【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録   作:Lilyala

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出張!セツニキゼミ!その九

 

 再び探索を開始する。先程まで喋っていた一つ目の部屋は特に何も無く、剥き出しのコンクリートの壁があるだけの無機質な部屋だった。

 

 その正面の部屋も軽く覗くが、特に何も無い。ゲームとは違い、アイテムなんて落ちてないのだ。

 

 

「止まってください」

 

 

 先輩が立ち止まり、俺達に指示を出す。もちろん最後尾を歩いていた俺も大人しく指示に従った。

 

 

「ここからは式神や悪魔を召喚して私が先行します。突然立ち止まる事も多くなると思うので、臨機応変にお願いします」

 

 

 先程の注意をちゃんと守っている様で、静かに頷く俺達。それを少しだけ満足そうに笑みを浮かべた先輩が悪魔と紙式神を呼び出す。……うん、勿体無いな。

 

 

「先輩、良いことを教えてやるよ。アガシオンは壁を抜けられるぞ」

 

「……マジですか?」

 

「マジだ。しかも器を壊されない限り、マッカを吸わせるか霊力を注げば幾らでも復活する」

 

「ガイア連合恐るべし……!」

 

 

 驚愕の表情を浮かべる先輩。俺達だと進化してその利点が消え失せ、普通の悪魔になる事も多いが、現地民にとってはこれ程便利な悪魔は居ないだろう。

 

 スキルカードで【気配探知】や【罠外し】を入れれば末代までの宝物になるだろうしな。

 

 俺の助言を受けた先輩がアガシオンを廃ビルに放つ。幾つかある扉の閉まった部屋を壁抜けさせ、罠の有無確認しつつ行った理由を俺達に説明する。

 

 

「こういう廃墟で扉が閉まってる場合、開けた瞬間にボンッ!となる事が多いんですよ」

 

「まるで映画みたいな事をやるんスね」

 

「一応、ちゃんと理由はあるんですよ?昔は闇召喚士と言えば、単純に所属してた組織を裏切った悪魔召喚士の事を指していたんです」

 

「まぁ、そんな感じでしょうね。……昔?」

 

 

 俺達の一人が首を傾げると、先輩が苦笑いしながら続きを語る。

 

 

「最近の闇召喚士はメシア教に居場所を奪われた霊能者──つまり、亡国の霊能者や元軍人、それに傭兵が生きる為に霊能力を悪用する事の方が多いですね」

 

 

『『『またメシアかよ!!』』』

 

 

 それな。──っと、ついでに言っておかないと。

 

 

「同情する必要は無いが、メシア教に洗脳された奴が正気を取り戻して逃げ出したり、胸糞案件な実験から逃げたり、善良な()()()()()()の院長に逃された子供が生きる為に手を赤く染めるパターンもあるぞ」

 

「出来れば知りたくなかった……!」

 

「敵は悪!倒す俺達は正義!でやらせて欲しい……!」

 

「せめてこの依頼が終わるまでは知りたくなかった……!」

 

「だから言っただろうに。黒札がやる仕事じゃないって」

 

 

 その点、鬼手一族は割り切っている。自分達の末代までの安寧と引き換えにガイア連合の駒として動く〝覚悟〟がある。まぁ、無いやつは処理しただけなんだが。

 

 ついでに身を犠牲にして黒札の代わりに働いていると俺達からの寵愛を受けやすいとも教えておいた。嘘は言ってないしな。コイツラの反応を見れば、鬼手一族に情が湧くのも時間の問題だし。

 

 

「……俺達は異界討伐頑張ろうぜ。対人は無理だ」

 

「俺も今回の話が頭に過ってしくじりそう」

 

「棲み分けって大事ッスよね」

 

「値段に精神的ダメージが見合わなすぎる……」

 

「どうしても金が必要で受ける必要があるなら嫁に任せりゃ良い。アイツらは基本的に御主人様以外に興味無いしな」

 

「それはそれで心が病みそう……」

 

 

 我儘な奴等だ。

 

 意気消沈したまま歩く俺達を眺めながら歩いていると、先輩が手で静止を促した。

 

 

「思った以上に腕利きの闇召喚士だったみたいですね。皆さん、見てください」

 

 

 促された先には、瓦礫と瓦礫の間に張られた一本のピアノ線が。周囲の色と同化してる辺り、素人の仕事じゃないな。

 

 

「アガシオンで確認しましたが、瓦礫の裏に爆弾が仕掛られています。触れればただじゃ済みませんよ」

 

「えっと、触れない様に動けば大丈夫ッスか?」

 

「いや、霊視に切り替えてみな」

 

 

 慣れない様子で一度目を閉じ、瞳に霊力を集める俺ら。そして開いた時には──

 

 

「……マジッスか」

 

 

 今の俺と同じ光景が見えている事だろう。

 

 通路を埋め尽くす様に隠蔽術式で隠されていたムドストーン。そして霊糸によって極限まで見えづらくなっている()()()()()

 

 ほんの僅かでも爆破してしまえば、ムドストーンが割れて飛び交う呪詛に殺されていただろう。

 

 本来ならこれに悪魔の襲撃まであると考えると、殺意は最後までたっぷりだな。

 

 

「どうします?一度引いて別の場所から侵入しますか?」

 

「俺ならそう考えた奴を殺戮領域(キルゾーン)に招き入れる為に罠を仕掛けるが?」

 

「ですよね」

 

 

 天を見上げる様に溜め息を吐き出す気持ちも分かる。とはいえ嘆いていても現実は変わらない。

 

 

「この光景を見れば、闇召喚士狩りを〝美味しい依頼〟とは二度と思わないだろうしな。今回は俺が片付けてやるよ」

 

 

 適当に霊符をばら蒔いて()()()()する。ムドストーンごっつぁんでーす。ついでに仕掛けられた爆弾も頂く。

 

 

「……術者、ずるくないッスか?」

 

「才能だけで言えば、お前ら全員同じことは出来るぞ?」

 

 

 先輩も鬼手一族で学べば出来るだろうが。

 

 

「いや~収納術式は書くのも流すのもキツすぎッス。セツニキさんみたいな速度なんて無理ッスよ」

 

「努力あるのみだぞ。レベル三十前後までならスキルで十分だから、モチベーションを保ち辛いだろうがな」

 

「デスヨネー。……まぁ、頑張りま~す」

 

 

 それが良い。ガイア連合がある限り、黒札の価値は下がらないだろうしな。

 

 それから先もゲリラの拠点の様な物理と霊的な罠が盛り沢山だった。

 

 少しでも振動を与えたら爆発する毒ガス。ダミー含めて十以上のピアノ線とそれに繋がる爆弾。

 

 わざわざ底が抜けやすくされた【大地(テラ)】系のスキルで弄られたフロアに、弾が無くなるまで動く者を撃ち殺すガトリング。

 

 さらには油と火を使った罠まであり、俺以外の全員が警戒疲れで消耗し、動きが鈍くなっていく。

 

 そこへ丁度良く傍目から見て()()()()安全そうな部屋が見付かった。すげーな、ここまで来ると芸術的とすら言えるぞ。

 

 

「ちょっと休憩しませんか?私も皆さんも疲労が目に見えているのは少し不味いです」

 

 

 その先輩の言葉に喜びを隠せない俺達。……やれやれ。

 

 

「先輩、注意力が散漫になってるぞ」

 

 

 思業式神を生み出して歩かせると、周囲のコンクリートが棘に変化して貫いた。

 

 

「……すいません。これは申し開きもない失態です」

 

「ま、人間は常に気を張り続けられる生き物じゃないから仕方無い。──お前ら」

 

 

 もはや喋るのも辛い様で、返事すら無く視線を俺に向ける俺達。そんな俺達へ告げる。

 

 

「本物の闇召喚士はこういうもんだ。お前らが受けるかどうかは自由だが、〝アタリ〟を引いた時は覚悟しろよ」

 

 

 現在進行形で苦労してるだけあって、大人しく頷く俺達。……うん、身に染みたみたいだな。

 

 闇召喚士を舐めている雰囲気は霧散した。当初の予定だった闇召喚士を甘く見ている俺達に太い釘を刺せた。なら、もう手札を隠す意味も無いな。

 

 拍手一回で【清浄の祈り】を発動。ついでに浄化の霊符を投げ付け、結界を張る。

 

 

「十分だけ休憩するぞ。水分補給とカロリーバー食べて軽く休んでおけ」

 

 

 指示を飛ばした後、俺も食事兼休憩に入る。

 

 つーか、俺が居なかったら死んでた可能性があったな。塩漬けになっていて本当に良かった。

 

 

 

 

 本来ならあった筈のボス戦は最初からスキップされている。だから到着した時点で依頼は達成されると言って良い。

 

 最上階では無く、その一階下、しかも倉庫に隠れていたのは流石と言うべきか。

 

 俺達が普通にスルーしようとしたので、先輩が呼び止めなければ無駄足を踏むところだったな。

 

 

 そんな訳で御開帳。

 

 

「……んっ……んっ……」

 

 

『『『うわ……』』』

 

 

 室内に漂う淫臭。口を縛る布の横からは涎が垂れ流されている。暇潰しに擬人式神で遊んでいた関係で、女だった闇召喚士は濡れに濡れていた。

 

 

「さて。後はコイツを確保、または殺せば依頼は終了だ。どうする?」

 

「いやいやいやッ!?この光景で何でそんな反応になるんスか!?」

 

「セツニキさん、もしかして枯れてる?」

 

「口は災いの元という諺を身体に教え込んでやろうか?」

 

「ゴメンナサイッ!」

 

 

 ミッドナイトブリスは俺も関わったぜ。

 

 

「真面目な話に戻しますが、どうします?殺すなら私がやりますけど」

 

「あー……先輩も殺す派ッスか?こんな美人なのに」

 

 

 俺達が勿体無さそうな声を出すのも無理も無い。中東系の美女というべき闇召喚士は、中々の逸品だ。前世なら迷わず声を掛けた。それぐらいの美女だ。

 

 とはいえ黒札に手を出したというのが不味い。俺が許してもショタオジが許さないだろう。

 

 

「皆さんはこの業界に入って日が浅いから知らないかも知れませんが、霊能者を入れる刑務所*1なんて存在しないんですよ。霊能力を奪ったり、封印する術式も探せばあるかも知れませんが、残念ながら私は知りません」

 

「セツニキさんは?」

 

「知ってるし、出来るが……かなりの額になるぞ?」

 

「えっと、それは触媒的な意味です?」

 

「それもあるが、大半は技術料だな。これを仕事にしてる奴も居るし、無料は無理だ」

 

 

 ガイア連合の中には覚醒直後に自身の能力に悩む奴も多くいる。特に覚醒した直後は日常生活に影響が出てしまう事も多く、そんな彼らの霊能を一時的に封じ込め、能力に振り回されなくなるまで手助けする仕事に就いている俺達も多い。

 

 それ故に俺の一存で値段を決める事は出来ず、基本的に外部価格となってしまう。そんな大金を払うなら、素直に殺したほうが早い。

 

 

「辛いなら先に外へ出て良いぞ。俺と先輩で片付けておくしな」

 

「……いえ、見ておきます。授業を頼んだのは俺達ですし」

 

「さよけ」

 

 

 先輩を下がらせ、一人闇召喚士の前へ行く。その胸に手を当て、いざ殺そうとした──その時。

 

 

「……マジかよ」

 

 

 こっそり奪おうとした()()が予想外の事態を俺に教えてきた。

*1
十勝支部はまだ出来ていない筈?

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