【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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セツニキゼミでやった所だ!試走編9

 

 

「な、何だこの異様な霊力の高まりは……!」

 

「み、見かけ倒しだっ!それに術者を殺してしまえば関係無い!」

 

「全員で総攻撃するぞ!我々は不老不死!巻き添えを恐れるなッ!!」

 

『『『応ッ!!』』』

 

 

 僵尸達が被害を気にせず、各自が持てる全力で向かってくる。それを一つ一つ丁寧に対処しながら、袖から追加でムーンストーン*1、ルチルクォーツ*2、ロードクロサイト*3、シトリン*4、石長比売が作れないので購入しておいたパール*5、締めにブラックダイヤモンド*6をばら蒔く。

 

 意味としては富や金運を主として、屍処理に特化させる為の清浄、長寿は磐長式の術式なので親和性を上げる為。

 

 そしてブラックダイヤモンドは──この異界を文字通り()()する為だ。

 

 地面に突き刺さった金のインゴットが熔けて集う。金の融解温度は千六十四度。そして人間が燃えるのに必要な温度は摂氏千度。つまり、だ。

 

 

「か、身体が燃える!?」

 

 

 人間の身体を燃やすには十分な熱量を持っている。とは言っても、物理学的にはあり得ないのだが。まぁ、そこを誤魔化す為の〝オカルト〟であり、〝術式〟だ。

 

 

「狼狽えるなッ!所詮、我らの加護を抜けぬ炎よ!命を脅かす事は無いッ!」

 

「そ、そうだったな。くそっ!舐めやがって!」

 

 

 指揮官っぽい僵尸の言葉に慌てふためいていた僵尸が冷静さを取り戻す。だが、一手遅かった。

 

 

「俺に集中して良いのか?」

 

『■■■■■ッ────!!』

 

 

 産まれた事を喜ぶように天に向かって吼える金龍。その叫びは異界を震わせ、不老不死である筈の僵尸達に畏れを抱かせる。そして、その感覚は正しい。

 

 

「薙ぎ払え」

 

 

 身体能力だけで金龍の頭に乗り、命令する。その指示に従順に従った金龍が腕を振るい、尾を振るう。ただそれだけで──

 

 

「か、身体がっ!儂の身体が──」

 

「嫌ぁッ!あんな風になるのは──」

 

「ふ、ふざけるなッ!我々は不老不死だぞ!?なのに何で──」

 

 

 僵尸共の身体が龍に触れた箇所から()()へと変わって行く。仕組みとしては単純だ。不老不死とはいえ状態異常は普通に効く。だから〝金成〟の術式を利用して、黄金化と言うべき状態異常を付与しているだけだ。

 

 とはいえ、それだけではここまでの威力は出ない。それを可能としたのは──()()()()()()だ。

 

 

「人類の悪行は凄いよな。奴隷商売を始めとして同じ人間を〝(かね)〟に変える事に躊躇いが無い」

 

「ふ、ふざけるなッ!我々は仙人だぞッ!?それなのにどうして──」

 

「人魚の肉を食べると不老不死になるそうだ。だから人間には人魚の木乃伊を作り、霊薬として売った()()がある。そして現代でも人間の臓器は高値で売買されている。……不老不死なら幾らでも取れるし、下半身が魚なだけで高値が付いたんだ。正真正銘の不老不死であるお前らの肉は、霊薬として高く売り出せると思わないか?」

 

「ま、まさか……この〝術式〟は──!」

 

 

 大袈裟に手を叩いて称賛する。気付かなければ、恐怖に固まった表情のまま黄金化せずに済んだものを。

 

 

「流石は仙人!良い読みだ!この術式は人間の身体で(かね)に成る部位を黄金化する!」

 

 

 わざわざこの糞面倒な〝制約〟を組み込む事で、コストを実用的な領域まで下げている。じゃないと流石にここまでの威力は出せない。ハッキリ言おう。この術式は格下の人間か死体専用だ。

 

 

「大火傷を負った〝裏〟でも活動する女優は、肌の綺麗な若い女の皮膚を移植して美貌を取り戻したらしい。各種臓器は言うまでも無い。眼球も、鼻も、オカルトを交えれば拒絶反応なんて悩まなくて済む。お前らは幾らになるのだろうな?」

 

「こ、この悪魔めっ──!」

 

「くくっ。お前は人間の〝悪意〟を舐めすぎだ。まぁ、死体が動き出す事自体が間違ってるんだ。諦めて対ショタオジで散財した俺のお小遣い*7となれ」

 

 

 我慢させていた金龍に暴れる様に指示を出してこの場を離れる。向かう先は──イワナガを先頭に置いて盾にしているショタオジ達の元だ。

 

 

「狡くないか?せめて自身で抵抗しろや」

 

「面倒だったし。それに磐長一族の術式は、石長比売様に向けられない様に編まれてるからね。対処が楽で良いや」

 

「異界の浸食と共にワンチャン行けないかと思ったが、流石にそこまで甘くないか」

 

 

 樹も水も土も何もかも。全てが金色に染まって行く光景を眺めながらそう呟くと、秋雨ニキが呆れた様に突っ込んできた。

 

 

「最初、凄まじい速度で黄金がこちらに浸食して来たのはわざとか?」

 

「もちろん。あの程度で救援が必要だなんて思われたく無かったからな」

 

「セツニキは広範囲技を不得手としていると思っていたのだが?」

 

「俺は術師だぞ?スキル以外の方が出来る事の幅が広いに決まってんだろ」

 

 

 一族の術式だけでも軽く万を越える。今はショタオジの元で学んだ術式も増えたから、下手すれば七桁ぐらいあるんじゃないか?

 

 

「この光景を見たら疑わないさ。しかし、良いのかね?この状況だと探求ネキも巻き込まれないか?」

 

「心配するだけ無駄だぞ?そもそも戦ってる次元が違うからな」

 

 

 道士(タオシー)……というより道教系の頂点である仙人は、別次元に異界を創る事から始まる。

 

 つまり、推定邪仙と思われるこの異界の主は、生まれた直後に別の次元に仙境を作り、そこから現実世界へちょっかい掛けていた訳だ。探求ネキはそこへ乗り込み、たぶん殴り合い中だと思う。

 

 その証拠に──追加の僵尸が沸いてないしな。

 

 

「修羅勢には良い薬になりそうだよね。無限沸きの雑魚に対処しつつ、別の異界に居る主を倒す必要があるからさ」

 

「私も悪魔召喚士として修行を受けてなかったら無理でしたね」

 

「道教も中々応用が効いて便利そうだ。まだまだ私もヒヨッコだな」

 

「終末が来る前が落ち着いて学べる最後の時間だろうからな。学ぶなら今の内だろ」

 

「違いない」

 

 

 肩を竦める秋雨ニキと会話している内に僵尸達が黄金へと変わった。あの状態でも()()()()()のは不老不死の悪い所だよな。

 

 

「さて、最後の仕上げだ」

 

 

 呪符に再度霊力を込める。すると、まるで生きてるかの様に異界を侵食していた黄金が龍に取り込まれ──そして。

 

 

────パリィィィン!

 

 

 硝子の割れる音と共に金龍が純金のインゴットに戻る。もちろん霊符を飛ばして一つ残らず回収しておく。

 

 

「後は探求ネキが邪仙を倒したら僵尸共を回収して終わりだな。中々な儲けになりそうだぜ」

 

 

 この場にショタオジ以外も居るので、黄金をマッカに変えられる事は言わない。

 

 

「お世話になってる上に神道の神である私が言うのも何ですが、貴方はもう少し煩悩を捨て去った方が良いのでは?」

 

「イワナガ。金がなきゃ信仰は守れないんだ」

 

「そうだよお姉ちゃん!お金はあった方が良いよ!……廃神社になるのが一番悲しいし……」

 

「……私は貴女と共に祀られる事が多かったが故に無知だったという訳ですか」

 

「お前はそれで良いんだよ。その為に信徒が働くんだから」

 

 

 金にがめつい女神なんて調教──折檻──教育して、真人間ならぬ真女神にしたくなるし。

 

 

「セツニキさん~私の事を崇めてくれても良いんですよ~?」

 

「銀髪褐色肌以外は信仰しない〝掟〟なんだ。悪いな?」

 

「毎回思いますけど、セツニキの〝一族〟って俺達っぽいというか俺達ですよね」

 

「確かにそうだよね。生きてたら普通にガイア連合に合流して俺達と嫁会話で殴り合いしてそう」

 

 

 ショタオジのその言葉を聞いたイワナガが目を反らす。それをサクヤが目敏く見付けて突っ込んだ。

 

 

「お姉ちゃん。実際どうだったの?」

 

「……私は星祭に来る皆様しか知りませんが、不思議と懐かしい気持ちになります。それが答えですよ」

 

「まぁ、俺の〝一族〟だしな」

 

 

 そんな会話をしている内に異界が揺れた。どうやら探求ネキは勝利したらしい。

 

 

「じゃ、最後の仕上げを頼むわ」

 

「はいはい」

 

 

 ショタオジが地面に手を付け、異界の掌握を始める。すぐに終わった。このチート(ショタオジ)めっ!

 

 

「完了っと。サブ管理者とした石長比売様と木花咲耶姫様を登録すれば良いんだよね?」

 

「おう。それが終わったら最後の実験するわ」

 

「了解。──うん、完了したよ」

 

 

 ショタオジが掌の光玉をイワナガとサクヤに軽く投げると、二人の身体に吸い込まれる様に消える。

 

 それとほぼ同じぐらいに探求ネキがこちらに向かって来るのが見えたので、走り出してそのまま【ソウルドレイン】を放つ。──躱わしたか。

 

 

「いきなりですね?労いの言葉は無いんですか?」

 

「最後の〝ギミック〟を確認したくてな?」

 

「……安全な死に戻りですか」

 

「yes!って事で殺ろうぜ?」

 

「了解ですッ──えっ?」

 

 

 返事と共に放たれた攻撃を無防備のまま受ける。限り無く低いとはいえ、命に関わる実験だ。最初は老体からやるべきだろ。

 

 

「じゃ、後は宜しく」

 

 

 流石に一撃では死ねなかったので、そのまま心臓を抜く。……ふむ。

 

 

「このセツニキ!天に還るのに人の手は借りん!」

 

「致命傷食らった後にそれ言うのは狡くないですか?」

 

 

 ジト目で探求ネキに言われたその言葉が、意識のある内に聞けた最後の言葉だった。

 

 

 

 

 ふと目が覚めた様な、寝起きに近い感覚。目の前には直前まで作っていた異界の姿がある。

 

 身体を確かめてみると、服には大穴が空いていた。腹と心臓。見事な腕前だな。

 

 

「お疲れ様でした。試作異界の出来はどうでしたか?」

 

 

 着替えの作務衣を持って待機していたと思われるムラサキの言葉で、漸く現状を把握出来た。

 

 

「たぶん成功した。んで、俺は死に戻りの安全を確かめる為に死んだみたいだな」

 

「えーっと……?」

 

「攻略中の記憶が丸々抜け落ちてるんだよ。だからもう一回楽しめる」

 

「敵に殺られたとは考えて無いのですか?」

 

「無くなってる霊符が全力を尽くした感じじゃなくて、遊びで使ってる感じなんだよ。だからたぶん自殺か同行者に殺された筈だ──っと、戻ってきたな」

 

 

 異界の門たる鳥居の表面が水面の様に揺らぎ、中から製作者達が出てきた。

 

 

「俺の方は丸々異界の中の記憶が消えるペナルティを食らった。そっちはどうだった?」

 

「幾つか改良点が見付かったので、少し改良して難易度調整ですね。そしたらこちらは修羅勢に解放出来るかと」

 

「了解。じゃ、一旦旅館に戻るか」

 

 

 さて、これから本命も作らなきゃ行けないし、忙しくなるな。

 

 

 

*1
長寿、富。

*2
成功、金運

*3
愛、夢、清浄。

*4
金運、貯蓄運、金運浄化

*5
長寿、富、無垢。

*6
征服、超越、革新。

*7
式神達が死ぬまで困らない程度に残している財産とは違い、ナナシ個人の遊ぶ為の資金。

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