【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
「じゃ、説明も終わったし、そろそろ行くか」
雑に霊符を投げ込んで【聖域】を展開。これを忘れると初っ端から毒になるので注意。
「えっと、いま何したんです?」
「おおう。説明が必要だったか」
まぁ、塩漬け依頼になるぐらいだし、経験者の方が少ないか。
「……結構、常識だったりします?」
「常識というかこのまま入ると毒になるんだよ。だから【聖域】の霊符を投げ込んだだけだぞ」
『『『あー……』』』
納得出来た様で何より。
突入前に出鼻を挫かれたが、気を取り直して突入。視界一面を塞ぐのは、毒々しい紫色の霧。僅か一メートル先すら見えない。
「これ、不味く無いッスか?危険しか無いような……」
「いや、見た目だけだぞ」
「……確かに見た目だけですね。皆さん、霊視に切り替えて〝視〟てください」
先輩の声に従い、俺達が目に霊力を込める。すると視界を塞いでいた霧が、色の付いた水蒸気程度まで薄まった。
「これが本来の〝濃さ〟って事ッスか?」
「そういう事だ。見た目を過剰に見せる事によって今まで長生きしてきたっぽいが……まぁ、お前らのチュートリアルステージに選ばれてしまった以上、今日で終わる命だな」
ちなみに下層には紫を超え、黒色の毒霧エリアがある。しかも毒どころか猛毒すら超え【劇毒】まで行くぞ☆……糞が。
「えっと、セツニキさん?」
「悪い。嫌な事を思い出しただけだ」
頭を軽く振って考えを振り払い、改めて指示を出す。
「まずは飴を口に含んで適格テストするぞ。最低で二十分持たないなら霊格が足りてない。一応、狐面と併用すれば〝背伸び〟出来るが、オススメはしない」
『『『分かりました!』』』
威勢の良い返事と共に包装を破り、飴を口に含んで【聖域】を飛び出す俺達。その姿に苦笑いを浮かべながら先輩も続く。
「うおっ!?なんかシュワシュワしてる!」
「それが毒に反応してる証だ」
この仕組みは幾多の屍の上に生まれた山梨製造班の特許技術だ。もちろん、屍が俺らなのは言うまでも無い。
それから暫く雑談をしていると、スマホから時間経過を知らせるアラームが鳴った。
視線を俺達に向ける。言わずとも理解してくれた様で、自身のスマホを確認しながら答えてくれた。
「俺は大丈夫だったッス。まだ口の中に残ってますし」
他の面子も同じように報告するが、大丈夫な様だ。
「私は五分前に無くなりました」
「それでも問題は無いが、念のために付けておけ」
狐面を先輩に投げ渡す。直ぐに装備した先輩が感嘆の声をあげる。
「凄い霊装ですね……視界が狭くなる事も覚悟してましたが、逆に広がってる様な……?」
「ガイア連合に所属する〝黒札〟の大半は素人だからな。そいつらの為に改良を繰り返してるんだよ」
正確に言えば、初心者
今じゃ目を閉じても戦えるが、最初からそんな事が出来たのは、グラ爺を始めとする上澄みだけだったし。
「恐ろしい技術力ですね……最も恐ろしいのは、それが
「
金成もそうだが、晴彦ニキの〝本打ち〟は無理だろう。そもそも使えないと思うが。
「
「
『『『???』』』
「ガイア連合産の装備は凄いから、トラブルが嫌なら安易に渡すのはやめましょうって話だ」
『『『なるほど!』』』
首を捻る俺達に軽く説明した後、一度拍手。場を仕切り直して意識を攻略に向ける。
「見ての通り足場が悪い上に陸地が少ない。フォローはしてやるが、警戒を怠るなよ」
『『『分かりました!』』』
「じゃ、探索開始だ」
◇
「よっちゃん!右から【ファントム】!」
「おっけ!食らえ──【ハマ】!」
『────!?』
俺達の一人が放ったハマがファントムに直撃。だがトドメを刺すには僅かに足りない。
「頼みます。アガシオン」
そこへ先輩のアガシオンが追撃の【ハマ】を放つ。制作者はもちろんメイドイン俺。
「──────!?」
ファントムどころか周囲の毒霧ごと浄化し、僅かな時間だが晴天を作り上げる。うーん……こんなもんか。
「先輩、凄いッスね!」
「いえ、凄いのはアガシオンですよ。私にはこれ程の力は無いです」
「いや、俺らもアガシオン使ってる奴見たことありますけど、そもそもハマを使える奴は見たこと無いッスよ!」
「どうやって手に入れたですか!?俺も欲しいっす!」
「それは……」
ちらりと先輩が視線を向けてきたのでVサインで返す。そのやり取りに気付いた俺達が納得の声を上げた。
「あー……セツニキさん製ッスか。納得」
「良いなぁ~セツニキさん製アガシオン」
「君達は同じ〝黒札〟だから簡単に手に入るんじゃ?」
「いやいや!セツニキさんは覚醒してる〝黒札〟には優しいッスけど、甘くないッス!頼めば作ってはくれても買うお金が……」
「隠す事じゃ無いですし、ハッキリ言いますけど、俺達は先輩より〝ツテ〟はあるけど金は無いです」
「それにアガシオンの前に──たっくん!西に悪魔湧いた!」
「了解ッ!」
たっくんと呼ばれた男が西の方角を向き、簡易アナライザーを構える。
「見えたッ!敵は【トゥルダク】が三体!弱点は【衝撃】!呪殺は耐性あり!」
『『『了解!』』』
日頃組んでいるという事もあり、連携は悪くない。雑談中も警戒を切らさなかったのはセツニキポイントが高いぜ。──だが、まだまだひよこだな。
「先輩は上空警戒。【ファントム】が飛んできてるぞ」
「分かりました。──頼みます。【アガシオン】」
上空にアガシオンがふよふよ飛び、ファントムと交戦開始。
「一人を後方警戒へ回せ。そろそろ【マンドレイク】が来るぞ」
「みっくん!」
「オッケー!」
四人の俺達の内、チャラそうな俺達が背後へ回ってアギを放つ。そのアギを沼から顔を出したアズミがブフをぶつけて相殺。
「先輩、アズミの足止めしたら後ろの援護を。お前らはとっとと【トゥルダク】を殺れ。じゃないと〝おかわり〟で死ぬぞ」
「分かりました。──〝縛〟*1ッ!」
「嫁を貰う前に死ねるかぁぁぁ!【ザン】ッ!」
「まだまだ資金が足りないけどね!【ハマ】!」
「【挑発】!あーきついきつい!誰か回復して~!」
昔の俺らもこんな感じだったなぁ……懐かしい。
暫く手を出さずに眺めていると、何人かに
魂の持ち逃げは許さないが、殺すまでなら授業の一環。セツニキゼミは厳しいのだ。
それから少しだけ時が経った頃。俺の【魂感知】に反応が
「三分後に追加来るぞ~死にたくなければ頭を使え~」
「あぁぁぁ!【トゥルダク】の【リカーム】がうざいぃぃぃ!」
「頭を……使う……」
「かっちゃんどうしたの!?頭突きでもするの!?」
「いや、ちげーよ!セツニキさんが頭を使えって言ったから考えてんだよ!」
「俺ら程度が頭を使ったところで意味無いだろ!良いから体を動かせ!」
「くっそッ!セツニキさんは完全に傍観態勢だし、先輩は──いや、そうかっ!先輩ッ!何か良い案無いですか!?」
「逃げましょう。全方位から敵を相手にするのは厳しいです」
「了解ですッ!聞いたな!?入り口の方へ逃げんぞ!!仕切り直しだ!」
『『『了解!!』』』
一目散に俺達が逃げていく。先輩もファントムを仕留めたアガシオンを呼び戻して入り口へ走り出す。
そして──この場に残った俺を狙う悪魔達。
「低級の悪魔──特にDark系はニンゲン!タベル!程度の知能しか無いからなぁ」
『────!』
舐めてんのかと言いたくなる様なスローペースで俺に近付いたトゥルダクが、上段に構えた錆びた剣を振り降ろす。それを避けもせず受けると、トゥルダクが弾け飛んだ。
その残骸は他の悪魔達を巻き添えにし、纏めてMAGに還すには十分だった様で、一瞬だけ、この場にMAGの光が満ち溢れる。
「【物理反射】持ちに通常攻撃は駄目だぞ。来世があったら覚えておけ」
合流する為に【縮地】を発動。すると、汚れる事を気にせず地面に寝転がり、荒い呼吸を繰り返す俺達が見えた。
先輩は少し疲れたと言った様子で、立ったまま持ち込んだ水を飲んでいる。ここらへんは経験の差か。
「ほら、逃げるなら異界の外に出る。ここはまだ安全じゃないぞ」
『『『うぇ~い』』』
ゾンビの様な足取りで俺達が出ていくのを見送り、未だにこの場に留まる先輩に視線を送る。
「後学の為に見学しても?」
「別に構わないが自分を卑下するなよ」
「了解です」
返事と共に右手を異界の中心部に向け、そのまま【マハンマオン】と【マハムドオン】を放つ。雑に放たれた俺の魔法は
「後は戦利品を拾って終わりだ」
「……〝黒札〟には逆らわない様にします」
「それが良い。俺らも使える人間を処分したくないし」
適正外なので権能には辿り着けていないが、戦利品を拾う程度には使えるマハサイダインでドロップ品を回収。表情こそ取り繕っているが、恐怖に揺れ動く先輩を連れて異界を出た。
◇