【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
三話ぐらいで終わる予定。
「あ、セツニキ。良いところに」
「ん?」
「ちょっと着いてきてください」
下層試験の手続きをしに事務科に向かう途中、久々に会った探求ネキに連れられてショタオジの部屋へ。
「お、セツニキも探求ネキのお手伝い?」
「何やるか知らんがな」
まぁ、修羅塾*1で世話になったし、全然構わないんだが。
「実は──って訳で、お力をお借りしたいんです」
「面白そうだね。俺は良いよ?」
「俺も構わないが、ガイア連合なら普通に手に入ると思うぞ?」
「流石に私の装備に使える神代木は出回って無いんですよね」
修羅道で
「流石に七十クラスは無いだろうな。じゃ、まずは基礎知識の共有から始めるか」
「お願いします」
神代木は千年以上地中に枯れる事無く在った樹木の総称だ。千年未満は半神代と呼ばれるが、それでもレアな木材な事に変わり無い。
主な発見場所は河川改修工事や土地造成時。これは文明の発展と共に地中を掘り返した時に時たま見付かる以外に発見方法が無い事も理由の一つとして上げられるのだが、単純に神代木となる為の条件が厳しいのだ。
千年もの長い間、原木を眠らせ続けられる適度な湿気の存在する地層。酸素がほぼ存在せず、樹木を分解する微生物が存在しない事は絶対条件。これにプラスして厄介なのが、
地球上に存在する元素の割合74.32%を占めるのは、酸素が約46.60%。ケイ素が27.72%となる。つまり、地球の七割半は石英の素材だ。
この時点でどれだけ神代木がレアな木材か分かるだろう。地球全体で生まれる可能性がある場所は25%なのだ。ここからさらに湿気を含み、微生物が居らず、千年間寝かせる必要がある。
似たようで違う珪化木は、逆に75%の場所から神代木で上げた条件が必要となる。どちらもレアな事に変わり無いが、珪化木は泥炭等と共に多く産出するので、産業革命が起きた国では大多数が〝硬くて邪魔な厄介
ちなみに見分け方は簡単だ。珪化木はケイ酸分の多い地下水が染み込み、二酸化ケイ素*2化するので、水晶の様な無色透明や青、ピンク等が多い。
対する神代木は地中で炭化する関係で灰から黒っぽくなる事が多く、色合いによって年代判別する事が可能だ。
「──ってのが、神代木の基礎知識だ。ちなみに富士の二酸化ケイ素の保有率は50%。実際は土地とかにも含まれるだろうから、富士の地脈を使うなら越えなきゃ行けない課題だな」
珪化木の日本の産出地は主に日本海沿岸側*3だ。これは新生代新第三紀中新世*4の地層から産出する事が関係してるが、説明する前に今の地球の歴史を理解する必要がある。少し長くなるぞ*5。
珪化木は石化の代表的な例として良く話題に上がるが、樹幹化石*6なので、実は定義的には植物では無く鉱石となる。
ここまで語れば分かるだろう。神代木が何故〝神〟の名を冠する事が許されているのかを。
「ちなみに温泉水に浸した木片が珪化木になるまでの時間を計測した実験では、七年で約30%珪化したらしい。神代木の定義である千年の間に温泉が湧いたらアウトだな」
「難易度が楽しい事になりそうですね」
「俺もちょっと楽しくなってきたよ」
「ショタオジも楽しめる難易度になると思うぞ?
「……え、待って。俺、もしかして創星神話チャレンジになるの?」
「いえす☆」
探求ネキは手伝えるだろうが、俺にはどうしようも無い領域の話だ。
「まぁ、真面目な話すると、多少はケイ素が混じらないと樹木の形を保てないから結晶化する量じゃなきゃ大丈夫だ。ただ、酸素の方は確実に絶たないと炭化しなくなる」
「それなら最初から酸素の存在しない世界を作れば良いのでは?」
「その場合は植物の〝概念〟が弱くなる。下手すりゃ死ぬ」
「太陽の陽光。地中のバクテリア。植物の受粉に関連する虫。もちろん酸素を含む地球に類似した環境を作りつつ神代木を生成する為の環境の用意。率直に言って無理ゲーじゃない?」
「逆に言えば、神代木以外も取りに行くならそこまで難しくない。神代杉なら鳥海山麓の環境を再現すれば取れるだろうしな」
「富士で鳥海山かー……」
「
大物忌大神は少し不思議な神様で、古事記や日本書紀には一切登場しない。伊勢神宮に祀られている
他にも
ちなみに豊宇気毘売神は
なんとこの保食神、女神だ。しかも綺麗に改編された話では無く、生々しい神話のままだと、頭から蚕、目から稲、耳から
おっと、つい
大物忌大神は
笑える事に〝
まぁ、石長比売以外はどうでも良い俺の知識なので、吹聴すると馬鹿を見るかもな。
「他の神代木はどうなんです?」
「
「三味線です」
三味線……猫の皮だったか。ふとお茶を運んできたネコマタに視線が向く。
「……身の危険を感じるにゃ」
「物理的な意味で?性的な意味で?」
「物理的な方にゃ。具体的には皮を剥がされる気がするにゃ」
良い勘してるな。流石はショタオジの式神だ。
「いやいや、流石の私でもそんな非道な事はしませんよ?」
その言葉にショタオジと二人で探求ネキに視線を向ける。
「……何ですか?」
「いや、探求ネキの線引きが気になっただけだよ」
「俺はショタオジに従ってる内は仲間だと思ってるが、敵対したら殺す事に躊躇いは無いからな」
これはマジだ。ベルフェゴールでもサクヤでも始末する覚悟はある。石長比売は──二度とそんな事を考えられないぐらいの快楽に沈んで貰うかな。
「……ま、裏切ってない内から話す事でも無いし、三味線の話に戻ろう。木材として良く使われてるのは
「ですね。〝概念〟を強化したいので」
「だとすると、三味線の最高級素材と言われてる紅木や高級素材として使われる紫壇は外れるか」
「え?何で駄目なの?」
「前世の原産国がスリランカとインドだった*8筈だから、扶桑の象徴たる富士の山と相性が悪くなるんだよ」
日本古来からある物の方が相性が良いのは当然なんだよなぁ。実は日本にも紅木はあるのだが、レッドリスト*9に乗ってるので、ここでは語らない。
というか今の最高級紅木を使った三味線よりも、昔の最高級品を使ったバブル期の中古三味線の方が良い音色が出るそうだ。何でも昔の最高級に今の最高級品は木材の質で勝てないんだとか。
「日本産で富士の霊脈と相性の良い素材って何があるんです?」
「縄文杉*10、縁結び桂*11、北金ヶ沢の大イチョウ*12辺りは現物が残ってるからな。富士との相性は最強に近い。が、楽器としてどうなるかは未知数だ」
日本という国より前からある樹木様だ。たぶんそれで木刀作ったら、ショタオジに青アザ作れる程度の霊刀になる。
なんだそれ最強か?天然記念物に手を出す馬鹿は俺が殺す*13(豹変)
「では術具だけの機能を取ると、どんな選択肢が?」
「ユグトラシルとかセフィロトとかミスティルティンとか沙羅双樹とかアヴァロンの木とかクリフォトとか扶桑とか他にも一杯あるぞ!」
「神話や伝説のオンパレード!でも、そうなるよねぇ」
「ショタオジにマッカ積めば、似たような品は手に入るだろうしなぁ」
「神代木を作る意味が……!」
がっくりと肩を落とす探求ネキを見て肩を竦める。とはいえここまでの話は
「道教関連なら桃の木が一番なんだが、あれは木材に向いてない。だから諦めろ──って普通なら言うんだけどな?探求ネキは【植物改変】があるだろ?桃はバラ科、紅木はマメ科だが、オカルト交雑させて都合の良い木を作り出せば良い」
「山梨の甲州市は日本一の桃の生産量を誇ってるからね。美味しい桃も多いよ」
「二人とも。もしかして最初からそのつもりで?」
『『もちろん!』』
修羅勢の身体能力を駆使してショタオジと肩を組み、グッドサインを向けると、やけに殺意の高い【
「真面目な話すると紅木──いや、インドローズやローズウッド、レッドサンダーと呼ばれる樹は、前世で絶滅危惧種になったぐらい高級家具や楽器の材木として遥か昔から使われてたんだ。つまり〝概念〟としては物凄く重い」
「それを〝概念〟の重さを保持したまま
「そこまで言われて私が諦めるとでも?」
『『ですよね~』』
君には出来ないよと言われたら、出来た完成品で相手を殴り付けるのが俺達だよな。
今回はショタオジ(本物)も居るぜ!