【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
仕込みを全て終えた後は、ひたすら勉強と異界潜りの繰り返しだった。慌ただしく過ぎ去る日々を顧みる事も無く、試験一週間前に義眼を移植し、慣らしも兼ねて再び異界へ戻る。
俺が義眼の扱いに満足して星霊神社に戻ってきたのは、試験当日の早朝だった。それから風呂で身を清め、コスプレ部に作って貰った月光館学園の制服を身に纏う。
これで準備完了。後は出たとこ勝負だ。
「おはよう。今日は良い天気だな」
「おはよう。今日は良い天気だよな」
試験会場となる部屋の前の廊下に立っていたくそみそニキと共に、窓の外へ視線を向ける。……真っ白だな。
「観測史上最大の降雪だそうだ」
「天も俺を祝福してくれてるかー」
「だと良いが」
お互いにこの天気の
「それで、どうだった?」
「俺がセツニキに謝り、ショタオジが勝ち誇る所まで視えたぞ」
「わお。これで俺の勝利は確定したな」
「くくく。そうだな」
空元気という物は、存外馬鹿に出来ない物だ。見ていて痛々しいかも知れないが、最後に笑えるのは辛い時でも足を止めない奴だからな。
「そろそろ時間か。じゃ、お互い頑張ろう」
「おう」
拳をぶつけ合い、くそみそニキと別れて教室へ。今回テストを受けるのは六人らしい。いずれも星祭で何度か見たことある奴等だ。
学校の教室を模した部屋の中の適当な席に座る。
木の机の香りが懐かしい。俺が子供だった頃より立派な環境だが、親の代わりに孫の授業参観に出た事もあるので、実は平成初期ぐらいの学校には来た事があったりする。
当時は良くあの
暫く待っていると、ショタオジがやって来た。緩く挨拶した後にオンギョウキが裏向きのままテストを配る。……珍しいな。ショタオジが持ってるのは懐中時計か?
「十二時になったらチャイムが鳴るよ。それと同時にテスト開始だ。他に何か質問ある?」
「センセー!
「出来るならね?」
不敵な笑みのショタオジに他の参加者達が闘志を燃やす。カンニングの手伝い組では無く、便乗組らしい。
見た感じ桃源郷を越えたぐらいか。頑張れよ。
内心でエールを送っていると、チャイムが鳴った。
『『『死ねや!!』』』
「緩いわッ!」
一瞬で戦場と化す教室。飛び交う権能とオンギョウキの迎撃音。それをBGM代わりにテストをひっくり返す。
第一問『オーディンは北欧神話の主神にして『A』と『B』の神である。『C』の根本にある『D』を飲む事によって知恵を獲得、魔術を会得した。『E』はその時に失った。A.B.C.D.Eに当て嵌まる言葉を答えよ』
A.____ B.____ C.____
D.____ E.____
意外にマトモな問題だな。……いや、下層だとオーディンの分霊が湧くのか?
ちなみにAは戦争、Bは死、Cはユグドラシル、Dはミーミルの泉、Eは片目だ。そして多くの人間が勘違いしてるが、創造神オーディンはこの神話のオーディンとは違う。
ルーン文字を得る為にユグドラシルで首を吊り、グングニルに突き刺されたまま自身を創造神オーディンに九日九夜捧げ、最後は縄が切れた事によって一命を取り留めた存在。その功績でオーディンと呼ばれる様になっただけで、下手すれば人間だったのが北欧神話の主神だ。
まぁ、概念生命体の悪魔共は普通に両取りしてくるので関係無いが。
書き込む事はせず、そのまま問題を読み進める。ついでに右上に〝B〟と記入しておき、未来に備える。
そのまま読み進めると、今度は道教の問題が出てきた。
第八問『
A8.____ B8.____ C8.____
D8.____ E8.____ F8.____
G8.____ H8____
A8は
北斗星君は中国の民族宗教と道教における女神、
まず斗母元君はコイツを産んでない。斗母元君が生んだのは九人だけであり、天皇大帝*2、紫微大帝*3、残りの七人が
賢い人間なら気付いたかも知れない。大陸は北斗七星を構成する星々を個々に神格化しながら、北斗七星というグループ名すら神格化したのだ。
そのせいで七人居た筈の七星は纏めて北斗星君に取り込まれ、消え失せた……と思ったら、貪狼星は大魁夫子として独立した存在*4として居たりする。いい加減にしろや。
何でこんな事になってるかと言うと、道教と中国神話は元が違うからだ。時の帝が作ったのが中国神話、道教が作った物は道教の神話。それが時の流れと共に混ざり合い、こんなややこしい事になっている、という訳だ。
北斗星君の話に戻ろう。
北斗星君は道教の【呪殺】の元締めであり、正しく力を借りる事が出来れば、威力も上がる。大陸で道士と殺り合うなら耐性を抜かれる事もあるので注意すると良い。
日本の閻魔との違いは
つまり、運と金を司っている。それが罪人への審判と結び付いた結果が大陸の国民性だ。
日本の閻魔は賄賂を受け取ってくれないが、北斗星君*5は受け取ってくれる。この違いが日本人と大陸の価値観の違いとなっているという訳だ。
「ちぃ!流石はショタオジの信頼する式神だな!手加減されてこの強さかよ!」
「仕方ねぇ!プランBだ!」
『『『応ッ!』』』
「何をするつもり──」
オンギョウキが少しだけ警戒して動きを止めた瞬間、六人の内の一人がテスト用紙を持って逃げ出した。
「逃がすかッ!」
即座に追い掛けようとするオンギョウキの前に残る五人が立ち塞がる。
「おっと!アンタの相手は俺達だぜ!」
「俺に構わず先に行けッ!」
「ここは俺に任せろ!なーに、後で必ず追い付くさ!」
「アイツはいずれ
「別に倒してしまっても構わないのだろう?」
「毎回思うが、何で貴様らはネタに全振りなんだ……」
『『『俺達ですしお寿司』』』
即興で死亡フラグを連発する俺達に呆れた様な表情を向けるオンギョウキ。ちなみにショタオジは爆笑し過ぎて死にかけてる。このまま笑わせれば
そんな事を考えつつテスト用紙を流し読み。答えが分かってるのに書かず、カンニング待ちとはこれもうテストじゃねぇな?最初から分かっていた事だが。──っと、これは中々の難問だ。
第二十三問『オーストラリア北部に住んでいたアボリジニの一部族『A22』の神話に登場する空の精霊であり、『B22』と呼ばれていた。オーストラリア南部やクイーンズランドといった乾燥地域に超自然的な方法で水の恵みをもたらした精霊とされる。A22.B22に入る当て嵌まる言葉を答えよ』
A22はウォンカマラ族、B22はアラウォティア。オセアニアの精霊様だ。水が不足しがちな地域に雨が降った時、天からの恵みに感謝を捧げ、信仰するのは当然の成り行きだな。
突き詰めれば四文字すら山岳信仰、石長比売も目印になる程に大きな巨石への信仰が始まりなので、メシア教が余計な事をしなければ、何時かはアラウォティアも空の神になるだろう。残念ながら、その前に終末が来てしまうが。
それから暫くテスト用紙を眺めていると、知らぬ間にオンギョウキが逃げ出した俺達を含めて全員確保していた。アイツらはここでリタイアらしく、顔にデカデカと落第と書かれている。
「さて、セツニキ。ここからが我々の勝負だ」
不敵な笑みを浮かべ、たぶんショタオジ製と思われる霊符を構えるオンギョウキ。書き込まれている術式は【
とはいえ俺はくそみそニキを信じるだけだ。
「試験時間は後二十分。ショタオジに勝つには十分な時間だな」
「抜かせ」
オンギョウキが霊符を破ると同時、教室ごと光に包まれた。
◇
本当は試験問題だけで一話は使うつもりだったけど、答えを埋めてまた書くの面倒だから主人公に解説させたという。