【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
スキルと魔法が解禁された事により、楽になると思っていた。だが現実はそんなに甘くない。
「霊力が足らんな」
「格闘家(笑)」
「むしろスキルが邪道と考えると格闘家(真)では?」
「なん……だと……!」
「ヒーラー(笑)とは違うのだよ!」
「オンドゥルルラギッタンディスカー!」
くだらない事を喋りながらモモタロウの首に蹴りを叩き込む。川を超えた辺りからデビルピーチが湧かなくなり、その代わりにモモタロウが大量発生している。
とはいえ装備とパッシブでステータスの上がった俺らの敵では無い。元々技術力では上回っていたしな。
「しかし、ここまで沸きが早いと中々厄介ですね」
面倒になって来たのか、先程から急所狙いしかしていない探求ネキが溜め息を吐き出す。
「普通なら処理が追い付かないのだろうが、我々にとってはデビルピーチより狩りやすいがな」
「人型との対戦経験
「元々は対メシアや闇召喚士を想定していたから対人を仕込んだんだが……」
首を貫手で貫き、そのまま奥のモモタロウに蹴り飛ばす。そしてメギド爆弾を放り投げ、追撃のダーツで起爆する。
「異界が楽しくて出ていく奴の方が少ないという」
「私達のレベルまで来ると異界の方が稼げますからね」
ガイア連合全体だと少数になる中層探索者は、素材の希少性から金に困る奴は少ない。
個人でシェルターを作る予定のドクオニキ*1の様に終末後を見据えて投資してる俺達も居るが、修羅勢は基本的に富豪俺達に運用を投げっぱなしだ。
もしかしたら、では無く、確実に現在の自分の資産がどれくらいなのか知らない奴も居る。そんな奴に限って、金が無いから
「まぁ、俺はちょっと前に派手に使ったけどな!お陰で金欠────んー?」
「どうしたんですか?」
「いや、何か【気配察知】に変な反応があってな」
「どんな反応です?」
「淫魔っぽい感じだな」
俺がそう呟いた瞬間、ミナミィネキが霊符を取り出して自分の胸に当てた。
「制限解除行きますッ!」
『『『判断が早い!』』』
爆発的な霊力の高まり。それを瞬時に制御してミナミィネキが駆け出す。
「えっと、どうします?」
「ミナミィネキと桃娘の勝負(意味深)を観戦しに行くか?」
「……いえ。私達は先に進みましょう。今のミナミィネキの相手になる様な悪魔は居ないでしょうし」
『『了解』』
さらば、ミナミィネキ。一時間後ぐらいにまた会おう。
◇
「やっぱり、ちょっと緊張感が足りないよな」
モモタロウの首をトランプで跳ね飛ばし、その口にメギド爆弾をセットしてシュート!超エキサイティングッ!
「セツニキ、さっきから遊んでますもんね」
「そろそろネタが無くなりそうだ」
「それは問題だな。とはいえ緊張感か」
探求ネキが受け流したモモタロウに秋雨ニキが回し蹴りを叩き込む。そこへわざわざドロップキックを決めに行くが、当たる直前にMAGに還られた。運の良い奴め。
地面を派手に抉った影響か、さらに現れるモモタロウ。余りにも面倒だったので刀を奪い、切り捨てていく。
「あれ?普通に使えるんです?」
「いや、持ち主が死ぬと消えるぞ。──ほら」
右手に握っていた刀がMAGに還っていく。何となく損した気分になるのは何でだろうな。
「霊力さえ解放されれば無理矢理固定出来る気がしますね」
「俺も霊符に収納してパクれそうな気がしてる」
「どちらも無い物ねだりだろう。少なくともこの最初の──仮の名だが、壱の仙境では落とさないからな」
「解除アイテムは装備とスキルだけだったねぇ」
モモタロウが現れる度にイワナガ達と気配を消しているショタオジが、秋雨ニキの言葉を引き継ぐ。
「せめて敵の種類が増えてくれれば、まだ緊張感が出るんですけどね」
「仮称・弐の仙境には新たな悪魔が出そうだが、壱は二種類とレアっぽい桃娘だけだろうな」
さっきから【気配察知】に三種類しか反応が無い。桃娘っぽいのはたぶんミナミィネキと思われる反応が乱獲してるし。
「うーん……次からは時間制限でも付けます?」
「ふむ。それなら時間延長用の少し強い敵も用意したいな」
「見た目は派手な方が分かりやすくて良いか」
「湧きは固定とランダムかな。固定枠は一度の突入につき一体まで効果アリでさ」
「採用!」
会議しながらモモタロウを薙ぎ倒してると、広い空き地の様な場所に出た。その中央には今にも悪魔が湧きそうなMAGの収束が起こっている。
「中華系の悪魔を上げていく時間だぞ」
「四神として有名なのは白虎、青龍、朱雀、玄武ですね」
「瑞獣とされているのは鳳凰、亀、麒麟、龍だな」
「今の状況でそんなのに出て来られたらショタオジに頼るしか無いな」
「何時もなら獲物なのだが」
「玄武なんて上層で出てくる事ありますし」
「剣を折られまくって製造班がキレてたな。懐かしい」
無駄話をしてる間に収束が終了。悪魔が現界する。
「【妖樹
「中国神話に出てくる一本足の獣、または樹の精でしたね。今回は樹の精みたいですが」
「熟した瓜の様な顔、目は爛々と光り、大きく鋭い盆の様な口を持つ。確か名前を知られると付け狙われるのだったな?」
……ふむ。
「そこの女は探求ネキだ」「そちらの男性は秋雨ニキという名前です」「そこの子供はセツニキという名だよ」
「……?????」
「混乱してるの笑う」
「しかも私達、全員あだ名ですしね」
「悪魔相手に本名を名乗る訳が無いだろう」
という訳で戦闘開始。
「取り敢えず駆け付け一杯食らっておけや!」
投げ付けるのは霊的に強化した除草剤。普通の雑草なら辺り一面枯らせる力を持つが──
「んー微妙だな」
「まぁ、樹と獣の間の子みたいな存在ですし」
蔓の様にしなる腕を躱わしながら秋雨ニキが【鎧通し】──では無く【地獄突き】を放つ。
「やはりスキルは消費が激しいな」
「信じられるのは己の力のみ!」
「一応【火炎弱点】ですよ?」
「ショタオジ召喚するか?」
「それやったら属性関係無くないです?」
「だよなー」
【まきつき】をしようとする山魈から距離を取り、アギストーンを投げ付ける。……微妙に性能が低いのは仕方ないと割り切るべきかね。
「何で低位のアギストーンなのだ?」
「新人製造班への支援目的で購入してるんだよ」
製造班は自分なりの商品が作れる様になるまでが辛い。異界に潜って素材を取って来るか、高級式神を派遣しないと基本的に赤字になる。
そんな訳で、未来の職人の為にちょこちょこ購入してる訳だ。
「セツニキはガイア連合の役に立つ人間には優しいですよねぇ」
上体を反らして腕を躱わし、右手から【アギ】を放つ探求ネキに便乗してアギストーンを投げ付ける。
「これは【アギバリオン】では無い。【アギ】だ」
「ふふ、知ってます」
「後ろでショタオジも笑ったからセツニキの勝ちだな」
「ついにショタオジに勝ってしまったか……!」
両手を何処かで見た捻り槍*2の様に変え、そのまま放たれた突きを地面を這うように避ける。そして山魈の足元に手持ちのアギストーンを全て置き、そのまま離脱。
「【アギ】」
そこへ探求ネキがアギを放って起爆。予想以上の大爆発が起こったが──
「二割ぐらい残った感じか?」
「そんなもんでしょうね」
山魈は未だ倒れず。とはいえ──
「【トンボ蹴り】」
秋雨ニキの蹴りが見事に入り、山魈はMAGに還った。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「ふぅ、お疲れ様。──む、力の制限解除アイテムだな」
一番近くに居た秋雨ニキがドロップ品と思われる一口サイズの瓜を高く上げた。
「俺は要らん。探求ネキは?」
「余ったら欲しいかなってぐらいですね」
「では、私が頂こう──予想以上に美味しいな」
「何味だ?」
「スイカだ」
ウリ科だが見た目が違うだろう!と突っ込むのは不粋か。異界は基本的に何でもありだしな。
「ん?……あぁ、成る程。セツニキ。どうやら罠だったみたいだぞ」
「んあ?どうした?」
「力だけ解放すると普通に自傷する」
「体力とセットじゃないと駄目だった奴か」
これはショタオジが意図した罠かねぇ。それとも天然の罠か。……後者な気もするな。
「慣れそうか?」
「少し時間が欲しいな」
「それじゃミナミィネキが合流するまで休憩するか」
『『了解』』
今のうちに【ソウルドレイン】で異界から吸収を試してみる。吐血した。
「セツニキ!?」
「この異界、マジで俺とシエラ婆はキツいな。完全にメタられてるぞ」
取り敢えず拍手一回で【清浄の祈り】を発動。今度は霊力切れ直前まで行って、地面に倒れた。ショタオジはそんな俺を見て爆笑してるな。……ふむ。
「土の味美味しいです!」
「ぶほっ!!」
「床ペロネタの様に見えて、実は修羅勢なら何処の鍛練場なのか分かるぐらいには舐めた味ですよね」
「そうだな」
取り敢えず寝転んだまま飴玉*3を舐めていると、不意に頭を持ち上げられた。
「イワナガ?」
「そのまま少し横になってなさい」
「じゃ、お言葉に甘えて」
柔らかいイワナガの太股を堪能しつつ軽く目を閉じる。
「意外だね。貴女は人が嫌いだと思っていたんだけど?」
「嫌いですよ。人間は私を
「では、セツニキは別だと?」
「貴方達ガイア連合の皆様は
「…………成る程ね」
「頭の上で祀神と組織のトップが黒幕じみた会話をしてるんだが、どういう顔をすれば良いと思う?」
「笑えば良いと思いますよ」
探求ネキに言われた通りキメ顔で笑ったら、イワナガ以外全員から笑いを取れた。朕は満足じゃ。
◇
オークが使えなくなった……!