【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
でも、誰かの脳裏に一度は過ったお話でもあるかも?
「満足したか?」
「ええ。満足よ」
「さよけ。じゃ、本題に入るぞ」
結局、三十分ぐらい
「よくあんなボロクソ言われた後に口を挟めるな」
「前世嫁から一通り貰った感想だからな。こう言っちゃ悪いが、前世で悩んで苦しんで答えを出した後なんだよ」
「強くてNEW GAMEはずるくないか?」
「前世で頑張らない方が悪い。俺は精一杯生きたぞ」
「無敵の返しは辞めろ」
肩を竦めるついでに煙草に火を着ける。
「掲示板で俺らに聞いてきたんだが、試験官は基本的にオンギョウキらしい。時々ネコマタも出てくるらしいが、生憎と俺達には両方を対策する余裕が無い。そっちが出てきたら潔く諦めるつもりだ」
「当然と言えば当然か。ショタオジよりマシとはいえ、俺から見たらオンギョウキもショタオジと大差無いしな」
「俺から見ても大差無いわ」
霊格こそ少しづつ近付いてる気はするが、勝てるかどうか、出し抜けるかどうかは別の話だ。
「で、どうするつもりだ?」
「数を用意して〝本命〟を通す為の〝ブラフ〟にする」
「全部か?」
「全部だ。で、くそみそニキに頼みたいのは本命役だな」
「ん?俺で良いのか?」
「ガイア連合に頼りになる術者が少な過ぎてなぁ」
弟子達も育ってるが、まだまだ頼りにするには物足りない。後二、三年もすれば、転生直後の俺ぐらいにはなれそうだが。
「俺達の素質なら、術式を学ぶよりスキルを使った方が強くなれるからな。わざわざ勉強してまで使わんだろ」
「術は使えると便利だが、使わなくても問題無いから余計にそうなるよな」
例えるならオプションパーツと言った所か。無くてもゲームを進める上で何の問題も無いが、あると便利。そんなポジションだ。
「ま、了解した。どんな事をするか知らんが、頑張ってみよう」
「助かる」
頼りになる術者、ゲットだぜ!
「じゃ、
ムラサキに視線で合図を出し、予め渡しておいた霊符の束を出して貰う。
「正直、肩の荷が下りましたわ。私では技量が足りませんでしたから」
「おいおい、そんな物騒な──」
「あっくん?」
途中で固まったくそみそニキに対して心配そうな声を上げる束ネキ。だがくそみそニキはそちらを向かず、俺を睨み付ける様な視線のまま口を開いた。
「俺も術師だ。だからこそ術式の価値ってものを理解してる。少なくとも俺達よりはな。で、これは何のつもりだ?」
「別に深い意味はねぇよ。この世界の〝一族〟はすでに滅んだ。そして俺が死ねば、完全に途絶える。だからこそ俺は弟子を取り、〝血〟が途絶えても〝歴史〟だけは残る様に手を打ってるだけだ」
「俺が悪用するとは考えないのか?」
「悪用したところでショタオジを越えられるとでも?」
「……そういう事か」
納得した様に頷く、くそみそニキ。結局のところ行き着く先はそこなのだ。
確かにくそみそニキに渡した術式は〝一族〟の集大成とも言える代物で、普通の霊能組織なら秘匿するだろう。組織の方針によっては人命よりも上に置いても不思議じゃない。
で、それが何の役に立つ?
「そもそも多くの人間は勘違いしてるんだよ」
「勘違い?」
「危険性のある術式の一般公開は論外だが、術式なんて物はカードゲームと同じだ。自分専用の
例えば俺がノリと勢いで使った【
俺より構築は遅いかも知れないが、素質が無いから使えない何て事は絶対に起こらない。
ショタオジが修行すれば【アギ】程度は使える様になると言い切ったのは、嘘でも何でも無く事実なのだ。
術式によって〝理〟に刻まれている【アギ】の型を構築し、そこへ霊力を注ぐだけで良いのだから。
それを自身の力のみで成せる様になった時、スキル習得になる訳だ。
溶けた氷がグラスにぶつかり、カランと音を立てる。それが合図となったのか、それとも考えが纏まったのか。くそみそニキが再び口を開いた。
「セツニキは術式を悪用されて後悔しないのか?教えた術式で誰かが苦しむ可能性は常にあるんだぞ?」
「そんな
「くだらないだと?」
「善意で助けた誰かが悪逆非道な犯罪者になるのが現世だぞ?くそみそニキが異界を潰したせいで本来なら潰れる筈だった名家が生き残り、圧政を敷く可能性だってある。尤も、くそみそニキには関係無い話だがな」
「普通の人間には未来が見えない。だからこそ動くしか無いという訳か」
「そんな難しい話じゃない。俺は術式をばら蒔く事によって生まれるリスクより、ばら蒔いた事によって救える命を取った。それだけだ」
少し薄くなったウイスキーを飲み干し、煙草に火を着ける。やはり酒には煙草だな。美味い。
「俺も合理的な判断をする方だが、セツニキは悩みもしないのな」
「前世で経験した事だからな。山火事の多い国へ善意で携帯放水装置を提供したら、暴徒という名の罪無き国民へ向けられたし、被災地へ募金したらテレビ局の飲み代になった。そんな事がザラな世界で一世紀も生きりゃ、悩むのも馬鹿らしくなるさ」
「やっぱ強くて NEW GAME は
「ショタオジが
「この世界、やっぱ糞だな」
「それは同意する」
メシア教とか〝アイツ〟とか
「難しい話は終わったかしら?」
「ああ。後はくそみそニキの努力に期待するだけだ」
「そう。それならお代わりを頼むわね。皆はどうする?」
「俺はまだボトルがあるからいいや」
「俺も御茶が残ってる」
「シノさんも大丈夫かな~」
「人間組は無しね。ムラサキ達は?」
「私は緑茶ハイのお代わりを貰おうかしら」
「私もまだ大丈夫です」
「きつねうどんを頼む」
「え、ここそんなのあるの?」
「ほら、ここに」
アイが広げたメニュー表をオオマチが覗き込んで居ると、全く気にせずセリスが呼び鈴を鳴らした。
「セリス。貴女マイペース過ぎません?」
「レティ。良いこと教えてあげるわ。悩むぐらいなら全てを望めば良いのよ。オプションできつねうどんのおあげを増量しても良い。それが自由と言うものよ」
「その台詞はこんな所で使う物じゃないとオオマチちゃんは思うよ」
俺もそう思う。
「ねね、セツニキ。試験でする〝遊び〟って術の他にも用意するんだよね?」
「製造班にも頼むつもりだな。物理とオカルト、両方で攻める予定だし」
「シノさんも参加しても大丈夫?」
「そりゃ助かるが……良いのか?」
俺はあまり詳しく無いが、工学系の新技術は確立するまでが地獄じゃなかったか?
「理論は完成してるからね~それにあっくんが暫く出歩かなくなるっぽいし!シノさんの乙女心的にも参加しておかないと!」
「そうね、それが良いと思うわ。こういう時に細かいポイントを稼がないと、男に旦那を取られる負けヒロインになってしまうもの」
「だってさ。あっくん?」
「セツニキだって条件は同じだろう?」
「いや、俺はノーマルだから男に取られる事はないし?」
「岩手支部の支部長と良い雰囲気だって聞いたが?」
「内臓の隅々まで見た仲なのは間違いないな」
そういや金山姉弟はどうするかねぇ。別に解放しなくても岩手支部はガイア連合内の立ち位置を確立したし、借金返済の目処が立っている貴重な支部だ。
金鉱山の復活は魅力的なんだが、宮城に悪魔召喚士が居ないんだよな。支部長と薄く繋がりこそあるが、そこまで親しい訳でも無いし。
「セツニキ?」
「あー悪い。考え事してた。岩手支部の胸部装甲の話だっけ?」
「まぁ、間違っちゃ居ないが。で、実際の所はどうなんだ?」
「恋愛感情は無いな。色欲はあるが」
「ぶっちゃけ過ぎだろ。酔ってるのか?」
「むしろあの胸を見て息子が勃たないのはホモかロリコンだろ」
式神であるムラサキ達と対等な大きさが天然物なんだぞ。前世で妻と会う前なら間違いなく口説いてた。
「そんなに凄いのか?」
「凄いぞ。落ち着いたら見に行ってみると良い。男子が前屈みで生活してそうなサイズだ。──って思ったけど、くそみそニキには見慣れてる大きさかもな」
「そこで私の胸を見ないのがセツニキの凄い所だよね」
「知り合いの嫁に性欲を覚えない程度の自制心はあるぞ~?」
「あっくん、嫁だって!」
「はいはい」
「結婚式上げる時は呼んでくれよ?存在しない過去を良い感じにでっち上げてやるから」
「例えば?」
「
束ネキの頭脳は
「やっぱ
「束ネキは容姿も中身も優秀だからなぁ。狙ってる
言外にメシア教が欲しがってると伝える。正確に言えばアメリカか。あそこは国が主体となって優秀な人材をスカウトしてるし、束ネキが狙われるのはある意味当然*1とも言える。
「私はあっくん以外に興味無いけどね~」
「それで諦めるならアングラ組織は大きくならないんだよなぁ」
「まぁ、力ずくで手に入れるなら便利な奴らだしな」
「その時はあっくん守ってね?」
「はいはい」
伝わってると良いが。まぁ、くそみそニキだし、大丈夫か。俺もそちらをカバーしてる余裕は無いしなぁ。
シノさんの掲示板のHNは見付からなかったので適当に付けました。なので、後で変わるかも?