【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「そういや自己紹介とはかしないんスか?」
「全員が全員、まともな人格者とは限らないしな。真名を教えるのも逆に危険なんだよ」
「なるほど……」
「それに私の様に後ろ暗い過去を持つ人間は一杯居ますからね。教えたくない方の方が多いと思いますよ?」
「まぁ、明らかに堅気じゃない人ら増えましたもんね」
「あっ。セツニキさん、動画回して良いッスか?ここらへんの話、知りたい奴等も多いと思うので」
「俺は構わんが、そっちの〝先輩〟の顔は撮すなよ?」
「了解ッス!」
返事と共にスマホを操作してこちらに向ける〝黒札〟達。……うん。
「バッテリーのこと考えて一人づつな?後で編集する時に動画を繋げりゃ良いだろ」
『『『あっ』』』
今度は全員がスマホを仕舞ってしまった。コントかな?
「何というか日本人らしい光景ですね」
「譲り合い精神が見事に出てるよな」
先輩と二人で会話していると、話し合いが終わった様で〝黒札〟の一人がスマホをこちらに向けた。
「お待たせしました!もう大丈夫ッス!」
「あいよ。じゃ、説明すんぞ」
然り気無くカメラに写らない場所に移動していた先輩に感心しつつ、霊符からブルーシートを広げ、その上に霊符を置いていく。
「探索自体が命懸けになるタイプの異界は事前準備が大事だ。お金を掛けりゃ安全って訳でも無いが、無ければそもそも話にならない。で、ガイア連合はその為の道具もちゃんと作ってる」
シートの上に置いていた霊符を手に取り、霊符に霊力を流す。現れたのは〝飴玉〟の入った瓶だ。
「岩手支部にも売ってるから見たことある奴も居るかも知れないが、これは〝
ちなみに水中でも呼吸する事が可能となる。昔はソーダ味しか無かったんだが、最近は様々なフレーバーが用意されていて飽きないんだよな、これ。
鼻くそ味を作った奴は許さないが。
「初っぱなから凄いアイテム来たッスね!てか、これ売ってるんスか!?」
「売ってるぞ。一粒一マッカ*1だから安くは無いけどな。注意点としては、レベルに応じて使わなきゃいけない飴のランクが上がる事。今回、用意したのはレベル十以上向けの奴だが、これの下に一桁用、これの上に三十以降用の飴がある。自分のレベルに合わせた奴を使わないと魔素中毒*2を引き起こすから注意な」
という訳で瓶から飴を取り出し、一人三粒配る。お代は俺持ちだ。新人は手厚く介護して沼に沈めないとな!
「基本的に舐め始めてから三十分ぐらい効果持続するが、環境が過酷な場合、飴の消える速度も早くなるから注意しろ。小さくなったら新しいのを舐めれば大丈夫だから忘れるなよ?」
『『『了解(ッス)』』』
「じゃ、次の対策装備の説明な」
二枚目の霊符に霊力を込め、中身を取り出す。出てきたのは狐のお面だ。
「支部によって性能が変わるから一概にオススメ出来ないんだが〝黒札〟なら迷わず山梨支部産で大丈夫だ。それ以外の〝札持ち〟なら岩手支部が作ってる奴をオススメするな。購入制限が無い上に最低限の性能保証があるから買って後悔する事は無いだろう」
「お値段と効果はどれくらいッスか?」
「〝黒札〟なら割引も効くから安くなるが〝札持ち〟なら最低千マッカは覚悟しろ。効果は〝息吹飴〟を舐めてるのと同じなんだが、術式起動に本人の霊力を使う関係で三十ぐらいまでは使えるぞ」
「ガイア連合基準で三十って一族の秘宝とかそのレベルでは……?」
ポツリと呟く先輩の気持ちも分かるが、そもそも一族の秘宝は過去に一度、人の手で作られた物なのだ。故に現代で作れない訳が無い。但し、素材の枯渇だけはどうしようも出来ん。
「さて、そんじゃ次の奴な」
三枚目の霊符を解放。出てきたのは、ガイア連合に所属している〝黒札〟なら取り敢えず持ってる品だ。
「ディスポイズン*3……ッスか?」
「実はこれ、使用後に五分ぐらいだが【防毒】効果発揮するんだよ」
「マジッスか!?」
「マジだ。但しレベルに応じた奴をちゃんと使ってるなら、だが。使い方としては毒を使ってくる悪魔をごり押しする時に事前に飲む形になる。注意点は〝息吹飴〟と同じだ。考え無しに高位を使えば良いってもんじゃない」
「ほえ~……初めて知ったッス」
「支部の新人研修は一度受けておいた方が良いぞ。マニュアル通りにやってるならこういうアイテムの使い方も教える筈だ」
「それって私の様な者でも受けられますか?」
「受付で揉める様な態度を取ってなきゃ大丈夫だ。ただ〝黒札〟以外はそれなりの受講料が掛かるぞ」
こればっかりは仕方の無い面もある。ガイア連合は〝黒札〟の為の組織だからな。
「お金で命を救う為の知識が手に入るなら安い買い物ですよ」
「全員が全員、お前の様に
「そうッスね。酷い奴は本当に酷いッスから……」
「俺らも性格良いとは言わねぇけど、それ以上だもんなぁ」
「まぁ、一部の奴のせいでソイツ以外にも飛び火するのは良くある事だ。お前達〝黒札〟は使える〝札持ち〟と使えない〝札持ち〟をしっかり分けて考えりゃ大丈夫だぞ」
「一纏めで考えるのも危険って事ッスか」
「要らん怨みを買うだけだからな。ただ支部長の間でブラックリストが回ってるから、最初の一回に当たらない限りは弾かれてる、と思う」
「うーん……当たったら事故と割り切る事にしますわ」
「最初の一回は避けようが無いしなぁ」
「先輩の様な悪名高い奴等を知ってそうな信頼できる人間に聞くのもアリだが、見付けるまでが大変なんだよな。〝黒札〟なら受付に話を聞くのが一番早いかも知れん」
「やはり事務課はガイア連合で最強ッスね!」
「支部によっては酷い受付*4も居るから注意だ」
転生者が全員〝善人〟って訳じゃないのは人間らしい。
「ま、そこらへんは自分の支部の先輩にでも聞くと良いさ」
言いつつ最後の霊符を解放。出てきたのは銀鎖のブレスレット。効果は説明するまでも無いが、念のため説明する。
「対策装備として最強と思われがちな【毒無効】のアクセサリーだ。欠点は
「えっ!?【毒無効】って完全防御じゃ無いんスか!?」
やっぱり勘違いしてやがったか。
「他の防毒装備と違って、これは肉体への影響を遮断してるだけなんだよ。つまり、ディスポイズンを飲む前に外すと普通に毒に侵される」
ついでに衣服を綺麗にする前にアクセサリーを外しても毒になる。というか毒系異界は【浄化】が使えないと基本的に厳しい。もしくは〝洗浄符*5〟か〝洗浄玉*6〟を使うかの二択だ。
「マジッスか……知らなかったッス」
「ここらへんも初心者講習で教えてる筈だぞ」
「うわ~ちゃんと受けておけば良かった……」
「これ、俺らと同じような奴ら一杯居るんじゃないか?」
「俺、覚醒した時の全能感で断った記憶があるよ……」
「俺もッス……」
ショタオジお手製のマニュアルなのに……勿体無い。ちなみにテスターは俺ら星祭、情報の纏めはやる夫ニキだ。だからマニュアルの完成度は察しろ。
「私達の場合、そもそも手が届かない霊装ですね……」
「【毒耐性】でも同じだから覚えておいて損は無いぞ?」
「そうなんですか?」
「ああ。っと、ついでに説明しておくか。【毒吸収】なら気にする必要は無い。文字通りの〝吸収〟だからな」
毒吸収は体内に取り込んだ毒性の
とは言っても【吸収】クラスの霊装は三十代でも高額だ。手に入る奴はガチャで当たりを引いたか、コツコツ節約生活してた奴ぐらいだろう。
「見たことすら無いですし、見たら逃げますよ」
「その判断が一番賢いと思う。ま、今回は費用俺持ちで全部体験させてやるよ。その中から自分の実力と財布にあった対策を選べば良いさ」
『『『ゴチになりまッス!!』』』
「はは……私は〝本物〟に釣られたみたいですね……」
実は俺以上が一杯居るって言ったら信じてくれるのかねぇ?
◇