【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 作:Lilyala
辿り着いた部屋は最初に入った客室とは違い、中央にロングテーブルが置かれているだけの部屋だった。
机の上には燭台が等間隔で置かれており、ゆらゆらと
一人で部屋を出ない様に指示を飛ばし、別れて散策。ゲーム的な視点から俺が狙うのは暖炉だ。
近くに置いてあった灰掻き棒で不自然に積もっている灰の山をカリカリ崩して居ると、カツンと音が鳴った。手前に引き寄せる様に掻き出すと、そこには金色の鍵が。
正直言えば、現実でノーヒントのキーアイテムを隠すのは糞だと思う。
「セツニキ、何か見付けた?」
「ほい」
シャツで灰を拭った鍵を愛宕ネキに投げる。
「特に使用場所のヒントは書かれてないわね」
「下手すりゃ物を退けた裏に不自然な鍵穴があるかも知れないし、そもそもフレーバーの可能性もあるぞ」
「現実でノーヒントの謎解きは辞めて欲しいわ」
「それな」
肩を竦めて見せる。考える事はどうやら同じだったらしい。
「主様。こちらは特に何も無かったです」
「私の方も特に何も」
合流した二人からの報告も芳しくない。
「【目星】に失敗したかねぇ。こういう場所は斥候型の独壇場なんだがな」
「無い物ねだりしても仕方ないでしょ。それよりどうするの?先へ進む?」
「暖炉から煙突に抜けられるか試してみたいんだが……」
視線を愛宕ネキ達の胸と尻に向ける。
「俺だけならともかくお前らは無理だろうから大人しく出るか」
「待ちなさい。今、何処見て言ったの?」
「胸と尻」
女体として見るだけなら眼福なんだが、壁尻にさせるのは可哀想だし、残念ながら煙突は無理だ。
そんな訳で入ってきた扉から外へ出る。相変わらずの光景に辟易しながら反対側へ進むと、明らかに何か入って居そうな巨大なポリープが見えた。
「敵に一票」
「宝の可能性もあるわよ?」
「無いだろ。メガテン世界だぜ?」
人に優しくない事に定評のある世界だ。楽観的な考えは捨てた方が良い。
「信じられないって悲しい事ね」
「おう、その艤装の砲身何処向いてるか言ってみろや」
「ショタオジの悪魔召喚士試験受けてから癖になってるのよね。違和感に従うの」
「気持ちは分かる」
あの試験は人間の〝情〟を〝悪意〟で返す試験だしな。
「私が軽く切りますか?」
「じゃ、頼むわ」
扶桑ネキが薙刀を構えつつ慎重に近付いていく。その後ろでベレッタを構え、いざという時の準備完了。
「では、行きます」
上段から振り下ろされた薙刀はポリープを見事に切り裂き、自重に負けた〝中身〟が外に出てきた。
「これは……餓鬼?かしら」
「俺には上半身が普通のおっさんに見える」
「上半身は人間の肉体で間違いないですよ。下半身が餓鬼なのも間違いありません」
「デビルシフターってこんな中途半端になる事ってあるんですか?」
「零から百までの変身過程で
「星祭には居ないの?」
「居るが、あいつらの【部分変化】は自らの意思で行う物だぞ。少なくともこんな中途半端な死体になった事は一度も無い」
変身途中で殺されると、悪魔化した部位がMAGに還る事は確認している。だからこんな
「つまり、何者かの介入が確定してるって訳ね」
「デビルシフターでも作ろうとしたのかねぇ──扶桑ネキ下がれ」
反射的に発した言葉に即座に反応した扶桑ネキが俺達の居る場所までバックステップを決める。それを待ち望んでいたかの様に半餓鬼の死体がピクリと動き始めた。
「アナライズは通るか?」
「……駄目ね。簡易だとバグるわ」
「しゃーねぇ。漢判定するか」
扶桑ネキと入れ替わる様に前に出ると、丁度良く起き上がった半餓鬼が人間部分の腕を振り回す。
「……レベル壱以下だな」
軽くガードした腕への衝撃はほぼ無い。というか俺の霊格に負けて腕が折れてるな。
知りたい事も知れたので、半餓鬼の頭に銃弾を打ち込む。
一発では弱く、二発でも足りない。三発目で漸く
「取り敢えず俺らの敵じゃない事だけは確かだ。この異界の瘴気の濃さからすると有り得んぐらい弱いぞ」
「原因は何か分かる?」
「コイツらがミソッカスなのか最高傑作なのかで話が変わる。たぶん前者だと思うが」
「何にせよ探索しろって事ね」
「そうだな」
二人同時に溜め息を吐き出して苦笑い。どう考えてもこの館の持ち主はロクな事をしていないだろう。その後始末の事を考えると、今から頭が痛い。
◇
「上から二匹来るぞ。気を付けろ」
廊下の天井に出来ていたポリープが粘液を撒き散らしながら派手に割れ、中から悪魔が飛び出してくる。
愛宕ネキは前衛で三匹を抱え中。必然的に扶桑ネキがフォローに回る羽目に。
「主様。後ろから四です」
「了解」
ベレッタをレティの横に向けて引き金を引く。肉壁を抉る様に跳ねた弾丸は、そのまま背後から迫っていた人間もどきの両足に穴を空ける。
動きが止まった所でマガジンを床に落とし、新たなマガジンを装填。込めた弾は相変わらずの9パラだ。
先程から敵の襲撃が止まらない。敵のレベルが壱から三十まで幅広くバラバラな事も合わさり、やりづらさに拍車を掛けている。
「こっちの処理、終わったわ」
「後ろは足止めしておいた。先に扶桑ネキの援護を」
「了解」
本人が回避や防御を優先しても、砲撃を止めない
扶桑ネキの振り下ろす薙刀がハーピー混じりの人間を切り捨てる。さらに真横へ凪ぎ払い、緩慢な動きで襲い掛かる悪魔と人の合いの子の様な存在を捌いていく。
んー……
ただでさえ半分しかMAGが無いのにこれは酷い。黒札達への依頼だったら暴動が起きてるぞ。
「主様。追加で三です」
「了解」
空に二匹、地面に一匹。飛んでる奴は翼を撃ち抜き、地面の奴には置き
それから十分程で漸く戦闘が終了。ドロップ品は一切無し。悪魔を構成するMAGの量を考えれば当然か。代わりに人間の残骸が大量に出たので纏めて浄化していく。
「すでに魂が無い事を理解していても、余り良い気分にはなりませんね」
「そうね。せめて全部MAGに還ってくれれば良いのに」
「生前の行動を模倣してる辺り、ゾンビ化した人間をベースに悪魔を組み込んだんだろう」
「ロクでも無いわね」
「そこまでしても叶えたい願い……死者蘇生辺りですか?」
「もしくはアンブレラよろしくメシア教に対抗する為の生物兵器辺りか」
どう考えても制御不能で暴走間違い無しの欠陥兵器にしかならないと思うが。
「ところで皆さん。気付きましたか?」
浄化を終えたレティがこちらに歩きながら問い掛ける。
「……?何かあった?」
「私達が処理したゾンビ悪魔ですが、人間部分の人種がバラバラなんですよ。これは私の予想になりますが、遺体はメシア教と大規模な戦闘を行った地域から調達してると思います」
その言葉を受けて愛宕ネキ達が残る残骸に視線を向ける。
「確かに白人や黒人、中東の褐色肌の遺体が多いわね」
「黒幕は海外からの流れの霊能者って事ですか?」
「遺体の密輸難易度を考えると、量を確保してから渡ってきた可能性は高いと思う。断言するのは危険だがな」
「そこらへんは
「おー怖っ……」
愛宕ネキ達の緊張を解く為、少しふざけながら灰色の脳細胞を酷使する。
本国でやるには外道過ぎて不可能、というかバレた時に世論が許さないし、名声が地に堕ちる。だから敗戦国で行ったと考えると辻褄が合う。
乗っ取られたのは中東でメシア教が勝利した時期か、敗戦濃厚となった時だ。流石に多神連合が破れた時期だと考えると悪魔もどきが多過ぎる。
「……確証が欲しいな」
「何か言った?」
「いや、何も。取り敢えず移動しようぜ。考察するにしても休憩するにしても館の方が良いだろう」
「それもそうね。適当な部屋に入りましょ」
愛宕ネキが先頭を歩き、その後ろをゆっくり着いていく。山梨の倉庫が出来るまでの暇潰しのつもりだったが、大層な事になったもんだ。
◇