【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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霊格上昇に伴う弊害と古参の霊格

 

 

「もしかして製造班の敗北?」

 

「まぁ、霊格が低い奴の作品は徐々に使えなくなってはいる」

 

 

 俺ら修羅勢が使う霊薬は、レベル三十以下が触れただけで過剰回復まで行く〝女神の園〟クラスの素材を使った霊薬じゃないと、もはや一瓶で完全回復が不可能な領域にまで達している。

 

 必然的に使う霊薬の値段も上がるので、霊格が上がるデメリットにもなってるんだよな。それ以上に稼げてるから問題無いだけで。

 

 

「まじか〜……でも、考えて見りゃそうだよね」

 

「素材だけで呪われたりする様な奴らを狩ってる訳だしな」

 

「処理して効果を薄める事は出来るけど、それなら中層の素材で良いもんね」

 

「ショタオジに製造班の霊格上げ陳情するか〜」

 

「一気に上げすぎると今度は霊力操作がキツくなるからな?一時的に腕が落ちる事は覚悟した方が良いぞ」

 

『『『デスヨネー』』』

 

 

 溜息を吐き出す製造班の気持ちも分かるが、霊力操作の難易度はレベルとイコールだからなぁ。こればっかりはショタオジにすらどうしようも出来ない。

 

 

「セツニキも苦労したん?」

 

「俺の場合、初っ端から命賭ける必要があって、最初に使ったのが操作性クソなコピー霊符だったからな。参考にならんぞ」

 

「常時訓練してたみたいなもんかー」

 

「それに製造班ほどの精密性を求められてないってのもある。自分の霊力(スタミナ)が切れる前に敵を殺して生きて帰れるなら、別に過剰に注ぎ込んでも問題無いし」

 

「俺達がそれやると素材の霊的効果が破損したり、過剰に反応して大爆発なんだがー?」

 

「無駄に付与枠奪ったりするよね。本来なら一枠で済んだ筈なのに三枠使ったりとか」

 

「セツニキはそこらへん巧いよねぇ。やっぱり努力したん?」

 

「もちろん。一つの装備に色々な効果突っ込むのは浪漫だろ?俺は浪漫の為の努力は嫌いじゃないんだ」

 

 

『『『分かる』』』

 

 

 全ステアップ、全属性、HPMP吸収、種族特効、クリ率、クリダメを詰め込むぐらいは誰だってやる筈だ。そして付与失敗で壊すまでが様式美。

 

 

「適当に付与(エンチャント)突っ込んで遊んでたら偶然生まれる逸品とかあるしなぁ」

 

「ここ最近の作品だと〝流星拳〟辺りはセツニキ好きそうだよな」

 

「ほほう?どんな性能だ?」

 

「ナックルダスター型の霊装で、ストレート放つと追撃で大量の星型MAGが飛んでいくんだ。一回五十は飛ぶな」

 

「ただ消費霊力が中々高い。だから武器として使うならレベル二十は欲しい」

 

「聞いてるだけで欲しくなるな。幾らだ?買い取るぞ?」

 

「あ〜買い取りは勘弁して。俺ら製造班の探索装備だから」

 

「残念。しかし何でそんなものを?」

 

「突発的付与大会の優勝作品なのよ」

 

「成る程」

 

 

 付与大会はベースとなる同性能アイテムにどれだけ付与を詰め込めるかを競う大会だ。

 

 込める付与は自由なので、ネタに走ったり、本気で勝ちに行ったり、端材で付与したりと、人によって様々なスタイルなのが魅力となっている。

 

 ここで活躍した黒札には大抵スポンサーが付くので、安定志向の製造班に大人気なイベントなんだが……

 

 

「毎回思うが、付与大会って安定志向の奴ほど勝てないよな」

 

「途中でキャパオーバーしてぶっ壊れる可能性は全員あるけど、その上でマージン取り過ぎて性能負け普通にするからね」

 

「俺は嫁を養わきゃ行けないんだ!」

 

「おう!頑張れよ!俺は遊んでるわ」

 

「これほどオチが分かる会話ないわぁ」

 

「それな」

 

 

 ホントにな。

 

 

「最近だと術者系黒札が強いよ。ファイアブランド*1とか普通に良い出来だった」

 

「あーあの薙ぎ払いのモーションを儀式にして発動する奴か。確かに良い出来だったな」

 

「最強はスケベ部だけどな!」

 

 

『『『それな!』』』

 

 

「あそこは順序が違うしなぁ」

 

 

 こんなアイテムが作りたい!では無く、こんなプレイがしたい!から入っていくと言うか。

 

 原動力も人間の三大欲求なので諦めの文字は無い。

 

 

「あ、そういや〝水汲み係*2〟新しくなるわ」

 

「お、そりゃ朗報だな。ショタオジも喜ぶ」

 

「最初だけは岩の隙間から流れ落ちる方に案内してあげてな?」

 

「むしろ気付くまでそっちだけ使わせてるわ」

 

「ひでぇ」

 

「まさか()()()すら〝星の水〟になってるとは思わないよな、普通」

 

 

 終末対策の一環として星祭の水周りは全部〝星の水〟に変わっている。つまり、蛇口を捻れば普通に出てくる。

 

 どう考えても水道設備や排水処理場は終末で死ぬし、そこらへんの対策としてMAGを用意すれば無限湧きの霊水に変えた形だ。使用済みの水は、もちろん【浄化】した後に下水へ流している。

 

 そんな雑に使い倒されてる〝星の水〟だが、流石に蛇口は雰囲気ぶち壊しなので、基本的に気付くまで黙っているのが星祭内での暗黙の了解だ。

 

 一応、水垢離に使ったり、鍜冶の工程で利用したり、霊草園で撒いたりしているので、生活用水としてしか使ってない訳じゃ無いんだが。

 

 

「星祭の霊的結界の効果も上がったんだっけ?」

 

「素材が強すぎるからな」

 

 

 ちなみに星祭前の神饌米を作ってる畑にも直で〝星の水〟を流している。

 

 そのお陰で霊的素材となり、終末対策の結界の補強になったのは嬉しい誤算だ。門前街の地価がまた跳ね上がったが。終末後も土地収入だけで生きていける気がするぜ。

 

 

「高レベルになると分かるけど、神様って別に人間を振り回したくて振り回してた訳じゃ無かったんだね。一部を除くけど」

 

「そうだな。実は俺とかまだマシなんだぞ?修羅勢の中には感動モノの映画を見ただけで大雨降らせる奴も居たし」

 

 

 制御を覚えるまで大変だったから今でも覚えてる。

 

 

「感情と天候がリンクする系はそうなるよなぁ。製造系の俺ですら油断すると変なもの作るぞ」

 

「あーお前は粘土捏ねて石像作ると、いきなり歌って踊り出すアイドル出来るよな」

 

「そういうお前も絵を書くと中身が出てくるじゃん」

 

「ピグマリオン*3なのか生命系の神なのか悩むな」

 

「覚醒状況的にどっちでも可笑しく無いからなぁ」

 

「俺達、霊力を使わない工程の式神製作体験で覚醒したんよ」

 

「絶妙過ぎる」

 

 

 真面目に〝魂〟を視れば看破出来なくもないが、別にコイツらは自分の霊能に悩んでる訳でも無い。興味本意でプライバシーを侵害するのも何か違うし。

 

 そんな事を考えていると、話題は霊格の話へ。

 

 

「そういやセツニキ。俺、寝て起きたら霊格上がってたんだけど何でか分かる?」

 

「幾つになったんだ?」

 

「四十。ただ、晴彦ニキと違って悪魔をそこまで狩ってないから何でなのかなーと」

 

「んー製造班なら詳細に説明した方が良いか。ちょっと待ってろ。ついでに席替え宜しく」

 

『『『りょ』』』

 

 

 ガラガラとホワイトボードを動かしてる間に古参達が飲み物の位置を入れ換える。

 

 

「修羅勢が英雄認定って呼んでるボーナス経験値(MAG)。実はこれ、製造にもあるんだよ。仕組みは違うがな」

 

 

 ホワイトボードにまずは〝星〟と書く。

 

 

「この星にはメムアレフ的な存在が居て、そいつらがその認定を行ってると考えてくれ。で、そいつらは人間が生み出す物と、その行く末をちゃんと評価してるんだ」

 

「俺達が何か作る度に批評してる感じ?」

 

「その認識で間違いない。例えばお前が霊薬を作るとする。品質は高品質で、レベル三十ぐらいのヤツなら完全回復出来る様な逸品だ」

 

「さすが俺様!良い出来だぜ!」

 

「いや、お前、修羅勢用の霊薬でもっと上の作ってんだろ」

 

「うむ」

 

「まぁ、今回は三十ぐらいのな?」

 

「「おけおけ」」

 

 

 ホワイトボードに〝レベル三十の霊薬〟〝評価A〟と書き込む。

 

 

「この時点で経験値が入ってるのは体感してるよな?」

 

「まぁ、初期の頃は霊薬作ってる内に知らぬ間に上がってたからね」

 

「俺は悪魔退治もやってたからあんま気にしてなかったな」

 

「普通はそんなもんだ。で、この時の経験値は素材のMAGを無意識の内に吸収、変換して、自身の糧とした物になる」

 

 

 口を動かしながらホワイトボードに〝素材〟と書き、そこから右へ矢印を伸ばして〝製造者〟と書く。そして矢印の上に〝MAG(経験値・微小)〟と書き込む。

 

 

「だから霊格が上がれば上がる程、使う素材のランクを上げないと何時まで経っても一定値から変動し(レベルが上がら)なくなる」

 

「言われてみれば確かに?」

 

「出来る事が増える度に使う素材も変わるから、あんま意味無くないか?」

 

「いや、新人達がある程度育ったら、任せる仕事のランクを上げてやらないと駄目って事だろ」

 

「それがあったか」

 

 

 ワイワイ盛り上がる製造班を拍手一回で静める。久々にやった気がする。

 

 

「続きを話すぞ?」

 

『『『うぃ』』』

 

「ここからが製造班の英雄認定に当たる部分になるから良く聞いておけよ。作った物が悪用された場合は関係無いが、人類や文明を守る為に使われた場合、その貢献度に応じて追加の経験値(MAG)が発生するんだ。分かりやすく言えば、星からの〝感謝〟の気持ちって奴だな」

 

 

 今度は〝星〟という字から〝製造者〟という文字へ向けて矢印を伸ばす。そして矢印の上に〝感謝(経験値)〟の文字を書けば終了だ。

 

 

「あー……薬なら確実に誰かを助けるし、割が良い感じ?」

 

「残念ながら薬は薄利多売だな。一番MAGが稼げるのは神話の剣を作って伝説の勇者に渡す事だぞ」

 

「そら世界を救う訳だから当然──あー成る程ね」

 

 

 気付いたか。

 

 

「お前ら古参に後追い組が追い付けない理由が〝コレ〟だ。ついでに言うと探求ネキの霊格の高さの理由でもある」

 

「人間が生きるのに必要な衣食住の〝食〟で稼ぎながら、さらに本人も異界へ突撃してる事になるのか」

 

「つまり、俺達の霊格がやけに高いのは修羅勢のお陰か~」

 

「ビーターや!みんなに謝れ!」

 

「お前もな!」

 

「お前らはβテスターって言うより、サービス開始後から素材の採取場所の探索やレシピ発掘してる先駆者だろ。敢えてチート要素を上げるなら、ショタオジから習えたぐらいじゃないか?」

 

「いや、俺どっちかっていうとセツニキゼミ出身だわ」

 

「俺もそうかも?一緒に素材採取しながら指導して貰って、俺らの為の薬品作ってたし。ショタオジは式神組に取られてたからなぁ」

 

「というか昔は皆で素材取って皆で加工してたよね」

 

「待ってても素材無かったし。てか、取りに行かない奴とはその時点で差が生まれてたのか」

 

「意識して無かったけど恩恵が凄くデカイ!」

 

「その分、苦労してるだろ」

 

 

 今でこそ生産だけで生きていけるだけの素材はあるが、昔の星霊神社にあった素材は深層の物だけだ。もちろん、素人に使える筈が無い。

 

 必然的に戦闘組が取ってくる素材待ちになる訳だが、我慢出来ず、一緒に潜ってきたのがコイツらやエドニキたち上位陣となる。

 

 戦闘の怖さを知っているから素材が少ないと文句を言う他の製造班を諌める嫌な役の経験もあるし、俺らの無茶振りには製造班視点で宥めてくれた連中だ。

 

 それにプラスしてトップクラスの技能を持っているのだから、今更別の奴に乗り換える意味が無い。

 

 それから暫く話の内容を二転三転させながら会話していると、休憩室に御客様が。

 

 

「失礼します。セツニキ、いま大丈夫ですか?」

 

「ちひろネキが来るとは珍しいな?何かあったのか?」

 

「代表がお呼びです。応接間へお願いします」

 

 

 ショタオジを代表呼び……嫌な予感しかしねぇな。

 

 

「分かった、すぐ行く。そんじゃお前ら、またな」

 

「またの~。倉庫出来たらLILIN入れるわ」

 

「おう、待ってるわ」

 

 

 軽く手を振ってちひろネキの後ろを歩く。さてさて、どんな用件やら。

 

 

 

 

*1
サガフロンティア2に登場するカッコいい剣。王家の秘宝という事もあり、プレイヤーが使えるのは終盤から。

*2
探求ネキとショタオジが知らぬ間に作り出した湧水を組む製造班の仕事の一つ。水はあらゆる製作に使うから仕方ないね。〝星の水〟という素晴らしい霊的素材だが……?

*3
ギリシャ神話の一つで戯曲にもなっている。ざっくり説明すると、現実の女性に絶望した青年が理想の女性を石像として彫ったらその美しさに惚れて、衰弱死しかけたという神話。見かねたアフロディーテが石像に命を吹き込んだ。どう考えても元祖俺達。

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