【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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決着。


未来からの贈り物9

 

 

 気が付けば、決着が付いていた。一番大切なハイライトを飛ばすとは動画映えを気にしない奴等だ。

 

 取り敢えず霊符から制服を取り出して着替える。ついでに()()()()()()()を指に挟みながら成り行きを見守る。

 

 俺も含むこの場に居る修羅勢達は【時空耐性】を持っているし、中には権能に至っている者も居た。

 

 だが承太郎ニキの【龍の眼光(スタープラチナ・ザ・ワールド)】はそれを容易く貫き、時間を止めた。

 

 何が起きたのかを完全に理解出来たのはカヲルニキぐらいだろう。他は現状に理解が追い付いていない。

 

 ショタオジが空を見上げ、ゆっくり目を閉じる。端から見れば、敗北を受け止めている様に見えるな。──そんな甘い考えを否定するかの様に、試験終了を告げる鐘の音(チャイム)が響き渡る。

 

 

「この銀時計は〝不停の刻針(とまらずのこくしん)〟と言ってね。時間を止めようが、乱そうが、正確に時間を刻み続けるんだ」

 

 

 ゆっくり目を開いたショタオジが銀色の懐中時計を掲げ、説明を始める。

 

 

「後一秒。後一秒早く承太郎ニキが辿り着いて居れば、この〝遊び〟は俺の負けだった」

 

 

 承太郎ニキの左手には答案用紙。右手はすり替える為に机の上に裏向きのまま置かれている答案用紙へ伸びている。

 

 それを掴んで止めているのは、ショタオジの右手だった。 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、試験時間をその分伸ばしたりはしない。キッチリ三十分で終了だ。反論はあるかい?」

 

「…………無い。俺が一秒早く辿り着けば済んだ話だ」

 

 

 承太郎ニキが深く帽子を被り直し、俺の方へ歩いてくる。

 

 

「すまん、セツニキ。それに皆も。しくじっちまった」

 

「いや、承太郎ニキだけのせいじゃないだろ。俺らが後一秒早くオンギョウキを止めれば済んだ話だし」

 

「それな。一秒を稼げなかったのは俺達の責任だぞ」

 

 

 そこへ終了後の治療の為に待機していたクロネキが、【ラグナロク】直撃組の治療をしながら口を挟んだ。

 

 

「その一秒はアタシたち待機組が参戦してれば稼げた時間でもあるのよん。皆、全力を出していた。それでこの結果になったのは悔しいけれど、責任を押し付ける様な馬鹿な奴(クソヤロウ)はこの場に居ないわん」

 

「……そうだな」

 

 

 もう一度下げそうになった頭を無理矢理起こし、承太郎ニキが小さな声で呟く。そんな空気の中、俺の元にやって来たのはくそみそニキだった。

 

 

「済まん、セツニキ。〝視〟えていたのに変えられなかった」

 

「お互いに良い経験が出来たな。これなら試験に落ちた甲斐があるってもんよ」

 

「良薬は口に苦しと言うが、苦過ぎて吐きそうだぜ。──()()()()()

 

()()()()

 

 

 一歩、また一歩。ゆっくりとショタオジの元へ移動する。そんな俺に向けられる視線の多くは申し訳なさそうな視線だ。一部、俺とくそみそニキの会話を聞いていた俺達だけが、怪訝な視線を投げ付けているが。

 

 

「ショタオジ。楽しかったか?」

 

「久々に本気で頭を使ったよ。皆の成長を直に見れて本当に良かった」

 

「そっか。……じゃ、最後に一つだけ良いことを教えてやろう」

 

 

 頭に疑問符を浮かべるショタオジに──告げる

 

 

「俺みたいな糞餓鬼はな?チャイムが鳴り終わった後も足掻くんだよ。先生に答案用紙を引ったくられるまでが()()()()()だったぜ」

 

「何を──まさか!」

 

 

 何かに気付いたショタオジが机の上の答案用紙をひっくり返す。その右上には()A()()()()()()。もちろん、四ヶ月前に解答欄は全て埋めてある。

 

 

「テストが終わった直後、すぐに回収するべきだったな」

 

「……そうだね。次からはそうするよ」

 

 

 苦虫を噛み潰したかの様なショタオジの表情を見て、周囲に居る俺達が騒ぎ出す。

 

 

「えっと、これどういう事?俺らは失敗したんだよね?」

 

「でも、ショタオジの表情的に勝ったのは俺達っぽく無いか?」

 

「どうやってすり替えたんだろ?セツニキは遠くに居たよね?」

 

「戦闘中も非戦闘員(俺達)と一緒に居たのは間違いないぞ?一回も机には近付いてない事は俺が保証する」

 

「う~ん?……あ、もしかして過去から未来に飛ばすとかいうトンデモ術式使った?」

 

「それは無いと思います。あの術式はショタオジに一回見せているので、間違いなく対策されているかと」

 

「んん?それなら本当にどうやったんだ?」

 

「尋ねてみれば良いのでは?たぶん答えてくれるでしょうし」

 

「自身の知識で解けないのは悔しいものだな」

 

「ですね。ただ、ネタが分かれば凄く単純な気もします」

 

 

 探求ネキは良い読みしてるな。

 

 どうやら修羅勢の意見が纏まった様で、代表してカヲルニキが一歩前に出る。そして口を開こうとしたタイミングで手を前に出して制止する。

 

 

「ちょっと待て──来たな」

 

 

 タイミングよく鳴る俺のスマホ。即座に電話に出て、スピーカーに切り替える。

 

 

『もしもしセツニキ!?ショタオジは大丈夫かお!?』

 

「おう。無事に助けられたぜ。ありがとな」

 

『……ほっ。本当に良かったお』

 

 

 心底安堵した様な溜め息を吐き出すやる夫ニキ。聖人というのはこういう人の事を言うんだろうな。

 

 

『いきなり星祭の巫女長さんがやって来た時はびっくりしたけど……みんな無事そうで良かったお』

 

「全部やる夫ニキのお陰だよ。俺らだけじゃどうしようも無かった」

 

 

 実際〝遊び〟には負けたしな。

 

 

『やる夫は何もやってないお?手紙の指示通りに()()()だけだお?』

 

「それが大切なんだよ。誰にも幸せを祈られない存在なんてカミサマぐらいだしな」

 

『うーん……?まぁ、上手く行ったなら良かったお!』

 

「そうだな。あ、今度食事に行こうぜー。奢るからさ」

 

『いやいや!セツニキには現地のペルソナユーザーの装備含めてお世話になりっぱなしだお!!むしろやる夫が奢るお!』

 

「じゃ、割り勘で行くか。美味しい店探しておくぜ」

 

『楽しみにしてるお!』

 

 

 それから少し会話して通話を切る。そして、視線を()()()()()()に合わせた。

 

 

「俺のイカサマの〝種〟は見破れたか?──ショタオジ」

 

「──やる夫ニキの【運命の支配者*1】だよね。でも、俺は【占術】でセツニキの動きを完全に把握していた。それなのに俺の裏を突けたのはどうして?それにくそみそニキも察していたよね?」

 

「俺は察してなんていないさ。ただ『マヨヒガ』でセツニキのスタンスを聞いていたからな。そこから少し予想しただけだ」

 

 

 くそみそニキが懐から取り出した煙草に火を付け、煙を軽く吐き出すと、納得の行っていないショタオジがさらに尋ねる。

 

 

「【未来予知】は的中してからひっくり返せばいい。そのスタンスは俺も聞いてる。でも、俺相手にそれが出来ると思ってたの?」

 

「いや、全く」

 

「おいおい酷でーな?こんなに頑張ったんだから少しぐらい考えるフリしろや」

 

「逆の立場だったら?」

 

「無理だろ。現実はそんなに優しくない」

 

「おいおい酷いな?こんなに頑張ったんだから少しぐらいは考えろや」

 

「仲良いのは分かったから。で、セツニキはどうやって俺を越えたの?」

 

「そもそもお前は勘違いしてるんだよ」

 

 

 試験終了と共に気力が尽きたのか、眠りながらクロネキの治療を受けているオンギョウキ(女)に近付く。

 

 

「くそみそニキとショタオジが場外乱闘していただけで、この勝負は元々()()()()()()()()()()()だぞ?必然的に運命改変の壁となるのはショタオジでは無く、オンギョウキだ」

 

「それでもやる夫ニキの霊格じゃ不可能な筈だ。俺の式神はそこまで弱くないよ」

 

「確かにやる夫ニキ()()なら無理だろう。でも、俺も遊戯者(プレイヤー)だった事を忘れてるぞ」

 

「……あの時の〝ランダマイザ(権能)〟か!」

 

 

 驚きの声を上げたショタオジに対して、口を三日月に変えてネタバラシ。

 

 

修羅勢(俺ら)なら瀕死まで追い込んでくれると信じて潜伏型で仕込んでおいた。軽症なら論外、重傷でも起動しない。瀕死まで追い込まないと起動しない代わりに効果を跳ね上げる術式も組み込んだぜ」

 

 

 効果は見ての通り。【運命の支配者(やる夫ニキ)】の効果適用圏内まで能力値を落とせた。通るかどうかは半々だったがな。

 

 

「やる夫ニキと巫女を繋げた方法は?」

 

「童貞には分からない手段だ」

 

「それは良いから」

 

 

 やれやれ。冗談が通じない奴だ。

 

 

「禊の処女を奪うシーンも虫の交尾を見る様に眺められるのは分かっていたからな。それを逆に利用した」

 

 

 ちなみに処女はまだ奪ってない。代わりに指だけで()()()()様に見せ掛け、下着(ショーツ)に手紙入りの防水霊符を仕込んで履かせた。だからこそ禊に〝酷い人〟と言われた訳だ。

 

 

「普通、そこまでする?」

 

「じゃないとお前が〝四文字〟になる可能性があったからな」

 

 

 ハッキリとそう言った瞬間、場の空気が凍った。

 

*1
味方の行為判定を一日に一回だけ変えられる。(無意識オート)




本編的にならないのは確定してるんですけど、次の話で何でそう考えたかの説明があります。
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