【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「今日は楽しかったよ」
「俺も楽しかったわ」
たまにはこんな日も悪くない。
「今度はセツニキが遊びに来てよ。歓迎するからさ」
「ショタオジをフリーに出来れば遊びに行くんだけどな。現状だとちと厳しい」
俺らも頑張っているが、世界的にGPの上昇は緩やかに進んでいる。海外ではメシア教が暴れている様だし、思っているよりも終末は近い気がする。
「終末か~……やっぱ来るのかな?」
「間違い無くな。ショタオジの占術だけじゃなく、くそみそニキの占術でもほぼ確実みたいな結果だったそうだし」
「そっか~」
「ま、最初から頼りにされても困るが、ブーストニキなら助けに行く俺らも多いだろ。戦闘だけなら使えるから上手く使え」
「戦闘以外は……?」
「…………」
「無言ヤメテ!」
いや、アイツらも地頭は良いし、霊格の高さのお陰で記憶力も良いんだ。ただ、考えるのが苦手ってだけで。
「……まぁ、出来るだけ頑張ってみるよ。駄目そうなら骨は拾って」
「ういうい」
別れの時間が来た。待機してるムラサキが【
「じゃ、またな」
「またね~」
光に包まれ、ブーストニキが消える。それと同時に意識を切り替える。
「ムラサキ。このデータを製造班と岩手支部に宜しく。秘密裏に準備だけはする様に伝えておいてくれ」
「畏まりました」
USBを二つムラサキに渡して部屋を出る。終末なんて来なけりゃ皆で遊んでられるのにな。
一度部屋に戻って装備を取り出し、式神三人を召集して今日も修羅道に落ちる。
もはやレベル差五程度では同格と認めて貰えなくなったが、下層に潜る為には許可が必要。儘ならないものだ。
◇
修羅道から帰宅し、装備のメンテナンスを頼みに星霊神社へ。製造所の受付で依頼表にサインしていると、背中を叩かれた。
「やらないか?」
「うほ、良い男♂」
「久しいな。マヨヒガを頼んで以来か?」
「LILINでは会話してたが、そうなるな」
サインを終えて引換証を貰い、くそみそニキに連れられて人気の無い森を進む。目的地は──初代ショタオジの隠れ家。現在では星霊神社に幾つかある喫煙所兼BARだ。
「俺はビール。セツニキは?」
「安物でも良いからウイスキーとスモークチーズ」
「畏まりました」
マスターとしてここで働く初老の式神がお辞儀をして去っていくのを見送り、そのまま奥の個室へ。
「今更だが良かったのか?ホイホイ着いて来ちまったらホモ疑惑が沸くぞ?」
「最近、下層に行けない代わりに知識を増やしていてな?最近の俺のマイブームは〝クピードー〟だ」
「……えげつねぇな」
日本ではクピド、アモールと呼ばれる事もあるが、一番有名なのは〝キューピッド〟だろう。エロスと同一視される事もあるが、容姿が全く違う為、たぶん別神だと思われる。出身がローマ神話だしな。
「鉛の矢と金の矢の伝説を術式にして混ぜるとな?
「ショタオジに怒られないのか?」
「俺、高位霊能者。気軽に悪口を言う方が間違ってると思わないか?」
「まぁ、確かにな」
俺だからその程度で済ませるが、例えば高位悪魔の中には
どうせ反省したらショタオジが解くだろうし、それまではホモになってれば良い。
少しして注文の品が揃った。マスターが一礼して去ると同時に二人で遮音結界を張る。
「で、何の用だ?」
「ちょっと占術の結果がワケわからなくてな。一応、伝えておいた方が良いかと思って時間を貰ったんだ」
「そんなに悪い結果が出たのか?」
「いや、悪いかどうかで言うと悪いんだが、何でそんな結果が出たのかが理解不能なんだよ」
「んん?どういう事だ?」
首を捻っていると、くそみそニキがビールで唇を湿らせ、続きを口にする。
「俺は俺の目的の為に戦力になりそうな人間を探してるんだが、下層試験はそれにうってつけでな?試験が近付くとそれなりの頻度で占ってるんだ」
「それは分かる。俺もチェックしてるし、他にもやってる奴は居るだろう」
中層試験、下層試験は実力者が集まる場だ。だからこそガイア連合内で上澄みとされる戦力の把握を行うのに都合が良い。身元や普段の態度を調査し、相性が良さそうなら〝縁〟を結ぶ。
気難しい奴なら淡い繋がりに留めて支援、思想や態度が危険なら要注意人物として幹部に回す。
監査機関という訳では無いが、流石にレベル三十以上でヤバイ思想を持ってる奴は危険過ぎるので、少しでも危機感がある奴ならチェックしてると思う。
まぁ、ショタオジが責任を持つと言った段階でフリーにするが。心配するだけ無駄だし。
「で、今回の占術の結果、
「そんなに難しいのか。これは楽しみになってきたな」
俺ですら落ちるという事は、世界でショタオジしか知らない知識の類か?それともアカシックレコードにアクセスしないと知れないレベルの太古の昔に存在した宗教か?どちらにせよオラ、ワクワクすっぞ!
「やる気を出してるところ悪いんだが、テスト自体はたぶん下層レベルだぞ。他の修羅勢は受かってたしな」
「ん?それだと何で俺は落ちたんだ?」
「それが分からないから声を掛けたんだよ」
「成る程」
確かに不可解だ。俺としては一般試験の為に準備をしてきたし、手を抜いたつもりも無い。にも関わらずくそみそニキの占術で落ちたという事は、ほぼその運命は
さて、どうするかな。一番手っ取り早いのは〝受けない〟事なんだが、それはそれで問題が起こる。例えば下層でスフィンクス辺りとカチ合った場合、問答無用で失敗する可能性も零じゃない。
かと言って、ただ受けて落ちるのもつまらない。
「くそみそニキは時間に余裕ある感じか?」
「次の試験までの間ぐらいは大丈夫だ。何かするのか?」
「どうせ落ちるなら自分の糧にしたいんだよ」
「落ちるのに?」
「落ちた時点でくそみそニキの占術は当たった事になるからな。そのまま一芸の方で抜けるさ」
「相変わらずの自信だな」
「それを持てる様に努力してるからな」
愛され勢とは違い、俺も含む俺らは自ら飛び込んで行くしか無い。ただ待つだけではいずれ終わるだろう。そうならない為にも日々努力を積み重ね、運命の反逆者となる為に頑張っている。
「案が決まったら連絡をくれ。それまでは俺の方の用事を済ませている」
「了解。またな」
「また」
ビールを飲み干してくそみそニキが席を立つ。それを見送り、俺もウイスキーを一口。
「……安物で良かったんだが。こんな良い酒ならゆっくり飲むしか無いじゃないか」
全く。最近は何かと噛み合わせが悪いな。
◇
翌日。特に良い案が浮かぶわけでも無く、朝一で製造班へ向かって装備を受け取り、支払いを済ませる。
そして自室に戻って着替え、何時も通り修羅道へ落ちる。
最初の頃の緊張感はすでに無い。試験を突破した俺らが下層の話を自粛してくれてるので、出来ればすぐに突破して上げたかったんだが。
「ナナシ。上の空だけど大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない。上の空でも狩れる程度の敵しか居ないのは問題だ」
心配そうな声色のセリスに正直にぶちまける。体が鈍るという事は無い。俺らが模擬戦の相手をしてくれてるので、生死を分けた経験は日々積めている。
ただ〝概念〟負けが多くなってきたんだよな。それはそれで弟子が強くなった様な嬉しさがあるんだが、相手をしてくれる俺らが勝利を喜べないのは問題だ。
別に手加減してる訳じゃないんだが。
「主~最下層着いちゃったよ。どうする?もう一回やる?」
「……そうだな。レベル制限をさらに厳しくしてまた挑むか」
「畏まりました。では【
アイの【帰還】の光に包まれ、異界の入り口へと飛ぶ。桃源郷も修羅道も入り口はそれぞれ一つだが、中の異界自体は複数個用意してある。イメージとしてはサーバーが違うと言った所か。
人数が少ない所へ優先的に割り振られるので、人が多い時間帯を外せば基本的にソロで遊べる。時々、中で別の奴と出会うが。
制限を強めて二週目に突入。常にレベル差十を維持する様に呪具を付けたのだが、これが中々良い感じ。
「ちょっとだけ元気出たみたいね」
「手応えがあるからな。油断出来ない環境の方が逆に落ち着く」
感知能力を全開にして尚不意打ちを受ける環境。やっぱり戦いの場はこうじゃないとな!
「私達は貴方の側に居られるだけで嬉しいから問題無いけれど、普通の女性にはフラれそうな発言よね。それ」
「確かに毎日異界異界じゃ嫌われそうだよね~」
「主様の性格上、そういう女はそもそも論外だろう」
アイ達を狙う悪魔を【権能破壊】で切り捨て、そのまま【殺意の領域】を発動。
さらに【ソウルドレイン】で周囲の悪魔達から
好き勝手言われてるが、護衛対象が呑気にお喋りが出来ない方が問題だ。だから俺は会話に混ざらず、周囲を警戒する。
「あ、忘れていたわ。ナナシ、私達全員レベル六十になったわよ」
「お、おめで──」
スキルで壁抜けしてきた悪魔に【権能破壊】を叩き込み、壁に生き埋めにした状態で固定。そのまま【ソウルドレイン】を突き刺して、生きてる間は俺の血肉補給用のオブジェクトに変える。
「──とう。ついに追い付かれちまったな」
権能を利用した動きは破壊された時のデメリットがでかいな。権能になる程の自信がある故に頼る気持ちも分かるが。
「技量的な面では全然だけどね~」
「そうだな。私とムラサキは主様から磐長式の術式を学んでいるが、まだ三割も学べてないらしい。全てを学び終えるのは何時になる事やら」
「私とオオマチも俺らと比べたら戦士として未熟だし、先は長いわね」
「昔から見ていたら当然だと思うけどね~みんな頑張ってたしさ」
「昔は餓鬼一匹でわーわー叫んでいたのだがな」
「今じゃ考えられない話ね」
「そういやセリス以外は初期から見守っていた事になるのか」
何というか随分長い付き合いになったな。俺らとも。
「実際、彼らは貴方の予想を越えているの?」
「余裕で越えてるな。今の一割も残らないと思ってたし」
俺のように戦場や鉄火場に出ていた経験があるならともかく、ただの一般人が着いて来れるとは正直思ってなかった。
「やっぱり支え合える環境って大事だよね~」
「だが過剰に支え合い、傷を舐め合った結果、停滞している者が多い現状は少し不味いのでは無いか?事実、ガイア連合の大半の者は覚醒しただけで満足してしまっている訳だし」
「ナナシの予定では覚醒しただけで良かったのでしょう?だったら、それでも良いのでは無くて?」
「セリス。一つだけ良いことを教えてやろう。星祭りの面々が居なかったら、主様は未だにガイア連合の為に奔走する羽目になっていたぞ?もちろん、我々に構う暇なんて無い」
「傷の舐め合いは良くないわね。魂が腐ってしまうわ」
「掌の返し方が主様そっくり過ぎて笑うんだけど」
オオマチの笑い声を聞きながら周囲を警戒する。修羅道に潜る様になって、微弱な殺意を大まかにだが拾える様になったのは大きい。
頼りきるのは危険だが、人間は何時までも集中出来る様には出来ていない。長期間維持する為にも、オンオフは大事だ。
それから約半日掛けて漸く一層を越えた。下層試験を越えるまではレベル十差で遊べそうだ。
◇