【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

148 / 322
下層調査依頼9

 

 

「何故じゃぁぁぁ!!」

 

 

 大地をダン、ダンッ!と踏みしめ、シエラ婆が吠える。まぁ、当然か。探索中断の元凶が目の前に居る訳だし。

 

 

「厶?小娘ハ何ヲ怒ッテイル?」

 

「気にすんな。それより何の用だ?戦いに来た──って訳じゃ無さそうだが」

 

 

 俺とシエラ婆が臨戦態勢に入っていないのは、目の前の悪魔から殺意や嘲笑といった負の感情を感じないからだ。

 

 どちらかと言うと好意的?な感情を感じる。

 

 

「ウム。我ガ──」

 

「聞き取りづらいわっ!とっとと人型になれぃ!」

 

「シエラ婆、落ち着けって。それはただの八つ当たりだぞ」

 

「むむむ〜!」

 

 

 むしろ悪魔言語を喋らないだけ俺的にはセトより好感度が高い。日本人は自国の言葉をちゃんと喋る奴が大好きなのだ。

 

 シエラ婆のイチャモンにキレる事も無く、大人しく人型になる赤い竜。その気になる姿は──歴戦の偉丈夫だった。

 

 

「ふぅ。これで良いかね?」

 

「ああ。問題無い」

 

「がるるるるっ!!」

 

「頼むから人間性を取り戻してくれ」

 

「つーん」

 

 

 犬になったり、頬を膨らませたり忙しいな。仕方無い。俺が話を進めるか。

 

 

「で、何のようだ?わざわざそれだけのMAGを使って降臨したんだ。大事な用件があんだろ?」

 

「大事と言えば大事だが、どちらかと言うと〝保険〟だな」

 

「保険?」

 

「汝がどの様な立場なのか知らぬが、イギリスにもガイア連合の支部*1はある。だが、ウェールズの守護者である我は()()()()を頼る訳には行かぬのだよ」

 

「成る程な。故に〝保険〟か」

 

「然り」

 

 

 言ってる事は理解できるし、〝魂〟の色や動きから見ても嘘は無い。

 

 

「一つだけ聞いておく。()()()()()だけか?」

 

「ああ。もちろん()()()()()だけだ」

 

 

 そこは悪魔の価値観だから仕方ないと割り切る。しかし、そうなってくると現場の俺らだけで済ませて良い話じゃ無いな。

 

 

「ハッキリ言っておく。お前の望みに対して満額回答は間違いなく出ないし、契約で縛られる()()はかなり不遇な扱いになるぞ?覚悟は出来ているのか?」

 

「〝分霊()〟には苦労を掛けるが、割り切るし、割り切らせるさ。案外、本霊()よりも良い生活を送れるかも知れないがな」

 

「まぁ、飯は美味いとだけ言っておこうか」

 

「それは本気で羨ましいぞ」

 

 

 ジョークのつもりだったが、返答には本気の声色が混じっていた。

 

 

「さて、シエラ婆。いい加減、覚悟を決めろ」

 

「……はぁ。それなら最初からワシに下れば済んだ話じゃろ」

 

 

 天真爛漫な子供の顔から、老練な指導者としての表情に変わったシエラ婆が呆れた様に溜め息を吐き出す。

 

 

「我にも悪魔としての意地があってな?無条件降伏(白旗)する(掲げる)にも理由が必要なのだよ」

 

「全く……これだから悪魔は」

 

 

 嫌そうにショタオジ製の契約書と自作の封魔管を取り出し、シエラ婆が契約書を赤い竜に手渡す。

 

 

「……ふむ。少しキツイが、必要経費として割り切るとしよう」

 

 

 自らの爪で指を軽く切り、血判を押す赤い竜。その姿を見て、思わず呟いてしまった。

 

 

「お前のような神ばかりなら、俺らもショタオジも苦労せずに済むんだがな」

 

「……?今や世界で唯一メシア教に対抗出来る組織なのだ。むしろこの程度の条件ならマシだろう?」

 

 

 別に信徒を寄越せとも、霊地を寄越せとも、信仰を禁止するとも言われないのだから、と言葉を区切る赤い竜。

 

 その姿を見て、俺とシエラ婆は思わず顔を合わせ──

 

 

『『お前(お主)の様な悪魔だけなら、この世界はもう少しマシだった(じゃった)』』

 

 

──心の底から今の思いを吐き出した。

 

 

 

 

 ショタオジに緊急案件として会いに行ったシエラ婆と別れ、式神を連れて一人下層を歩く。

 

 一階層目は吸炎の塔だったみたいだが、赤い竜がすでに殲滅済みだったので、中央に沸いた魔法陣に乗って二階へ。

 

 下層は全三十階で構成されており、序盤十階、中盤十階、終盤が九階、最後に()()()()と同じ最深部がある形だ。

 

 俺がソロで抜けられるのは中盤まで。故に終盤までに誰かと合流したいところだが……

 

 

「今日の運勢が糞過ぎる」

 

 

 二階で引いたのは吸氷の塔だった。三連続吸魔の塔は下方修正(ナーフ案件)だろ。

 

 取り敢えず耐性を氷結に切り替え、ついでに香水瓶サイズのホットドリンク*2をグビッと飲み干す。

 

 セリスには自分で耐性を変えて貰い、その間にギンの首輪と腕輪を【氷結耐性】の物へと切り替える。

 

 準備が出来たらいざ出発──と言いたいところだが。

 

 

「ふむ、セツニキか。我を雇わないか?」

 

 

 野生の悪魔と【デビルトーク】の時間らしい。

 

 

「クロケルか。何時もの契約で良いか?」

 

「本契約でも良いぞ?」

 

「それはジャンヌネキだけで我慢しろ」

 

「それは残念だ」

 

 

 巻物型の契約書を投げ渡すと、何時もの様に()()にサインするクロケル。それを巻いて、再び俺へ投げ返す。

 

 

「一応、名乗ろうか。我が名は堕天使 クロケル。アイスブランドの権能を持つ堕天使だ」

 

「それで良いのかお前は」

 

「ふふっ、構わんよ。正直言えば、我は貴様らのお陰でこのレベルの器に分霊を降ろせる*3様になったのだからな」

 

「さよけ」

 

 

 クロケルの【アナライズ】情報はこれだ。

 

 

★堕天使< クロケル > Lv60

 

物理型 氷結吸収 呪殺無効 火炎弱点

 

権能・アイスブランド*4

 

スキル・絶対零度 会心波 猛反撃 獣眼 獣の反応 リストア 勝利の息吹 勝利の小チャクラ 氷結の申し子*5

 

 

 氷結吸収、呪殺無効、火炎弱点という分かりやすい悪魔だな。

 

 スキルは最初の頃こそ氷結属性が多かったが、俺らの意見を取り入れた結果、今では()()が使いやすい様にカスタマイズした分霊を降ろしている。

 

 そして、ここは吸氷の塔。盾として使っても良し、放し飼いにしても良しの便利ユニットだ。

 

 契約の内容は単純だ。クロケルはガイア連合の基本契約を結び、厳守を誓う。

 

 俺らは現界の為に使ったMAGと同額のMAGを支払い、ついでに現界している間のMAGを負担。

 

 ドロップ品は俺達の物で、悪魔を狩った際のMAGは均等割り。

 

 分かりやすく言えば、この階層限定の助っ人仲魔だ。

 

 

「何時も通りで良いかね?」

 

「ああ。頼んだ」

 

「では、失礼」

 

 

 一礼してクロケルが狼煙の無い塔へ飛び去る。

 

 賢い悪魔──というか堕天使達は、最近こんな風に稼ぎに来ている。今更、悪魔に対して〝情〟が湧く様な優しさを持ってないが、アイツらはそれを分かっているのか一度もこちらの〝裏〟をかこうとしない。

 

 これにはショタオジも苦虫を潰した様な表情をしていたのは言うまでも無い。

 

 取り敢えずクロケルが飛んでいった方とは別の塔に向かい、狼煙を上げる。

 

 

 上げる色は──〝赤〟と〝紫〟だ。

 

 

 これは二ヶ所を担当するという意思表示。

 

 

「セリス、背後は任せた。ギンは塔を頼む」

 

「了解したわ」「わん!」

 

 

 二人に指示を出した後、初手安定の【煩悩即菩提】と【殺意の領域】を発動。そして【ヤブサメショット(トランプ)】をばら蒔く。

 

 さらに【魂吸(ソウルドレイン)】を剣に変えて射出。【存在吸収(レベルドレイン)】は使わない。というか使えない。

 

 セリスやギンを殺す訳にも行かんしな。

 

 暫く戦っていると、塔のギミックが発動し、空から大量の氷塊(マハブフバリオン)が降ってくる。吸雷の塔との違いはセリスと相性が良いという点か。

 

 

「【魔封剣】……氷結耐性は火炎より楽で良いわ」

 

「まぁ、お前は無効止まりなんだけどな」

 

「みんな私の見た目で騙されているけれど、実は水擊なのよね。吸収持ってるの」

 

 

 氷結系悪魔を相手にしながらそんな会話をしていると、ギンの【虚空爪擊】*6が塔を薙ぎ倒した。

 

 

「ギンはセリスを乗せて次の塔へ」

 

「貴方は?」

 

「ここの掃除してから合流する」

 

「了解」

 

 

 流れる様にセリスがギンへ騎乗してこの場を去る。それと同時に【存在吸収】を発動。

 

 俺から漏れ出る黒の魔力が周囲を侵食し、その全てを奪い尽くす。その驚異に気付いた悪魔達が徒党を組んで襲ってくるが──

 

 

「無駄だ。お前達が〝悪魔〟である限りはな」

 

 

 MAGで出来た肉体はもちろん、武器や魔法すら吸収する。一分も経たない内に悪魔達を()()()()()、下層試験の時に権能化した【縮地】で移動開始。

 

 効果は視界内の短距離転移に近いが、障害物をすり抜ける効果は無いので、実は間に何かを挟まれると普通に激突する。

 

 とはいえ吸魔の塔は基本的に見晴らしが良いので問題無いが。

 

 狼煙の上がっていなかったもう一本の塔に到着した俺を待ち受けていたのは、大量の()()だった。

 

 その上で軽く羽ばたきながら、ガイア連合から購入した小説(ラノベ)を読むクロケル。堕天使とガイア連合の相性が良過ぎる。コイツら、実は俺達なんじゃないか?

 

 

「ふむ。流石はセツニキだな。まだ(小説)の途中なのだが」

 

「不足分は支払ってやるさ」

 

 

 先程の悪魔から奪ったMAGの過剰分を魔結晶化してクロケルに投げ渡す。

 

 【存在吸収】は常用するにはキツすぎるデメリットが二つ存在している。

 

 一つ目は()()()()()()という権能の関係上、悪魔の有していた意識までもが使用者()の中に取り込まれてしまうのだ。

 

 つまり、悪魔の精神を自身の精神で磨り潰すまでの間、使用者は一時的に〝レギオン〟と同じ状態となる。

 

 その多くが発する言葉は殺された恨み(呪詛)であり、常人どころか高位悪魔でも無傷とは行かないレベルの精神的負荷が掛かってしまう。

 

 その負荷に耐えきれなかった者の末路はクトゥルフでお馴染みの〝発狂〟か、最近だと物語の雑魚として登場する事の多い、リッチの様な当初の目的を忘れた不死者共の仲間入りだ。

 

 とはいえ俺ら修羅勢にとっては、無傷とまでは言えなくても問題無いで済んでしまう程度の話だ。

 

 負けた奴が悪い、で終わるしな。

 

 問題なのは二つ目の方で、悪魔のMAGに人間の身体が()()されるのだ。

 

 これは人間である以上どうしようも無く、自身のMAGで浄化する羽目となり、結果的に霊力を失いまくる。

 

 今回は汚染される前に魔結晶化し、クロケルに渡したという訳だ。

 

 

「この異界に来る者達は我らの扱い方を分かっているから楽で良い。支払う報酬は多過ぎず、少な過ぎない事が重要だ。そうすれば〝ビジネス〟になるからな」

 

「この異界に来る悪魔達は俺らの扱い方を分かってないから大変だよ。供物は貢げ、魂は寄越せ、信徒になれ。〝ビジネス〟の話が出来ない奴ばかりなんだが?」

 

「……同胞にその様な愚かな奴が居るなら気軽に言ってくれ。上司に伝えておく」

 

「他の場所に現界した悪魔()は知らんが、ここに来る分霊で一番話が通じるのはお前らだぞ?」

 

 

 さっき初めて赤い竜(二例目)と会えたが。何で堕天使が一番話せるんだよ。可笑しいだろ。

 

 ちなみに一番話が通じないのは天使共だ。言うまでも無いがな。

 

 

「我々も確かに謀りはするし、人間に甘言を囁くがな?この異界に分霊を降ろすならガイア連合(セツニキ達)の役に立つ形にしないと赤字だろう」

 

「おう。クロケルは賢いな。MAGをケチって強力な悪魔になる奴しか居ないぜ。会話なんてほぼ通じねぇ」

 

「愚かな……」

 

 

 呆れた様に溜め息を吐き出すクロケル。その計算が出来ない悪魔が多いから、ショタオジは自由に動けないんだよな。ま、愚痴はここまでだ。

 

 

「じゃ、俺は素材回収して先に行くわ。ギンが塔を壊し終わったしな」

 

 

 轟音を周囲に撒き散らし、倒壊していく吸氷の塔。それを眺めながら霊符をばら蒔き、氷像のまま回収する。出来る堕天使であるクロケルは氷像を一纏めにしてくれるから楽で良い。

 

 

「では、我は一度本霊の元に還るとしよう。他の神話の愚かな話を聞きたがる同胞も多いしな」

 

「おう。ルキフグスとベルフェゴールによろしく言っておいてくれ」

 

「……セツニキ。我にとってそのお二方は天上人なのだが?」

 

「俺にとっては油断出来ない悪友兼悪戯仲間だぜ。だから大丈夫だろ」

 

「したっぱに無茶を言わないでくれ」

 

 

 溜め息と共にMAGへ還ったクロケルを見送り、セリスと共にギンへ騎乗。全ての塔が崩れたのは、それから十分後の事だった。

 

 

 

 

*1
謎の食通様作 終末が来たりし世に英傑の旗を掲げよ から。お借りするぜ!

*2
様々な霊草を調合して作られた耐寒霊薬。元ネタはもちろんモンハン。実は修羅勢が作れる霊薬の一つでもある。

*3
元々レベル60の自然湧き堕天使に分霊を降ろしたイメージ。昔は本霊の力が弱くて不可能だった。独自設定。

*4
敵単体に力依存の氷結属性大威力攻撃。高確率で対象を凍結状態にする。相性を無視して貫通する。

*5
氷結ブースタ、ハイブースタ、プロレマ、ギガブースタ

*6
敵単体に2〜3回大威力の物理属性攻撃

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。