【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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下層調査依頼10

 

 三階、四階、五階、六階は特に語るべき盛り上がりは無かった。順に火龍山*1、雷鳴山脈、火龍山(二回目)、水晶雪原*2だったので、適当に素材を回収して奥へ進んだ。

 

 分かっていた事だが、古参はすでに奥へ進んでいるので、道中で会う修羅は新人ばかりだ。アイツらも弱く無いが、この旅には着いて来れない。

 

 七階では再び吸雷の塔を引いた。何でキレてるのか知らんが、いきなり逆ギレしてきたセト(ちんぴら)が襲ってきたので軽く処理。同じ分霊は試験の分霊カウントが進まないから要らんのよな。

 

 そんな訳で八階。視界一杯に広がるのは──異界に相応しくない、南国の楽園。

 

 

「珍しいな。久々に見たぞ」

 

「確か貴方達(黒札)と〝緣〟を結ぶ為に大量の分霊が湧いたエリア……で合ってる?」

 

「ああ。だから一人残らず乱獲したんだよ」

 

 

 あの時はボーナスタイムだった。ドロップも採取出来る素材も優秀な物が多く、分霊も役に立つMAGの塊だから躊躇う理由が無かった。そのせいで一切分霊が湧かないエリアになっちまったが。

 

 

「ただ、ここは結構面倒なんだよな」

 

「そうなの?」

 

「耐性が意味無い」

 

「まぁ、そうでしょうね」

 

 

 俺達が八層で引いたエリア〝女神の園〟は、常時全域に【ハイリジェネレート】のギミックが発動しており、現れる悪魔達も【ディアラハン】や【メディアラハン】を連打してくる。

 

 つまり、()()()()()()過剰回復(オーバーヒール)を狙ってくる訳だ。

 

 こればかり耐性を用意出来る筈も無く、自傷しながら進まなければ、すぐに肉塊に加工されてしまう。

 

 その代わりこのエリアで取れる素材は万病に効く霊草やら花やら雫やらが多く、俺達黒札はもちろん、世界中が欲する素材が盛り沢山だ。

 

 現れる悪魔は【イシュタル】や【ラクシュミ】等々。目の保養にはなるんだが、殺意の高さは言うまでも無い。

 

 

「取り敢えず自傷かしら?」

 

「ほい、()()()()。ギンも痛いだろうが我慢しろよ」

 

「わん!」

 

 

 霊符から取り出した黒い短剣をセリスに手渡し、ついでにギンの横腹に突き刺す。刃自体は三メートル程の体長を持つギンの筋肉に防がれている気もするが、呪詛的な効果は発揮してるので問題無い。

 

 

「まさか、また血薔薇の黒短剣(ブラッディローズ)のお世話になるとは思わなかったわ」

 

 

 晴彦ニキが作ったこの短剣は、死神や魔獣系の悪魔が良く所持している〝流血〟の呪詛が仕込まれている。

 

 これのお陰で常に傷がある状態を維持出来る訳だが……こんな物騒な物を所持しているのには理由がある。

 

 セリスが()()()()()()なんて言った様に、実はこのギミックはすでに存在している。

 

 

 そう──修羅道だ。

 

 

 俺としても予想外だったんだが、どうやらショタオジが過去に経験した掌握前の山梨異界にもあったようで、当たり前の様に今の山梨異界にも存在していた。

 

 所謂『あっ!セツニキゼミで習ったところだ!』の一つって訳だな。

 

 

「さて、ここで駄弁ってても仕方ないし、探索するとしますか」

 

「まずは採取かしら?」

 

「だな」

 

 

 警戒はギンに任せ、二人でそこらへんの霊草や霊花を回収。アフロディーテの薔薇。珍しくゼウスの妻、ヘラからの嫉妬を躱わし、女神となったイリスの神話から生まれたアイリス。

 

 他にも木花咲耶姫の桜やアフロディーテのアネモネもある。アフロディーテ多すぎだろ。

 

 俺の装備頼り【アナライズ】によると、これらは全て強力な癒しの力を秘めているそうだ。

 

 ちなみにこれらは全てショタオジが作ったが、()()()()()()

 

 ショタオジがやったのはあくまでも自動生成する為の〝型作り〟までだ。例えば〝氷結〟〝堕天使〟まではショタオジの制作だが、そこへ魔界からの瘴気が流れ込み、勝手にクロケルになるのは自動という事だな。

 

 エリアに関しても殆ど同じだと思うが、たぶんギミックはお手製だろう。〝氷結〟を置いて基本となる水晶雪原が出来て、それをコピー。

 

 そのコピーしたエリアに〝塔〟〝吸魔〟〝守護者〟等を置いた結果、あの糞ギミックが出来た気がする。

 

 そこから推測すると、このエリアの〝型〟は〝楽園〟〝癒し〟〝女神〟辺りか。何でそれでこんな殺意満点なギミックが生まれるんですかねぇ?

 

 暫く二人で採集していると、ギンが唸り出した。たぶん第一村人(悪魔)だろう。

 

 

ふふ。そんなにおびえないで?みたところけがしているようだし、わたしがいやしてあげるわ*3

 

「ヒャッハー!飛んで火に入るデメテルだぜ!小麦寄越せッ!」

 

 

 一撃で楽にしてやるつもりで刃を振るう。が、大地がデメテルを守る様に盾となり、防ぐ。

 

 

ちょっと!いきなりなにすんのよ!あぶないじゃない!*4

 

「怨むなら前回降りて来た分霊を恨め。俺らはお前に味わされた飢餓の恨みを忘れねぇ」

 

 

 デメテルは豊穣神として有名なせいで知らない人間も多いが、実は〝飢餓〟を司る権能(神話)持ちだ。

 

 テッサリアー地方*5の王、エリュシクトーンがデメテルの聖地の森を根刮ぎ伐採した時、王の元へ〝飢餓〟を遣わせた。

 

 その結果、王は幾ら食べても〝餓え〟を満たせず、最後には自身の身体を貪り喰らい、獣に噛り切られた姿となって死んだ。その〝餓え〟は火が燃え盛る様な苦しみだったらしく、最期にはエリュシクトーンという名では無く、アイトーン*6と呼ばれる程だったそうだ。

 

 そんな〝餓え〟を与えられた俺らが、デメテルの事が好きになるかと言うと、もちろんノーだ。デメテルなんて大嫌いだ。というか山梨異界に分霊を降ろす神は基本的にロクなのが居ない。

 

 初手【セクシーダンス】は当然だし、【緊縛】から魂どころか肉体まで持ち逃げするし、魅了に掛からなかったら逆ギレだ。

 

 【ファイナルヌード】は【クレオパトラ】の専用技だろ!私も出来る!でやってくんな糞女神!……失礼、怒りが漏れた。

 

 一応〝女神の園〟に分霊を降ろした女神の擁護をする事は出来る。本霊がガイア連合との伝を作る為に分霊を降ろすまでは別に構わない。

 

 だが自身のMAG消費をケチる為、山梨異界の器に降ろした事に対しては、知能が足りてないと言わざるおえない。

 

 さっきから説明してる通り、山梨異界に現れる悪魔は魔界の、それも()()()()()()()()()()な悪魔が生み出す瘴気がみっちり詰まっている。

 

 で、そんな器にロクにMAGを使わないで分霊を降ろすと、どうなるのか?その答えは──

 

 

目的の為ならどんな手段でも使う様になる。

 

 

 つまり、女神の〝相〟が消え、悪魔としての〝相〟に侵食される。そりゃ初手【ファイナルヌード】やら【セクシーダンス】になるわな。魅了すりゃ好き勝手出来るんだし。

 

 それを避ける為に赤い竜は自身のMAGをちゃんと消費して理性的なまま降りてきたし、クロケルも同じ様に〝ビジネス〟を行える程度のMAGを注ぎ込んでいる。

 

 つまり、ケチだったから自滅した。それが真実だ。

 

 

「状態異常は殆ど耐性持ち、弱点は大抵火炎だ。ついでに言えば、半端なダメージは即座に回復する。殺るなら一撃で仕留めろ」

 

「了解」「わん」

 

あんたたちあたまおかしいんじゃないの!?あたしをみてふつう、ころしにくる!?*7

 

「お前はショタオジの作った器に流れ込んだ瘴気に過ぎないんだ。殺す事に躊躇いがある筈ないだろ」

 

 

 勝手にデメテルの分霊になった悪魔、と言うべきかね。有名な高位神はこういう事があるから、一律に名前だけで信頼出来ないのだ。

 

 【ヤブサメショット】をばら蒔きながらセリス達を支援。ついでに付喪神となった〝カードケース〟の新技を御披露目。

 

 

「行くぜ!俺のターン、ドロー!」

 

 

 カードケースにセットしていた()()()を一枚ドロー。……ふむ。金貨(コイン)の四の逆位置か。

 

 意味としては脆弱な守りからの損失だ。盾を壊される、鞄を盗まれる等、財産の守りが薄いといった感じを示している。

 

 

「こんな糞みたいなカードはプレゼントするぜ!」

 

わたしだつていらないわよ!*8

 

「残念、受け取りは絶対だ」

 

 

 デメテルが大地を隆起させて防ぐ事を予見していたかの様に、金貨の四(カード)が曲がる。まぁ、曲げたんだが。

 

 回転しながらデメテルを切り裂いたカードが光り、運命が示す通りに効果が発動する。──隆起した大地の壁が突如して無惨に崩れ落ちた。

 

 

うそでしょ──!?*9

 

「現実よ」

 

 

 壊れた壁から飛び出たセリスが【朧一閃】を放つ。それは確かにデメテルの首を捉え、跳ね飛ばした──が。

 

 

まだよ!【ディアラハン】!

 

 

 首だけで魔法を発動したデメテルの再生が始まる。そこへ()ごとギンの【ヘルファング*10】が発動してデメテルを噛み殺した。

 

 良い一撃だな。もう単純な火力ではセリス達に勝てないかも知れん。

 

 

「ドロップは無しね」

 

「クゥ~ン」

 

「良いことを教えてやろう。出るまで狩れば百パーセントなんだぜ?」

 

「それはそうでしょう」

 

 

 呆れた視線を寄越すセリスに肩を竦める。俺らって運の数値が全体的に低いからか、狙った物は殆ど出ないし、ドロップも悪いから数を稼がないと駄目なんだよな。

 

 

「取り敢えず素材採取しながら次の階層を目指すか。ギンは引き続き警戒をよろしく。セリスは手伝ってくれ」

 

「了解したわ」「わん!」

 

 

 この階層の〝当たり〟が引けるまでどれくらいの時間が掛かるかねぇ。

 

 

 

*1
最初の突撃時に引いた火炎属性が濃い異界。今回は割られずに済んだ。

*2
氷結属性が濃い異界。素材と悪魔のバランスが良いエリア。火龍山の色違い。

*3
ふふ。そんなに怯えないで?見たところ怪我している様だし、私が癒して上げるわ。

*4
ちょっと!いきなり何すんのよ!危ないじゃないっ!

*5
現在のギリシャのペリフェリエス地方の一つ。

*6
燃え盛るの意味があるらしい。

*7
アンタ達、頭可笑しいんじゃないの!アタシを見て普通、殺しに来る!?

*8
私だって要らないわよ!

*9
嘘でしょ──!?

*10
敵単体に物理属性の大ダメージ。

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