【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
滅多に引けないボーナスステージという事もあり、式神達と交代で見張りをしながら異界に泊まり込む。
ひたすら狩り続けてはや三日。未だに目的の物は出ていない。
「出ないわねぇ……」
「くぅーん」
式神二人も嫌気が差してきたのか、言葉に力が無い。本当に出ないな、黄金林檎。
「初めてドロップした時は面白おかしく使っちゃったんだよな」
「何をしたの?」
「ヘラとアフロディーテとアテナの間に投げ込んでやった」
今思えば何と勿体無い事を……!と思わなくも無い。どうせなら、三人の隣にクロネキを並べ、クロネキに手渡せば良かったというのが修羅勢の公式見解だ。
不老不死?そんな物に価値は無い。死ぬ怖さを忘れたら人間じゃないんだ。人は死を恐れ、それに耐えて進むからこそ、人の〝輝き〟は美しいのだ。
「貴方達って賢いけど馬鹿よね」
「頭が良いとアホは両立するんだ。賢い馬鹿だってそりゃ居るさ」
「そんなんだから式神板に書き込まれるのよ。私の主は【サマリカーム】すら使いこなせるのに、未だに知育菓子に感動する子供ってね」
「……その言葉を書き込んだ式神は主の凄さを分かってないな」
式神板へ書き込み出来るレベルなのに愚かとすら言える。まぁ、一緒に生活してるから気付かないのかも知れんが。
「どういう事?」
「俺らクラスの霊格になると、人に関わる様な奴等は愚者呼ばわりよ。だからどいつもこいつも使命やら義務やらに絡み取られて死んで逝くんだ」
エジプトの高位霊能者達は立派な最後を遂げた。だが、それは本当に
妻や子供を守る。それならまだ分かる。そこへ両親を含める。まぁ、良いとしよう。
だが五十や六十と言った霊格持ちでありながら、国なんていう〝物〟の為に命を賭ける意味はあったのか?
人間が抱え込める物は両手の範囲内だ。それを忘れ、それ以上を成そうとしたからこそ、アイツらは主神と共に死んだ。そして、これから先、ずっと
「知育菓子程度に感動出来る感性は決して捨てて良いもんじゃない。むしろ、死ぬその時まで抱える必要があるもんだ。それを捨てたが最後〝英雄〟として死ぬか、〝暴君〟として死ぬかの二択だぞ。どちらを選ぶにせよ、ロクな結末に辿り着かない事だけは間違いない」
式神を抱く事が義務感になるんだろうな。美酒美食の味から感動が無くなり、カロリーバーとの違いが分からなくなったら終わりだ。
味は分かる。でも、こんな味か、で終わってしまう。
そんな人間、もはや〝生者〟では無く〝亡者〟だろ。少なくとも俺は〝生きている〟とは認めない。
セリスの隣に悪魔が湧いた。セリスは剣を真横に振り、その首を見もせずに跳ね飛ばす。あ、林檎出た。
「……そうよね。考えてみれば当然なのよね。貴方も〝仏〟に成り掛けたのだから、他の俺らもそうなっても可笑しくないのよね」
「まぁ、アイツらにその心配は無用だけどな。その為に俺は馬鹿騒ぎしながら面白おかしくここまで導いたんだから」
ギンが黄金の林檎を咥えて持ってくる。軽く頭を撫でてそれを受け取り、【浄化】してから霊符に収納する。
「武神一直線でも可笑しくないグラ爺や秋雨ニキを繋ぎ止めていたという事?」
「俺らが真修羅と呼ぶ奴等の末路はたぶん神だろう。だが、グラ爺達の行き着く先は超越者だ。この違いが分かるか?」
「……〝神話〟が無い?」
「そう。最強を目指すなら、自身の根幹を悪魔由来の〝力〟では無く、それを自らの物に
俺を見れば分かるだろう。仏教系の根幹を持ちながら、それを
「少し、人間が羨ましいわね。私は何処まで行っても最後は本霊に吸収されてしまうから」
「俺の式神なら新たな神話の神になるぐらいの気概を見せろや。大人しく
返事を待つ事はしない。その代わり、ギンに騎乗し、セリスへ手を差し伸べる。
「一旦、帰還するぞ」
「……ええ」
腕の力だけでセリスを引っ張りあげ、後ろに乗せる。
「じゃ、ギン。頼むわ」
「わん!」
俺を抱くように腕を回したセリスが少しだけ力を込める。
「私、頑張るわ。死後を貴方と過ごす為にも」
「お前が悩んでる間にも俺は先に行くぞ。何時までも立ち止まれると思うなよ」
「厳しいわね」
「当然だろ。俺はお前達式神には期待してるんだからな」
造られた存在でありながら、人の様に悩み、苦しみ、それでも歩き続ける存在。
もし彼ら彼女らが自らの意思で歩き出せたなら、それはとても尊い物だと俺は思う。
◇
異界を出てすぐにセリスと別れ、一旦浄化で身体を綺麗にする。
そのまま処理済みの採取品の入った霊符を片手に製造班の元へ行くと、多くの製造班が慌ただしく動いていた。
「うぃっす。何か忙しそうだな?納品は後の方が良いか?」
「……?あっセツニキだ!」
『『『確保ッ!』』』
特に抵抗する事も無く椅子に座ると、ロープでグルグル巻きにされた。
「カツ丼は出るんだろうなっ!?出なかったら俺は暴れるぞっ!」
「レベル八十のその脅しは洒落にならんのよ」
「だったらカツ丼を寄越せ!話はそれからだ!」
〝女神の園〟で食べられるアイテムは、花の妖精みたいなメルヘンな存在が吸ってる花蜜*1や戦争が起こりそうな果実*2程度なんだ。
俺は、今、猛烈に肉が食べたい。
「誰かジャンニキに頼んでこい!」
「あ、俺が行くわ。ついでにお前らの為にも何か買ってくる」
「任せた。代金はそこの缶から持ってけ」
「りょ」
一斗缶に雑に放り込まれているマッカを掴み、古参の一人が出ていく。それを見送った後、俺の方から話を切り出す。
「で、どうした?何か問題でも起きたのか?」
「問題っつーか、セツニキ達さ。自分達が持ち込んだ物の価値や性質分かってる?」
「分かってるが、俺達に取っては無限に取れる素材だからな。下層終盤ならまだしも、中盤程度の素材なら幾らでも取ってこれるぞ?」
「俺達と認識差ありすぎぃ!!」
「というか今まで見た事の無い素材がどんどん来てるんだが!?」
「そらそうだろう。ドロップ品ならまだしも、採取系スキル持ってる奴等は基本的に地産地消するしな」
「もしかして星祭の素材庫って山梨越えてる?」
「桃源郷、修羅道、下層の素材だけなら越えてるぞ?あそこは俺らの要らん
「全部持ってきてって言ったら?」
「良いぞ?その代わり新たに倉庫を増設するか、倉庫自体の強化を行わないと素材同士が変な干渉し出すから気を付けてな?」
「待って!もしかして倉庫の〝質〟でも負けてたの!?」
「組織規模の倉庫と一緒にすんなや。星祭──っつーか旅館の倉庫は持ち込まれる高位悪魔の
こういう時、カンパを募ったら凄い額になる修羅勢は楽だ。採算度外視でベルフェゴールやイワナガの力を借りられる。……そういう事か。
「お前ら、依頼出したは良いが、保管場所を用意してなかったな?」
「そうだよチクショウ!まさか存在するだけで周囲を燃やす素材が来るとは思ってなかったんだもん!」
「えっ」
「えっ?」
「その程度でこの事態って大丈夫か?素直にショタオジに頼った方が良いぞ?」
「もう頼ってるよ!でも、ショタオジも忙しそうですぐには無理って言われてんのよ!」
「あ~……」
そこにノコノコ俺が現れたって訳か。納得。
取り敢えず縄抜けして立ち上がる。
「暫く素材の保管はしておいてやるよ。だから早めに倉庫の用意を宜しくな?」
『『『マジ助かる!!』』』
やれやれ。暫く下層はお預けかねぇ。
ぱぱっと案内された倉庫へ行き、全ての素材を霊符に封印。さらに思業式神を呼び出し、属性ごとに分けた後、性質を書き込んで書類に纏める。
作業が終わったら製造室の隣にある休憩所へ。そこでカツ丼を食べ始めた。
「いや~……助かった。紅蓮石はギリ行けたけど、精霊の卵は駄目だろあれ」
「修羅勢を舐めてたね。ついでに下層も」
「マジで神話素材だったもんな」
盛り上がる製造班を余所にまずはカツを一口。出汁が良い味出してるな。
個人的に茶碗蒸しの様な茸出汁をベースとしてるカツ丼が好きだ。もちろん甘めなカツ丼も好きだが。
「あ、そうだセツニキ──って、食事中か」
「諦メロン。まぁ、俺達も食べ始めようぜ」
「「「うぃ~」」」
カツ丼を食べるのに上品さは要らない。はしたなく丼に口をつけ、箸で掻き込むぐらいが丁度良い。
黙々と食事を進め、最後まで取っておいたカツを口に運ぶ。そして淹れさせたお茶を飲んで一息。
「御馳走様でした。ジャンニキの飯はやっぱうめぇな」
「不味いって言う奴は逆張りし過ぎて頭がイカれただけだろ」
「それな」
席を立ち、窓際で煙草に火を着ける。食後の一本は最高だぜ!
「昔と違ってセツニキの背が伸びたからか、中坊が背伸びしてる様に見えるな」
「見た目も相まって厨二病発症してるよな」
「問題なのは、やろうと思えば魔眼も呪われた左腕も可能って事だ。セツニキクラスの術式が刻まれた奴とか洒落になんねぇぞ」
「厨二病かっこガチとか俺らの少年心を呼び覚ましてしまうッ!」
「出来なくは無いが、弱くなるバグが発生してんだよな。生身のが強いという」
「ちなみに使うとどうなるんだ?」
「超高速機動に着いてこれなくて引き千切れるか潰れるな」
これはマジだ。魔眼を楽しんでた俺らの一人が強制的に厨二病を卒業させられたし。
「下層の素材を使っても?」
「義眼や義腕の強度を取ると、今度は仕込んだ術式が通らないんだよ。で、修羅勢のレベルまで来ると、生身のが強いって結論になった。」
戦車砲程度なら防ぐ必要すら無い気がする。核ミサイルでも直撃しなければ何とかなるだろう。但し、ペルソナ使いは除く。