【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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製造班も頑張ってます。

というか製造班が居ないと下層はきつすぎる……!


下層調査依頼8

 

 温泉に入って飯を食い、セリスの胸に顔を埋めながら六時間ほど就寝。再び下層に戻る──前に、まずは星霊神社へ向かう。

 

 ショタオジのスマホにLILINを入れ、一瞬だけ抜け出して貰い、スフェーンで作られた『セト』のカードを手渡す。

 

 続いて製造班の古参の元へ向かい、一緒に素材庫へ。そこで霊符から採取してきた素材を解放。思業式神を呼び出して一緒にリスト化の作業に移る。

 

 

「すげーな。ここにある素材だけで御殿でも建てられるんじゃないか?」

 

「この程度なら俺一人でも一週間あれば集められるから、凄い勢いで暴落すると思うぞ?」

 

「いや~これクラスが暴落したら市場の価格壊れちゃ~う」

 

「だから幹部ストップ食らってんだよ。市場に流さない様にさ」

 

「成る程ねぇ」

 

 

 会話しつつも属性ごとに仕分け、さらにあいうえお順番に並べ、手元の紙に記入していく。後で電子化してネットに上げる予定だが、買える奴は居るのかね?

 

 そんな事を考えつつも数の暴力で整頓を終える。電子化は任せて良いそうなので頼り、仕事の後の一杯の時間だ。

 

 

「いや~助かった。セツニキ居なかったら一日作業だったわ」

 

 

 前回飲んだ時よりさらに怪しさを増した謎のフラスコドリンクをぐびっと一口。……なんか物凄く身体に良いけど、物凄く不味い物を〝美味しい〟の概念で無理矢理変えてる様なエナジードリンクの味だな。

 

 

「思業式神ならお前らも使えるだろ?」

 

 

 明らかに疲労が抜け、霊力の回復速度が高まる〝怪しい薬?〟を机の上に置いて話を振ると、苦笑いしながら首を振られた。

 

 

「使えるけどセツニキ程の人数はムリムリ」

 

「まぁ、霊格が違い過ぎるか」

 

「俺達も頑張ってるけど、流石に修羅勢クラスのレベルは無理だわ~」

 

「その代わり、世界が平和になったら俺らはおまんま食い上げだぞ?」

 

「やだなぁ。山梨修羅勢が街道で山賊やってる姿を見るの」

 

 

……ふむ。

 

 

「野生の修羅勢が現れた!」

 

「取り敢えず初手【アナライズ】行くぜ!」

 

「ピピッ──測定完了。種族人間、レベル八十です」

 

「普通に絶望以外の何物でもないんだわ」

 

「それな」

 

 

 二人でゲラゲラ笑い、落ち着いた所で話題を変える。

 

 

「吸魔剣の試作はどうだ?」

 

「取り敢えず一本出来たぞ。分類的に消耗品だがな!」

 

「やっぱ武器化はキツいか?」

 

「キツイなぁ。石長比売様にお布施して作って貰ったスフェーンを霊的加工、そこにドレイン系修羅勢に提供して貰った血肉を全力で加工しても届かないんだよ」

 

「成る程な。それで耐久度を削った感じか」

 

「だな~ちなみにお値段はたぶん技術費を抜いても五千万マッカを軽く越えるぜ。素材持ち込みじゃなかった時の価格は時価だな」

 

「セツニキ、それ知ってる。億マッカ越えるヤツだ」

 

「ぶっちゃけ、伝説の魔剣みたいなもんだし」

 

 

 高位分霊のMAGを回収出来る剣だし、強ち間違いじゃないのが恐ろしい。

 

 取り敢えず出来たばかりの魔剣を鞘に入ったまま見せて貰う。……ベースはダインスレイヴ*1か。

 

 

「鞘から抜くと起動しちゃうから注意ね」

 

「わざわざそこまで再現したのか?」

 

「そこまで〝再現〟しないと〝概念強度〟が足りなくてさ~嫌になっちゃうよ」

 

「俺らの血肉、石長比売のスフェーン、ガイア連合(ガイ連)の誇る製造班の技術力でもまだ足りないのか?」

 

「足りないんだよね。特化型ならまだ幾らか余裕はあるんだけど、修羅勢が求めてるのは汎用型の魔剣だからさ」

 

「あ~【神話特効】の有無の差か」

 

「うむ」

 

「言うと思った」

 

「振られたら言わないと駄目でしょ」

 

「さよけ」

 

 

 見た感じ、後一、二歩足りないだけなんだよな。提供している血肉のランクを上げる──つまり、俺らの霊格を上げるか、ドレイン系高位悪魔から素材を奪い、製造班が後ワンランク上の技術を身に付ければ、武器化まで辿り着ける気がする。

 

 つまり、必要なのは研鑽の時間。後はその為の素材か。結局、異界潜りしろって事だな。

 

 

「──さて。良いもん見せて貰ったし、俺もまた下層に潜るわ。またな」

 

「おう!俺も腕を上げておくぜ!」

 

 

 古参と別れ、帰路に着く。宴会場に誰か居るかね?ソロで潜るのも悪くないが、浅層はともかく終盤はショタオジに怒られるしなぁ。

 

 

 

 

「セツニキと組むのは三日ぶりじゃな!」

 

「宜しく頼むわ」

 

 

 見た目はクール系JK(女子高生)の癖に、ロリ好きな黒札達が血涙を流して認める天真爛漫さを併せ持つお婆ちゃん。

 

 属性過多な黒札としても有名なシエラ婆だ。

 

 多くの黒札の性癖を破壊してきた〝実績〟は伊達では無く、無垢な子供の様にはしゃぎながら俺の回りをちょこちょこ動き回っている。

 

 

──十分前。星祭の宴会場。

 

 

「お、セツニキもリタイア?」

 

 

 声を掛けてきたのは、俺と同じドレイン系の権能を持つ俺らの一人だ。

 

 

「吸雷の塔でセト引いたわ」

 

「俺、暴風山脈でガルーダ」

 

 

 暴風山脈は衝撃(ザン)系──では無く、疾風(ガル)系のバランス型エリアだ。それはペルソナ限定だろ!と叫んだ俺らは悪くない。

 

 特徴としては空中を足場に出来ない修羅達を崖下に叩き込むギミックが多く、貴重な素材も大半が崖から少しだけ伸びている場所にある関係で、無駄にロッククライミングを楽しめるエリアだ。

 

 ちなみに定期的に発生するステージギミックは【ガル】系と思いきや【ザン】系も混じるせいで、耐性の調整がきつい糞エリアでもある。

 

 

「お互い運ねぇな」

 

「いや~俺らはまだマシだよ?」

 

「そうなのか?」

 

「シエラ婆なんて入った瞬間に〝ブリテンの赤い竜〟だぜ」

 

「それは……お気の毒に」

 

 

 説明不要な黒札(オタク)の聖書──アーサー王の伝説に登場する赤い竜。ウェールズ語では〝Y Ddraig Goch(ア・ズライグ・ゴーッホ)〟だったか。直訳だと〝draig goch Prydain〟になるが、こっちだとウェールズの方々を怒らせるので注意しろ。

 

 あくまでもウェールズの伝承に登場する竜であり、イギリスの赤い竜では無いのだ。

 

 起源は小アジアで大勝したローマ軍がパルティアやダキア人の使っていた軍旗をパクったのが始まりらしく、その時は紫色の竜だったらしい。

 

 それをローマの属州だったブリタンニアにもたらしたのが始まりとされている。

 

 西暦五世紀以降、ローマがブリテン島から撤退した後、ブリトン人がこれを軍旗として使用し始め、今度はケルトの象徴となった。

 

 そして皆が良く知るサクソン人の襲来に繋がる訳だ。

 

 

 まぁ、ここまでの話は全て無意味だが。

 

 

 我々ガイア連合が積極的にオタク文化を世界中にばら蒔いた結果、ブリテンの赤い竜──正確に言えば【邪龍 レッドドラゴン】は色んな姿を持つ様になっている。

 

 ロマサガ3に出てくるレッドドラゴンかと思えば、モンハンに出てくるリオレウスになったり、MTG*2のレッドドラゴンかと思えば、モン娘のレッドドラゴンになったり。

 

 〝火〟〝(ドラゴン)〟〝龍〟に関係する権能があれば〝緣〟を辿りやすく、生物として強者という事もあり、悪魔が大好きな器。それが山梨異界産のレッドドラゴンだ。

 

 つまり、シエラ婆はそれだけバリエーション豊富なレッドドラゴンの中で、マジモンの【龍神 ア・ズライグ・ゴーッホ】を引いたという訳だ。運無さ過ぎだろ。

 

 

「一緒に戦った奴等も集中力完全に切れてリタイアしてな?ほら、あそこでふて寝してる」

 

 

 指の先にはうつ伏せのままピクリとも動かないシエラ婆の姿が。

 

 

「お前は行かないのか?」

 

「行きたいのは山々なんだけど、こっちも結構な死闘でね?集中力が完全に切れてるから今日はお休みだわ」

 

「まぁ、暴風山脈は足場が悪すぎるしな」

 

「それもキツかったんだけど、新人抱えてたからさー」

 

「あー……」

 

 

 俺らだけなら空中を()()()戦えるもんな。納得の理由だ。

 

 

「セツニキはまた異界?」

 

「おう。だから誰か誘いに──」

 

「ワシの力が必要か?すぐ行こう!今すぐ行こう!」

 

「はぇーよ」

 

 

 とはいえこちらとしても願ったり叶ったりだ。

 

 

「じゃ、準備できたら異界前な」

 

「了解じゃ!」

 

 

 るんるん気分で宴会場を去るシエラ婆を見送り、俺も別れを告げて部屋に戻る。

 

 今度こそ良いエリアを引けると良いんだが。

 

 

──星祭異界の門前。

 

 

「準備は良いか?」

 

「うむ!完璧じゃよ!」

 

 

 背後にはメイド服を着た元修羅木綿のカーミラ。指には指輪型高級式神のフルムーン。本人はお散歩気分な日傘を持った御令嬢だが、もちろん特注の古参製造班の防具だ。

 

 対する俺は正式採用となったギャンブラー装備に仕込み武器多数。胸元にはカードケース型の付喪神。背後にはセリスとギンの一人と一匹。

 

 残念ながら、他の四人は休憩中に職場から呼ばれたのでリタイアだ。

 

 

「じゃ、行くか」

 

「楽しみじゃのう!」

 

 

 ルンルン気分で下層へと繋がる門を潜ると──

 

 

「待ッテイタゾ!小娘!」

 

 

 ウェールズの赤い竜が出待ちしていた。

 

 

*1
北欧神話のドゥエルグ産魔剣。名の意味はダーイン(ドゥエルグ)の遺産らしい。一度鞘から抜くと、敵を殺して血を吸い尽くすまで止まらないとされている。

*2
マジック:ザ・ギャザリング。




ドレイン系二人という死ななそうなコンビ。
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