【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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やる夫スレみてたらストックがかなり減ってしまった……面白いのが多すぎる。


下層調査依頼7

 

 

 右手から伸びるのは【ソウルドレイン】の爪。実はこの一年、ひたすら下層探索を繰り返しただけあって俺の権能も次の領域へと進んでいる。

 

 とはいえ制御はまだまだ未熟で、効果の高さに比例する様に霊力操作の難易度も跳ね上がったので、とてもじゃないが仲間の側では使えない。……まぁ、この程度の奴に使う物でも無いが。

 

 

むだだ!わが〝じあい〟のけんのうはきさまらごときではこえられん!*1

 

 

 即座に右翼を再生し、返す刃で口から【マハザンダイン】を放とうとして暴発。その隙を突いて首を飛ばす──が、残念ながら首が飛ぶこと無く、刃を通した傍から回復していく。

 

 

「凄い再生能力だね。流石の僕でもあの速度は無理だよ」

 

「ま、問題無いけどな」

 

む……いや、そういうことか!クク……!貴様らの様な虫けらを相手にするのは止めだッ!」

 

 

 大きく羽ばたき、距離を取るセトを黙って見送る。

 

 

「さぁッ!死ぬまで躍り狂えッ!」

 

 

 空から降り注ぐ【マハテラダイン】と呼ぶべき大地属性の魔法。何処か懐かしい朱雀の匂いを感じるセトの動きに合わせ、誠一郎ニキが叫ぶ。

 

 

「あっ!セツニキゼミでやった所だ!」

 

「お前らそのネタ擦るの好きよな」

 

「下層でたぶん一番叫んだかも知れない言葉だからね」

 

「さよけ」

 

 

 お喋りは一旦打ち切り、二手に別れて大岩を避ける。セトが追ったのは──俺か。

 

 取り敢えず自動迎撃してくれる付喪神(トランプ)を適当にばら蒔いて牽制。

 

 さらに【殺意の領域】で視線を固定する。

Eyes On Me(私だけを見つめて) って奴だ。

 

 

「むっ……厄介だが貴様を殺せば済む話だ!」

 

「はいはい」

 

 

 適当に相手をしていると、背後を向けなくなったセトを()()()()()を生やした誠一郎ニキが戦闘機に負けない速度で貫いた。だが空けた大穴すら即座に回復していく。

 

 

「無駄だッ!貴様らに我を殺す事は出来ん!」

 

「うーん……流石は神様だね。もう反転した権能を使いこなしてるよ」

 

「まぁ、腐っても神って事だな」

 

「聞こえているぞッ!」

 

 聞こえる様に言ってるんだから当たり前だろう。

 

 

 とはいえ段々と逆転した権能に慣れて行くセトは驚異だ。そろそろ手を打つかな。

 

 森の神としての権能を使いこなせる様になったのか、周囲の樹木の枝や葉を槍の様に伸ばし、俺らの居る空間を四方から貫くセト。

 

 もはや【空間殺法】な気もするが、残念ながらここに居るのは山梨が生み出してしまった修羅達だ。

 

 

「遅いな」

 

「何と比較してる?」

 

「グラ爺の【貫通撃】」

 

「下層で会ったオーディンの【グングニル】より速い奴と比べたら駄目じゃないかなぁ」

 

 

 枝の槍の上に立つのは余裕でした。とはいえお遊びはここまでだ。

 

 

「それじゃ誠一郎ニキ。頼むわ」

 

「了解」

 

 

 明らかに過剰な陽光に近い色合いの霊力。誠一郎ニキの右手に集う〝それ〟は、多くのスキルを過剰なまでに搭載した【コンセントレイト】だ。

 

 身の危険を感じたセトが距離を取り始め、警戒態勢に入る。──〝慈愛〟の権能をフル回転か。

 

 

「愚かだな。所詮、お前は神では無く、ただの悪魔に過ぎな()()()

 

「……何が言いたい?」

 

ざんねんながらせとのぼうけんはここでおわつてしまつた。って事だよ」*2

 

 

 展開した【魔天降臨(術式)】を自壊させる。戻ってくる渇いた砂漠の風景。憎たらしいまでに熱く輝く太陽。そして──セトの権能。

 

 当然、全力で〝慈愛(権能)〟を発動していたセトは権能を暴発させて墜落する。

 

 

「他人に与えられた力に頼った末路だ。大人しく死ね」

 

「まだだ……!まだわれはまけて──

 

「無理だな。カヲルニキの領域には未だ届いていないが──」

 

 

────【ラグナロク】

 

 

「誠一郎ニキの()()は余裕でお前を殺せるぞ」

 

 

 

 

 少し昔の話をしよう。とは言っても、二ヶ月ほど前の話だが。

 

 先程も言った通り、俺ら星祭の戦場はすでに下層終盤に移っている。そこで序盤とは比べ物にならない糞ギミックを相手に日々悪戦苦闘している訳だが、実は下層自体はクリア済みだったりする。

 

 

()()直前まで到達しているのだ。俺らは。

 

 

 何度も死に、蘇生され、回復して、戦って、戦って、戦って、戦って、戦って。

 

 星霊神社の修羅勢も含めた全員で突撃を掛け、戦い続け、助け合い、漸く辿り着いた最深部。

 

 そこで俺達を待っていたのは──巨大な封印の前で煎餅をパリポリ囓り、お茶を飲み、片手間に深層から湧いてくる悪魔を焼くショタオジの分身だった。

 

 その姿を見た時の感情は今でも覚えている。もちろん、交わした言葉も。

 

 

──俺らの達成感を返せッッ!!

 

──いや~皆がここまで来るなんて感慨深いや。強くなったね、みんな。

 

──良いこと言って誤魔化そうとしてるが、頬に煎餅のカスついてんぞ。

 

──え?マジ?

 

──くっそ!分かってたけどここまで差があるのかよ!

 

 

 まぁ、改めて実力差を〝わからせ〟られただけだったな。

 

 とはいえ到達した事に変わり無く、そこでショタオジの分身に深層探索許可を貰う為の〝最終試験〟を出された。

 

 期限は無し。内容は──下層に出現する()()を千体確保。その後、一万体討伐。

 

 一万体討伐の方は分かる。それぐらい戦闘経験を積めという事だろう。だが確保とはなんぞや?と尋ねた俺らに対し、ショタオジの分身が言い放った言葉は俺らを奮起させるには十分な内容だった。

 

 

──ちょっと色んな神話のMAGが大量に必要となりそうでさ。一人でやろうかと思ったけど、せっかくだから手伝って貰おうかと思って。

 

 

 ()()()ショタオジに頼られたのだ。多くの修羅勢にとって、その言葉はずっと待っていた言葉だった。

 

 だからこそ、俺は場の空気を読んで速攻で逃げた。形振り構わず全力で逃げた。

 

 多くの呪符をばら蒔いて逃げた。恥も外聞も無く、持てる権能を全て行使して逃げた。──が。

 

 

──捕獲方法はセツニキに任せるよ。

 

 

 その言葉と共に先程まで〝戦友〟だった筈の俺達が牙を向く。そして、その光景を見てニヤリと笑うショタオジ(分身)

 

 

 

──『『『セツニキ待って~☆』』』

 

──ふざけんな!下層の分霊を確保する封印術なんて作ってられるかッ!!というかショタオジに聞けッ!アイツなら答え知ってんだろッ!!

 

──俺の術式は俺専用だからさ。磐長式みたく素人には使えないんだよね☆

 

──嘘つけェェェェ!!

 

 

 

 

「セツニキ。どうしたの?」

 

「……この封印術を作る〝切っ掛け〟を思い出した」

 

「あ~あの時はごめんね?場の勢いに流されちゃった」

 

「いや、大丈夫だ。今ならショタオジのやろうとしていた事も分かるからな」

 

 

 メシア教に狩られた国の霊能組織(難民)が一族単位で日本へ来ているのは知っている。

 

 ショタオジはそいつらへ恩を売るついでに一緒にやって来る神達に〝釘〟を刺したいのだろう。

 

 各国の神話の分霊を使い、馴染みのある霊地に染め上げる事で──()()()()()()()()()()()()()()()()()、と無言の圧力を掛ける訳だ。鬼かな?

 

 軽く頭を振って雑念を追い出す。今は術式の準備に集中しなければな。

 

 使う術式のベースは、昔懐かしいレギオンパワーを封じた時に使った封印術式だ。

 

 

「じゃ、始めるわ。離れておいてくれ」

 

「了解」

 

 

 誠一郎ニキが立ち去ったのを確認した後、進化した【ソウルドレイン】──いや、ここは敢えて正式名称を呼ぶか。

 

存在吸収(レベルドレイン)を発動する。

 

 俺を中心に広がる黒い波動。それがセト亡き今も残る砂漠を黒く染め上げる。

 

 新たな権能の効果は文字通りの〝レベルドレイン〟だ。ただ、ここが現実となった事が関係するのか、ゲームの時ほどの強さはない。

 

 効果としてはソウルドレインにバフ、ステ吸収が付いた程度だ。格下なら〝存在〟を喰えるが。

 

 展開した【存在吸収】を力任せに縮小する。結界で押し留めているセトのMAGを無理矢理纏め、スフェーンの〝永久不変〟の石言葉を強調した特製のカードに封じ込める。これでMAG(分霊)の回収は終わりだ。同時に俺の霊力も底を突いたが。

 

 

「セツニキ。お疲れ様」

 

「おう。マジで疲れたわ」

 

 

 誠一郎ニキの肩を借り、迷宮に戻った異界を歩く。途中、結界役を担っていたセリスがやって来て、誠一郎ニキの代わりに俺の杖となった。

 

 

「俺、これでもレベル八十の高位霊能者の筈なんだけどな?」

 

「高位悪魔を封印するのはそれだけ大変って事だね」

 

「ショタオジ一族の凄さが良く分かるぜ」

 

 

 一体封印しただけでこの消耗だ。今の俺じゃ魔界の封印なんて夢のまた夢だな。

 

 

「頭数を揃えれば消耗が減る類じゃないのがキツイよね。討伐や結界張りは手伝えても、MAGの回収は個人技だし」

 

「一応、製造班や術研の奴等と誰にでも回収出来る術式や道具の開発を探ってるんだけどな。低位ならともかく高位なのがなぁ」

 

「半端な性能じゃ通らないもんねぇ」

 

「下層序盤素材ですら分霊の格によっては弾かれるからな」

 

 

 そもそもが伝説の剣を使って戦うレベルの悪魔だから、仕方ないって面もある。ただ、一匹封印する度にガス欠になるのがやってらんねぇだけで。

 

 

「ま、これで俺はリタイアだ。回復次第また戻るが、暫くはお前らだけで宜しく」

 

「了解。調査頑張るよ」

 

 

 漸く迷宮の出口に着いた。吸雷の塔はすでに無く、空には満天の星空が。俺らの姿に気付いた男鹿ニキが片手をあげて近付いてきた。

 

 

「お疲れ。再編成したから俺らはこのまま進むわ」

 

「おう。俺は嫁と風呂でも入って一眠りしてくるぜ」

 

「シエラ婆も一体封印してリタイアしたから、もしかしたら旅館で会うかもな」

 

「だったらシエラ婆と二人でまた潜るかね。ま、後は任せた」

 

 

 修羅勢と別れ、ついでにここまでの間に回収できた素材の入った霊符を受け取り、ムラサキの【脱出(トラエスト)】で離脱。今はとっとと風呂入って寝たいな。

*1
無駄だ!我が〝慈愛〟の権能は貴様ら如きでは越えられん!

*2
残念ながらセトの冒険はここで終わってしまった。




悪魔が人間の魂を持っていくなら、人間が悪魔の分霊をパクっても良い。

ちなみに独自設定ですが、かなり大事な設定となります。

作者的にはショタオジは何回か〝試した〟上で決行したと思ってる。
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