【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
作中時間が一年飛びます。本編のV字回復頃になります。
いやぁ……下層試験は強敵でしたね。と、思わずミストさんになってしまうぐらい一芸試験は面倒だった。
やること自体は簡単だったし、ショタオジが試験の為にあの異界を作った意味も理解出来る。面倒だったが。
最初の方は、まだワクワクがあった。環境は過酷の極地。敵は世界を何度だって滅ぼせる悪魔。戦場を思い出すひりつく空気の中、無音のまま始まった戦闘。
一撃必殺という文字を体現した攻撃を潜り抜け、敵へカウンターを放つ。足場すらマトモじゃない場所で俺は頑張った。あぁ、糞みたいな環境で頑張ったよ俺は!
ハッキリ言ってやろう。
宇宙空間というだけでも糞なのに、 光年単位で引き撃ちする悪魔は止めろ。
お陰で【縮地】が権能まで到達したぞ。
そんな訳で何とか下層探索許可書を手に入れた俺は、キレ気味に
今回ばかりは万全を期す必要があった為、俺達が勝手に真修羅と呼んでいる生息地:山梨異界の連中にも声を掛けた。そのお陰で何とか死者を出す事も無く乗り切れた事は素直に喜ぼう。
その後は特に忙しくなる事も無く、気が付けば一年が過ぎていた。
────星霊神社・臨時大宴会場。
「祝!業績V字回復!皆!今日までお疲れ様!ここからは無礼講だ!好きなだけ飲んで食べて楽しめ~!」
『『『ウォォォォ!!』』』
ショタオジの宣言と共にグラスをぶつけ合い、中身を一気に飲み干すガイア連合が誇る幹部達。
借金返済の為に金策の日々を過ごした富豪ニキ達。人数が増えた事で発生件数が跳ね上がった問題解決に泣かされていた事務系俺達。
他にも医療班や製造班等の面々が一同に集まり、飲んで、食べて、笑いながら苦労を慰め合っていた。
そんな楽しい雰囲気の中で黙々と箸を動かす。海外の霊能組織との取引が始まったお陰なのか、机の上には見慣れぬ食材ばかり。
これは食さねば無作法というもの。
まず始めに視界に入ったのは、ひよこ豆を使った料理だ。いや、これは調味料か?
取り敢えず切り分けられた野菜スティックにフムス*1を付けて食べる。うん、美味い。
続いてケバブ──と行きたいところだが、まだ早い。ここはミルザガセミ*2をナンの上に乗せて頂こう。
というか、やけに中東色が濃いな。世界各地のメシア教と争っている霊能組織を支援、ついでに貿易を行っているのは知っていたが、スーペ・ジョウ*3の種類の多さを見る限り、かなりの人数が日本へ逃げてきているっぽいな。
まぁ、俺には何も出来ん。中東美人は息子が起き上がるぐらい好きなんだが、山梨支部を危険に晒してまで助けに行く価値があるかと言うと、無いだろう。
気持ちを切り替える為にもケバブに手を出す。
串焼きのケバブはシシュケバブと呼ばれ、トルコ料理の知名度が低かった時に紹介されたインド料理のシークカバブ、日本ではシシカバブー、シシケバブと呼ばれていた料理とは別の料理だったりする。
近年ではシークカバブはインド風つくね、シシケバブは名前をそのままに中身を変え、シシュケバブになったのも歴史の流れだな。
イスラム教国だと羊肉、牛肉、鶏肉、魚肉。ウイグルではアヒルや野鳥。ヒンドゥー教徒が多いインドでは牛肉が使われる事は無く、羊か山羊らしい。
まぁ、ハッキリ言おう。美味ければ何でも良い俺に言わせれば、全部焼串だ。焼き鳥の親戚だな。
口直しにラクやアラック*4を口に含む。
イスラム教では酒を飲む事を禁止されているので、公の場で酒を勧めてはいけない。もちろん豚を使った料理もだ。
ついでにラクが何故存在しているのかも深く気にしてはいけない。というか〝教え〟を忠実に守ってる人間は少数派だと、
公の場で守れば良いのだ。
「よ~うセツニキ!飲んでるか~?──って、食事中か。他の奴に絡みに行こっと」
「判断が早い!」
「いや~セツニキの食事を邪魔して地獄は見たくねぇ」
「さてはお前、一度やったな?」
「そのお陰で覚醒したぜ!……二度とやりたくない」
「過ちから学べるのは良い人間」
「学べないのは?」
「メシア教徒」
『『『それな!』』』
さて、これからどうするか。宴会用の長大な床机の上に鎮座する国際色豊かな料理は全て食べてみたいが、世界各地の酒も楽しみたい。食事と酒、両方楽しまなきゃ行けないのが辛いところだな。
スウェーデンのハッセルバック*5は美味そうだ。だがデンマークのスモーブロー*6も捨てがたい。
ノルウェーのサーモンソテーは普通に美味いだろう。流石にラクフィスク*7は無いな。宴席で出すような料理でも無いが。
というか今になって気付いたが、この皿、簡易だが【時間停止】の付与がされているな。道理で出来立てを楽しめる訳だ。
ジャンニキの細かい気遣いに感謝しよう。次に食べるべき物は決まった。
世界三大料理として定められているのは、中国料理、フランス料理、トルコ料理の三つ。
だが世界で最も美味しい料理国ランキングでは、一位はイタリア、二位は日本で、三位はギリシャ*8だ。中国は五位、フランスは八位、トルコは十五位。つまり、三大料理国だからと言ってトップ争い出来るとは限らない。
人間の三大欲求はお世辞を言う事を許さないのだ。
ちなみに世界一美味しい料理は六位のインドネシアのルンダン*9らしい。
だが俺は南米のグルメ大国ペルーを押す。まずはアヒ・デ・ガジーナ*10だ。場所によってはセロリで出汁を取るらしい。
続いてロモ・サルタード。牛肉、玉葱、トマト、ポテトフライの炒め物だが、この料理は驚く事に醤油が使われているのだ。だから日本人の味覚にも良く合う。
ここでカウサ・レジェーナ*11と行きたいところだが、大人しくセビーチェ*12に走る。
お供はピスコ。原材料はブドウ、指定品種は八品種。お隣のチリでも作られているが、製法が異なるので一緒くたにしては行けない(戒め)
詳しく書くとペルーの歴史書を紐解かなければならないので省略するが、この酒が誕生した切っ掛けはスペインのせいだ。
南米の多くは十六世紀頃にスペインの植民地として扱われていたのだが、本国がペルーでワインの製造を禁止、仕方なくブドウの発酵液を蒸留したのが始まりだ。
ピスコをホワイトブランデーの仲間や類似品とカテゴライズしたい奴は飲まない方が良い。この酒はペルーの歴史が産み出した酒であり、ピスコはピスコなのだ。
ピスコはアルコール度数が四十を越える事が多く、日本だとショートカクテルの〝ピスコサワー*13〟が有名か。
だが俺はここで〝チルカノ〟を作るぜ!頼めば待機中のバーテンダースキル持ちの式神がシェイカーを振ってくれるが、呑兵衛は待てないのだ。
適当なグラスにアイスキューブを適当に入れ、適当にピスコを注ぎ、適当にライム汁を絞る。そこへジンジャエールを注げば完成だ。
これが海外旅行行ってみたいけど、行く時間の無い作者ならみんなへのプレゼント(呪殺)DA☆