【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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出張!セツニキゼミ!その八

 

 

 俺の祈りも虚しくアイが〝色〟を出してきたので、ムラサキを召喚してお持ち帰りして貰う。

 

 結界を貼らなければ久慈市が吹き飛ぶ様なキャットファイト(じゃれあい)を経て、敗北したアイがムラサキに担がれて消えた。

 

 まさか美女二人のじゃれ合いで岩手県が吹き飛ぶ危機があったとは俺達も思ってないだろうな。

 

 ちなみにムラサキとアイの二人には、本来、力量差は無い。今回は発情してるアイにキレたムラサキの呆れが上回っただけだ。

 

 二人きりの時にアピールするのは構わないが、時と場所を弁えろ、という話だな。

 

 ハーレムはマジカル息子でも無い限り、基本的に男一人でどうにかなるもんじゃない。

 

 美味しい思いをした嫁が他の嫁に出番を譲る様な環境が必須なのだ。もしくは毎日全員纏めて相手にするだけの性欲かね。

 

 そんなノクターンな事を考えていると、先輩達の気配が少しづつ闇召喚士の居るビルに近付いてきた。

 

 こっそり式神を飛ばして視界を繋ぐ。……先輩、犬神も持っていたのか。

 

 霊痕を五感と霊感で追跡するのは結構ポピュラーな追跡方法なのだが、メシア教のせいで日本の霊能組織はそんな当たり前の知識すらも奪われていたのは言うまでも無い。

 

 索敵、侵入、通信の為の飛行可能な紙人形。潜み、隠れる妖を見付ける追跡の戌や狼、卯、(イノシシ)。そして、自身の盾であり、矛でもある(タツ)。それらを結界術で支援するのが平安時代の陰陽師だった。

 

 つまり、干支は陰陽師にとって扱いやすい式神一覧表の様な物でもあったのだ。

 

 それがどうだ。

 

 

「いや~俺らって新米陰陽師みたいなもんじゃ無いッスか。なのに式神と言うと犬神(こっち)じゃなくて、美女なイメージが強いんスよね」

 

「ガイア連合の〝黒札〟達が従える式神は強いですからね……それも仕方無いかと」

 

「でも、そのせいで先輩みたいなベテランが舐められる訳じゃないですか?それってどうなのかなーって思ったりするんですよね」

 

「下の方は知りませんが、私と同じぐらいの陰陽師や道士(タオシー)なら大歓迎だと思いますよ。舐められるって言うのは悪いことばかりではありません。それにセツニキさんを見てください。どう考えても詐欺でしょう?」

 

『『『確かに』』』

 

 

 噂をされたら登場せねば無作法というもの。スパッと屋根から飛び降り、目の前に降り立つ。

 

 

「野生の修羅勢が現れた!」

 

『『『降伏します』』』

 

 

 判断が早い……!

 

 

「いや、野生のセツニキさん居たら戦うかどうかの領域じゃないんですよ。靴なめるだけで生き残れるなら靴なめ余裕でしたなんだがー?」

 

「それなー?俺も全裸土下座ぐらいなら即座にやるぜ」

 

「皆さん羨ましいですねぇ。天狗にならない様に現実を教えてくれる強者が友好的で本当に羨ましいです」

 

「あーもしかして先輩も事故った経験あるッスか?」

 

「覚醒した時と駆け出しを卒業した辺りでやらかしましたね」

 

「それはコイツらの経験になるから是非語って欲しい。とはいえ先に仕事を終わらせんぞ」

 

 

 話を強引に打ち切ってビルの側へ近付く。ジュネスのお陰で都市化が進んだとはいえ、全員が全員、成功者になれた訳では無い。

 

 特に前世より多少軟着陸したとはいえ、世界規模で侵略戦争を繰り返すメシア教を起点としたバブル崩壊の余波はもちろん日本にも被害をもたらした。

 

 その時の残骸は各地に多く存在し、人避けの結界と共に幾多の闇召喚士や〝裏〟の拠点となっている。

 

 今回侵入するこのビルも同じような物だな。

 

 人払いを始めとする各種結界を張って一般人の目から隠す。中には闇召喚士が転がってるだけだが、仕掛けられた罠は未だに生きている。

 

 だからこそ俺達の経験値に変えられるって訳だ。

 

 

「じゃ、攻略よろしく。油断すれば死にかけるが、苦しむだけで死にはしないから安心して進んでくれ」

 

 

『『『安心出来る要素が無いんですがっ!?』』』

 

 

「大丈夫大丈夫。中身が溢れても人間は意外に死なないもんだ」

 

「駄目だッ!この人、やっぱ修羅勢だ!先輩!御教授お願いします!」

 

「俺達、頑張るからッ!」

 

『『お願いします!』』

 

 

 余りにも真剣な俺達に先輩も思わず苦笑い。

 

 

「安心してください。セツニキさんクラスの方ならともかく、普通の闇召喚士にそこまでの罠なんて用意出来ませんよ」

 

「……本当ッスか?」

 

「ええ。──ほら、見てください。この程度です」

 

 

 先輩が一歩進むと飛んでくるクロスボウの矢。それを結界で弾き、ついでに足元のワイヤートラップに仕掛けられた鉄塊を横に避ける。

 

 

「霊的な術式こそありますが、それはあくまでも覚醒者にダメージを与える為であり、隠蔽に使われていません。故に目視で見付けられる程度なんですよ」

 

「何か拍子抜けッス。これぐらいなら俺達でも──」

 

 

 罠を解除しようと油断した俺達に向けて()()()()()()()()()()()()()()()

 

 突然の凶行に誰一人動かず、固まる空気。即座に蘇生させる俺。そして訳もわからず起き上がる俺達。

 

 

「本来ならこういうやり方なんだよ。俺が闇召喚士を抑えてるとはいえ油断し過ぎだ」

 

「……これは私のミスですね。皆さん、申し訳ありません」

 

「いや……俺達も油断し過ぎてた。先輩だけの責任じゃねぇよ」

 

 

 

──パンァァァッンッ!

 

 

 俺達の一人が自分の頬を思いっきり叩く。その音はビルに反響し、想像以上に大きな音を鳴らした。

 

 

「うっしッ!お前ら、ここからは油断せずに行くぞ」

 

「おう」

 

「だな」

 

「???」

 

 

 首を捻る俺達にスマホで撮影していた動画を見せてやる。

 

 

「……成る程。これは俺が悪いッスね」

 

「そうだな。後、次からは敵の拠点で音を立てない方が良いぞ。敵の腕次第で酷いことになる」

 

 

 具体的には音の発生源に向けて魔法のグミ射ち。あれやられると意外に面倒なんだよな。

 

 そこから先は特に注意する点も特に無く、階段を登って二階へ。薄暗いビルを歩いていると光が欲しくなるが、目立つ行為は基本的に〝目印〟になる事をきちんと教え込む。

 

 

「知識って大事ッスね。今回の事でそれが良く分かりました」

 

「だな。異界とは何もかもが違いすぎる」

 

「実は黒札であるお前らは別に覚えなくても良いんだけどな」

 

 

 共同作戦をする時に気を付けて欲しいってぐらいだ。それすらも指揮官が優秀なら事前に口頭で説明すると思う。音を出すな、隙を見せる時は他がカバーしろ程度になるだろうが。

 

 

「そうなんスか?」

 

「俺が鬼手一族を作ったのはこういう仕事を任せる為だし、愛宕ネキが支部長として〝札持ち〟を管理してるのもその為だ。俺達がお前達に期待してるのは『マヨヒガ』の間引きぐらいだぞ」

 

 

 あそこは岩手支部の財政を支えてる場所なので、支部の信頼が出来る人間しか入れてない。岩手支部の修行用異界みたいなもんだ。

 

 

「丁度良いからハッキリ言っておくが、今回の様な依頼はそもそも受けて欲しく無いんだわ。手を汚して端金を手に入れる様な身分でも無い」

 

「私もセツニキさんの意見に賛成ですね。皆さんは私より強いですが、人の悪意に晒されるこの様な仕事は向いてません。そして、こんな事をして心に傷を負う必要もありません。本来なら葛葉やヤタガラスがやるべき仕事を皆さんに押し付けてるだけですからね」

 

「でも、俺達は岩手支部じゃ中堅っスよ?強さだけで言えば、それなりなもんっす。鬼手一族の人達が怪我するぐらいなら俺達がやるべきじゃ無いッスか?」

 

「そ、そうですよ。僕達もそれなりにやれますし……」

 

 

 ガイア連合に所属する黒札らしい優しさだ。けど、そもそもの認識が間違ってる。

 

 

「今回、お前らの指導を先輩が行っているが、もし先輩のミスでお前らの誰かが死んだとする。そしたら先輩はどうなると思う?」

 

「……愛宕ネキに怒られるッスか?」

 

「いや、鬼手一族が総出で先輩を殺すぞ」

 

「……へ?」

 

「当然だろ?SSR確定ガチャ権を悪魔の餌に変えた奴を生かす訳無い」

 

「私も鬼手一族の立場でしたら殺すと思います。皆さんに分かりやすく説明すると、私達や鬼手一族は雑兵で、皆様は国の姫や王子なんですよ。それをこんな所へ連れ込んで、守りきれずに殺されたら〝ケジメ〟を付けるのは当然です。──例え、貴方達がそれを許そうとも」

 

『『『ひぇ……』』』

 

 

 先輩から垂れ流しになる冷たい殺気。それは彼が本気でそう思っている事を示している。中々良い殺気だな。

 

 

「それぐらいお前らには地位と権力があるんだ。ついでに言うと、性格も大半が善人でお人好し。さらに言えば、お前らは多くの黒札と違って現地民に曇ったフィルターが無いからな」

 

「愛宕支部長も立派なお方ですし、ここは()()共の匂いがしなくなりましたからね。いち〝札持ち〟としては、あなたの様な〝黒札〟には是非長生きして今の状態を維持して欲しいです」

 

 

 穏和な雰囲気が消え、真剣な──()()()()()()としての表情で語る先輩に言葉を失う俺達。

 

 黒札全員に子作りしろ、と言わないのは死線(デッドライン)を越える事を理解してるからだろう。流石に熟練者は失言をしない。

 

 とはいえこの空気は不味いので拍手一回。

 

 

「ま、頭の片隅に入れておく程度に留めておけ。俺にも、そして〝札持ち〟にも。お前らを制限する力も権限も無いしな」

 

「そうですね。すいません皆さん。差し出がましい事を口にしてしまって」

 

「……いや、先輩は悪く無いッス。俺達が考え無しだったッス」

 

 

 ちょっと落ち込みだしたので軽く頭をポカりと叩く。

 

 

「お前らは嫁と人生を楽しみながら程々に頑張れば良いんだよ。気が向いたらガチャの外れを岩手支部や鬼手一族にやれば良い。それだけで下手すりゃ万人は救えんぞ。──分かったら返事は?」

 

 

『『『は、はいッ!』』』

 

 

「宜しい。それじゃ先に進むぞ」

 

 

 あまっちょろいと切り捨てるのは簡単だが、それでこそショタオジが守りたいと願う〝黒札〟だ。

 

 コンビニで募金する様な優しさで手渡したアガシオン一匹が救える人数を考えれば、それ以外の迷惑なんて全て些細なもの。

 

 先輩はそれを理解してるからこそ、こんな甘い奴等を守る為に頑張ってる訳だしな。

 

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