○こがないだけじゃん。それに緊張しろとか言われても……」
「……」
思春期を知らないのだろうか? いや、めぐるとしてもそういう子の方が気を遣わないし遣われなくてありがたいけれど。
でもこれだけは言っておかなくては。
「あの、私の前では良いけど、他の子の前でそう言うこと言わないようにね」
「そういう事?」
「や、だから……胸とか、そう言うの……」
「あー了解」
流石に続きを言わなくても理解してくれた。ちょっと弁えてくれないと、特に灯織が大変な気がする。
さて、そうこうしている間にめぐるの家に到着。中に入って、めぐるの部屋の前に来た。
せっかくなので、少し勿体つけてみたい。ただでさえ呼んだのは男な子なのだ。案外、盛り上がるかもしれない。
「ね、真央」
「ん?」
「何か物真似できない? ワンピースの」
「あー、なるほど。サプライズ的な?」
「そうそう」
「分かった。任せろ」
「よろしく」
それだけ話してから、めぐるが先に部屋に入る。
「ただいまー」
「あ、おかえりなさい。めぐるちゃん」
「あれ、一人?」
二人に軽く挨拶すると、灯織が良いトスを上げてくれた。ふっふっふっ、と「よくぞ聞いてくれました」みたいな笑いを漏らしながら、めぐるは元気に声を上げる。
「ではこれより……スペシャル講師の先生をお呼び致します! どうぞ!」
そのめぐるの掛け声の直後、扉の奥から声が聞こえてきた。
「何よ……! 何も知らないくせに!」
えっ、とめぐるから声が漏れそうになる。どう聞いたって男子高校生の声ではないどころか、ナミの声だったからだ。
「うん、知らねぇ」
しかも、今度はルフィの声になった。この人どんな声帯してるのか。
「あんたには関係ないから……! 島を出て行けって言ったでしょ⁉︎」
いや、ていうかやめて欲しい。そのシーン、めぐるがボロ泣きしたところだ。この後で助かったものだから、アーロンパークでは2回泣かされている。
「ああ、言われた」
余りにも声が似過ぎていて、頭の中に映像が流れ込んで来る。鼻にツーンと来るような感覚の涙腺緩ませる前兆がこれでもかというほどめぐるを襲う。
「ルフィ……助けて……」
ナミのあの泣き顔が見事に脳裏に焼き尽くされ、無事に目から涙が溢れた。
その直後、扉が一気に開かれる。
「当たり前だぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「ほわっ⁉︎」
「ひゃっ……!」
「ぐすっ……そ、そんなわけで……講師の……」
と、泣きながらも名前をあげようとしたが、その前に灯織と真乃がほぼ同時につぶやいた。
「あ……こ、この前の……」
「ティーチさん?」
「あ? ……あ、櫻木とハンコック?」
「いえ、風野です」
「え……ふ、2人とも知り合い?」
まさかの展開だった。
そんなわけで、詳しい話を改めて聞いてみる。まぁ要約すると、灯織は真央のデッキケースを拾ってあげたらしく、真乃はペットの散歩中にティーチを名乗られたらしい。
うん、意味が分からない。
そんな中、灯織が顎に手を当ててつぶやく。
「……つまり、私達イルミネーションスターズはたった一人の男の子の所為でワンピースにハマらせられた……?」
「イルミ……何?」
「あ、ああいや何でもない」
そういえば、アイドルだとは言っていなかったが……まぁ、確かにまだ他人に言えるほど活躍しているわけではないし、言わなくて良いだろう。
「ていうか、八宮もハンコックも櫻木もワンピースカードに手を伸ばすまでハマってたんだなー。なんか良ち仕事した気がして気持ち良いわ」
「いや、だから風野……」
「でも、まだハマって間もないよね。なんでワンピースカードやろうと思ったんだ?」
聞かれてまず答えたのはめぐる。まぁクラスメートで一番、多く会っていると思うから、まずは自分から言った方が良いと高コミュ力故の反応で放った。
「私、漫画とか読ませてもらって、なんかワンピースのグッズ欲しいなーって思ったんだ。でもフィギュアとかちょっと高いし、ワンピの実とかはスペース取るし……それなら、みんなで遊べるカードかなって」
「あー、なるほど。でもそれでなんでビッグマム? そこまで読んでないよな」
「黄色いから!」
さて、その次に答えたのは真乃。相変わらずほんわかする綺麗な笑顔で答える。
「私は、ピーちゃんのカードが欲しくて」
「いやデッキからマルコ出ないよ」
「えっ、ピーちゃんってマルコのことなの?」
「うん。でも、買いに来た時に灯織ちゃんとめぐるちゃんがいたから、一緒に遊べるデッキを買おうかなって」
「あー、なるほどな」
真乃らしいと言えば真乃らしい。……でも本当にマルコのどの辺がピーちゃんなのだろう?
さて、最後だ。最後なだけあって全員で一斉に灯織の方を見ると、灯織は少し恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「ハンコックは?」
「いや、だから風野灯織」
そこを注意してから、灯織は言うか言わない方が良いか少し悩んだように口を紡ぐ。何を悩んでいるのか分からないけれど、言いにくいなら自分が代弁しよう。
「灯織は割と本気でやり込むつもりなんだよね? なんかワンピース好きな人ともう一回、会うためとかで」
「っ、め、めぐる……!」
「え?」
なんで怒るの? と思ったのも束の間、灯織がその後に視線を真央に移したことで察してしまった。
「え、もしかして……」
「灯織ちゃんが会いたかったの……日吉くん?」
「っ……そ、そう…………」
それってつまり……灯織は真央のことを……? そう思うと、なんだか健気で可愛い。いや、ていうかそれ以前にこの子……真央のことが好きなのだろうか?
そこまで思考が達した時、真乃とめぐるは揃って口に手を当てて目を見開く。
「「……わぁ〜、つまりそういうこと?」」
「っ、ち、違うから! そういうんじゃなくて……!」
「俺に会うためにワンピースカードを極めようとするって……デュエリスト魂ここに極まれりだな」
「う、うるさい!」
「でも、なんで俺に会いたかったわけ?」
それを聞いちゃうのか、とめぐると真乃の二人はさらに盛り上がる。そわそわしながら、灯織へ同時に顔を向ける。
「っ、そ、そこ! 何そのシンクロ率⁉︎」
「シャムとブチ?」
「あなたは黙ってて!」
「いやーだって……ねぇ?」
「気になるよね?」
「だ、だから違うって! ……その、単純にワンピースのことを語れる友達が欲しかっただけなの」
それを言われると、思わず真乃とめぐるは少し頬を赤らめて目を逸らす。今にして思えば、この前の事務所では本当に無駄なやり取りに神経を使ったものだ。めぐるは普通に意を決したわけだが、無駄なことを意識しすぎて空回りし過ぎた。
「いや、普通に三人で語れよ」
「「「…………そうだね」」」
もっともな台詞に、三人とも目を逸らした。
……さて、まぁそれはさておき、だ。そろそろワンピースカードの続きをしたい。
コホン、と咳払いをしてから、めぐるはいい加減、話を進めた。
「とにかく、真央。聞きたいのはワンピースカードのルールなんだけど……」
「何?」
「ここ。最初にリフレッシュフェイズってあるけど、1ターン目はどうしたら良いの?」
「いや1ターン目だけリフレッシュフェイズないに決まってんだろ」
「「「えっ?」」」
「リフレッシュするキャラもリーダーもいねーんだから。1ターン目はドローフェイズもないから、先行の1ターン目は三つ目のドン‼︎フェイズからだぞ」
言われて、また三人とも黙り込む。いや、考えてみれば当然なのかもしれない。また深読みし過ぎて変な時間を過ごしてしまった。
「……えっ、聞きたかったことってそれ?」
「う、うん……」
「まぁね……」
「そ、そう……」
「序盤でナミがいなかった場合の麦わらの一味か」
言い返せない。とても言い返せない。
ため息をついた真央は、三人を見回した後、ちょっとどうするか迷った様子だったが、すぐに口を開いた。
「あー……用事済んだなら俺帰るけど。友達同士でやってた方が良いっしょ?」
「えっ……」
いや流石に帰らせることは出来ない。わざわざ来てもらったのに用事が済んだらさようならは無理だ。
「そ、そんな気を遣わなくて良いよ。せっかくだし、このままコーチして?」
「まぁ八宮がそう言うなら良いけど……」
「よ、よし、じゃあ真乃。そろそろ先に進もう」
「う、うん」
改めてゲームを再開した。