【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「個室の中で男女二人。何事も無い筈が無く……」
「はいはい。それで要件は何です?」
呆れ気味に話をぶった切り、ちひろネキが続きを促す。付き合いが長いから俺の扱い方を分かってるな。
もう少しふざけたい気持ちもあるが、俺ならともかくちひろネキの時間を無駄にする訳には行かない。だから大人しく表情を真面目な物に変え、お願いを口にする。
「下層試験の一ヶ月前からキャンペーンを頼みたいんだよ」
「キャンペーン?応募者全員サービスとか期間内に幾ら以上購入で景品プレゼント!とかですか?」
「そうそう」
霊符からプレゼン用に用意しておいて紙を取り出し、机の上に置いてちひろネキの方へ滑らす。
「まだ草案だが、こんな感じのイベントを自費でやりたいんだ」
「うーん……セツニキがこのイベントをやりたい気持ちは分かります。昔からそう言ってましたしね。でも、何でこんな中途半端な時期に?」
「今さ、ショタオジと遊んでるんだが、余裕を与えると俺の勝率が下がるんだよ。で、どうせ妨害するなら山梨支部の役に立つような妨害が良いだろ?だからこんな企画を持ってきたって訳だ」
「遊びに全力ですね〜。予算は大丈夫です?」
「この一年、ほぼずっと修羅道でソロしてたからな。それにここだけの話になるが、星祭の保管庫がヤバイんだ」
天使向けのキャンペーンが上手い具合に当たってしまったと言うべきか。
お陰で何度拡張を繰り返しても保管庫が足りない。
もちろん俺やベルフェゴールにもその恩恵は来ており、下手すれば秒単位で資産が増えているのだが、何事にも限度と言う物がある。
正直、半分ぐらい星霊神社で保管して欲しいぐらいだ。
「俺達が聞いたら血涙を流しますね」
「無理だろうな。未だに気付いてる様子は無いし」
「気付く?」
苦笑しながらちひろネキに説明する。とは言っても、ちひろネキは知ってる事だが。
「悪魔を討伐するのに苦労してる地方組織が、あんなガチャをぶん回せる量の
「あ〜報酬の円の一部をマッカに変えてるのは
「それを疑問に思わない時点で俺の隠し資産に気付ける訳が無いという話だ」
「世の中、無常ですね〜」
結局のところ、勝ち組と負け組を分けるのは気付けるかどうかなのだ。そして気付いた者達の中で最も早く動いた者が勝者となり、配当が最も多くなるのが世の仕組み。
ガイア連合で例えるなら、初期の頃からショタオジに全ツッパした人間の配当は当然の様に大きい。
地方霊能組織を見てみろ。ショタオジに全てを賭けた人間の
「ん~……この案なら幹部会を通して補助金を出せそうですね。ただ、トップにバレますけど良いんですか?」
「この案の嫌らしいところはな?自分の首を絞める事を理解しててもショタオジは拒否出来ないんだよ」
「というと?」
「
それにショタオジ自身の〝願い〟──いや、これは〝家族の遺言〟か。日本を最低限守りたいって思いもある。俺は容赦無くそこを突くだけだ。
「鬼ですね」
「ショタオジに勝てるなら鬼にも龍にもなるさ。悪魔になるのは御免だが」
悪魔になったら容赦無く殺されそうだし。
「セツニキはガイア連合全体で見ても上澄みなのに、それでもまだ上を目指すんですか?」
「ちひろネキには伝えておいた方が良いか。このままだとショタオジは〝神〟になるぞ。少なくとも人として死ねなくなると思う」
「冗談……では無いようですね」
真剣な表情のちひろネキにこちらも真剣な表情を返す。
「このまま終末が来て、それを人類が乗り越えた場合、それを成した
「それは止められるんです?」
「死後に神になるかも知れんが、敗北さえ与えておけば人として死ねる事は間違いない。逆に無敗のまま死んだ時は……」
「〝完全無欠〟のエピソードまで追加されますか」
「現状ですら高級式神で〝人の創造〟や異界作りで〝世界の創造〟を行えるからな。生きたまま神になる条件を殆ど満たしてるんだよ」
最悪な事に人へ叡智を授けたとされる〝火〟を得意としてるのも不味い。信仰を向ける先として良く選ばれる〝太陽〟と相性が良すぎる。
「セツニキ。勝率はどれくらいです?」
「零に近いな。くそみそニキの【占術】で落ちるって出た事が勝負の始まりだし」
こう言っちゃなんだが、知識も実技も下層試験程度なら越えられる自信がある。そんな俺が落ちるとしたら、暇潰しでショタオジに喧嘩売って、負けて落ちたとしか考えられない。……それが最後のチャンスだと考えてなかっただろうしな。
「取り敢えず、予算は通して見せますし、このイベントも絶対に開きます。だから絶対に勝ってくださいね」
「ういうい。俺も負けっぱなしは嫌だからな。ここらで一回敗北の味を教えてやんよ」
「お願いします」
高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応するしか無いのがマジで糞だが。
◇
その日の夜。色々な仕込みを終えて自室に帰還した俺を待っていたのは、
「そういや今日はセリス達のアップデートの日か」
「はい。皆様からこちらを預かっております」
袖から取り出された手紙を受け取り、カードで開封する。…………好き勝手言うもんだ。
「取り敢えず俺は飲む。禊はソフドリで良いか?」
「えっと……」
「ちなみに俺は酒の入った女は抱かない主義なんだ」
これを言った次の日から全員アルコール断ちしたのは笑った。オオマチとセリスはその次の日から晩酌に付き合う事で俺を独占出来る事に気付き、高度な柔軟性を維持したまま臨機応変に対応する様になったが。
ここらへんの対応の早さは式神の個性が出ていて結構好きだったりする。
「では、ソフトドリンクでお願いします」
「肩の力を抜けよ。夜は長いんだ」
「はい……」
ガチガチだな。初めての時は俺もこんなんだったか?流石に一世紀近く前だから記憶が曖昧だ。
知らぬ間に置かれていた禊専用のグラスにオレンジジュースを注ぎ、俺は缶ビールを開ける。今日はスーパードライな気分だ。……うん、美味い。
ツマミ箱からビーフジャーキーを取り出してもぐもぐ。そしてビールで流し込む。永久機関が完成しちまったな……!
とはいえ何時までもこうして居る訳にも行かないので、程よい所で切り上げる。ついでに二缶目も開ける。
「始めに言っておく。俺はショタオジが子供を作るまで孕ませるつもりは無い。後継者争いはごめんだ」
「はい」
「ついでに言っておくが、束縛されるつもりも無い。子供が出来たとしても、子育てに参加する事は無いぞ。金の心配はしなくても良いがな」
「はい」
本当に分かってるのかね?まぁ、子供に関しては星祭全体で育てるから問題無いと思うが。
大きく溜息を吐き出す。正直、こうならない様に距離を取っていたんだが。
「助けられた恩を返すと思ってるなら必要無い。俺がやりたい様にやった結果、たまたまお前が助かっただけだ」
「それでも、私を助けてくれたのはナナシ様ですから」
「〝クシナダヒメ〟のペルソナ持ちだからと言って、わざわざ助けられた景品にならんでも良いだろうに」
ま、ここまで言われたら俺も腹を括るしか無いな。
ビールを一気飲み。そのままの勢いで禊をお姫様抱っこで運ぶ。向う先は布団だ。
「明かりはどうする?」
「……消して貰っても宜しいですか?流石に恥ずかしいので」
「りょ」
部屋の明かりを消すと、月明かりが部屋に差し込む。その幻想的な雰囲気の中で、禊が青色の巫女装束を一枚一枚脱いで行く。そして最後に下着に手を掛け──覚悟を決めてスラリと下ろした。
「お、お待たせしました」
「綺麗だな。月明りと相まって名画の様だ」
「そ、そう言って──」
何かを口にする前に押し倒し、キスで塞ぐ。甘いな。
「あ、あの……初めてなので……」
「分かってる」
再びキスして身体を仕上げる。優しく、絹を撫でる様に。蛇の様に執拗に。〝魂〟を見ながら疲労を吸い出し、代わりに快楽と心地よさを与えていく。
そういやショタオジが
────そして翌日。
「…………あの、ナナシ様──」
何かを口にする前に
「……酷い人ですね」
「ロクデナシなのは自覚してる。帰ったら
「分かりました」
【浄化】の霊符で痕跡を消す。ついでに【ディアムリタ】で回復も。
何時もの巫女装束を纏った禊に鍵を手渡す。
「次からは何時でも来い。歓迎するぞ」
「はい。それでは失礼します」
旅館の外まで禊を見送り、部屋に戻る。勉強しながら考えるのは禊の事だ。
「……マジで地獄に落ちるかもな」
でも、覚悟は決まった。悪いが勝たせて貰うぞ。ショタオジ。
◇
今回の決着はマヨヒガ並みにお気に入りが減って、評価下がりそう(笑)
でもうちの主人公なら絶対やると思うんだよね、これ。